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第2章
第45話 つがい2
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腹の底から湧き上がるような悪心で目が覚めた。
「うっ……」
目の前にはいつもの光景が滲んで広がり、右隣に誰かの荒い呼吸が聞こえる。
「はあ…はあ…はあ…はあ…」
「佐野っ!?大丈夫か?」
俺のベッドに佐野も一緒に横になっている。身体を揺すっても、いつもの明るい声が聞こえない。
佐野は目を閉じて横たわり、息苦しそうに何とか呼吸をしている。
「佐野、佐野っ!」
強く揺すると、自分の体温が上昇した。この火照りは発情期のそれだ。佐野の試合観戦後、予定よりも早く発情期が始まってしまったのを思い出した。
重い風邪にでもかかってしまったかのように、身体が重い。少しずつ懸命に起き上がり、近くに置いてあるバッグに手を伸ばす。
「もう……少しっ……んっ!」
既の所でベッドから落ちるところだったが、何とかバッグを掴んだ。中から抑制剤と水を出して、薬を一気に飲み干す。
高校生のときと同じように、佐野が発情した俺を運んでくれたようだ。アリーナからここまで、車を運転してくれたのだろう。
佐野はいつも俺を救ってくれる。それなのに、今俺は自身のフェロモンで佐野を苦しめている。佐野は我慢してくれたのだろう、固く握る手の平から血が滲んで見えた。
「佐野、申し訳ない。もう薬飲んだから……」
もう一度、佐野の顔を撫でながら話しかけたがやはり返事がない。
抑制剤を飲んで30分ほど経っただろうか。もう薬が効いてきても良いはずなのに、身体が蒸されたように熱い。血流が非常に速く、まるで何度もサウナに入ったかのように身体が熱を持っている。
「……痛っ!」
首筋を触ると、その部分が主張するように痛みを放つ。先ほどからずっと夢であって欲しいと思っていた事柄が、そうではなかったという絶望でどっと汗が出た。ルークに首筋を噛まれたのは紛れもない事実のようだ。
ルークと俺は番になってしまったのだろうか。いや、もし番が成立していたら、ルーク以外の人に発情しなくなるはずだ。隣で苦しむ佐野に申し訳ないと思いながらも、安堵する。
それにしても、ルークはなぜあんなことを…?
「はあ…はあ…はあ…」
ぐったりとした佐野の姿が、俺の心を締め付ける。そうだ、今はルークのことを考えている場合ではない。まずこの発情を止めないと、佐野が苦しみから解放されない。
だが、発情を止めようと意識すればするほど、俺の屹立はぐんぐん成長する。後ろの窄まりは、何かを欲するようによだれを垂らし続けている。
薬が効かないなら、発情を止める方法は1つしかない。
ベルトを外し、佐野の高まりを顕にする。そこには、疲れ果ててぐったりとした欲望があった。それでも、見つけると同時に俺の窄まりからドクドクと愛液が滴り落ちた。
——佐野の欲望に支配されたい
俺の身体は奥底から湧き上がる性欲で満ち満ちて、体温がさらに上昇した。しんと冷え切る部屋で、俺たちだけが熱く燃えている。
——ジュルッ、ジュッ、ジュッ、ジュッ、ジュッ、ジュッ、ジュッ……
「んっ……」
口に含んで転がすと、舌先を押すように少しずつ佐野の意識が戻ってくる。上顎を押し上げ、ぬるっとした愛液が口腔を濡らす。
「ふっあぁっ……」
佐野の高まりを咥えているだけで、後ろの窄まりが熟していく。佐野を求める後ろを顕にすると、部屋の冷気が刺激となって愛液が溢れ出る。
自身の指を入れると、ジュクッと卑猥な音をさせて柔らかく広がった。身体はとうの昔から準備万端だったようだ。
「うっ…んっ…」
いつもの卑猥な玩具を使う要領で、窄まりをほぐす。とはいえ、すでに十分に柔らかく、いきり勃ち始めた佐野の欲望は問題なく入るだろう。
