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第5章 ぼっちの俺がリア充みたいな夏休みを過ごしてるのは気のせいか?
第32話 婚姻届に拓馬のサインと判子をくれるなら考えてあげても良いけど?
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「あっ、拓馬見て見て。始まったよ」
二人で芝生に座って夜空を見上げて待っていると花火大会の開始時間になった瞬間、一発の花火が打ち上げられた。
それを皮切りに花火が夜空に次々と打ち上げられ、色とりどりの光とともに破裂するような短い音が鳴り響く。
「やっぱり花火はいつ見ても綺麗だな」
「うん、これぞ日本の夏って感じだよね」
俺とアリスは二人で寄り添って夜空で咲き誇る花火を見つめている。色鮮やかな閃光を夜空へ撒き散らして消えていく花火は本当に美しかった。
「……そう言えば今日の花火って何発打ち上がるんだろう?」
「確か一万三千発だった気がするよ」
「へー、そんなに打ち上げるのか。ならしばらく楽しめるな」
「うん、せっかく来たんだから最後まで楽しまないと勿体ないよね」
俺とアリスは二人してかなりはしゃいでいる。やっぱり花火は何歳になってもワクワクするものだ。しばらく夜空を眺めていると隣に座っていたアリスがニヤニヤしながら口を開く。
「ねえ、拓馬。私に何か言う事があるんじゃないの?」
「……もう何があっても絶対に言わないぞ」
アリスが性懲りも無くまた例の台詞を言わさせようとしているのを聞いて俺は即座に拒否をした。流石に何度も同じ手には引っかからない。
「えー、別に良いじゃん」
「また勝手にプロポーズの台詞って事にされても困るからな」
もう既に色々と手遅れになっているような気もするがせめてもの抵抗だ。
「まあ良いよ、この間のやつは永久保存版としてしっかり録音してあるし」
「えっ!?」
全然気づかなかったがどうやらアリスはこっそりと録音していたらしい。
「ちなみに消してくれたりとかは……?」
「婚姻届に拓馬のサインと判子をくれるなら考えてあげても良いけど?」
うん、無理だ。もはや諦めるという選択肢しか取れそうにない。口は災いの元だと今更になって認識させられる俺だったが気付くのがあまりにも遅すぎたようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二人で一緒に花火を見続けているうちに気付けば一時間半が経過した。会場内には花火大会終了のアナウンスが流れ始めている。
「あっという間だったね」
「ああ、もう終わりかって感じだったもんな」
俺とアリスはそんな話をしながら道を駅に向かって歩いていた。後は家に帰るだけというタイミングで問題が発生する。
「きゃっ!?」
なんとアリスがバランスを崩して転けそうになってしまったのだ。普段は履き慣れていない下駄が原因かもしれない。
幸いな事に俺が横から抱き止めたため転びはしなかったが、足首を挫いてしまったらしく痛そうな表情を浮かべている。
「歩けそうか?」
「……ごめん、ちょっとすぐには動けそうにない」
「そうか、なら俺の背中に乗ってけ」
俺はしゃがんでおんぶする体制になった。するとアリスは意外そうな表情を浮かべる。
「まさか拓馬が自主的にそんな事をしてくれるなんて思ってなかったよ」
「流石にアリスをここに置き去りになんて出来ないからな」
「じゃあ遠慮なく」
アリスが俺の背中に乗ったのを確認してゆっくりと立ち上がる。周りからジロジロと見られているがそんなの関係ない。
「なあ、この近くにコンビニってあるか?」
「えっと……北の方向に向かって少し進んだところに一つあるね」
「オッケー、コンビニで応急処置に使えそうなものを買うからナビよろしく」
「任せて」
スマホの地図アプリでコンビニを探して貰った俺は、アリスの案内で目的地を目指して歩き始める。
「……ねえ拓馬、私重くない?」
「心配しなくても全然重くないぞ」
「良かった、重いって言われたら流石の私でもショックだったからさ」
「むしろ俺と身長ほとんど変わらないにしては軽すぎる気がするくらいだ」
アリスは十七歳女性の平均身長を大幅に超えているのに体重に関しては多分平均くらいしかないのではないだろうか。そんな事を思いながら歩いているうちにコンビニに到着した。
「じゃあアリスはここで待っててくれ、すぐ戻るから」
「いってらっしゃい」
俺はアリスを入り口の横に降ろすとコンビニに入る。そして医療品などが陳列された棚から湿布とテーピングテープを購入してアリスの元へと戻った。
「湿布を貼ってテーピングすれば痛みは今よりマシになると思うから。少しの間じっとしててくれ」
俺は患部に湿布を貼り丁寧にテーピングしていく。テーピングは保健体育の時間にやり方を習っていたため問題無くできた。
「ありがとう、拓馬のおかげでだいぶ良くなったよ」
「一人で歩けるか?」
「もし歩けないって言ったらお姫様抱っこしてくれる?」
「うん、訳の分からない軽口を叩けるくらいだからもう大丈夫そうだな」
アリスの顔からさっきまでの痛そうな表情が消え失せている事がなによりの証拠だ。
「あー、今度はお腹が痛くなってきた気がする。拓馬がお姫様抱っこしてくれたら治るかも」
「棒読みで明らかにバレバレの嘘をつくのは辞めろ、それ以上言うなら置いて帰るぞ」
「もう、拓馬のケチ」
