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第十六章 強く激しく

第182話 チュートリアル:コマネチダンス

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《――集団暴行事件罪に問われている攻略者グループと、カラオケ店員数名は、現在医療機関で療養中ですが、すべての犯行証拠である物的証拠の判明により、余罪を含めた暴行罪が確定されました。犯行グループは退院の末、逮捕される方針です。続きまして――》

「……」ピキピキ

 朝飯を食い終わりニュースを見ている俺の顔は今どんな顔だろう。

 きっとお子様には見せられない形相に違いない。

「アイヤー☆ この犯罪グループにちゃんと罰が下るんだネ☆」

「罰だあ?」

 同じくテレビを見ている対面のリャンリャンに顔を向けた。

「退院なんて悠長な事言わずに俺が止め刺してやる゛よ!!」

「アイヤー☆ クソアニメで有名なポプ○みたいな顔だネ☆」

「おいリャンリャン。こいつらの居場所特定しろ。君主ル゛ーラーとしての命令だ」

 俺は今、というか最近、人生で一番キレてるまである。むしろ我慢に我慢を重ねた結果、無理やり押さえつけたバネの様に俺の憤慨が爆発しそうだ。

「今の大哥には教えられないネ☆ 本当に殺しかねなイ☆」

「かねないんじゃなくてブッコロスって言ってんだよ!? つかその言い方なら居場所知ってんだろ!! 教えろ仙人!!」

「ダメ☆」

「……」ピキピキピキピキ

 怒りのボルテージが上がり続ける消費税の如くグングン上がる。攻撃力2000守備力1000の星四獣族の怒れる類人猿(バーサークゴリラ)な俺。攻撃表示の俺は必ず攻撃しなければならないけど、右手にデーモンの斧、左手にデーモンの斧、口にデーモンの斧を装備した某ゾロ状態。驚異の攻撃力5000で暴漢を八つ裂きにする所存だ。

 そんなドンキ○コングでも裸足で、元々裸足か。とにかくそいつが逃げる程の怒りを覚えるけど、意外と冷静だったりする。

 ニュースにもなっているこの集団暴行事件。実はニュースになる前に当事者から事の経緯を聞いていた。まぁ瀬那だけど。

 遊びに入ったカラオケ店の店員と、暴行の主犯格と取り巻きたちに薬を盛られ乱暴されそうになったと。それに気づいた瀬那は巨匠ツヤコ率いるギャル軍団を守るため孤軍奮闘。結果的にその場にいた暴行グループは壊滅し、グルだった店員諸共ブタ箱行きになった。

 警察もメディアもわっしょいわっしょい。夏休みまじかの事件性では一番大きいだろう。ちなみに、当然ながら瀬那たちギャルズの親たちもバーサークゴリラになり激怒。犯罪者たちは社会的大打撃を受けることだろう。

 でも、何より瀬那とギャルズが無事なのは一番いい事だ。魂の殺人――心の傷は一生消えないし、どうしようもなく泣き寝入りしか出来ない被害者たちにもグループ逮捕というこの一報は朗報なのかも知れない。

「まぁ何より瀬那が無事でよかったよ。相手は現役攻略者って言うし、臆せず倒したのエライ」

 土壇場で冷静に動ける人はそうは居ない。これも修行に励んだ瀬那の成果の現れと言いたいところだけど、こればかりは瀬那本来の芯の強さだ。それが修行の成果を現わし、見事クソ野郎共をぶちのめしたわけだ。

「私も鼻が高いヨ☆ 弟子の朗報は師匠の朗報だからネ☆」

「今回ばかりはリャンリャンに同意だわ。俺も嬉しいし小躍りしちゃうもんね!」

「なら俺も踊ってやるぜ!!」

 コマネチダンスをしていると、いつの間にか居る黄金に輝く男――鎧姿のエルドラド隣で同じくコマネチダンスを踊っていた。

「久しぶりに来たと思ったら元気そうじゃねぇか」

「そりゃ元気だぞ俺もあっちも! やっぱ生きてるって最高だよな!」

「なに当たり前言ってんだよ」

 とりあえず小躍りを止め学校へ行く準備をする。

 久しぶりにエルドラド見たけど変わらず金色すぎる。

「おいおいリャンリャン~。たまにはBAR黄金の風に顔出せよ~」

「最近忙しからネ☆ 時間ができたら飲みに行こうかナ☆」

 肘で小突いてコミュニケーション。ドラマや映画でしか見ない光景。このオッサンは相変わらず面白いわ。

「さてと」

 鞄ヨシ、ジャージヨシ、財布ヨシ。準備万端だ。

 期末試験も無事終わり今日は終業式。午前で終わる予定だ。

 靴を履いてリビングに顔を向ける。

「行っていきまーす」

「「いってらっしゃーい☆」」

 玄関のドアを開け、出た。

『チュートリアル:学校へ向かおう』


 終業式が終わった数日後――

「――やっと着いたー! 久しぶりに飛行機乗ってテンション上がったけどやっぱしんどいな」

「ノブさんテンション上がりすぎてCA|《キャビンアテンダント》さん口説かないでくださいよ……。まわりの人たち失笑してましたよ?」

「ミッチー。男は負けると分かっている戦いでも挑まなきゃならんのだよ」

「勇気と無謀は違うッス……」

 ヤマトサークル所属――西田 信彦。後輩の三井を連れ登場。

「お待ちしておりました、ミスター西田、ミスター三井」

「あ、どうも」

「ご迎えありがとうございます」

 黒服の迎えと合流し高級車に乗車。

 旅の疲れか車内でうたた寝していると、いつの間にかホテルに到着。

 ホテルにチェックイン。

 部屋は広くお高目な宿だと再認識。

「……」

 目の前にはふかふかなベッド。

「とー!」

 年甲斐もなくベッドにダイブ。ふかふかが西田を包む。

 準備完了しホテルのロビーで三井と合流。

「じゃあ行くかぁ」

「気が重そうっスね」

「そりゃあなぁ」

 黒服が待つ車に再乗車。

「ミスター。向かう前に行きたいところは?」

「一応観光したい気持ちはあるけどそれは落ち着いてからかな。エクストラスに直行してくれ」

「わかりました」

 車は走る。目的地に向かって。

 ここはアメリカ合衆国。大都市のニューヨーク。

 西田と三井。アメリカンドリームを体感。
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