まだ目を覚さない佐野に跨り、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「あぁっ……あっ!」
濡れた窄まりは佐野の高まり全てを飲み込み、咥え込んだ。接合部がヒリヒリと熱く、脳を溶かすほどの快感が全身を襲う。
発情期に感じる事柄全てが、通常の倍、いやそれ以上となる。佐野を待ち望んでいた身体は欣快に堪えず、愛液を流し続けている。
「くっ…大きすぎ、て…動けなっ……」
佐野の高まりが腹部を圧迫して、吐きそうなくらいの快感に全身が圧倒されている。少しでも動いたらイッてしまいそうで、静かに佐野の欲望を感じ入る。そうしている間に、佐野が目を覚ましたようだ。
「うっ…あぁ……すごい。何この最高の眺めと快感は」
「ひゃっあっ!」
佐野の腰が臀部を突き上げ、強い快感が内臓にまで到達する。佐野はその高まりを深く深くねじ込む。バシャッ、バシャッと、腰を打ち付ける音が、脳を痺れさせる。
「つっ、強っ…やっ、あ゛!ぁ゛!ぁ゛!」
「りょうが、自ら俺のを入れてくれるなんて……なんか、元気出てきた」
佐野の高まりを飲み込んだまま、ドサっとベッドに倒れ込んだ。直後、臀部に佐野の衝動を強く感じる。パンパンと、何度も打ち込まれる高まりは、中を焼き尽くすほどに熱い。
「ひゃっ、あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!」
中を掻き乱す高まりが、何度も出入りする。その度に、川の水が溢れるように愛液が流れ出ていく。
「りょうがこんなうれしいことしてくれるなんて……もしかしてこれを最後に、また俺の前からいなくなるつもり?」
「そ、それは……っあぁ!」
佐野の欲望が深く強くねじ込まれ、その度に全身が揺さぶられる。揺れる視界に酔っているのか、それとも快感に支配されているのか。いや、佐野に支配されているんだ。
「やっぱり、そうだと思った。りょうのことだから、俺に迷惑かけると思って、俺から離れようとしてるんでしょ」
「あっ……んっ…」
窄まりに入ってくる佐野が、髪の1本1本にまで快感を運ぶ。発情期のセックスは、もっと刺激的なものかと思っていたが、想像以上に甘美だ。
「また人前で発情しちゃったもんね。今頃ネットで騒がれてるかも」
『ネットで騒がれてる』という言葉に、一気に現実に引き戻された気がした。佐野の左脇腹の傷痕に目が行ってしまう。
「……嫌だ。もう、あんな思いは2度と…ひゃっぁ!」
佐野の熱い高まりが、さらに大きくなった。もう何をしても抜くことができないように、腹部を内側から強く突き上げてくる。
「……ここへ来るまでずっと考えてた。俺たちはやっぱり、別れた方が良いのかもしれないって」
「……」
俺はなんて愚かなんだろう。俺がいくら佐野から離れようとしても、佐野は俺を絶対に離さないだろうと自惚れ、期待していた。だが、そうではなかった。いきなり谷底に落とされたような、恐怖に襲われた。
「ルークがりょうの首を噛んだのは、バスケが関係していると思う。仲間だけど、争わないといけないときもあるから」
佐野は突き上げていた腰を緩めて、互いの結合部を見下ろしている。その表情は、薄暗い部屋の中ではよく見えないが、いつもの明るさがないことだけは確かだ。
「りょうが辛い目に遭うのは、いつも俺のせいだ」
「そんなことっ……あぁっ!」
2人の間に少し隙間ができたと思ったら、一瞬で距離が縮まって、佐野の高まりから熱が伝わってきた。
「噛まれて痛かったよね?本当にごめんね」
首筋を撫でるりょうの手は、大きくて温かい。何でも掴めそうな佐野の手が、俺を掴んでいる。俺のことなんて放っとけばいいのに…だって、もう別れるんだろう?