その後は特に何事も無く家に帰るのだった。ちなみにアリスがその後もしつこくお姫様抱っこを求めてきたため、仕方なく一回だけしたのはまた別の話だ。
二人で芝生に座って夜空を見上げて待っていると花火大会の開始時間になった瞬間、一発の花火が打ち上げられた。
それを皮切りに花火が夜空に次々と打ち上げられ、色とりどりの光とともに破裂するような短い音が鳴り響く。
「やっぱり花火はいつ見ても綺麗だな」
「うん、これぞ日本の夏って感じだよね」
俺とアリスは二人で寄り添って夜空で咲き誇る花火を見つめている。色鮮やかな閃光を夜空へ撒き散らして消えていく花火は本当に美しかった。
「……そう言えば今日の花火って何発打ち上がるんだろう?」
「確か一万三千発だった気がするよ」
「へー、そんなに打ち上げるのか。ならしばらく楽しめるな」
「うん、せっかく来たんだから最後まで楽しまないと勿体ないよね」
俺とアリスは二人してかなりはしゃいでいる。やっぱり花火は何歳になってもワクワクするものだ。しばらく夜空を眺めていると隣に座っていたアリスがニヤニヤしながら口を開く。
「ねえ、拓馬。私に何か言う事があるんじゃないの?」
「……もう何があっても絶対に言わないぞ」
アリスが性懲りも無くまた例の台詞を言わさせようとしているのを聞いて俺は即座に拒否をした。流石に何度も同じ手には引っかからない。
「えー、別に良いじゃん」
「また勝手にプロポーズの台詞って事にされても困るからな」
もう既に色々と手遅れになっているような気もするがせめてもの抵抗だ。
「まあ良いよ、この間のやつは永久保存版としてしっかり録音してあるし」
「えっ!?」
全然気づかなかったがどうやらアリスはこっそりと録音していたらしい。
「ちなみに消してくれたりとかは……?」
「婚姻届に拓馬のサインと判子をくれるなら考えてあげても良いけど?」
うん、無理だ。もはや諦めるという選択肢しか取れそうにない。口は災いの元だと今更になって認識させられる俺だったが気付くのがあまりにも遅すぎたようだ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
二人で一緒に花火を見続けているうちに気付けば一時間半が経過した。会場内には花火大会終了のアナウンスが流れ始めている。
「あっという間だったね」
「ああ、もう終わりかって感じだったもんな」
俺とアリスはそんな話をしながら道を駅に向かって歩いていた。後は家に帰るだけというタイミングで問題が発生する。
「きゃっ!?」
なんとアリスがバランスを崩して転けそうになってしまったのだ。普段は履き慣れていない下駄が原因かもしれない。
幸いな事に俺が横から抱き止めたため転びはしなかったが、足首を挫いてしまったらしく痛そうな表情を浮かべている。
「歩けそうか?」
「……ごめん、ちょっとすぐには動けそうにない」
「そうか、なら俺の背中に乗ってけ」
俺はしゃがんでおんぶする体制になった。するとアリスは意外そうな表情を浮かべる。
「まさか拓馬が自主的にそんな事をしてくれるなんて思ってなかったよ」
「流石にアリスをここに置き去りになんて出来ないからな」
「じゃあ遠慮なく」
アリスが俺の背中に乗ったのを確認してゆっくりと立ち上がる。周りからジロジロと見られているがそんなの関係ない。
「なあ、この近くにコンビニってあるか?」
「えっと……北の方向に向かって少し進んだところに一つあるね」
「オッケー、コンビニで応急処置に使えそうなものを買うからナビよろしく」
「任せて」
スマホの地図アプリでコンビニを探して貰った俺は、アリスの案内で目的地を目指して歩き始める。
「……ねえ拓馬、私重くない?」
「心配しなくても全然重くないぞ」
「良かった、重いって言われたら流石の私でもショックだったからさ」
「むしろ俺と身長ほとんど変わらないにしては軽すぎる気がするくらいだ」
アリスは十七歳女性の平均身長を大幅に超えているのに体重に関しては多分平均くらいしかないのではないだろうか。そんな事を思いながら歩いているうちにコンビニに到着した。
「じゃあアリスはここで待っててくれ、すぐ戻るから」
「いってらっしゃい」
俺はアリスを入り口の横に降ろすとコンビニに入る。そして医療品などが陳列された棚から湿布とテーピングテープを購入してアリスの元へと戻った。
「湿布を貼ってテーピングすれば痛みは今よりマシになると思うから。少しの間じっとしててくれ」
俺は患部に湿布を貼り丁寧にテーピングしていく。テーピングは保健体育の時間にやり方を習っていたため問題無くできた。
「ありがとう、拓馬のおかげでだいぶ良くなったよ」
「一人で歩けるか?」
「もし歩けないって言ったらお姫様抱っこしてくれる?」
「うん、訳の分からない軽口を叩けるくらいだからもう大丈夫そうだな」
アリスの顔からさっきまでの痛そうな表情が消え失せている事がなによりの証拠だ。
「あー、今度はお腹が痛くなってきた気がする。拓馬がお姫様抱っこしてくれたら治るかも」
「棒読みで明らかにバレバレの嘘をつくのは辞めろ、それ以上言うなら置いて帰るぞ」
「もう、拓馬のケチ」
その後は特に何事も無く家に帰るのだった。ちなみにアリスがその後もしつこくお姫様抱っこを求めてきたため、仕方なく一回だけしたのはまた別の話だ。
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