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第2章
第44話 【名津視点】最高で最悪な1日
しおりを挟む向かい合うように座ったままの俺たち――俺はまたユンファ様に口付け、その甘い舌を舐めて、絡めとってやりながら。
ユンファ様の首元を覆っていた白い布、彼のうなじにある紐をほどき、緩めて――すると案外容易く、はらりとそれは、取り払うことができた。
そうして俺が脱がせるなりユンファ様は、は…と唇を自ら離し――その顔を伏せ気味に…それでいて嬉しそうに頬を染め、微笑んでいる。
「…そういえば…先ほど僕は、清いのは唇だけだなんだと言いましたが…ソンジュ様、実はまだ…――僕の首にも、ジャスル様の唇は触れておりません…、先ほどは、首布をしたままでしたから……」
「…おぉそうですか…、それは何より嬉しく思います。――ふ、では…失礼いたします、ユンファ様……」
ユンファ様はどこか緊張したように「はい…」と答えながら、その首を横へ反らして俺に差し出してくる。
俺はユンファ様の、まだ踏み荒らされていない新雪…その白く、流れるような美しい首筋を上からそっと鎖骨まで、つー、と指先で掠め撫でた。…意外にもしっかりと喉仏が、孤島のように浮かんでいるのが何とも官能的だ。
ひく…とわずかな反応を示した彼に、俺はその人の首筋へ顔を寄せ――口付ける。
「…ふ、…ん…っ♡」
ふにゅりと俺の唇が触れれば、ゾクゾク、と先ほどより反応を強め、ユンファ様は俺の肩をきゅうと掴んでくる。…甘く小さな声をもらしたユンファ様、カタカタと震えているその手、ぬくもりの濃いなめらかな白肌は粟立ち…――もう片手は自分の口元を押さえた彼、
「あっ、なっなんて声を…! ごめんなさい、く、擽ったくて……」
「…ふ…本当にそれだけですか、ユンファ様…? とても艶やかで、可愛らしい声でしたよ…。どうか堪えず、あるがままに声を出してくださいませ……」
どうせもう、誰ぞに聞かれたところで今更よ、ならば思うままにつがい合うほうがよい…俺はユンファ様の首筋にそう囁き――それから、舌を出してつぅと擽ればビクリ、ひっとよりあらわな反応を見せるユンファ様。
なんと初々しく、可愛らしい反応か…――。
つー…と舌でなぞり、軽く吸い付き、ペロペロと舐める…甘く、芳醇な桃の香も濃い――桃の味もまた、濃い。
「…ん…♡ …んぅ…♡ は、あ、くっ擽ったい…、ぁぁ…♡」
ひくん、……ひくん、と小さく跳ねるユンファ様の体は、俺を誘う。…擽ったい、などと言いながら甘い声を出しているこの人は、未知の快感にそう言っているだけなのだ。
「…ぅぅ…♡ そ、ソンジュ様…ぁ……」
ちろちろとその甘い肌を舐め、ちゅうと軽く吸い付きながら――するりと彼の衿元を撫でるよう割り、ユンファ様の肩のほうへ下げてゆく。
「…ソンジュ様…、あの……」
「…綺麗だ……」
あらわになった白い鎖骨は、くっきりと浮き――首の筋に繋がって、華奢な影を落としている。…というのもユンファ様は、先ほど思い切って自分の胸元を俺に見せ付けてきたわり、…胸板の中央まで衿元を掴んで引き上げ、胸を隠し、俯かせた顔を真っ赤にしているのだ。
しかし、その人の黒髪がさらりとかかる白い肩は、すっかり晒され――今曲げられている肘まで、その薄桃色の着物も、中の襦袢も下ろされている。
「…はは、むしろ…そのほうが艶やかでございますよ、ユンファ様……」
「……? それは、どういう…」
すかさずその鎖骨にちゅっと吸い付けば、ぁ、と息を詰めたユンファ様。
ならばと俺は、ユンファ様の帯を解いてゆく。…幸い、俺にとってこの装束は勝手知ったるという構造であり、俺がこの帯を解いてゆくのは、それこそ鎖骨を舐めながらでもできるほど、あまりにも簡単である。
――甘く香る芳醇な桃の熟れた匂い…若桃に、かぷりと甘噛み。…つまり、その鎖骨にやわく歯を立てると、ぴくんっとユンファ様の体が小さく跳ねる。
「…ッ♡ ソンジュ、様……」
そのあとは、鎖骨のくぼみを舌で擽る。…ユンファ様の、自分の着物を握ったその手にきゅうと、力が入る。
するりと、かかる髪を避けるように撫で付けたその人の肩――俺の手のひらは、ユンファ様の意外にも筋肉質な、それでいて細い二の腕をなめらかに、滑りゆく。
「…はぁぁ……♡ ソンジュ様、僕…幸せでございます…」
すると、それだけでふるふるとしたユンファ様の体がじんわりと熱くなり、内側からしっとりと湿ってくる――。
「……俺も、愛しのユンファ様に触れることが許され、今、至上の喜びを感じております……」
「……、ふふ…」
斜へ伏せられた、その端正な顔は頬が紅潮し、はにかんでほのかに笑う。――着物の衿元を持ち上げて胸元を隠し、やや竦められた白い肩、それによってよりくっきりと浮かんだ妖艶な鎖骨と…上部のみ覗く、平たく雪のように白い胸板。…艶美な黒髪がさらさら落ちて、いくらかまたその白い肩に、胸板にかかる。
可憐でありながら、何とも妖艶な人だ――男として、貪欲となるほどに。
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