自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥

文字の大きさ
上 下
45 / 49
最終章 アリスの過去と未来を踏まえて俺が出した現在の結論

第44話 だから何度も拓馬の事を嫌いになろうとした、でもどうしても嫌いになれなかった

しおりを挟む
 教室に到着してからしばらく無言だったアリスだがようやく重い口を開く。

「……ねえ、ちょっと前に転生とか生まれ変わりがあると思うかって拓馬に質問したのは覚えてる?」

「ああ、確か演劇の題材を決める時だったよな」

 突然真面目そうな顔で質問された事がかなり印象的だったためよく覚えている。だが一体それがこれからする話と何の関係があるのだろうか。

「転生とか生まれ変わりは実在するよ、だって私自身がそうだから。もっとも私の場合は異世界に転生したんじゃなくて過去の自分に逆行転生したんだけど」

「……えっ?」

 俺はアリスが一体何を言っているのかよく分からなかった。戸惑う俺を無視してアリスはそのまま話し続ける。

「私ね、大学四年生の時に死んじゃったんだ。居眠り運転の車に轢かれてさ」

 とても信じられない内容だがアリスの表情は真剣そのものだった。

「めちゃくちゃ痛かったし、まだまだやりたい事もたくさんあった。でもね死んで全く後悔はしてないよ」

「どうして!?」

「だって車に轢かれそうになっていた拓馬を助ける事が出来たんだから」

 話が全て本当ならアリスは未来で俺を庇って死んだらしい。

「何でそこまでして俺なんかを助けたんだよ……?」

「そんなの拓馬が大好きだからに決まってるじゃん。それに生まれてくる子供に父親が居ないのはいくら何でも可哀想過ぎるでしょ?」

「アリスが死んだら子供も巻き添えになるんだから意味ないだろ」

 アリスが死んでしまうほどの衝撃を体に受ければお腹の子供だって無事で済むはずがない。それなら俺を助けずにアリスが生きていた方が絶対良かったに決まっている。

「ううん、私との子供じゃないよ」

「ど、どういう事だよ!?」

「未来で拓馬の隣にいたのはあの人で、私は選ばれなかったから」

 そう口にしたアリスは悲しそうな表情を浮かべていた。信じられない事だが未来で俺はアリスではない別の誰かと結ばれていたようだ。

「だから何度も拓馬の事を嫌いになろうとした、でもどうしても嫌いになれなかった」

 辛そうな顔をしてそんな事を話すアリスを見て俺は何も言葉が出てこなくなってしまう。

「だから拓馬が轢かれそうになった時も気付いたら体が動いたんだろうね。当たりどころが悪くて絶対助からないって自分でも分かっちゃったから拓馬に最後のわがままを言ったんだ」

「……最後のわがまま?」

「うん、もし生まれ変わって出会う事があったら今度はあの人じゃなくて私を選んでって。そしたら拓馬は泣きながら今度は絶対にアリスの事を選んでやるからって約束してくれたよ」

 アリスが以前からたびたび口にしていた俺との約束とはこの事だったのか。過去ではなく未来にした約束なのだから俺の記憶に無くて当然だ。

「それからすぐ拓馬に看取られながら死んだ私だったけど、気付いたら子供の頃に戻ってたんだよね。きっと神様が私にやり直しのチャンスを与えてくれたんだと思う」

 そこからアリスは色々と行動を始めたらしい。自分磨きをしたり日本で一人暮らしをするための資産を作ったりとにかく出来る事は全部したようだ。全ては今度こそ俺に選んでもらうために。

