悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ

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やっと6歳

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 混乱に紛れて、強引に帰途についた馬車の中。父は何か考え込んでいるのか、考えを読まれないようにしているのか、始終無言で目をつむり、腕を組んだまま微動だにしません。

『戸惑ってはいるようだが、悪感情は読めない』

 オニキスは相変わらず、興味深そうに父を見上げています。
 ふむ。屋敷に帰るまで話す気はないようなので、この間に私も考えを纏めるとしましょう。

 先ほどの戦いをいつからか観られていたかですが・・・

『薙刀を握っていたのは見られたようだな。戸惑いの中に見える』

 あちゃー。手早く観客が来る前に仕留めたつもりでしたが、遅かったようです。薙刀でばっさりまで見られたかは不明ですが、得物を持っていたのは見られてしまいましたね。
 オニキスを援護する気で構えていたのですが、早く消した方がよかったかな。

『どこから見ていたかはわからん』

 ですよね。ありがとう、オニキス。
 私としては、今更怖れる人が増えたところで問題ないのですが、父にその傾向がないのは、正直嬉しいです。
 今回あった事は、話してしまいましょうか。

 ゲームのカーラはどうしたのかな。
 状況的になにもしないのは、なかったと思うのですが。

『すまない。魔物が増えたのは、我のせいだ』

 どういう事ですか?
 申し訳なさそうに耳を寝かせて、オニキスがこちらを見上げます。

『穏便に済ますつもりが、煽ってしまったようだ。敵意があったのは、最初の一羽だけだった』

 推測するに、ゲームでは一羽だけだったのかもしれません。逃げ切ったのか、カーラが力を使ったのかはわかりませんが。
 その後、婚約者がいることから、逃げただけというのが正解な気がします。そもそもゲームのカーラはオニキスと契約していませんから、魔法を使うのに呪文が必要です。学園に入学してそこで学ぶまで呪文を知らないはずなので、魔法を使ったとは考えにくいですね。
 まあ、参考にならないのは確かです。

『申し訳ない』

 気にしなくていいですよ。オニキスがいてくれて助かりましたし。そんな事より、オニキスが意地悪を言われていないかが心配です。

『大丈夫だ』

 オニキスが私の足にすり寄りました。
 あぁ。ぎゅっとできないのがもどかしい。いっそ父にバレてもいいから、オニキスを抱き締めてしまいましょうか。

『後でいい!』

 手を伸ばしかけた私から、オニキスは慌てて離れてしまいました。そのままするりと私の影に溶け込みます。
 そんな。逃げなくてもいいのに。

 仕方ないので、再び考えるとしましょう。

 シナリオから、すでに離れてきているような現在。
 とりあえず死亡ルートは回避中で、ガンガーラ移住計画は頓挫しています。

 そもそも国外追放はウェルカムなんですよ。追放するなら住みにくそうな国かなと思っていたのですが、ガンガーラでないなら、北の帝国なのかな。

 投獄も・・・まぁ、オニキスがいればなんとでもなりそうですし。この投獄ルートはヘンリー殿下に恋をしていない時点で、回避したと言えなくもないでしょう。

 ただシナリオ通りだと、どのルートでも家族に迷惑がかかる事、間違いなしなんですよね。

 あぁ。もう少しまじめにプレイしなかったことが悔やまれます。
 この「バル恋」に関する私の記憶は、ちょっと偏っているのですよ。
 実は私・・・戦う女の子が好きでして、恋愛の甘々要素ではなく、バトルの要素に惹かれて購入、プレイしたのです。
 ですからゲーム主人公については比較的よく覚えているのですが、攻略対象についてはあまり覚えていません。その背景とか、国の情勢とかも、ぼんやりとしか覚えていないのです。攻略対象とのからみより、カーラとのバトルの方を楽しんでいたくらいなので。
 はっ。ノーマルですよ!
 ノーマルですからね!! 大事なことなので、2度言いますよ!!!

 あー。思考がそれました。

 迷惑をかけずに、自由になる方法があるのか・・・。
 まずシナリオからは離れるべきですよね。もっと徹底的に離れてしまえばいいのかな。

 ん? それなら、とことん怖がらせるとか、やらかして「夜の女神再来」とばかりに、「こいつを誰とも結婚させたくない」状況にすればいいのでは? そうすれば「乙女ゲーム」の根幹ともいえる「色恋沙汰」からおさらばできるかも?!

 我ながらいい考えだと思うのですよ!

 ちらりと父の様子を伺います。さて、どこまで巻き込みましょうか。

『あー。カーラ』

 うん?何ですかオニキス。

『お前の父は、乗り物酔いしているようだ』
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