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第2章 カップルみたいな事をしてるけどまだ付き合ってすらいないんだぜ
第13話 昨日読んだ絵本に出てきたシンデレラみたい
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昼食を食べ終えた俺達はパンフレットを見ながらイルカショーの会場を目指して歩き始める。
「イルカショーを見るのなんていつぶりだろ」
「私も最後に見たのは高校生の時だった気がするな」
「いやいや、今も高校生だろ」
アリスのつぶやきを聞いた俺は思わずツッコミを入れた。するとアリスは一瞬不思議そうな顔をした後、はっとしたような表情になって口を開く。
「ああ、言葉足らずだったね。高校一年生の時って意味だよ」
「なんだそういう意味か、もう高校を卒業してるのかと思ったぞ」
海外は飛び級制度がある国もあると聞くので、もしかしたらアリスは既に高校を卒業しているのではないかと一瞬思ってしまった。
まあ、アリスが既に高校を卒業しているならうちの学校に入学なんてするはずが無いためあり得ないに決まっているが。
「そんなわけないじゃん……それより時間は大丈夫?」
「ああ、まだ十分前だからまだ余裕だ」
会場までは後五分もかからないはずなので全く問題無い。そして後少しで会場に到着しそうになったタイミングで問題が起こる。
「ねえ、お母さん。どこいったの……?」
五歳くらいに見える女の子がそうつぶやきながら泣きそうな顔をして立っていたのだ。恐らく迷子になってしまったのだろう。
周りは女の子に哀れみの目を向けてはいたものの、誰も助けようとしない。そんな女の子の様子を見て居ても立っても居られなくなった。
「大丈夫か? ひょっとしてお母さんとはぐれちゃった?」
あまり近づきすぎると圧迫感を与えて怖がらせてしまう可能性があったため、適度に距離を取り姿勢を低くして話しかけている。
だが初対面で歳上男性である俺から突然話しかけられたのは怖かったらしく、女の子は黙ったまま何も話してくれない。どうやって警戒を解こうか考え始めていると、アリスが女の子に近付いていく。
「お姉ちゃん達は全然怖く無いよ、だから迷子かどうか教えて欲しいな」
「……お母さんがね、急に居なくなっちゃったの」
アリスが笑顔で話しかける女の子は相変わらず泣きそうな顔をしつつもそう答えてくれた。異性の俺より同性のアリスの方が安心感もあって話しやすかったのかもしれない。
「そっか、じゃあお姉ちゃん達が助けてあげる。だから心配しないで」
「本当?」
「ああ、俺達が絶対どうにかするから」
イルカショーに間に合わなくなる可能性が非常に高いが今は女の子を助ける事が最優先だ。俺達は女の子と一緒に入り口にある受付へと向かい始める。
下手に館内を歩き回って女の子の母親を探し回るよりも受付に連れて行って館内放送をして貰った方が早くて確実と判断したからだ。
「私はアリス、こっちは拓馬。あなたの名前は?」
「由真」
「へー、由真ちゃんって名前なんだ。今は幼稚園に通ってるのか?」
「うん、年長組」
俺達こんな感じで由真ちゃんに話しかけていった。最初は表情が硬かった由真ちゃんも徐々に警戒心が解けていったようでかなり話してくれるようになっている。
もしアリスがいてくれなければこんなにもスムーズに事が運ぶのは絶対にありえなかったため本当に感謝しかない。
少しして受付に到着した俺達は事情を説明して館内放送をかけてもらう。一応これで俺達のミッションは達成だったが、由真ちゃんを一人で受付に残すのは可哀想だったのでお母さんが迎えにくるまで一緒に待つ事にした。
「お姉ちゃんは髪が金色で目が緑色だけど、どうして?」
「それはね、お姉ちゃんのママが外国人だからだよ」
「そーなんだ。昨日読んだ絵本に出てきたシンデレラみたい」
由真ちゃんが笑顔を浮かべながら話している事を考えると、俺達にだいぶ気を許してくれたようだ。三人で色々な話をしながら待っていると慌てた様子の女性が受付にやってきた。
「あっ、お母さん」
「由真、良かった。いつの間にかはぐれちゃったから心配したのよ」
「あそこにいるお姉ちゃんとお兄ちゃんに助けてもらったんだ」
どことなく由真ちゃんと顔立ちが似ているなと思っていたら、やはりお母さんだったらしい。
「迷子になった娘を助けていただいてありがとうございました」
「いえいえ、俺達は当たり前の事をしただけですから」
「困った時はお互い様って言いますしね」
深々と頭を下げてくる由真ちゃんのお母さんに対して俺とアリスはそれぞれそう口にした。由真ちゃんも無事にお母さんと再開できた事だし、これで一件落着だ。
「由真ちゃん、お母さんと再開できて良かったね」
「うん。お姉ちゃんとお兄ちゃん、ありがとう」
「もう今度は迷子にならないようにな」
由真ちゃんはお母さんに連れられて去っていったわけだが、時々後ろを振り返る由真ちゃんに対して俺達は姿が見えなくなるまで手を振った。仲良くなった由真ちゃんと別れるのがちょっと名残惜しかった事は言うまでも無い。
ちなみにイルカショーにはやはり間に合わなかった俺達だったが、その一時間後に開催された次の回には無事参加する事ができたので問題無かったと言える。
