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第十八章 VS傀儡君主
第214話 チュートリアル:政治もいろいろ
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国連に名を連ねる中国。日本やアメリカ、ヨーロッパと同じく混血派と純血派があった。しかし両派閥を細分化する様に並べると、混血派・純血派共に一枚岩では無い。
中国四千年の歴史とはよく言った物で、歴史の陰には中国武術同士の抗争があり、国連の介入により事態は激化。
武術は武術で対抗していた派閥同士だが、高度経済成長を経てからは、武術など時代遅れだと言わんばかりに近代兵器による暗殺が主流になる。
そう言った血で血を洗う抗争が今尚続いている中国。敵の派閥が弱まるのを虎視眈々と狙う思惑がまかり通り、互いに戦力を小出し程度に抑えていた。
故に。
「ギイイィイ●●イイィイ!!!!」
強靭な鎌で建物が粉砕され。
「イイィイ!!!!」
屈強な腕で道路も砕かれ。
「ギアアアアアイイイイ!!!!」
――ッドォォオオオオ!!
暴れ回ったあげくビルが倒壊された。
「●●●●●!!!!」
『傀儡の使徒ギガンテスドール』
ジャイアントドールとレオドールと同じく人型のモンスターで十メートル弱と言った小柄だが、マッシブな体つきは当然のこと、二体のドールとは明らかに違う性質があった。
他のドールの追随を許さないほどの圧倒的凶暴性だ。
分厚い胸部の中心に無理やり付けた様なハンプティダンプティの顔。ただのザコモンスターだったダンプティと同じく小粋なハットを被っているが、どこか愛くるしい顔だったのが見る影もなく、狂気に満ちた顔の彫と黒い目が覗く。
大都会の街並みを世界に見せる上海だが、前述した派閥の睨み合いにより国連としての対処は杜撰の一言。
数に物を言わせザコモンスターを何とか防いだ攻略者たちの奮闘虚しく、暴力の化身と化したギガンテスドールによって街は破壊された。
「ギイイィイ!!」
遠くの方で唸り声をあげ破壊活動をするギガンテスドール。そのおぞましい声を聞きながら、他と比べても珍しくない壁が破壊された一室で複数の人影がいた。
「……もう魔力すら残っていない」
「俺もだ。内功が底をついた」
「……」
「……ふぅ」
四人の攻略者。装備した武装は所々破損しボロボロ。血が滲む切り傷擦り傷が全身にあり、激闘の果てと言ったところか。
傷もそうだが、疲労もあってか覇気がない四人組。
意気消沈。誰も何も言わなくなった。
「……もう、いいだろ」
ふと、壁に背中を預け項垂れる男が呟いた。全員が男を見る。
「……国民が蹂躙されていると言うのに政府と国連はほとんど動かず静観。応援が来たと思ったら豆鉄砲ばら撒いて早々に撤退だ」
「……そうだったな」
「俺たちが命がけで戦ったのに……これかよ……」
そう。彼らは襲い来る大量のモンスターを他の攻略者たちと協力して相手取り、あまつさえ一般人を優先して避難させた。
傷だらけになろうが構わない。彼等は必死に戦ったのだ。
しかしそんな彼等に中国政府と国連は最低限の増援。戦ったと言う実績だけを残し、早々に撤退。命がけで戦う攻略者たちには命欲しさに撤退したと思われても仕方ない。
