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第十五章 階段を上る

第161話 チュートリアル:俺の――

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 この最近のご時世。五月とあらばゴールデンウィークだと親子連れや若者等誰もがウキウキワクワクするもの。それは俺も同様で、我が家の仙人ことリャンリャンの中華風礼装をもう一着買ってしまうほどだ。

 ちょうど朝飯を食べ終わり食器を洗ってスマホを操作している時。

「あ、大哥のお父様のカードは不要☆ 現金払いデ☆」

「は? お前金ないじゃ――」

「ハイ☆」

 手渡される諭吉二十枚。

「ッッッ!?」

 俺、戦慄。

「お前どっから盗ってきた!? 月々の小遣いが足りないからってこんな真似……!! すぐに返してきなさい!! お小遣い増やすから!!」

「アイヤー☆ 人聞きの悪い大哥ダ☆ これは私が稼いだお金だヨ☆」

「稼いだ? ちょこちょこ居ない日とかあったからそれで稼いできたのか? お前身分どうなってんだ――」

 ――あ、こいつ何故か帰国子女って扱いだったの思い出した!!

「おい小股ツルツルロボ。そもそもなんで身分ハッキリしてんだよ。おかしいだろこんなの! 日本なめんな!」

「え、でも最近日本が情弱すぎて個人情報抜かれたってニュースあったよネ☆」

「っぐ!?」

 言う通りすぎてぐうの音も無い!

「け、けどよくよく考えたらお前おかしいってマジで。アノニマスか何かか? ガイフォークスの面被ってんじゃねーよ!!」

「アイヤー☆ あんなザコハッカー集団と一緒にされると私困っちゃうヨ☆」

「どこにマウント取ってんだよ! あいつら怖いんだぞ!! 知らんけど!!」

 この仙人、俺になにか隠してる。絶対隠してる。

「此の際だ、隠してる事話せリャンリャン」

 ソファにふんぞり返ってリャンリャンに問うた。けどお茶を飲むリャンリャンは何処吹く風。湯呑を机に置くと、ポツポツと話し始める。と思った。

「大哥って私が超異次元高性能アンドロイドだって事忘れてるのかイ☆」

「別に忘れてねぇよ。だから小股ツルツルロボって言ったんだよ」

 そう。この細目イケメン中国人風仙人は、仙人である亮が創り上げたAI・リャンリャンだ。亮が創り上げた最強の機仙――黄龍仙にそのAIを移し、仙人パワーでリャンリャン形態と黄龍仙とを使い分けている。出会った頃は黄龍仙に勝てる気しなかったけど、今なら勝てる自信あるマジで。

好好ハオハオ☆ つまりは私はアンドロイドでありスーパーハッカーなのダ☆」

「……ふむ」

 普段細めている目を開眼して決め顔していいのはイケメンだけだが、悔しいけどこいつはイケメンだ。まぁ話の流れで何となくハッカー紛い事言うのかなぁて思ったら案の定だな。

「まぁリャンリャンが悪い事してなかったら別に何でもいいわ」

「あれ? てっきり怒るかなって思ったけド☆」

「今更怒ってどうすんだよ。俺は聞きたかっただけだし、お前が善人だってことは十分に知ってんだ」

「大哥……」

 なんかリャンリャンが嬉しさを噛み締めて俺に信頼の視線を送っているけど、こいつがこんな目をする時は何かある。

「……はぁ。何だよ。はよ言え」

「実は――」

 急に胸ポケットをまさぐるリャンリャン。そこにポケットあるんかいと内心ツッコんだけど、リャンリャンは俺に微笑みかけて見せて来た。

「――大哥、生日快乐(誕生日おめでとう)」

「――」

 リャンリャンが手渡してきたのは小さな小袋。

 そう。何を隠そう、このゴールデンウィーク真っ只中である五月一日は俺の誕生日だ。朝から親からのお祝いメッセージと通話が来て朝飯食べるの遅くなった。

 俺は心がポカポカしてるのを感じる。そう、祝われて純粋に嬉しい。

「あ、ありがと、リャンリャン。まさかお前からプレゼント貰うなんて思わなかった……」

「これでも私の主様だからネ☆ 大好きな大哥に喜んでもらえて嬉しいヨ☆」

 ストレートな言葉に何だか気恥ずかしさを感じて照れてしまいそうだ。

「泣くぞ。すぐ泣くぞ。絶対泣くぞ。ほら泣くぞ」

 身近な親しい人に祝福されるのってなんだか泣きそうになる。

「泣くぞ☆ すぐ泣くぞ☆ 絶対泣くぞ☆ ほら泣くぞ☆」

 先に誕生日を迎えた瀬那は感激のあまり涙を流してたけど、俺もその気持ちが分る。

「泣くぞ☆ すぐ泣く――」

「いやしつけぇよ!? おちおち泣けもしねぇよ!? ジェ○トもそこまでしつこくねぇわ!!」

「アイヤー☆」

 FF1○のジェ○トのシーンは後々のアレで涙腺を壊しに来るんだよなぁ。純粋にテ○ーダのち……息子のテ○ーダの事が大好きだったけど、不器用なもんだから、息子に強くなって欲しいて願いを素直に口にできない気恥ずかしさからの照れ隠しなんだよなぁ。

 まぁリャンリャンに至ってはふざけてるとは思うけど。

「小袋の中は私が作ったお守りダ☆ 瀬那ちゃんにあげた物と同じ様なものだけど、部屋に飾っておいてネ☆」

「ありがとうリャンリャン」

「好好☆」

 俺はさっそく部屋に戻り貰った小袋本棚の上へ置いた。ちなみに背の低い本棚で既にちいかわのソフビ人形が置かれている。

 ちなみに俺が好きなキャラはうさぎだ。ヤハヤハ。

 しばらくしてリビングへ戻ると、リャンリャンが旅行用のスーツケースを携え帽子とサングラスを掛け出かける直前だった。

 どうやらリャンリャンが入ったコミュニティの旅行だそう。行先は京都らしい。

「前にも言ったけどゴールデンウィーク最終日に帰ってくるからネ☆」

「ひと様に迷惑かけるなよ」

「是☆ でも私からも言っておく」

 語尾に☆を付けないリャンリャン。

「大切に大切に、優しくね。繊細だし、勢いだけじゃダメだよ」

「うん……そう心がける」

「コミュニケーションだよ! 受け答えが大事! 自分から欲張ったらダメ。欲張られてから欲張ってネ☆」

「……うす」

 人生の大先輩からの助言。素直に受け止めて見送った。

 それからは知人や優星さんから誕生日のお祝いメッセージが来てありがとうの返信。優星さんに至っては氷結界の里事件からか意気消沈で落ち込み気味だったけど、今は力を付けるためにトレーニングに励んでいるらしい。

 ワイヤレススピーカーで音楽を流しリビングの床をクイックルワイパーで清掃。

 掃除が終わるとテレビを点け何となくぼーっと見ていると――

 ――ピンポーン!

 呼び出しベルが鳴り響く。

「……来たか」

 オートロック解錠前のカメラを見ると、大吾、進太郎、司の三人が居た。全員中指を立てて。モザイク必須だろおい。

「FU○K。どうぞー」

 オートロックを解錠。

 しばらくすると、家のインターホンが鳴り響いた。

「はーい」

 ――ガチャリ

「「「誕生日おめでとう」」」

 右手にプレゼントを突き出し。

 左手の中指が立っている。

「お前ら祝う気無いだろ」

「「「F○CK」」」

 男だけの誕生日会が始まる。
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