「そっか、それがアリスの隠してた秘密だったんだな」

「今まで隠しててごめんね」

「いや、むしろ話してくれたのが今で良かったよ」

 もし転校初日にこんな話をされていたとしても絶対に信じられなかったに違いない。

「……そう言えば未来の俺とアリスは一体どこで出会ったんだ?」

「拓馬が大学二年生の時に半年間の留学でイギリスにある私の家へホームステイで来たのが初対面だね」

 いつか留学に行きたいとは思っていたが未来の俺はちゃんと行ったようだ。

「今は拓馬の事が大好きな私だけど、実は最初の頃って全然仲良く無かったんだよ」

「そうなのか!?」

「うん、子供の頃何度も嫌な目にあってきた関係で他人が大嫌いだったから拓馬の事も一方的に毛嫌いしてたし。だからあの頃は必要最低限しか拓馬と関わろうとして無かった」

 アリスは遠い過去を懐かしむかのような表情になっていた。俺の知っている今のアリスとは全然違うため、そんな頃があったなんて全く想像できない。

「でも冷たい態度を取り続ける私に対して拓馬は優しく接してくれたんだ。そんな拓馬の優しさに触れて私の心の氷はどんどん溶かされていって、気付いたら好きになってた」

 おいおい、未来の俺イケメン過ぎるだろ。まるで青春漫画やライトノベルに登場する主人公のようだ。

「でもその時拓馬には付き合っていた彼女がいたから私の恋が実る可能性は低くかったの。だけど諦められそうになかったから留学が終わった拓馬を日本まで追いかけたんだよね、今度は私が留学して拓馬の家にホームステイするって形で」

「……でも報われなかったのか」

「うん、拓馬はあの人と結婚しちゃったから」

 未来の俺はここまで俺の事を好きになってくれたアリスを何故選ばなかったのだろうか。とにかくそれが不思議で仕方なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

幼馴染と話し合って恋人になってみた→夫婦になってみた

久野真一
青春
 最近の俺はちょっとした悩みを抱えている。クラスメート曰く、  幼馴染である百合(ゆり)と仲が良すぎるせいで付き合ってるか気になるらしい。  堀川百合(ほりかわゆり)。美人で成績優秀、運動完璧だけど朝が弱くてゲーム好きな天才肌の女の子。  猫みたいに気まぐれだけど優しい一面もあるそんな女の子。  百合とはゲームや面白いことが好きなところが馬が合って仲の良い関係を続けている。    そんな百合は今年は隣のクラス。俺と付き合ってるのかよく勘ぐられるらしい。  男女が仲良くしてるからすぐ付き合ってるだの何だの勘ぐってくるのは困る。  とはいえ。百合は異性としても魅力的なわけで付き合ってみたいという気持ちもある。  そんなことを悩んでいたある日の下校途中。百合から 「修二は私と恋人になりたい?」  なんて聞かれた。考えた末の言葉らしい。  百合としても満更じゃないのなら恋人になるのを躊躇する理由もない。 「なれたらいいと思ってる」    少し曖昧な返事とともに恋人になった俺たち。  食べさせあいをしたり、キスやその先もしてみたり。  恋人になった後は今までよりもっと楽しい毎日。  そんな俺達は大学に入る時に籍を入れて学生夫婦としての生活も開始。  夜一緒に寝たり、一緒に大学の講義を受けたり、新婚旅行に行ったりと  新婚生活も満喫中。  これは俺と百合が恋人としてイチャイチャしたり、  新婚生活を楽しんだりする、甘くてほのぼのとする日常のお話。

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

隣人の女性がDVされてたから助けてみたら、なぜかその人(年下の女子大生)と同棲することになった(なんで?)

チドリ正明@不労所得発売中!!
青春
マンションの隣の部屋から女性の悲鳴と男性の怒鳴り声が聞こえた。 主人公 時田宗利(ときたむねとし)の判断は早かった。迷わず訪問し時間を稼ぎ、確証が取れた段階で警察に通報。DV男を現行犯でとっちめることに成功した。 ちっぽけな勇気と小心者が持つ単なる親切心でやった宗利は日常に戻る。 しかし、しばらくして宗時は見覚えのある女性が部屋の前にしゃがみ込んでいる姿を発見した。 その女性はDVを受けていたあの時の隣人だった。 「頼れる人がいないんです……私と一緒に暮らしてくれませんか?」 これはDVから女性を守ったことで始まる新たな恋物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

俺の家には学校一の美少女がいる!

ながしょー
青春
※少しですが改稿したものを新しく公開しました。主人公の名前や所々変えています。今後たぶん話が変わっていきます。 今年、入学したばかりの4月。 両親は海外出張のため何年か家を空けることになった。 そのさい、親父からは「同僚にも同い年の女の子がいて、家で一人で留守番させるのは危ないから」ということで一人の女の子と一緒に住むことになった。 その美少女は学校一のモテる女の子。 この先、どうなってしまうのか!?

処理中です...