それから水族館から出た後も俺達はしばらくシャイニングサンシティ内で買い物をしたり展望台に上がったりして夜になるまで楽しむのだった。
「イルカショーを見るのなんていつぶりだろ」
「私も最後に見たのは高校生の時だった気がするな」
「いやいや、今も高校生だろ」
アリスのつぶやきを聞いた俺は思わずツッコミを入れた。するとアリスは一瞬不思議そうな顔をした後、はっとしたような表情になって口を開く。
「ああ、言葉足らずだったね。高校一年生の時って意味だよ」
「なんだそういう意味か、もう高校を卒業してるのかと思ったぞ」
海外は飛び級制度がある国もあると聞くので、もしかしたらアリスは既に高校を卒業しているのではないかと一瞬思ってしまった。
まあ、アリスが既に高校を卒業しているならうちの学校に入学なんてするはずが無いためあり得ないに決まっているが。
「そんなわけないじゃん……それより時間は大丈夫?」
「ああ、まだ十分前だからまだ余裕だ」
会場までは後五分もかからないはずなので全く問題無い。そして後少しで会場に到着しそうになったタイミングで問題が起こる。
「ねえ、お母さん。どこいったの……?」
五歳くらいに見える女の子がそうつぶやきながら泣きそうな顔をして立っていたのだ。恐らく迷子になってしまったのだろう。
周りは女の子に哀れみの目を向けてはいたものの、誰も助けようとしない。そんな女の子の様子を見て居ても立っても居られなくなった。
「大丈夫か? ひょっとしてお母さんとはぐれちゃった?」
あまり近づきすぎると圧迫感を与えて怖がらせてしまう可能性があったため、適度に距離を取り姿勢を低くして話しかけている。
だが初対面で歳上男性である俺から突然話しかけられたのは怖かったらしく、女の子は黙ったまま何も話してくれない。どうやって警戒を解こうか考え始めていると、アリスが女の子に近付いていく。
「お姉ちゃん達は全然怖く無いよ、だから迷子かどうか教えて欲しいな」
「……お母さんがね、急に居なくなっちゃったの」
アリスが笑顔で話しかける女の子は相変わらず泣きそうな顔をしつつもそう答えてくれた。異性の俺より同性のアリスの方が安心感もあって話しやすかったのかもしれない。
「そっか、じゃあお姉ちゃん達が助けてあげる。だから心配しないで」
「本当?」
「ああ、俺達が絶対どうにかするから」
イルカショーに間に合わなくなる可能性が非常に高いが今は女の子を助ける事が最優先だ。俺達は女の子と一緒に入り口にある受付へと向かい始める。
下手に館内を歩き回って女の子の母親を探し回るよりも受付に連れて行って館内放送をして貰った方が早くて確実と判断したからだ。
「私はアリス、こっちは拓馬。あなたの名前は?」
「由真」
「へー、由真ちゃんって名前なんだ。今は幼稚園に通ってるのか?」
「うん、年長組」
俺達こんな感じで由真ちゃんに話しかけていった。最初は表情が硬かった由真ちゃんも徐々に警戒心が解けていったようでかなり話してくれるようになっている。
もしアリスがいてくれなければこんなにもスムーズに事が運ぶのは絶対にありえなかったため本当に感謝しかない。
少しして受付に到着した俺達は事情を説明して館内放送をかけてもらう。一応これで俺達のミッションは達成だったが、由真ちゃんを一人で受付に残すのは可哀想だったのでお母さんが迎えにくるまで一緒に待つ事にした。
「お姉ちゃんは髪が金色で目が緑色だけど、どうして?」
「それはね、お姉ちゃんのママが外国人だからだよ」
「そーなんだ。昨日読んだ絵本に出てきたシンデレラみたい」
由真ちゃんが笑顔を浮かべながら話している事を考えると、俺達にだいぶ気を許してくれたようだ。三人で色々な話をしながら待っていると慌てた様子の女性が受付にやってきた。
「あっ、お母さん」
「由真、良かった。いつの間にかはぐれちゃったから心配したのよ」
「あそこにいるお姉ちゃんとお兄ちゃんに助けてもらったんだ」
どことなく由真ちゃんと顔立ちが似ているなと思っていたら、やはりお母さんだったらしい。
「迷子になった娘を助けていただいてありがとうございました」
「いえいえ、俺達は当たり前の事をしただけですから」
「困った時はお互い様って言いますしね」
深々と頭を下げてくる由真ちゃんのお母さんに対して俺とアリスはそれぞれそう口にした。由真ちゃんも無事にお母さんと再開できた事だし、これで一件落着だ。
「由真ちゃん、お母さんと再開できて良かったね」
「うん。お姉ちゃんとお兄ちゃん、ありがとう」
「もう今度は迷子にならないようにな」
由真ちゃんはお母さんに連れられて去っていったわけだが、時々後ろを振り返る由真ちゃんに対して俺達は姿が見えなくなるまで手を振った。仲良くなった由真ちゃんと別れるのがちょっと名残惜しかった事は言うまでも無い。
ちなみにイルカショーにはやはり間に合わなかった俺達だったが、その一時間後に開催された次の回には無事参加する事ができたので問題無かったと言える。
それから水族館から出た後も俺達はしばらくシャイニングサンシティ内で買い物をしたり展望台に上がったりして夜になるまで楽しむのだった。
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