「逃げよう……」
あまりにも後ろ向きな空気。そんな空気の中。
「何言っている……!!」
一人だけが激怒した。
声を荒げ壁に寄りかかった人物に迫り襟を掴んだ。
「逃げる? 逃げるだと? 北京か? それとも重慶か? どこに逃げるんだ!! ッえ゛え!?」
「ッ」
激怒する男に目を背ける。
「俺たちの後ろに避難した人たちが居るんだ!! それを見捨てて逃げるのかよ!!」
「……」
「思い出せよ……! 守るべき人たちが居るんだよ!! 戦えない奴らが居るんだよ!! 国連が動かないなら俺たちが動くしかないだろ!!」
「……」
激怒する男に何も言えない座る二人。
「――ッチ」
しかしここで掴まれた男が小さく舌打ちした。
それを聞いた迫る男は凄んだ。
「おい……今舌打ちしたのか……?」
「だからなんだよ」
「俺に舌打ちしたのか!!」
「だったらなんだよ!! ウザいんだよお前!!」
「――くあ!!」
力いっぱい押し返し、凄んだ男が尻もちをついた。
「精神論ばかり並べやがって!! 持てる力を出し切ったんだ!! もう戦えないんだよ!! 俺は!!」
「ッ!」
「俺たちは十分にやった……! やったんだ!! それとも何か? みすみす死にに行けと言いたいのか!!」
「ッッ」
彼は何も言い返せなかった。自分自身も既に限界を感じていたからだ。だが彼は力ある者として責務を感じ、全うしたかった。でもそれは独りよがりだと頭では分かっていたが、逃げたい気持ちを圧し潰して覚悟を決めた途端、逃げると聞き激怒したのだった。
何も言い返せない様子を見て、彼は苦虫を噛んだ表情をした。
「俺は逃げる。北京でもどこにでも逃げて――」
言葉が続かない。その様子を尻もちをついた男は疑問に持った。視野を広くすると、他の二人も同じく言葉を失い同じ方向を見ていた。
(何を見て――)
振り返ると。
赤い顔がこちらを覗き込んでいるではないか。
「ギイイィイハハハハハハ!!!!」
発狂したように笑い狂うギガンテスドール。
逃げようにも蛇に睨まれた蛙の様に動く事が敵わない。
「ギイイィイイイイイ!!」
握りこんだ拳を振りかざす様《さま》は死の予感。
「不流亜々々々々々々々々々々々々々々々々!!!!」
――ッッッバキガアアアアアアンンンン!!!!!!
男たちが見た物。
それは暴力の化身であるギガンテスドール。その顔面が拳によって砕かれ大きく陥没させた一撃。
濡烏《ぬれがらす》色の装甲に輝く金の装飾。長い髪をなびかせる鎧武者。
『幻霊家臣 黄龍仙』
双方共にコンマ秒で視界から消えたが、一瞬現れたメッセージ画面を全員の脳に焼き付いた。
中国四千年の歴史とはよく言った物で、歴史の陰には中国武術同士の抗争があり、国連の介入により事態は激化。
武術は武術で対抗していた派閥同士だが、高度経済成長を経てからは、武術など時代遅れだと言わんばかりに近代兵器による暗殺が主流になる。
そう言った血で血を洗う抗争が今尚続いている中国。敵の派閥が弱まるのを虎視眈々と狙う思惑がまかり通り、互いに戦力を小出し程度に抑えていた。
故に。
「ギイイィイ●●イイィイ!!!!」
強靭な鎌で建物が粉砕され。
「イイィイ!!!!」
屈強な腕で道路も砕かれ。
「ギアアアアアイイイイ!!!!」
――ッドォォオオオオ!!
