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4.襲撃・スープクラッシャー!
しおりを挟む「へいお待ち! ブリティッシュアサルト一丁!」
「ふふっ、もうすっかりラーメン屋さんですね」
私の名は田中=ブラックシャドー=源三郎。
かつては世界を救う正義のヒーロー組織相手に激戦を繰り広げ悪の女幹部のピンチに駆けつけたりひと時の恋に落ちたりもしたしがない元改造人間だが、ある日組織との戦いに敗れ女幹部を守る為自爆し、気が付けばこの異世界に居た。
元改造人間としてのノウハウを活かし、戦場で槍働きを見せたり戦顧問として各国を渡り歩き蓄財をしていたが、ある日愛した女幹部に似た村娘と出会い、ラーメン屋となった。
今、客として嬉しそうにラーメン丼を受け取っているのはその村娘である。
かつて恋に落ちた女と似た顔をした娘を前に、つい照れてしまい、無言になるが。
美味しそうにラーメンを口にするこの娘を見て、不覚にも口元が綻んでしまった。
「んん? このスープ、ちょっと変わった味がしますね? 何か違う材料とか使いました?」
「ええ、まあ……変わった素材が手に入りやしてね。試しに、といった感じで」
「なるほど、つまり試作品? 試作品を食べてるんですねー私! うわあ~♪」
彼女だからこそ、という訳ではなく、今日の店にきた常連客皆に出しているものではあるが。
ぱあ、と眩い笑顔になるこの娘の顔を見て、そんな事を言えるほど私は女性慣れしていなかった。
恋人であった女幹部とすら口吸い程度しかしなかったのだ。
ひたすら闇に生きた元改造人間には、春の陽射しのような乙女の笑顔はまぶしすぎる。
「えへへ、得した気分ですねぇ」
「そう言ってもらえれば」
今回はスープの材料に、ドラゴンの血を混ぜてみた。
ドラゴンは単独で軍隊を蹴散らすと言われる程凶悪な存在らしいが、改造人間としての力を使えば一瞬で輪切りである。
今はまだできていないが、肉も新作チャーシューの具材として漬け込んでいる。
このドラゴンの血というのは中々面白い素材で、混ぜる事で濃い油の食味が一瞬で爽やかに感じるようになり、胸焼けなどもなくなり、HPが3倍になり、ついでに寿命も100年ほど伸びるらしい。
スープの材料としてはまずまずの追加効果である。
ドリアードの樹液も悪くないが、これからはドラゴンの時代と言えよう。
「た、大変だっ、村に帝国軍がぁっ」
「きゃぁぁぁぁっ、誰か、誰かぁぁぁっ」
遠くから誰かの悲鳴が聞こえるが、ラーメン屋台は動じない。
お客がラーメンを食べきるまでの間、屋台は動いてはならぬのだ。
「ど、どうしましょう? と、とりあえずラーメンをっ、あ、で、でもっ」
「大丈夫さ」
|戦場(いくさば)のにおいがした。
こきり、肩の骨を鳴らし、エプロンを近くの椅子に掛ける。
「……任せな」
――彼女のラーメンタイムを妨害する輩は、撃滅する。
本日の営業地点:帝国と公国の緩衝地帯にある村
本日の主な客:村娘(実は女幹部の孫娘)
本日の稼ぎ:1ゴールドと攻めてきた帝国軍全軍の命
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