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第十六章 強く激しく

第167話 チュートリアル:猥談の先

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「ただいまー」

 ガチャリと玄関のドアが開く。

 寮として宛がわれたこの家の長、花房 萌が帰宅。玄関に入ったと同時に脳内に小粋な電子音が響き、彼だけが認識できる物を達成した。

 しかし玄関ドアは直ぐに閉まらない。

「おじゃましまーす」

「お邪魔します」

「♰じゃまする♰」

 萌の友人である梶 大吾、月野 進太郎、戸島 司三名。続々と後続が玄関ドアを叩く。点けられた玄関の照明で足元が明るい。雑多に脱がれた靴は何とも元気な男子高校生らしい風にも取れる。

 リビングに入った高校男児。ソファの傍らに荷物を置き、慣れた手つきの大吾が机の下に常備してあるお菓子が詰まった箱を取り出し、小さなペロペロキャンディを頬張った。

「今日こそ萌の同居人であるリャンリャンさんと対面できると思ったんだが……」

 どっしりと座った進太郎が顔を向け、キッチンの冷蔵庫からジュース類を用意する萌に尋ねた。

 ――バタン。と閉じる冷蔵庫。

「そういえば進太郎とダーク=ノワールはリャンリャンに会って無かったか。はいジュースね」

「♰感謝。聞くところによると萌の遠い親戚。腕の立つ攻略者兼実業家の仙人だとか……。貴様の番である女が誇らしげに言っていたぞ♰」

「……だいたいあってる」

「そもそも仙人ってホントなのか?」

「マジ。その証拠に瀬那も仙気扱える様になっただろー」

 トプトプとオレンジジュースをコップに入れる萌。それを一飲みすると、袋を破ったポテチをみんなが食べれる様に広げた。

「アイツも忙しい身だからなぁ。帰ってこない日もあるくらいだ。あむ――」カリポリ

「あ、黒飴発見」

 ジュースを飲んでお菓子も食べる。四人は平常運転。

「明日からまた現役攻略者たちとダンジョンに潜る訳だが、三人は準備できてるのか」

 そう。進太郎の言った通り、明日からダンジョンに潜って課題をこなす授業が始まる。既に割り当てられたサークルの話やどんなダンジョンに潜るのか、そういった話をしたい進太郎。

 しかし。

「おいおい進ちゃん、今日はそんな話をするために集まった訳じゃないだろぉ?」

「いや、その話では?」

「♰大吾、攻略者の卵にあるまじき物言いだな♰」

「しんちゃんか。最強の四歳児みたいだな」

 総ツッコミを受けた大吾だがその表情は何処吹く風。

 突如大吾、萌にビシッと指をさす!

「このホモ野郎の初体験の感想を聞きに来たんだろうが!!」

「……なるほど」

「♰然り♰」

 盛りの着いた猿。高校男児とはそういう生き物。そういった話には目が無いのは明白。しかし、それは大吾だけかもしれない。

 三人の注目を浴びる萌だが、飲んでいたジュースを飲み干し静かにコップを置いた。

「はよはよ言えよー言いたくて仕方ないんだろ? 分かってるからさぁこのスケベ野郎ぉ」

「お前だろスケベ野郎は。あとホモじゃねーよ」

「で? どうだったんだ?」

「腕組んで興味ないふりしてたのに興味しかないのな」

「♰当たり前だろ。こいつも男だぞ♰」

 猥談が始める。

「まぁ誕生日だわな。三人が帰って瀬那と二人で祝って、致した」

「致したのか」

「♰然り♰」

「致したじゃねぇよ!? 総理のAI動画でもまだ萌ちゃんより致してるよ! 俺が、俺らが聞きたいのはそんな淡白な話じゃない!!」

 ソファから立ち上がった大吾。

「何のために空気読んで撤収したと思ってる!! 学園一の爆乳ギャル! そのギャルとねっとりしっぽり絡み合った話が聞きたいんだよ!!」

「そうだな」

「♰然り♰」

「日焼けした大吾の話でもいいだろ?」

「ダメ!!」

 はぁ、と溜息をついた萌。

「あのなぁ、詳しく話すと瀬那が可哀そうだろ? 身近に居るけどちゃんとした女子だし、大吾だって花田さんとのそういった話し俺たちにしたくないだろ?」

「っぐ!? 言われてみれば確かに……!!」

(親しき中にも礼儀あり。今回ばかりは萌が正しくて俺たちが間違っているな。反省しよう)

