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最終章 アリスの過去と未来を踏まえて俺が出した現在の結論
第44話 だから何度も拓馬の事を嫌いになろうとした、でもどうしても嫌いになれなかった
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教室に到着してからしばらく無言だったアリスだがようやく重い口を開く。
「……ねえ、ちょっと前に転生とか生まれ変わりがあると思うかって拓馬に質問したのは覚えてる?」
「ああ、確か演劇の題材を決める時だったよな」
突然真面目そうな顔で質問された事がかなり印象的だったためよく覚えている。だが一体それがこれからする話と何の関係があるのだろうか。
「転生とか生まれ変わりは実在するよ、だって私自身がそうだから。もっとも私の場合は異世界に転生したんじゃなくて過去の自分に逆行転生したんだけど」
「……えっ?」
俺はアリスが一体何を言っているのかよく分からなかった。戸惑う俺を無視してアリスはそのまま話し続ける。
「私ね、大学四年生の時に死んじゃったんだ。居眠り運転の車に轢かれてさ」
とても信じられない内容だがアリスの表情は真剣そのものだった。
「めちゃくちゃ痛かったし、まだまだやりたい事もたくさんあった。でもね死んで全く後悔はしてないよ」
「どうして!?」
「だって車に轢かれそうになっていた拓馬を助ける事が出来たんだから」
話が全て本当ならアリスは未来で俺を庇って死んだらしい。
「何でそこまでして俺なんかを助けたんだよ……?」
「そんなの拓馬が大好きだからに決まってるじゃん。それに生まれてくる子供に父親が居ないのはいくら何でも可哀想過ぎるでしょ?」
「アリスが死んだら子供も巻き添えになるんだから意味ないだろ」
アリスが死んでしまうほどの衝撃を体に受ければお腹の子供だって無事で済むはずがない。それなら俺を助けずにアリスが生きていた方が絶対良かったに決まっている。
「ううん、私との子供じゃないよ」
「ど、どういう事だよ!?」
「未来で拓馬の隣にいたのはあの人で、私は選ばれなかったから」
そう口にしたアリスは悲しそうな表情を浮かべていた。信じられない事だが未来で俺はアリスではない別の誰かと結ばれていたようだ。
「だから何度も拓馬の事を嫌いになろうとした、でもどうしても嫌いになれなかった」
辛そうな顔をしてそんな事を話すアリスを見て俺は何も言葉が出てこなくなってしまう。
「だから拓馬が轢かれそうになった時も気付いたら体が動いたんだろうね。当たりどころが悪くて絶対助からないって自分でも分かっちゃったから拓馬に最後のわがままを言ったんだ」
「……最後のわがまま?」
「うん、もし生まれ変わって出会う事があったら今度はあの人じゃなくて私を選んでって。そしたら拓馬は泣きながら今度は絶対にアリスの事を選んでやるからって約束してくれたよ」
アリスが以前からたびたび口にしていた俺との約束とはこの事だったのか。過去ではなく未来にした約束なのだから俺の記憶に無くて当然だ。
「それからすぐ拓馬に看取られながら死んだ私だったけど、気付いたら子供の頃に戻ってたんだよね。きっと神様が私にやり直しのチャンスを与えてくれたんだと思う」
そこからアリスは色々と行動を始めたらしい。自分磨きをしたり日本で一人暮らしをするための資産を作ったりとにかく出来る事は全部したようだ。全ては今度こそ俺に選んでもらうために。
「そっか、それがアリスの隠してた秘密だったんだな」
「今まで隠しててごめんね」
「いや、むしろ話してくれたのが今で良かったよ」
もし転校初日にこんな話をされていたとしても絶対に信じられなかったに違いない。
「……そう言えば未来の俺とアリスは一体どこで出会ったんだ?」
「拓馬が大学二年生の時に半年間の留学でイギリスにある私の家へホームステイで来たのが初対面だね」
いつか留学に行きたいとは思っていたが未来の俺はちゃんと行ったようだ。
「今は拓馬の事が大好きな私だけど、実は最初の頃って全然仲良く無かったんだよ」
「そうなのか!?」
「うん、子供の頃何度も嫌な目にあってきた関係で他人が大嫌いだったから拓馬の事も一方的に毛嫌いしてたし。だからあの頃は必要最低限しか拓馬と関わろうとして無かった」
アリスは遠い過去を懐かしむかのような表情になっていた。俺の知っている今のアリスとは全然違うため、そんな頃があったなんて全く想像できない。
「でも冷たい態度を取り続ける私に対して拓馬は優しく接してくれたんだ。そんな拓馬の優しさに触れて私の心の氷はどんどん溶かされていって、気付いたら好きになってた」
おいおい、未来の俺イケメン過ぎるだろ。まるで青春漫画やライトノベルに登場する主人公のようだ。
「でもその時拓馬には付き合っていた彼女がいたから私の恋が実る可能性は低くかったの。だけど諦められそうになかったから留学が終わった拓馬を日本まで追いかけたんだよね、今度は私が留学して拓馬の家にホームステイするって形で」
「……でも報われなかったのか」