そう思う一方で、やはりうれしくて堪らない。
「俺たちは、別れるべきなんだと思う」
「……」
俺と佐野は、別れる運命だったんだ。深い谷底に落ちて、真っ暗で、もう2度と地上に這い上がることができない。涙が滲んで、耳にどんどん溜まっていく。
「りょう、泣いてるの?」
「……うっ…ん……俺の方から離れようとしていたのに、なぜか今は心が抉られるような想いだ。佐野、それはもう決定事項なのだろうか?」
「うん、そうだよ。俺とりょうは別れるんだ」
「…………もう一度、考え直してもらうことはできないだろうか?」
「それってつまり、りょうは俺と別れたくないってこと?」
「…………ああ」
佐野と俺は、少し隙間を開けて繋がっている。佐野は自身の腰を引いて、その繋がりを断ち切った。佐野の意思は変わらないようだ。
「りょうは俺といると、また辛い思いをするかもしれないんだよ?それでも俺と一緒にいたいの?」
佐野はベッドに両手をついて、横になっている俺をじっと見下ろしている。腕や肩の膨らみが、高校生のときにはなかった色気を醸し出している。だがその眸子は、あのときのままだ。
「ああ、一緒にいたい」
「それはなんで?」
「それは……佐野と離れたくないからだ」
「なんで俺と離れたくないの?」
「……佐野のことが好きだからだ」
「下の名前でちゃんと言ってくれないと、信じられないな」
「名津のことが、好きだか…んっ!」
口の動きを止めるように、名津の唇がふたをした。それと同時に、閉じ始めていた内壁を、名津の高まりが再びこじ開けた。
「あっ!あっ!激しっ……!」
「やっと……ちゃんと、好きって言ってくれた」
何度も侵入してくる名津の高まりは、内壁をえぐるように右往左往激しく動き回る。
「やっあ゛!もっ、もう、ダメ……イッ、イグッ!」
自身の屹立から白濁液が飛び散り、顔面を汚した。へばりついて、ドロっと垂れる感覚がある。
「先にイッちゃ駄目だよ」
名津は、俺の頬に付着した白い欲望をすくい、口元へ運んだ。その動作を見ているだけで、窄まりの奥からどっと愛液があふれ出した。
「りょうかわいすぎる……大好き」
自身のほとばしりと涙が混ざって、顔面が大変なことになっているはずだが、名津は愛おしそうに見つめてくる。さらに名津は、その顔面に舌を這わせてきた。
「それは、別れなくても良いということだろうか……?」
「りょうが俺から離れようとしてたから、いじわるなこと言っただけ。こんなかわいい人、俺が手放すわけないよ」
「ふっ……あぁっ……」
顔を這っていた舌が、口腔に侵入してくる。思わず声が漏れ出てしまうほどの、甘い口付けだ。
「……だったら、番になって名津の本気を見せて欲しい」
俺の口から『番』という言葉が出てきた瞬間、名津は息を呑んだ。
「うっ……」
目の前にはいつもの光景が滲んで広がり、右隣に誰かの荒い呼吸が聞こえる。
「はあ…はあ…はあ…はあ…」
「佐野っ!?大丈夫か?」
俺のベッドに佐野も一緒に横になっている。身体を揺すっても、いつもの明るい声が聞こえない。
佐野は目を閉じて横たわり、息苦しそうに何とか呼吸をしている。
「佐野、佐野っ!」
強く揺すると、自分の体温が上昇した。この火照りは発情期のそれだ。佐野の試合観戦後、予定よりも早く発情期が始まってしまったのを思い出した。
重い風邪にでもかかってしまったかのように、身体が重い。少しずつ懸命に起き上がり、近くに置いてあるバッグに手を伸ばす。
「もう……少しっ……んっ!」
既の所でベッドから落ちるところだったが、何とかバッグを掴んだ。中から抑制剤と水を出して、薬を一気に飲み干す。
高校生のときと同じように、佐野が発情した俺を運んでくれたようだ。アリーナからここまで、車を運転してくれたのだろう。
佐野はいつも俺を救ってくれる。それなのに、今俺は自身のフェロモンで佐野を苦しめている。佐野は我慢してくれたのだろう、固く握る手の平から血が滲んで見えた。
「佐野、申し訳ない。もう薬飲んだから……」
もう一度、佐野の顔を撫でながら話しかけたがやはり返事がない。
抑制剤を飲んで30分ほど経っただろうか。もう薬が効いてきても良いはずなのに、身体が蒸されたように熱い。血流が非常に速く、まるで何度もサウナに入ったかのように身体が熱を持っている。
「……痛っ!」
首筋を触ると、その部分が主張するように痛みを放つ。先ほどからずっと夢であって欲しいと思っていた事柄が、そうではなかったという絶望でどっと汗が出た。ルークに首筋を噛まれたのは紛れもない事実のようだ。
ルークと俺は番になってしまったのだろうか。いや、もし番が成立していたら、ルーク以外の人に発情しなくなるはずだ。隣で苦しむ佐野に申し訳ないと思いながらも、安堵する。
それにしても、ルークはなぜあんなことを…?
