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第2章
第42話 信じること
しおりを挟む オフィスを後にした二人は外に出る為、バーカウンター前を横切っていた。
「あら。ももちゃんじゃないの」
すると突然の色気のある声に足を止めた二人。その方を向いてみると、そこには栗色ウェーブロングのグラマーな女性が立っていた。色気満点な女性はステージで踊っていた人たちのような衣装を身に纏っている。
「マリさん。お久しぶりです」
女性が誰か分かると桃は柔らかな笑みを浮かべた。
「ほんとよ。ももちゃん全然遊びに来てくれないんだもん。あたし寂しいわぁ」
マリと呼ばれた女性は甘え声を出しながら自然と桃の腕に抱き付く。声のトーンや目線などを見れば彼女が甘え上手だということは一目瞭然。
だがそんなマリの行動を近くで見ていた蘭玲は少し不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「すみません。このお店は場所が場所ですからね。外にあったらもっと来てたんですがね」
しかし腕に抱き付いてきたマリに対しいつも通りな桃。
「えー。ほんとに? また適当に流してるだけじゃないの?」
冗談半分の訝しげな視線を向けるマリだったが、桃は安心させるように笑みを浮かべて見せた。
「そんなことありませんよ」
「じゃあぁ。今度の休みに買い物付き合ってくれる?」
「お店じゃないんですか?」
「お店は他の子に会うためにも来てくれるでしょ? 折角、お願いきいてくれそうだったから。ねっ! いーでしょ?」
「仕事がなければですけど」
「流石ももちゃん」
嬉々とした声を出したマリは、桃の頬に軽くキスをした。
「じゃ、あたしの連絡待っててね」
そして腕から離れると手を振りながら仕事へと戻って行った。
「相変わらずですね。――さて帰りましょうか」
そんなまりを見送った桃は蘭玲へ視線を向けた。
だが蘭玲は依然と頬を膨らませ不機嫌そうな表情。
「どうしましたか?」
「あの人、桃さんとどういう関係なんですか?」
その声と表情はさながら浮気疑惑を問い詰める彼女。
「ただの友人ですよ」
「でも友達にしては距離が近かったですけど……」
「彼女は昔からああいうのが上手いですから。それも彼女の魅力のひとつですね。さぁ、今日のところはもう戻りましょうか」
本当の事をたださらっと話した桃だったが、傍から見ればどこか話を早く切り上げようとしているようにも見えた。だが蘭玲がそう感じたかどうかは定かではない。
そして【Arodi】を出た桃と蘭玲は事務所へ戻る為、エリアLの出口へと足を進めようとした。
だがそんな二人の行く手を阻む男が一人、現れた。
「てめーさっきはよくもやってくれたな」
それは先程、店内で桃が煽ったあの男だった。
「あなたですか。先ほどは申し訳ありませんでした」
少し感じていた心咎めに従い頭を会釈程度に下げ謝罪する。
「随分と素直じゃねーか。だが今更謝ったところでおせぇんだよ」
「そうですか。困りましたねぇ」
その場で何やら考え始めることほんの数秒。
「――蘭玲、少しこれを持っていてください」
すると桃は刀を蘭玲に手渡した。
「では……」
そして数歩前に歩き男と対峙した。
「少しだけお相手してさしあげましょう。それで気が治まるのならば。私にも非はありましたので」
「上等だ! さっさと病院送りしてやらぁ」
自信に満ち溢れた様子の男は指の骨をポキポキと鳴らし首を回した。
「骨の四~五本は覚悟するんだなっ!」
そう叫びながら拳を構え一気に殴りかかってくるが、容易く片手で受け止められるてしまう。直後、男はもう片方の拳で放せと言わんばかりに襲い掛かった。
だが桃は冷静に拳を放すと殴りかかってきている方の手首を横から叩くように掴み拳の軌道をずらしながら腕を捕らえる。そして捕らえた腕を内側回りで捻りながらそのまま後ろに持っていき、最後は背中へとくっつけてしまった。その動きはさながら熟練された逮捕術。男は何とか逃れようとするがガッチリと押さえられた腕はビクともしない。
そしてこのまま決着かと思われたその時。
「今だやれ!」
男の叫び声の後、桃の後ろから顎髭を生やしパーカーフードを被った男が鉄バットを握り締め襲い掛かってきた。バットは桃の顔面を目掛け一直線に振り下ろされる。
だがそのバットが顔から流血をさせることは叶わず、その目前で大きな手に受け止められた。
「店前で困ります」
バットを受け止めたのはオークのガードマン。
「申し訳ありません」
ガードマンはバットを取り上げると顎髭の男を見ながら片手で握り潰して見せた。
「こうなりたくなければさっさと失せろ」
「ひっ!」
一瞬にして恐怖に染められた顎髭の男は情けない声を出すとすぐさま逃走。
「おい! 待て!」
腕を背に押さえつけられ動きを封じられていた男が焦ったような声を上げるが顎髭の男には全く届かなかった。
「あなたもこれで満足ですか?」
そう言うと桃は男を解放した。
「くそっ!」
男は最後に舌打ちをすると腕を押さえながら逃げ去った。
「申し訳ありません、グラルドさん。あなたの仕事を増やしてしまい」
「次から気をつけていただければ大丈夫です」
「えぇ、もちろんです。これはあなたへの迷惑料ということで取っておいてください」
桃はポケットからお札を数枚取り出すとグラルドと呼んだオークのガードマンの胸ポケットに収めた。
「ではお仕事頑張って下さいね」
「またのお越しをお待ちしております」