暴れ回ったあげくビルが倒壊された。
「●●●●●!!!!」
『傀儡の使徒ギガンテスドール』
ジャイアントドールとレオドールと同じく人型のモンスターで十メートル弱と言った小柄だが、マッシブな体つきは当然のこと、二体のドールとは明らかに違う性質があった。
他のドールの追随を許さないほどの圧倒的凶暴性だ。
分厚い胸部の中心に無理やり付けた様なハンプティダンプティの顔。ただのザコモンスターだったダンプティと同じく小粋なハットを被っているが、どこか愛くるしい顔だったのが見る影もなく、狂気に満ちた顔の彫と黒い目が覗く。
大都会の街並みを世界に見せる上海だが、前述した派閥の睨み合いにより国連としての対処は杜撰の一言。
数に物を言わせザコモンスターを何とか防いだ攻略者たちの奮闘虚しく、暴力の化身と化したギガンテスドールによって街は破壊された。
「ギイイィイ!!」
遠くの方で唸り声をあげ破壊活動をするギガンテスドール。そのおぞましい声を聞きながら、他と比べても珍しくない壁が破壊された一室で複数の人影がいた。
「……もう魔力すら残っていない」
「俺もだ。内功が底をついた」
「……」
「……ふぅ」
四人の攻略者。装備した武装は所々破損しボロボロ。血が滲む切り傷擦り傷が全身にあり、激闘の果てと言ったところか。
傷もそうだが、疲労もあってか覇気がない四人組。
意気消沈。誰も何も言わなくなった。
「……もう、いいだろ」
ふと、壁に背中を預け項垂れる男が呟いた。全員が男を見る。
「……国民が蹂躙されていると言うのに政府と国連はほとんど動かず静観。応援が来たと思ったら豆鉄砲ばら撒いて早々に撤退だ」
「……そうだったな」
「俺たちが命がけで戦ったのに……これかよ……」
そう。彼らは襲い来る大量のモンスターを他の攻略者たちと協力して相手取り、あまつさえ一般人を優先して避難させた。
傷だらけになろうが構わない。彼等は必死に戦ったのだ。
しかしそんな彼等に中国政府と国連は最低限の増援。戦ったと言う実績だけを残し、早々に撤退。命がけで戦う攻略者たちには命欲しさに撤退したと思われても仕方ない。
「逃げよう……」
あまりにも後ろ向きな空気。そんな空気の中。
「何言っている……!!」
一人だけが激怒した。
声を荒げ壁に寄りかかった人物に迫り襟を掴んだ。
「逃げる? 逃げるだと? 北京か? それとも重慶か? どこに逃げるんだ!! ッえ゛え!?」
「ッ」
激怒する男に目を背ける。
「俺たちの後ろに避難した人たちが居るんだ!! それを見捨てて逃げるのかよ!!」
「……」
「思い出せよ……! 守るべき人たちが居るんだよ!! 戦えない奴らが居るんだよ!! 国連が動かないなら俺たちが動くしかないだろ!!」
「……」
激怒する男に何も言えない座る二人。
「――ッチ」
しかしここで掴まれた男が小さく舌打ちした。
それを聞いた迫る男は凄んだ。
「おい……今舌打ちしたのか……?」
「だからなんだよ」
「俺に舌打ちしたのか!!」
「だったらなんだよ!! ウザいんだよお前!!」
「――くあ!!」
力いっぱい押し返し、凄んだ男が尻もちをついた。
「精神論ばかり並べやがって!! 持てる力を出し切ったんだ!! もう戦えないんだよ!! 俺は!!」
「ッ!」
「俺たちは十分にやった……! やったんだ!! それとも何か? みすみす死にに行けと言いたいのか!!」
「ッッ」
彼は何も言い返せなかった。自分自身も既に限界を感じていたからだ。だが彼は力ある者として責務を感じ、全うしたかった。でもそれは独りよがりだと頭では分かっていたが、逃げたい気持ちを圧し潰して覚悟を決めた途端、逃げると聞き激怒したのだった。
何も言い返せない様子を見て、彼は苦虫を噛んだ表情をした。
「俺は逃げる。北京でもどこにでも逃げて――」
言葉が続かない。その様子を尻もちをついた男は疑問に持った。視野を広くすると、他の二人も同じく言葉を失い同じ方向を見ていた。
(何を見て――)
振り返ると。
赤い顔がこちらを覗き込んでいるではないか。
「ギイイィイハハハハハハ!!!!」
発狂したように笑い狂うギガンテスドール。
逃げようにも蛇に睨まれた蛙の様に動く事が敵わない。
「ギイイィイイイイイ!!」
握りこんだ拳を振りかざす様《さま》は死の予感。
「不流亜々々々々々々々々々々々々々々々々!!!!」
――ッッッバキガアアアアアアンンンン!!!!!!
男たちが見た物。
それは暴力の化身であるギガンテスドール。その顔面が拳によって砕かれ大きく陥没させた一撃。
濡烏《ぬれがらす》色の装甲に輝く金の装飾。長い髪をなびかせる鎧武者。
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