1 / 1
音波系男子カトリ
しおりを挟む
草食系、肉食系、電波系などなど……俺がどの系統に属するかといえば、間違いなく音波系だ。
とある夕方、俺はコンビニに向かうと、俺と同年代と見られる高校生数人が入口の前に座っていた。
このままだとコンビニに入れない。正直邪魔だ。
俺は口を少し開いて、数秒動かない。
「うわっ! ウルセー!」
少年たちは突然耳を塞いで入り口を立ち去っていく。
俺は彼らがいなくなるのを見計らって、コンビニに入った。
コンビニから出ると、スマホからメールの着信音が。
メールを覗くと、母親から肉屋で買い物をしてほしいという指令だった。
俺は渋々肉屋に向かった。母親からのメールを覗きながら肉屋のおばちゃんに尋ねる。
『すみません、豚バラ肉300グラムください』
おばちゃんは全く反応していない。俺は一瞬首を傾げて、大きな声で尋ねた。
『豚バラ肉300グラムください!』
しかし、おばちゃんは何事もなかったのごとく佇んでいる。
俺が苛立ち始めた瞬間、左から女性の声がした。
「ちょっとおばちゃん、この少年が豚バラ肉300グラム買いたいってさ!」
「えっ?!」
女性の声に驚いたおばちゃんが慌てて、豚バラ肉を取り出す。
声の方向に振り向くと、セーラー服を着たツインテールの少女が立っていた。
『ありがとう』
「気持ち悪い」
俺が感謝の言葉を言ったら、少女がいきなり「気持ち悪い」と。
不思議なやり取りに俺は少し戸惑っている。
「あんた、蚊の鳴くような声で気持ち悪いんだけど」
俺は慌てて咳払いをする。
「ご、ごめん。これならいいかな?」
「え、なに? 声が変わった? 気持ち悪い!」
少女は突如走り去ってしまった。
俺は呆然とした。すると、肉を包み終えたおばちゃんが声をかけた。
「豚バラ肉300グラムね」
「ありがとうございます」
「えっ?!あんた、しゃべれたの?」
おばちゃんの目が見開いた。
「すみません、さっきは声が裏返りすぎちゃって。ははは」
適当に愛想笑いをして、俺は肉を受け取り、代金を支払い、そそくさと肉屋を後にした。
実は俺は声の周波数を自在に操ることができる。
これが音波系男子たる所以だ。
ちなみにコンビニや肉屋で発していたのは若者だけ聴くことのできる高周波『モスキート音』だ。
今までこの能力が役に立ったことはあまりない。
翌日の昼、俺は友人たちと教室で談笑していた。
「しょ~おん、りっき~」
友人の一人が最近流行っている耳栓のCMソングのモノマネをする。
「おい、あんまり似てないって。ははは」
「じゃ、カトリ、お前やってみろよ」
俺はCMソングを思い出しながら、声の周波数をチューニングする。
「しょ~おん、りっき~」
俺が歌うと、友人たちからどっと笑いが沸き起こった。
「ははは! カトリ、モノマネ下手すぎるよ!」
しまった! 俺は歌があまりうまくなかった……。
とある夕方、俺はコンビニに向かうと、俺と同年代と見られる高校生数人が入口の前に座っていた。
このままだとコンビニに入れない。正直邪魔だ。
俺は口を少し開いて、数秒動かない。
「うわっ! ウルセー!」
少年たちは突然耳を塞いで入り口を立ち去っていく。
俺は彼らがいなくなるのを見計らって、コンビニに入った。
コンビニから出ると、スマホからメールの着信音が。
メールを覗くと、母親から肉屋で買い物をしてほしいという指令だった。
俺は渋々肉屋に向かった。母親からのメールを覗きながら肉屋のおばちゃんに尋ねる。
『すみません、豚バラ肉300グラムください』
おばちゃんは全く反応していない。俺は一瞬首を傾げて、大きな声で尋ねた。
『豚バラ肉300グラムください!』
しかし、おばちゃんは何事もなかったのごとく佇んでいる。
俺が苛立ち始めた瞬間、左から女性の声がした。
「ちょっとおばちゃん、この少年が豚バラ肉300グラム買いたいってさ!」
「えっ?!」
女性の声に驚いたおばちゃんが慌てて、豚バラ肉を取り出す。
声の方向に振り向くと、セーラー服を着たツインテールの少女が立っていた。
『ありがとう』
「気持ち悪い」
俺が感謝の言葉を言ったら、少女がいきなり「気持ち悪い」と。
不思議なやり取りに俺は少し戸惑っている。
「あんた、蚊の鳴くような声で気持ち悪いんだけど」
俺は慌てて咳払いをする。
「ご、ごめん。これならいいかな?」
「え、なに? 声が変わった? 気持ち悪い!」
少女は突如走り去ってしまった。
俺は呆然とした。すると、肉を包み終えたおばちゃんが声をかけた。
「豚バラ肉300グラムね」
「ありがとうございます」
「えっ?!あんた、しゃべれたの?」
おばちゃんの目が見開いた。
「すみません、さっきは声が裏返りすぎちゃって。ははは」
適当に愛想笑いをして、俺は肉を受け取り、代金を支払い、そそくさと肉屋を後にした。
実は俺は声の周波数を自在に操ることができる。
これが音波系男子たる所以だ。
ちなみにコンビニや肉屋で発していたのは若者だけ聴くことのできる高周波『モスキート音』だ。
今までこの能力が役に立ったことはあまりない。
翌日の昼、俺は友人たちと教室で談笑していた。
「しょ~おん、りっき~」
友人の一人が最近流行っている耳栓のCMソングのモノマネをする。
「おい、あんまり似てないって。ははは」
「じゃ、カトリ、お前やってみろよ」
俺はCMソングを思い出しながら、声の周波数をチューニングする。
「しょ~おん、りっき~」
俺が歌うと、友人たちからどっと笑いが沸き起こった。
「ははは! カトリ、モノマネ下手すぎるよ!」
しまった! 俺は歌があまりうまくなかった……。
0
お気に入りに追加
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
わたしの生きる道
hosimure
青春
高校二年にして、すでにわたしの進路は決めていた。
特技の編み物を活かして、生活していこうと思っていた。
だけど…どこか納得いかない自分がいる。
本当に特技を活かして生きていくのが、わたしの人生なんだろうか?
恋微熱
冴月希衣@商業BL販売中
青春
「俺が美味しくしてあげる」
あなただけに、その甘い熱に蕩けたいの。
【冬の激甘チョコ恋物語】
☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆.。.*・☆
『キミとふたり、ときはの恋。』 『花霞にたゆたう君に』シリーズの第二作です。
『あなただけ』の続編になりますが、こちらだけでもお読みいただけます。
◆本文、画像の無断転載禁止◆
No reproduction or republication without written permission.

