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第6章 今年の学園祭は色々と忙しくなりそうだ

第41話 心配しなくてもこんな事拓馬にしか言わないから

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 一夜が明けて学園祭二日目に突入した。学内は昨日に引き続きお祭りモードであり多くの人々で賑わっている。

「よし、じゃあ早速食べ歩きをしようか」

「学園祭二日目が始まって早々いきなりする事がそれなのか、昨日も散々やっただろ」

「えー、別にいいじゃん」

 俺は呆れつつもアリスの食べ歩きに満足するまで付き合う。演劇も昨日で終わったため今日は基本的に一日中自由だ。

「お腹も膨れた事だし、昨日見れなかった一年生の教室展示の残りを見に行こうよ」

「そうだな、せっかくの学園祭なんだし全部見ないと勿体無いよな」

 俺達は校舎内に入ると真っ直ぐ一年生の教室へと向かい始める。

「そう言えば拓馬のクラスは去年どんな教室展示をやったの?」

「俺達のクラスは目の錯覚を利用したトリックアートを作って教室全体に飾ってた」

「中々楽しそうな事をやったんだね」

「ああ、面白い写真が撮れるって話題になって行列ができるほどだったから」

 そんな話をしているうちに一年生の教室前に到着した。昨日は一組から四組まで見たため、今日は残りの五組から八組までを見るつもりだ。ひとまず俺達は五組の教室へと入る。

「へー、このクラスはプラネタリウムなんだ」

「思ったよりも本格的なんだな」

 教室の天井には満点の星空が投影されていて、学校の教室とは思えない幻想的な空間が形成されていた。ちょうど俺達しか中にいないためゆっくり見れそうだ。

「あれがはくちょう座のデネブ、あっちがわし座のアルタイル、あそこにあるのがこと座のベガで、三つの星を結んだのが有名な夏の大三角だね」

「都会に住んでると綺麗な星空が見えないし、また本物を見に行きたいよな」

「だね、また二人で星を見に行こうよ」

 そんな会話をしながらしばらく二人でプラネタリウムを楽しんでいたわけだがトラブルが発生してしまう。

「きゃっ!?」

 なんとアリスが床に垂れ下がっていた遮光カーテンに滑って転けそうになってしまったのだ。教室の中は基本的に真っ暗であり、足元にあった遮光カーテンの存在に気付くことができなかったらしい。
 背中から後ろに倒れそうになるアリスを俺は咄嗟に抱き止めた。完全にお姫様抱っこの体勢になっているが人助けのためだ。

「大丈夫か?」

「ありがとう、拓馬のおかげで助かったよ」

「怪我も無さそうで良かった、じゃあ下ろすぞ」

「えー、もうちょっとこのままがいいな。あっ、お姫様抱っこしたまま学内を回ってくれてもいいよ」

 アリスはそんなとんでもないわがままを言い始めた。いや、誰かに見られたら絶対めちゃくちゃ恥ずかしいから。
 結局アリスが抵抗したせいで下ろすまで五分くらいかかってしまい、後から教室にきた人達に凄い目で見られてしまった事は言うまでもない。

「……全く酷い目にあった」

「私をお姫様抱っこできたんだからどう考えてもご褒美でしょ」

「よくそんな事を恥ずかしげもなく堂々と言えるよな」

「心配しなくてもこんな事拓馬にしか言わないから」

 そう口にしたアリスはめちゃくちゃ上機嫌だった。それから俺達は引き続きまだ見てない一年生の教室展示を二人で回る。
 六組の段ボール迷路と七組のお化け屋敷は割と学園祭の定番だと思うが、八組の人力コーヒーカップは中々珍しかった。

「やっぱり今年の一年生も色々考えてるんだな」

「うん、クラスによって個性が全然違うから面白かったね」

 一年生のクラス展示を一通り見終わった俺達は遅めの昼食として屋台で買ったからあげとたこ焼きを二人でシェアして食べながらそんな話をしている。

「この後はどうする?」

「あっ、次はもう決まってるから」

 そう言ってアリスは不敵な笑みを浮かべながら学園祭のパンフレットを指差した。それを見た瞬間、俺は思わず声を上げる。

「えっ、これに参加する気なのか!?」

「うん、そうだよ」

 なんとそこにはベストカップルコンテストと書かれていたのだ。固い絆で結ばれた男女二人一組がクイズやゲームに挑み、各競技で得られるポイントが最も高かったカップルをベストカップルとする企画らしい。

「いやいや、こんなのに出場したら絶対目立つじゃん」

「拓馬はもう既に散々悪目立ちしてるんだから今更でしょ」

「てか、そもそもこういう企画って事前に応募しないと参加できないだろ」

 パンフレットにも書類選考で選ばれたカップルが対象と書かれているため、俺達が飛び入りで参加するのは無理なはずだ。

「ああ、それなら大丈夫。ちゃんと私が書類を書いて応募をしておいてあげたし」

「……えっと、完全に初耳なんだけど?」

「今初めて言ったからね。ちなみにちゃんと書類選考にも合格してるよ」

 どうやらアリスは俺に秘密で勝手に申し込んでいたらしい。

「ち、ちなみに拒否権とかは……?」

「逆に聞くけどあると思う?」

 ニコニコした笑顔を浮かべたアリスからそう聞き返されて言葉が出なかった。もはや俺には参加するという選択肢しか残されていないようだ。

「って訳だからよろしく」

「……マジで憂鬱だ」
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