「♰我は別に――」

「俺が聞きたくねぇから言うなバカ!」

「♰そうか……♰」シュン……

 何とも言えない空気。萌がポテチを食べる音が響くだけ。

「……マリカーするか」

「「「賛成」」」

 スイッチの電源をONにする萌。

 場所は変わり学園都市の繁華街。そのカラオケ室内。

「ええええええええ!?!? ゴールデンウィークぶッ通しでヤリまくったの!?」

「うん……」

「こりゃパンドラの箱を開けてしまったかも」

「性欲の塊だぁ」

 赤面する瀬那。友達のギャル集団が奇しくも大吾たちと同じ話をしていた。

 もともとこうなるだろうなと瀬那は危惧し警戒していたが、ツヤコ率いるギャル軍団の猛アタックにより陥落。もうどうにでもなれ精神になった。

「で? 処女を萌にあげた感想は?」

 巨匠ツヤコ。半目の無表情で質問。

「最初は少し痛かったケド、萌が優しくしてくれたから、その、……キモチカッタ」

「「「キャアアアアアアアア!!!」」」

「へーよかったじゃん」

 ギャルで肌の露出が多いファッションの瀬那。そんな瀬那でも初心うぶなところがありそこが可愛いとギャルズは思っていた。

 初心だからこそ、赤面しながらもこの感想が精一杯と知っているギャルズ。悪ノリに応えてくれてよくやったと思うギャルズだったが、ここで思わぬ攻撃が迫る。

「――最初はキスから始まってぇ、段々とディープキスになってぇ、気持ちよくなるんだぁ!」

「」

 笑顔の瀬那に一同絡まる。

「ディープキスすると口の周りがいっつもベタベタになるの! そんなのお構い無しにキスしながら抱えられて、萌の部屋に連れてかれたぁ」

 嬉しそうに話す瀬那。誰かが唾を飲み込んだ。

「ベッドに座らされてぇ、服も下着も脱いだり脱がしたり、脱がされたり! あっという間に裸になっちゃった!」

 ジュースを吸うストローが空ぶく。

「あ、私ってを気に変換して循環できるからいっつも飲み込むんだぁ! 強くなるために一滴も溢さないで飲み込んでるの! 偉いでしょ?」

 空いた口が塞がらない。

「もちろん中に出し仙気に換えてる! 位置的に仙気が溜る効率が良いんだよねぇ。気持ちよすぎてあたまチカチカして時々意識飛んじゃうからそこが問題……うん」

 ポッキーが口から落ちる。

「何回か手加減無し容赦なしの萌の本気経験したけど、やっぱり意識飛んじゃって気づいたら精でお腹パンパンに膨れててビックリしちゃった!! すぐに仙気に変換したけど、あのまま放置してたら絶対ヤバかった!!」

 ツヤコが光の加減で割れた腹筋が見えるくびれのある瀬那のウエストを見た。

 ――そんな事あり得るのか。

 それがギャルズの意見だった。

 実のところ、瀬那が言った事は本当だった。

 容赦なしの手加減無し。激しすぎるそれを受けた瀬那は運命的な相性と萌の胆力が合わさり見事意識を手放した。

 暴走状態の萌は動かなくなり唸るだけの瀬那をいいコトにひたすら精を注ぐ。それは何時間も続き、奥を圧し潰される快楽を何度も受け図らずも気が付いた瀬那は驚愕。暴走状態の萌を宥め、精を変換したのだった。

「それでね――」

「わかった。瀬那、もういいから、歌うたおうよ」

「え? そう? じゃあ歌うたおっかなぁー」

 予想だにしない変わりようと予想だにしない初めての経験。

 慄くギャルたちは、何事も無くアラカルトを食べ歌を歌うのだった。
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