美術部ってさ!
久世 かやの
青春
美術部の話って、あまりない気がしたので書いてみました(^^)
各章、独立した話ですので、章ごとに短編的にお楽しみ頂けます。
※Berry's Cafe・小説家になろうにて同時掲載しています。
鷹鷲高校執事科
三石成
青春
経済社会が崩壊した後に、貴族制度が生まれた近未来。
東京都内に広大な敷地を持つ全寮制の鷹鷲高校には、貴族の子息が所属する帝王科と、そんな貴族に仕える、優秀な執事を育成するための執事科が設立されている。
物語の中心となるのは、鷹鷲高校男子部の三年生。
各々に悩みや望みを抱えた彼らは、高校三年生という貴重な一年間で、学校の行事や事件を通して、生涯の主人と執事を見つけていく。
表紙イラスト:燈実 黙(@off_the_lamp)

空白
成瀬 慶
青春
過去に大きな汚点を抱えている俺。
それは、
他人からしてみたら
たいしたこともない事なのかもしれない。
バカらしいこと。
しかし、
あの頃の人俺は逃げた。
遠く遠くへ逃げて行って
辿り着いた先には、
今という普通の人生につながっていた。
ある日、ポストに届いた結婚式の招待状。
それから俺は、あの日消してしまった
二度と会うことは無いと決めていた過去を想う。


シチュボの台本詰め合わせ(男性用)
勇射 支夢
青春
自分で撮るために作った台本をせっかくなのでここで公開します。
自作発言しない限りは、ご自由に使ってくれて構いません。
使うときに一言くれると、俺が超喜びます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる