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11章.重なる世界

#8-2.魔女リリアとの戦いにて

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「ふわあ、すごい、すごいですよセシリアさんっ! ここすごいっ」
そうして、庭園の入り口。いつの間にかそこに立っていたエルフの三人組は、しばしぼんやりとその光景に見惚れていたのだが。
やがて、興奮気味に語りだすグロリアの姿に、セシリアは何か嫌な予感を感じ始めていた。
「な、何がすごいのよグロリア。確かに綺麗なところだけれど……」
「だって、解らないんですかっ、ほら! そこかしこに精霊が! ここ、森や山とは比較にならない量の精霊がいるんですよっ!! わわわ、なにこれ、ほんとに良いのかしら? 私とうとう悟りの境地に至ったのかしら!?」
「セシリア様、ダメです。グロリア様はおかしくなってます」
「うん、まあ……私もそう思うのだけれど。どうしたものかしらねえ」
ため息混じりにぽそぽそと容赦の無い言葉で叩き切るエクシリアと、それに賛同するセシリア。
しかし、全く見慣れない場所なのだ。まさか図書館の奥にこんなところがあるなんて、と。
「……ここ、どこなのかしら」
完全に迷子であった。図書館ならまだしも、こんな訳の解らない場所に出てしまったのではどうにもならない。途方に暮れてしまっていた。
「――ふむふむ、なるほど、へぇ、あっ、そういえばそうよねー、教えてくれてありがとうっ」
そして、グロリアは一人、何もいない方向に向かってにこにこ顔で語りだし、頭を下げていた。
「……セシリア様、どうしますか?」
ひきつった顔でグロリアをちょいちょい指差しながら、エクシリア。
「グロリアは放っておきなさい。いつもの事だから。それよりもここからどうやって帰るかだわ。ああ、日が暮れる前に帰れるかしらねえ。まさか、私達までアーティさん達みたいに行方知れずになんてなったら――」
流石に慣れたのか、セシリアは表情も変えず、先行きに考えをめぐらせようとしていた。

「解りましたよセシリアさんっ、ここ、私達の伝承で言う所の『三途の川』ですっ。私達、多分死んでますっ」
「縁起でもない事いきなり言わないでよっ!?」
「言っていい事と悪いことがあります……」
胸を張ってどや顔で語るグロリアに、セシリアとエクシリアは揃って突っ込みを入れる。
「えーっ、でも、だってここにいる精霊達が――」
「見えないからっ、そんなのどこにもいないしっ」
「グロリア様、いい加減にしてください。私達、早く帰らないといけないのに……」
空気を読まないグロリアに、二人も少しずつ苛立ってきてしまう。
先行きが見えないのもあるが、こうやって真面目な雰囲気を冗談で台無しにするグロリアには困らされていたのだ。
「むむむ……本当のことなのに、二人とも頑固ですねえ」
困っちゃう、と、さほどへこたれた様子も無く、グロリアは辺りを見回していた。

「あ、人がいる」
「またそんな事を――って人!? どこよっ」
やがて空を見ながらそんな事を呟いたグロリアに、セシリアはぴくりと反応するのだが……見ていた先がなんにもない宙空だったのに気付き、またため息をつきながら背を向けてしまう。
「――もう。いい加減にしないと怒るわよ、グロリア」
既に怒り出す一歩手前のセシリアであったが、グロリアは視線を変える事無く、ひたすらその『見えてきた人影』を見つめていた。
「……くる」
「――まさかっ」
グロリアの雰囲気がさっきまでのおちゃらけたソレとは違っていることを察したセシリアは、今度は真面目にグロリアと同じ『何か』を見ていた。

「――ぁぁぁぁぁぁああああああああああっ!!!」

 それは、金髪のお姫様だった。
遥か遠くから自分達に向けて高速で吹っ飛んでくるミーシャ姫。
セシリア達は唖然としながら――対ショックへと動いた。
「グロリアっ」
『風の精霊シルフィード!!』
「セシリア様っ」
「任せてっ」
即座にグロリアに魔法の使用を促し、ミーシャが飛び込んでくるであろう落下地点に立って腰を落とすセシリア。
グロリアは風の精霊魔法を展開し、強烈な風によってミーシャ落下のダメージを和らげようとする。
エクシリアはセシリアの正面に立ち、ミーシャを抱きとめる役。
三人でどうなるかは解らないが、このまま落下するミーシャを放置すればひどい事になるのは目に見えていたので、やるしかなかった。

「ぎゃうんっ!?」
「うああああああっ!!」
「ふぎゅっ……けほっ」

 そうして、お姫様らしからぬ声を上げながらエクシリアの胸元へと突っ込んでいくミーシャ。
これを気合で受けながらも勢いを殺すために足を浮かせ、後方のセシリアに後を委ねるエクシリア。
セシリアはこれを受け……られるはずもなく、華奢な身体はただのクッション代わりになっただけであった。
「お、重いっ、女の子二人は重いわよっ」
「わ、私はそんなに重くないはず……」
「いやー、よかったです、間に合って」
押しつぶされたセシリアは涙目だったが、エクシリアは体重の事を言われ視線を背けてしまう。
グロリアだけは心配そうにミーシャの手を掴み、引っ張りあげる。
「う……うぅ、よかった、生きてる。生きてるってこんな幸せなことだったのね……」
頭をふらふらと揺らしながら、引っ張られてなんとか立ち上がるミーシャ。
よほど怖い思いをしたのか、涙目になって軽く放心状態であった。

「それで、なんでミーシャさんがここにいるの?」
「私としては、セシリアさん達がここにいるのが驚きよ。おかげで助かったけど……」
さりげなく行方知れずになっていたミーシャと再会できてしまったセシリアらであったが、ミーシャはミーシャでセシリアたちの存在に驚いていた。
「今、すごい戦いになってて。アーティとタル……エルフィリースっていう子が、リリアさんっていう魔法使いと戦ってるの。早く戻らなくちゃ!」
だが、驚き以上に今は大変なのだと思い出し、ミーシャはまたその場から離れようとする。
「待ってミーシャさん。戦いになっていたの? その、相手はどのような?」
「すごいとしか言いようがない魔法使いよ。ついでに私達のご先祖様で、今は敵の操り人形」
「え……何それ」
「私が聞きたい。本当、大変なのよ。猫の手も借りたいくらい」
すごく強いんだから、と、焦ったようにそわそわするミーシャ。
その様子から、なにやら大変そうな事に巻き込まれてるっぽいのは理解できたので、三人は三人とも顔を見合わせ、頷き、ミーシャに微笑みかけた。
「……でしたら、エルフの手はいかがですか?」


 その頃、アーティとエルフィリース、二人と、対峙しているリリアのみとなってしまった戦場にて。
強力な風の魔法を受け、吹き飛ばされてしまったミーシャを心配する暇も無く、魔法の嵐は容赦なく二人に襲い掛かっていた。
『ワイドレーザー――』
今は、リリアの周囲に浮いた『魔法の砲台』とも言える光球が見えて、二人を狙い撃ちにしようとしているところであった。
『ヴァリアブルガード!!』
しかし、アーティは今までの戦いの中、即興で自分の中でくみ上げた理論を活用し、リリアの『魔法』の模倣を試みていた。
『――シュート』
リリアの指示と供に一斉発射されていく青い光のライン。
魔法は、一瞬アーティの展開した防御魔法に押しとどめられるものの、やがて。
「ああっ!?」
その風の壁は、主たちを守ること叶わず、リリアの魔法の前に霧散してしまう。
レーザーそのものの威力は激減したらしいが、それでもアーティは魔法の衝撃を受け、地べたへと叩きつけられてしまった。
「アーティさん!? くっ、これは参ったわね……ドッペルゲンガーより強いんじゃないのこれ」
気を失ったのか、そのまま動かなくなったアーティをよそに、リリアを睨み付けるエルフィリース。
既にいくつもの魔法を受け、その身体は満身創痍にも近かったが、気迫は萎える事無く、気丈に立ちふさがっていた。

「……」
そんな様子を見ながら、リリアは何か思うところあってか、あるいは天使の操作に揺らぎでも起きたのか。
一瞬、戦いの手を止め、エルフィリースをじ、と見つめていた。
「……?」
何が起きたのか解らないエルフィリースはその仕草に疑問を感じたが、だからと言ってリリアに隙が生まれている訳ではないのは解りきっていた。

 普通の、エルフィリースが知っている範囲の魔法使い相手なら、それが人であれ魔族であれ、剣士と魔法使いの戦いというのはいかに剣士が接近するか、魔法使いが接近させずに討ち取るか、という戦いになる。
多くの場合魔法使いは圧倒的に有利であり、だが、一度剣士の接近を許せばなす術も無く討ち取られるのだというのが常識であった。
物理障壁や斥力フィールドといった強力な防御魔法も存在するが、エルフィリースはこれを打ち破れる奥義を身につけている。
剣聖と呼ばれた養父より伝承されしその剣技は、太刀筋すべてが必殺となりうる威力を誇っている……はずであった。

 今回の相手は、あらゆる面から見て常識はずれだった。
確かに剣によって防御魔法を打ち消す事は可能だった。
だけれど、それをやる度に次の攻撃の際には既に新しい防御が展開されているのだ。
必死になって距離を詰めてこれらを打ち消しても、本体に全くと言っていいほどダメージが通らない。
リリアは、魔法に慢心していない。攻撃が届く前に、避けるための動作に移ろうとする。
それが例え防御魔法が生きていたとしても、である。
結果、かわされてしまう。防御魔法の所為でリリアに届くまでの刹那ズレてしまう動作。それだけあれば、リリアは容易に回避するのだ。
これでは、前衛としてはただ囮になるしか戦術らしいものが組めない。
そうして、それも今しがた崩壊した。ミーシャもアーティも戦力足りえなくなり、相対するは彼女ひとり。
後は、ヴァルキリーが勝利して戻ってくるのを祈るくらいしか出来なかった。


『ダークネスフィールド』
やがて、リリアは両の手を広げ、再び何がしかの魔法を発動させようとしていた。
この魔法というのも厄介で、アーティらが言うには古代魔法とは別か、あるいは同系統でもより優れたモノらしく、現代魔法のソレよりも遥かに自由度が高いというのだ。
実際問題、守りにしか使えないはずの防御魔法を転化させて攻撃に使用したり、攻撃魔法を利用してめくらましにしたりなど、同じ魔法を告げた時ですら同じ使われ方をされるとは限らない不透明さがあった。
リリアの両の手からは黒く光る小さな球が現れ、これが少しずつ、強力な風となって周囲を吸引し始める。
(また風? この人はどうも、風っぽい魔法がお得意なのか……好きなのかしらね?)
あくまでそれっぽいだけで全く別系統なのかもしれないが、エルフィリースにはそう感じられていた。
勿論他の属性っぽい魔法もあるが、多くは風属性にしか見えないような魔法を駆使していた。
つまり、属性的な偏りはあるのではないか。
もしかしたら、そこが相手のウィークポイントになりうるのではないか。
だが、自分ひとりでは攻勢に出ることは難しい。
「……アーティさん」
倒れたままのウィッチを見る。小さな身体は、まだ立ち上がるには時間が必要なようだった。
なんともままならぬ状況に、エルフィリースは半笑いになりながら剣をいずこかから取り出し、やがて頬を引き締め――跳んだ。

「――えやぁっ!!」
その速度、風よりも速く。
リリアの反応をわずかに超えた一撃は、やはりリリア正面の防御魔法によって弾かれてしまう。
「くっ――」
「足元」
「えっ?」
一瞬、リリアが何事か口走ったように見えて、視線が下へと向いてしまう。
「ふわっ」
そして、理解した時には跳んでいた。自分から距離を離してしまった。
直後、足を狙ったのか、かなり低い位置に向けて風の刃が抜けていった。
先ほどのリリアの声がなければ、そのまま気付きもせず足をやられていたかもしれない。
そう考えると、思わず唾を飲み込んでしまっていた。

 魔法は、リリアの手から放たれるものばかりではなかったのだ。
リリアの周辺に展開されたフィールド。これすべてが魔法を放つための防御陣なのではないか。
分厚い。そして死角が無い。
何かの冗談としか思えないレベルの化け物。
これで人間だというなら自分の今までは何だったのかと思わされてしまう。
いや、仮に自分が先祖がえりしているのだとして、根源にいるこのリリアに、何がしかでも届く要素があるのだろうかと、そう考えると笑うしかなかったのだ。

『――風の精霊よっ』

 そんな中、エルフィリースの耳に、また知らない女性の声が届いた。
「……っ!?」
何事かとリリアの視線が動く。
直後、リリアの正面に一本の矢が届き――正面のフィールドを打ち消していった。
『ヴァリアブル――』
これに反応し、リリアは失った分の多重防壁を張りなおそうとする。
直後、バジ、という音と共に二射目の矢が、先ほどと全く同じ点を貫く。
『――ガード!!』
そして唱え終わった時には三射目。防御を展開するより僅差きんさで、リリアの目の前のフィールドが、矢と共に打ち砕かれていった。

「今です!!」

 声の主は、後方から。
ミーシャと、エルフらしき女性が三人。うち一人は先ほどの矢を放ったのか、弓を手に、今もリリアに狙いを付けていた。
「――よしっ」
戦力は戻った。いや、より多くなった、と。
再び歯をぎり、と噛んで、エルフィリースはリリアに詰め寄ろうとする。
『――ブレイクビー』
そうはいかせぬとばかりに、リリアは手の平の黒球を握り締め、地面へと叩き付ける。
やがて地面へと叩きつけられた黒は無数の針となって飛び、エルフィリースを穿たんとする。
「――遅いっ」
だが、間に合わなかったのだ。
リリアの反射は、エルフィリースのそれよりわずかばかり遅れる。
肉薄する。剣は防御一枚を切り裂くが、リリアは後ろに飛んでもなお、エルフィリースの射程内だった。
「今度は逃がさないわっ!!」
大振りの一撃が、リリアの胸元を切り裂いた――ように見えた。

「……」
しかし、リリアの姿が一瞬ブレたように見えた後、それは消えてしまっていた。
「外した……? いや、違うわ、これは、幻覚――?」
防御フィールドを貫く矢との連携、ようやく必殺の一撃を叩き込めたかと思えば、実は空ぶりに終わっていたという。
『エイミング――』
再び、リリアの攻勢が始まろうとしていた。
「うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
響き渡る絶叫クライ。エルフィリースのものとは違う、だが気迫に満ちた怒声に、リリアは一瞬気を向けてしまう。
戦斧バトルアックスを手に、突撃してくるダークエルフの姫君。
先ほどまで離れた場所に居たというのに、今や十分な攻撃のレンジにまで距離を詰めていた。
『――っ、ソニックブラスト!!』
「どりゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
リリアの放った魔法などものともせず突っ込んでゆく。
肉薄するや、小柄な体型に似合わぬ無骨な一撃が、リリアのフィールドを粉砕してゆく。
ガラスの割れるような繊細な音が鳴り響き、リリアの守りは丸裸となった。
「これで――終わりだぁぁぁぁぁぁっ!!!」
気合と共に大薙おおなぎの一撃がリリアを狙った。
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