自称未来の妻なヤンデレ転校生に振り回された挙句、最終的に責任を取らされる話

水島紗鳥

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第2章 カップルみたいな事をしてるけどまだ付き合ってすらいないんだぜ

第9話 だって思いっきり俺とキスしてるだろ?

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 二人でパフェを完食してカフェを出た後、俺達はゲームセンターへと向かっていた。その理由はアリスがプリクラを撮りたいと言い始めたからだ。

「ところで何でアリスは急にプリクラを撮りたいって思ったんだ?」

「んー、特に深い理由は無いよ。急に撮りたくなったから拓馬を誘っただけ」

 俺からの質問にそう答えたアリスだったが何か隠しているような気がする。先程のカップル限定特大パフェとツーショット写真という前科もあるため警戒しておいた方が良いだろう。
 しばらくしてゲームセンターに到着した俺達はプリクラ機を目指して歩く。ここのゲームセンターには学校終わりなどに時々遊びに来ていたため、どこに何があるのか俺は大体分かっている。

「やっぱりこの辺りは相変わらず女子ばっかりだな」

「男子は基本的にプリクラ撮らないもんね」

「ああ、俺も今までプリクラなんて撮った事ないし」

 プリクラ機の周辺は制服姿の女子中学生や女子高生達の姿で溢れかえっていた。彼女達はアリスの姿を見た瞬間、ひそひそし始める。

「ねえ、あの人やばくない?」

「うん、ハーフっぽくてスタイル良いし何かのモデルとかかな?」

「めちゃくちゃ顔ちっちゃくて羨ましい」

 そんな感じの声があちらこちらから聞こえてくるが、アリスは顔色ひとつ変えずに平然としていた。多分こうやって注目される事には昔から慣れているのだろう。
 だがただ一緒にいるだけの俺までジロジロ見られる事に関しては本当に勘弁して欲しかった。言うまでもなく俺のようなぼっちは他人からの視線に弱いのだ。
 そう思いつつアリスとプリクラ機の中に入るわけだが、俺は今まで一度もプリクラを撮った事が無かったので何をどうすればいいのかはっきり言って全く分からない。
 だがプリクラ機の操作に関してはアリスが全部知っていたため特に問題は無かった。あっという間に撮影画面まで進み、撮影開始のカウントダウンが始まったので何か適当なポーズを取ろうとする。

「ねえ、拓馬。ちょっとだけこっち向いて」

「なんだ?」

 声をかけられたため言われた通りアリスの方を向いた次の瞬間、唇に暖かく柔らかい感触を感じた。なんと俺はアリスからキスされたようだ。

「!?」

 突然の事に驚く俺だったが、そのタイミングで撮影のカウントがゼロになってシャッター音が鳴り響く。そのまま五回ほど撮られたところで撮影は終了となり、アリスはゆっくりと俺から離れていく。

「おー、良い感じに撮れてる」

 画面に撮った画像の一覧が表示されたわけだが、そこには俺とアリスのキスシーンがしっかりと激写されていた。人生で初めてのプリクラがキスプリというのはかなり珍しいのでは無いだろうか。

「……ひょっとしてキスプリを撮りたくてて俺をプリクラに誘ってきたんじゃないだろうな?」

「せーかい、よく分かったね」

 わざわざプリクラに誘ってきた時点で何かしてきそうな予感はしていたが、それがキスプリを撮る事とは思いもしなかった。アリスからの誘いは基本的に全て裏があると思っておいた方が良いかもしれない。
 そんな事を考えながらご機嫌そうな様子のアリスがタッチペンを使ってプリクラに落書きしている姿を隣でぼんやり眺めていた。
 そして制限時間がやってきたため俺達はプリクラ機から出て、そのままゲームセンター内のベンチに座る。

「それでそのプリクラはどうするんだ?」

「えっ、勿論普通に貼るつもりだよ」

 そう言い終わったアリスは先程撮ったプリクラを手帳やスマホの背面など、自分の持ち物にペタペタと貼り始めた。

「おい、ちょっと待て。プリクラを貼るのは別にアリスの自由だと思うけど、せめてあんまり目立たないところにしてくれないか?」

「えっ、何で?」

「だって思いっきり俺とキスしてるだろ? 誰かに見られたらどう考えても絶対恥ずかしいじゃん」

 ただでさえ普通のプリクラでも恥ずかしいというのに、それがキスプリならばなおさらだ。するとアリスはニコニコしながら口を開く。

「心配しなくても私は別に全然恥ずかしく無いし、大丈夫だから。むしろ皆んなに見せつけていこよう」

「いやいや、アリスが問題なくても俺は全然大丈夫じゃないから」

 俺は思わずそうツッコミをいれた。しかしアリスが目立たないところに貼り直しをしてくれそうな気配は全く無い。
 どれだけ説得しても時間の無駄にしかならない事を悟った俺は諦める事にした。絶対クラスメイト達に見られる未来しか見えないが、その時はその時だ。
 もう既にアリスが転校初日にした自己紹介のせいで俺はクラスメイト達から好奇の目で見られているため、今更気にしても仕方がない。

「よし、終わった。じゃあそろそろ買い物に戻ろうか」

「……ああ、そうしよう」

 無駄に疲れてしまった俺は重い腰をあげてゆっくりとベンチから立ち上がった。ゲームセンターを出た俺達は再び家具と家電を探し始める。ショッピングモール内のあちこちを色々と見て回った結果、買い物は夜になるまで続いた。
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