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3.狂気・メンマスレイヤー
しおりを挟む「へいお待ち! ブリティッシュエクセレント三丁!」
「おお、これが例の……」
「噂に違わぬ黄金色のツユ……まがい物は良く目にしたけれど、本物は全く違うようね」
「ハラヘッタ、ハヤククワセロ」
私の名は田中=フローレンス=源三郎。
かつては世界を脅かす悪の魔法結社相手に瀕死の重傷を負った魔法少女のピンチに駆けつけたりひと時の恋に落ちたりもしたしがないサラリーマンだが、ある日組織に目を付けられ洗脳され、気が付けばこの異世界に居た。
来てすぐの頃はビジネスマンとしてのノウハウを活かし、貿易で一山当てたり政治顧問として各国を渡り歩き蓄財をしていたが、ある日全てが虚しくなってラーメン屋になる事にした。なった。
今、客として幸せそうにラーメンを啜っているのは今回初めての客で、とても美しい外見の尖った耳の美女と、餓鬼のような男、それからチャーシューである。
チャーシューは何故か丼からかじっている。後で身体で払ってもらう事になるだろう。
「くくくっ、見るがいいエルフの女王よ! これこそが我らがゴブリン族が血と汗と尊い犠牲の末編み出した秘奥義『ミニラーメン』だ!!」
「まあ、なんと合理的な……! ならば我らエルフも黙っていませんよ! 目に焼き付けなさい! 数多の同胞らの屍を乗り越え生み出されし禁断の超奥義『天地ガエシ』!!」
「おまっ、それは反則! 反則だぞ!!」
「おほほほほ! 美味しくラーメンを食べた者こそが勝者なのよ! 私は自分の楽しさを優先するわ!」
「くっ、なんという……こんなの、ラーメンに対する冒涜だ……! オーク族の王よ、お前も何か思う事はないのか!!」
「ラーメンウメー」
「ふっ、オーク族は食べられればそれで幸せという未開の部族よ。味が付いていればなんでも美味しいと思える味覚初心者にラーメンの味なんて解るはずがないわ!」
お客同士の口論は、基本殴り合いに発展するまではスルーの方針である。
互いに矛を収めてくれるならよし。それ以上の争いに発展する場合……スープを浴びせる事にする。
大体は涙目になって謝る。
「ドリアードアジウメー!」
「えっ? ドリアードだって!?」
「馬鹿な事を言わないでちょうだい! ドリアードなんて混ぜたら酷い味になるに決まってるじゃない! これだから未開部族は――」
「でも、この謎の樹肌色の食材……エルフの女王よ、これはもしかしたら!?」
「そ、そんな事……だって、ドリアードは煮ても焼いても食べられないって、私のママが――」
「ドリアードニクウメー!!」
因みに今回のラーメンは麺とスープとチャーシューにドリアードの樹液を混ぜている。
更にドリアードの身体は切断すると繊維質でタケノコによく似ていたので、メンマとして使えないかと思い作ってみた。
味は好評なようだが、どうやらこの世界の住民にとってはゲテモノの部類だったらしい。
まあ、美味ければよしとする。
「くっ、こんな屈辱初めてだわ! 覚えていなさい店主! ドリアードなんて食べさせて、絶対許さないんだから! ご馳走様!」
「あー、うん、すまんな店主。あいつ昔からわがまま放題で育ったからさー……しかしドリアードはびびったぜ。味は……良かったよ」
「――中々の美味であった。特にドリアードの肉を使った発酵食品……あれは他では見る事の出来ぬ異世界の光をこの舌で味わったようで――」
「お前普通に話せたのかよ!?」
口々に言いながらも各々代金を置き、やんややんやと騒ぎながら去っていった。
一時はどうなるかと思ったが、どうやらそう仲の悪い間柄ではなかったらしい。
しかし……味から見た目からドリアードらしさは微塵もなかったはずなのだが、何故気づかれたのだろうか。
色々と謎である。歩くチャーシューは謎が多い。
※その後の三人は――
「ふ、ふん! 大して美味しくなかったけど、また来てあげるわ!」
「替え玉四回もしてそれはねーよなあ」
「店主よ、ドラゴン肉を知っているか。入手難易度こそドリアードと比較にならぬが、あの味わいは病みつきになる者が――」
本日の営業地点:亜人の森
本日の主な客:エルフの女王とゴブリンの王とオークの王
本日の稼ぎ:大体1500ゴールド
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