「うん、拓馬はあの人と結婚しちゃったから」
未来の俺はここまで俺の事を好きになってくれたアリスを何故選ばなかったのだろうか。とにかくそれが不思議で仕方なかった。
「……ねえ、ちょっと前に転生とか生まれ変わりがあると思うかって拓馬に質問したのは覚えてる?」
「ああ、確か演劇の題材を決める時だったよな」
突然真面目そうな顔で質問された事がかなり印象的だったためよく覚えている。だが一体それがこれからする話と何の関係があるのだろうか。
「転生とか生まれ変わりは実在するよ、だって私自身がそうだから。もっとも私の場合は異世界に転生したんじゃなくて過去の自分に逆行転生したんだけど」
「……えっ?」
俺はアリスが一体何を言っているのかよく分からなかった。戸惑う俺を無視してアリスはそのまま話し続ける。
「私ね、大学四年生の時に死んじゃったんだ。居眠り運転の車に轢かれてさ」
とても信じられない内容だがアリスの表情は真剣そのものだった。
「めちゃくちゃ痛かったし、まだまだやりたい事もたくさんあった。でもね死んで全く後悔はしてないよ」
「どうして!?」
「だって車に轢かれそうになっていた拓馬を助ける事が出来たんだから」
話が全て本当ならアリスは未来で俺を庇って死んだらしい。
「何でそこまでして俺なんかを助けたんだよ……?」
「そんなの拓馬が大好きだからに決まってるじゃん。それに生まれてくる子供に父親が居ないのはいくら何でも可哀想過ぎるでしょ?」
「アリスが死んだら子供も巻き添えになるんだから意味ないだろ」
アリスが死んでしまうほどの衝撃を体に受ければお腹の子供だって無事で済むはずがない。それなら俺を助けずにアリスが生きていた方が絶対良かったに決まっている。
「ううん、私との子供じゃないよ」
「ど、どういう事だよ!?」
「未来で拓馬の隣にいたのはあの人で、私は選ばれなかったから」
そう口にしたアリスは悲しそうな表情を浮かべていた。信じられない事だが未来で俺はアリスではない別の誰かと結ばれていたようだ。
「だから何度も拓馬の事を嫌いになろうとした、でもどうしても嫌いになれなかった」
辛そうな顔をしてそんな事を話すアリスを見て俺は何も言葉が出てこなくなってしまう。
「だから拓馬が轢かれそうになった時も気付いたら体が動いたんだろうね。当たりどころが悪くて絶対助からないって自分でも分かっちゃったから拓馬に最後のわがままを言ったんだ」
「……最後のわがまま?」
「うん、もし生まれ変わって出会う事があったら今度はあの人じゃなくて私を選んでって。そしたら拓馬は泣きながら今度は絶対にアリスの事を選んでやるからって約束してくれたよ」
アリスが以前からたびたび口にしていた俺との約束とはこの事だったのか。過去ではなく未来にした約束なのだから俺の記憶に無くて当然だ。
「それからすぐ拓馬に看取られながら死んだ私だったけど、気付いたら子供の頃に戻ってたんだよね。きっと神様が私にやり直しのチャンスを与えてくれたんだと思う」
そこからアリスは色々と行動を始めたらしい。自分磨きをしたり日本で一人暮らしをするための資産を作ったりとにかく出来る事は全部したようだ。全ては今度こそ俺に選んでもらうために。
「そっか、それがアリスの隠してた秘密だったんだな」
「今まで隠しててごめんね」
「いや、むしろ話してくれたのが今で良かったよ」
もし転校初日にこんな話をされていたとしても絶対に信じられなかったに違いない。
「……そう言えば未来の俺とアリスは一体どこで出会ったんだ?」
「拓馬が大学二年生の時に半年間の留学でイギリスにある私の家へホームステイで来たのが初対面だね」
いつか留学に行きたいとは思っていたが未来の俺はちゃんと行ったようだ。
「今は拓馬の事が大好きな私だけど、実は最初の頃って全然仲良く無かったんだよ」
「そうなのか!?」
「うん、子供の頃何度も嫌な目にあってきた関係で他人が大嫌いだったから拓馬の事も一方的に毛嫌いしてたし。だからあの頃は必要最低限しか拓馬と関わろうとして無かった」
アリスは遠い過去を懐かしむかのような表情になっていた。俺の知っている今のアリスとは全然違うため、そんな頃があったなんて全く想像できない。
「でも冷たい態度を取り続ける私に対して拓馬は優しく接してくれたんだ。そんな拓馬の優しさに触れて私の心の氷はどんどん溶かされていって、気付いたら好きになってた」
おいおい、未来の俺イケメン過ぎるだろ。まるで青春漫画やライトノベルに登場する主人公のようだ。
「でもその時拓馬には付き合っていた彼女がいたから私の恋が実る可能性は低くかったの。だけど諦められそうになかったから留学が終わった拓馬を日本まで追いかけたんだよね、今度は私が留学して拓馬の家にホームステイするって形で」
「……でも報われなかったのか」
「うん、拓馬はあの人と結婚しちゃったから」
未来の俺はここまで俺の事を好きになってくれたアリスを何故選ばなかったのだろうか。とにかくそれが不思議で仕方なかった。
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