「はあ…はあ…はあ…」
ぐったりとした佐野の姿が、俺の心を締め付ける。そうだ、今はルークのことを考えている場合ではない。まずこの発情を止めないと、佐野が苦しみから解放されない。
だが、発情を止めようと意識すればするほど、俺の屹立はぐんぐん成長する。後ろの窄まりは、何かを欲するようによだれを垂らし続けている。
薬が効かないなら、発情を止める方法は1つしかない。
ベルトを外し、佐野の高まりを顕にする。そこには、疲れ果ててぐったりとした欲望があった。それでも、見つけると同時に俺の窄まりからドクドクと愛液が滴り落ちた。
——佐野の欲望に支配されたい
俺の身体は奥底から湧き上がる性欲で満ち満ちて、体温がさらに上昇した。しんと冷え切る部屋で、俺たちだけが熱く燃えている。
——ジュルッ、ジュッ、ジュッ、ジュッ、ジュッ、ジュッ、ジュッ……
「んっ……」
口に含んで転がすと、舌先を押すように少しずつ佐野の意識が戻ってくる。上顎を押し上げ、ぬるっとした愛液が口腔を濡らす。
「ふっあぁっ……」
佐野の高まりを咥えているだけで、後ろの窄まりが熟していく。佐野を求める後ろを顕にすると、部屋の冷気が刺激となって愛液が溢れ出る。
自身の指を入れると、ジュクッと卑猥な音をさせて柔らかく広がった。身体はとうの昔から準備万端だったようだ。
「うっ…んっ…」
いつもの卑猥な玩具を使う要領で、窄まりをほぐす。とはいえ、すでに十分に柔らかく、いきり勃ち始めた佐野の欲望は問題なく入るだろう。
まだ目を覚さない佐野に跨り、ゆっくりと腰を下ろしていく。
「あぁっ……あっ!」
濡れた窄まりは佐野の高まり全てを飲み込み、咥え込んだ。接合部がヒリヒリと熱く、脳を溶かすほどの快感が全身を襲う。
発情期に感じる事柄全てが、通常の倍、いやそれ以上となる。佐野を待ち望んでいた身体は欣快に堪えず、愛液を流し続けている。
「くっ…大きすぎ、て…動けなっ……」
佐野の高まりが腹部を圧迫して、吐きそうなくらいの快感に全身が圧倒されている。少しでも動いたらイッてしまいそうで、静かに佐野の欲望を感じ入る。そうしている間に、佐野が目を覚ましたようだ。
「うっ…あぁ……すごい。何この最高の眺めと快感は」
「ひゃっあっ!」
佐野の腰が臀部を突き上げ、強い快感が内臓にまで到達する。佐野はその高まりを深く深くねじ込む。バシャッ、バシャッと、腰を打ち付ける音が、脳を痺れさせる。
「つっ、強っ…やっ、あ゛!ぁ゛!ぁ゛!」
「りょうが、自ら俺のを入れてくれるなんて……なんか、元気出てきた」
佐野の高まりを飲み込んだまま、ドサっとベッドに倒れ込んだ。直後、臀部に佐野の衝動を強く感じる。パンパンと、何度も打ち込まれる高まりは、中を焼き尽くすほどに熱い。
「ひゃっ、あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛っ!」
中を掻き乱す高まりが、何度も出入りする。その度に、川の水が溢れるように愛液が流れ出ていく。
「りょうがこんなうれしいことしてくれるなんて……もしかしてこれを最後に、また俺の前からいなくなるつもり?」
「そ、それは……っあぁ!」
佐野の欲望が深く強くねじ込まれ、その度に全身が揺さぶられる。揺れる視界に酔っているのか、それとも快感に支配されているのか。いや、佐野に支配されているんだ。
「やっぱり、そうだと思った。りょうのことだから、俺に迷惑かけると思って、俺から離れようとしてるんでしょ」
「あっ……んっ…」
窄まりに入ってくる佐野が、髪の1本1本にまで快感を運ぶ。発情期のセックスは、もっと刺激的なものかと思っていたが、想像以上に甘美だ。
「また人前で発情しちゃったもんね。今頃ネットで騒がれてるかも」
『ネットで騒がれてる』という言葉に、一気に現実に引き戻された気がした。佐野の左脇腹の傷痕に目が行ってしまう。
「……嫌だ。もう、あんな思いは2度と…ひゃっぁ!」
佐野の熱い高まりが、さらに大きくなった。もう何をしても抜くことができないように、腹部を内側から強く突き上げてくる。
