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第十七章 傀儡の影

第184話 チュートリアル:フランケンシュタイナー

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 バトル開始数分。

「ライトニングスピア!」

 ――ガキィ!!

「ッ!!」

 雷で形成された一本槍。突くのではなく振られた攻撃を、エルフェルトの光で形成された剣がぶつかり合い雷撃と光撃が火花の様に散る。

「ッハ!」

(力押しか!!)

 拮抗した鍔迫り合い。それを良しとしないエルフェルトは剣を押しつける様に西田に攻撃。とっさの力負けでぐらつき脚を使って後退。

 距離を取らせるのが狙いだったと言わんばかりに右手の平を西田に向けるエルフェルト。

「ショット!!」

 集約した光が破裂、光弾と化した光がアサルトライフルを連射するみたく発射。容赦なく西田を襲う。

「――」

 ――ッパ! ッパパ!!

 ギリギリで避ける光弾が西田の頬のバリアを削る。その一瞬で態勢を整えた西田は雷槍を回転させシールドの様に扱う。槍にぶつかる幾つもの光弾が小さく爆ぜる。

 発射し続ける光弾を振り回す槍でガード。動き回る西田を追う様に距離を離さない様にエルフェルトも追う。

「ッ」

 集約した光――光弾が弾切れ。

「おらよ!」

 隙ありとこれ見よがしに回転を続ける槍をエルフェルトに投擲する西田。

 槍自体が雷であり、さらに雷を纏って肥大化した槍の回転。バリバリと音を立ててターゲットに迫る。

(そう来るか!)

 貰う訳にはいかないと光の剣を同じく投擲。

 ――ガリガリガリッ!!

 ブチ当たる剣先と回転。

 回転する雷槍。まるで鉛筆削り器に削られる鉛筆の様に、光の剣が剣先からガリガリと光を撒き散らしながら削れる。しかし、それと同等に槍の回転が弱まっているのも事実。

 終いには双方の攻撃が光と雷撃を残して消え去る。

「ッ!?」

 破裂する様に消えた双方の攻撃。消えるほんの一瞬に目を奪われたエルフェルトだが、瞬きしたと同時に対戦相手の西田が消えた。

(――どこに!!)

 目を動かして素早く見渡すも西田の姿が見えない。

「――ッハ!」

 地面に残る陰でハッとしたエルフェルト。上空を見ると――

「――オラアアアア!!」

 大きく跳躍した雷槍を持つ西田が声を張って彼女に向けて落下。

(あの一瞬で飛び上がっただと!!)

 光の剣を生成し迎撃体制をとるエルフェルト。

  ――ッド!!

「――」

 床に激突した雷槍は床を食い込まると、帯電した雷撃が床を這うように迸る。しかし地上にはエルフェルトの姿は無い。

(受けずに回避を選んで正解ね)

 コンマ秒という一瞬の判断で回避を選択したエルフェルト。槍を受けずに跳躍して回避を選択。床を這う雷撃をくらえばどうなっていたかと内心焦る彼女。

「ッ」

 着地。

 勢いを殺す様に床を滑るような態勢で脚と手で減速。

 顔を上げ西田を見る。

(近い――)

 西田が迫っていると当然思っていたエルフェルトだが、想像していたより迫って来ており驚く。

「オラアア!!」

「ッ!!」

 雷を纏う拳を打つ西田。

 肩を狙われたエルフェルトは驚きながらも冷静に対処。体を少し逸らして最小限の動きで回避。

 しかしこれはごあいさつ。

 両者の目が合う。

(武器の力比べから格闘戦だ。こっちもできるんだろ?)

(自信があるようだな!)

 アイコンタクトで対話。

「ッ」

 伸びきった西田の右腕を左手で掴むエルフェルト。その勢いを殺さず西田を引き寄せ顎に一発与えようとする。

 しかし実らず。アッパーを仕掛けるも西田に受け止められる。

 両者超至近距離で両手は使用不可。

「――」

 ここで仕掛けたのはエルフェルト。身長差はあるものの両者の態勢は視線を同じになっている。これは良しと第三の攻撃――ヘッドバットを決行。

「――へ」

 しかしそれを読んでいた西田はエルフェルトのヘッドバットと同じタイミングで姿勢をずらして顔面への攻撃を回避。おもわず頬が緩む。

 ここで西田は雷を纏った脚で蹴りを放つ。

 ――ハズだった。

「うおッ――」

 突然両手が重くなり蹴るどころか姿勢を崩される西田。

「――」

 エルフェルトが腰と脚を上げ両手を封じている西田に全体重を任せた。

 両脚を西田の肩に。そして挟み丸め込む様に西田の顔を股に挟んだエルフェルト。

 全体重を乗せたエルフェルトは持ち前の運動神経でバク宙のような形で回転。

「フン!!」

「――ッブ!?」

 頭部を挟んだ西田を巻き込み渾身の一撃で西田の背中を床に強打させた。

 しかし――

 ――バリッ!!

 突然の雷撃音。

 両手に纏った雷を床に打ちその衝撃で飛び起きる西田。まだ頭部にはエルフェルトが居る。

(こいつまだ!!)

(バリアが残っててチャンス!!)

 エルフェルトの太股をがっちり掴んで固定。

 背中から重力を感じる彼女。

「お゛おおおおおおおおお!!!!」

 勢い任せの西田。その絶叫は雄々しい。

「――っく!!」

 エルフェルトは手に光。

 そして――

 ――ッボ!!!!

「「――!!??」」

 西田。渾身のパワーボム。

 衝撃により態勢を崩す二人。

 聞き慣れない鈍い音と滅多に見れない攻防に観客は言葉を失う。

 ――パパリン!

 バリアが割れる。

《DRAW》

 結果は引き分けのドロー。

 西田の背中には光のナイフが刺さり背中が割れ、パワーボムによりエルフェルトの背中も割れた。まさに同時だった。

「「「おおぉぉ!!!」」」

 まさかの引き分けに観客は拍手。賭けていた者たちもこれには信じられないと首を振っての拍手。

「……ん!?」

 真っ先に三井が、否、必然的に誰もが異変に気付いた。

(……なんだ? この感触は)

 衝撃により姿勢を崩した両者。

 奇しくも西田。エルフェルトの胸元に顔をうずくまる形になってしまった。

 しかも――

 ――ムニュムニュ

(これは……ダメなやつだったりぃ……)

 両手で確かめる始末。

 恐る恐る顔を上げる西田。

「き、きき、貴ィ様ァッッ――」

「あーはは……」

 赤面しながらキッと西田を睨むエルフェルト。

 ――ムニュムニュ

 今も尚西田は揉んでいた。

 これにはエルフェルト、激怒。

「フン!!」

「ッブ!?!?」

 この日一番の衝撃が頬に走る西田。

 あまりの攻撃力にゴロゴロと転がってしまう。

 色んな意味で昇天してしまった西田は床に転がり白目を向く。

 エルフェルトは赤面しながら早足でこの場を後にした。

「あちゃ~ラッキースケベも弁えて欲しいッス……」

 三井、頭を抱える。

「……賭けは俺の勝ちだな」

「……負けを認めるよ」

 賭けは成立した。
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