その返事としてグラルドの肩を軽く叩いた。
そして蘭玲の元に戻り刀を受け取ると二人はAOFの事務所まで戻った。
「あら。ももちゃんじゃないの」
すると突然の色気のある声に足を止めた二人。その方を向いてみると、そこには栗色ウェーブロングのグラマーな女性が立っていた。色気満点な女性はステージで踊っていた人たちのような衣装を身に纏っている。
「マリさん。お久しぶりです」
女性が誰か分かると桃は柔らかな笑みを浮かべた。
「ほんとよ。ももちゃん全然遊びに来てくれないんだもん。あたし寂しいわぁ」
マリと呼ばれた女性は甘え声を出しながら自然と桃の腕に抱き付く。声のトーンや目線などを見れば彼女が甘え上手だということは一目瞭然。
だがそんなマリの行動を近くで見ていた蘭玲は少し不機嫌そうな表情を浮かべていた。
「すみません。このお店は場所が場所ですからね。外にあったらもっと来てたんですがね」
しかし腕に抱き付いてきたマリに対しいつも通りな桃。
「えー。ほんとに? また適当に流してるだけじゃないの?」
冗談半分の訝しげな視線を向けるマリだったが、桃は安心させるように笑みを浮かべて見せた。
「そんなことありませんよ」
「じゃあぁ。今度の休みに買い物付き合ってくれる?」
「お店じゃないんですか?」
「お店は他の子に会うためにも来てくれるでしょ? 折角、お願いきいてくれそうだったから。ねっ! いーでしょ?」
「仕事がなければですけど」
「流石ももちゃん」
嬉々とした声を出したマリは、桃の頬に軽くキスをした。
「じゃ、あたしの連絡待っててね」
そして腕から離れると手を振りながら仕事へと戻って行った。
「相変わらずですね。――さて帰りましょうか」
そんなまりを見送った桃は蘭玲へ視線を向けた。
だが蘭玲は依然と頬を膨らませ不機嫌そうな表情。
「どうしましたか?」
「あの人、桃さんとどういう関係なんですか?」
その声と表情はさながら浮気疑惑を問い詰める彼女。
「ただの友人ですよ」
「でも友達にしては距離が近かったですけど……」
「彼女は昔からああいうのが上手いですから。それも彼女の魅力のひとつですね。さぁ、今日のところはもう戻りましょうか」
本当の事をたださらっと話した桃だったが、傍から見ればどこか話を早く切り上げようとしているようにも見えた。だが蘭玲がそう感じたかどうかは定かではない。
そして【Arodi】を出た桃と蘭玲は事務所へ戻る為、エリアLの出口へと足を進めようとした。
だがそんな二人の行く手を阻む男が一人、現れた。
「てめーさっきはよくもやってくれたな」
それは先程、店内で桃が煽ったあの男だった。
「あなたですか。先ほどは申し訳ありませんでした」
少し感じていた心咎めに従い頭を会釈程度に下げ謝罪する。
「随分と素直じゃねーか。だが今更謝ったところでおせぇんだよ」
「そうですか。困りましたねぇ」
その場で何やら考え始めることほんの数秒。
「――蘭玲、少しこれを持っていてください」
すると桃は刀を蘭玲に手渡した。
「では……」
そして数歩前に歩き男と対峙した。
「少しだけお相手してさしあげましょう。それで気が治まるのならば。私にも非はありましたので」
「上等だ! さっさと病院送りしてやらぁ」
自信に満ち溢れた様子の男は指の骨をポキポキと鳴らし首を回した。
「骨の四~五本は覚悟するんだなっ!」
そう叫びながら拳を構え一気に殴りかかってくるが、容易く片手で受け止められるてしまう。直後、男はもう片方の拳で放せと言わんばかりに襲い掛かった。
だが桃は冷静に拳を放すと殴りかかってきている方の手首を横から叩くように掴み拳の軌道をずらしながら腕を捕らえる。そして捕らえた腕を内側回りで捻りながらそのまま後ろに持っていき、最後は背中へとくっつけてしまった。その動きはさながら熟練された逮捕術。男は何とか逃れようとするがガッチリと押さえられた腕はビクともしない。
そしてこのまま決着かと思われたその時。
「今だやれ!」
男の叫び声の後、桃の後ろから顎髭を生やしパーカーフードを被った男が鉄バットを握り締め襲い掛かってきた。バットは桃の顔面を目掛け一直線に振り下ろされる。
だがそのバットが顔から流血をさせることは叶わず、その目前で大きな手に受け止められた。
「店前で困ります」
バットを受け止めたのはオークのガードマン。
「申し訳ありません」
ガードマンはバットを取り上げると顎髭の男を見ながら片手で握り潰して見せた。
「こうなりたくなければさっさと失せろ」
「ひっ!」
一瞬にして恐怖に染められた顎髭の男は情けない声を出すとすぐさま逃走。
「おい! 待て!」
腕を背に押さえつけられ動きを封じられていた男が焦ったような声を上げるが顎髭の男には全く届かなかった。
「あなたもこれで満足ですか?」
そう言うと桃は男を解放した。
「くそっ!」
男は最後に舌打ちをすると腕を押さえながら逃げ去った。
「申し訳ありません、グラルドさん。あなたの仕事を増やしてしまい」
「次から気をつけていただければ大丈夫です」
「えぇ、もちろんです。これはあなたへの迷惑料ということで取っておいてください」
桃はポケットからお札を数枚取り出すとグラルドと呼んだオークのガードマンの胸ポケットに収めた。
「ではお仕事頑張って下さいね」
「またのお越しをお待ちしております」
その返事としてグラルドの肩を軽く叩いた。
そして蘭玲の元に戻り刀を受け取ると二人はAOFの事務所まで戻った。
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