「……ここへ来るまでずっと考えてた。俺たちはやっぱり、別れた方が良いのかもしれないって」
「……」
俺はなんて愚かなんだろう。俺がいくら佐野から離れようとしても、佐野は俺を絶対に離さないだろうと自惚れ、期待していた。だが、そうではなかった。いきなり谷底に落とされたような、恐怖に襲われた。
「ルークがりょうの首を噛んだのは、バスケが関係していると思う。仲間だけど、争わないといけないときもあるから」
佐野は突き上げていた腰を緩めて、互いの結合部を見下ろしている。その表情は、薄暗い部屋の中ではよく見えないが、いつもの明るさがないことだけは確かだ。
「りょうが辛い目に遭うのは、いつも俺のせいだ」
「そんなことっ……あぁっ!」
2人の間に少し隙間ができたと思ったら、一瞬で距離が縮まって、佐野の高まりから熱が伝わってきた。
「噛まれて痛かったよね?本当にごめんね」
首筋を撫でるりょうの手は、大きくて温かい。何でも掴めそうな佐野の手が、俺を掴んでいる。俺のことなんて放っとけばいいのに…だって、もう別れるんだろう?
そう思う一方で、やはりうれしくて堪らない。
「俺たちは、別れるべきなんだと思う」
「……」
俺と佐野は、別れる運命だったんだ。深い谷底に落ちて、真っ暗で、もう2度と地上に這い上がることができない。涙が滲んで、耳にどんどん溜まっていく。
「りょう、泣いてるの?」
「……うっ…ん……俺の方から離れようとしていたのに、なぜか今は心が抉られるような想いだ。佐野、それはもう決定事項なのだろうか?」
「うん、そうだよ。俺とりょうは別れるんだ」
「…………もう一度、考え直してもらうことはできないだろうか?」
「それってつまり、りょうは俺と別れたくないってこと?」
「…………ああ」
佐野と俺は、少し隙間を開けて繋がっている。佐野は自身の腰を引いて、その繋がりを断ち切った。佐野の意思は変わらないようだ。
「りょうは俺といると、また辛い思いをするかもしれないんだよ?それでも俺と一緒にいたいの?」
佐野はベッドに両手をついて、横になっている俺をじっと見下ろしている。腕や肩の膨らみが、高校生のときにはなかった色気を醸し出している。だがその眸子は、あのときのままだ。
「ああ、一緒にいたい」
「それはなんで?」
「それは……佐野と離れたくないからだ」
「なんで俺と離れたくないの?」
「……佐野のことが好きだからだ」
「下の名前でちゃんと言ってくれないと、信じられないな」
「名津のことが、好きだか…んっ!」
口の動きを止めるように、名津の唇がふたをした。それと同時に、閉じ始めていた内壁を、名津の高まりが再びこじ開けた。
「あっ!あっ!激しっ……!」
「やっと……ちゃんと、好きって言ってくれた」
何度も侵入してくる名津の高まりは、内壁をえぐるように右往左往激しく動き回る。
「やっあ゛!もっ、もう、ダメ……イッ、イグッ!」
自身の屹立から白濁液が飛び散り、顔面を汚した。へばりついて、ドロっと垂れる感覚がある。
「先にイッちゃ駄目だよ」
名津は、俺の頬に付着した白い欲望をすくい、口元へ運んだ。その動作を見ているだけで、窄まりの奥からどっと愛液があふれ出した。
「りょうかわいすぎる……大好き」
自身のほとばしりと涙が混ざって、顔面が大変なことになっているはずだが、名津は愛おしそうに見つめてくる。さらに名津は、その顔面に舌を這わせてきた。
「それは、別れなくても良いということだろうか……?」
「りょうが俺から離れようとしてたから、いじわるなこと言っただけ。こんなかわいい人、俺が手放すわけないよ」
「ふっ……あぁっ……」
顔を這っていた舌が、口腔に侵入してくる。思わず声が漏れ出てしまうほどの、甘い口付けだ。
「……だったら、番になって名津の本気を見せて欲しい」
俺の口から『番』という言葉が出てきた瞬間、名津は息を呑んだ。
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