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第十五章 階段を上る

第155話 チュートリアル:ハッキリ

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 ~~お昼時。

「やーーー」

 ――ぽちゃ……

「――はーい! 美人お姉さんの女神でーす! (^^)vブイ!」

「わー!」

 お昼時。木こりの小年はボロボロのいつもの斧を湖畔に投げ込む。それが二人の決まった合図でした。

 出会ったあの日から、木こりの少年は調子よく木を伐採し、休憩がてら足繫く通うのです。

「じゃあ、言葉の練習、できるかな?」

「わーい!」

 言葉も舌足らずの純粋な少年。発育の遅れた理由はとても酷い境遇故の運命。ふくよかな女性に買われ今まで生きていました。

 この可哀そうな少年を助けたい。

(あ~^笑顔が可愛い♡ その笑顔でご飯三杯はイケる♡ 今日もクンカクンカするぅう!)

「ええとぉ……」

(今すぐペロペロしたい♡ あの耳たぶをテカテカになるくらいペロペロしたい♡)

 女神様は慈愛に満ちた顔で少年を見るのです。

 それからというもの、過行く春。

「じゃあ、今日は魔術を教えちゃうよ?」

「わーい!」

 幕が開けた夏。

「風よ!」

 ――ビュッ!! バキバキィ!!

「おおおお! 簡単に木が倒れたねぇ!」

「女神さまのおかげさまです!」

 色んな事を分り始めた秋。

「――も゛う我慢できない゛い゛!! ボクくんは星の数を数えていればいいのよ♡」

「ううぅぅぅぅ! 女神さま、ボク怖いよぉ……」

「あぁあぁあぁ昇ってくる昇ってくるぅう♡ 精通したばかりの青髪美少年の純粋な心を弄んで信頼されてから一気に襲い掛かるこの背徳感♡♡ 恐怖心で子孫を残そうとする本能故のバキバキ美少年お○○○ォ♡♡ オ゛オ゛♡ アクメくるぅ♡ 美女お姉さん女神のショタ喰いキチゲマックスなる゛ううう♡ ショタお○○○でアクメくるぅううううううううう♡♡♡♡♡♡♡♡♡――」

 何か失った冬。

 少年は悪い女神様に食べられてしまうのです。

 怖かったね! 少年!

「わああああああん!」


 女神様に出会ってから春が訪れました。

「おいクソガキ。ちったぁ使い物になってきたじゃねぇか」

「ありがとう……ございます……」

「ッへ。まったく誰がこいつに言葉を教えたんだか……。いいか坊主。姉御のお気に入りだからって調子ずくなよ? 姉御を怒らせたら手が付けられねぇんだ」

 男が暴力をふるわなくなったのはちゃんと仕事をこなした結果です。木こりの仕事を全うすれば、固いパンは柔らかいパンにも変わっていきます。

「はむ……」

 魔術を教えてくれた女神様に感謝する少年でした。

 そして夜。

 今日もこの時間がやってきたのです。

 ――コンコンコン。

 ノックが三回。それがルール。

「入りな」

「失礼します……」

 部屋へと入り、そっとドアを閉める少年。

「……」

 鍵はかけませんでした。

「最近調子が良い様じゃないかい? 男共も機嫌がいいのがその証拠だよぉ」

「ありがとう、ございます」

 桃色のカーテンに写る影。一年前とは比べ物にならないほど、ふくよかさを増した女性がそこにいました。

「さぁ! 今日もシテもらおうかねぇ」

「……」

 桃色のカーテンには脚を広げる影。

 いつも通りの光景。

「……ん? どうしたんだい」

 うつむき動かない少年は。

「早くおし! このウスノロ!」

 心底。

「もう、舐めたくないです……」

 気持ち悪かった。

「――あ゛?」

 低い低い声。部屋の温度が下がるのを感じた少年は、身を護る様に片腕を触るのです。

「今、なんて言ったんだい。もう一度、ハッキリ喋りなさい」

 少年が聞いていた猫撫で声の濁声が、今は恐ろしく重く響く声へと変貌しています。

 ――ハッキリと喋りなさい。

 そう問われた少年は、ハッキリと言うのです。

「舐めたくない!」

「なぁんだと!!」

「くさい!」

「くさ!?」

「汚い!」

「き――!?」

「綺麗じゃない!」

「っく!? 言わせておけばあああああ!!」

 ものの一瞬でカーテンが畳まれると、伸びてきた太い手が少年の綺麗な青髪を乱暴に掴むのでした。

「いいかい!! 身寄りのないあんたを奴隷商から買ったのはあたしだよぉ!? あんたはあたしの物なんだよぉ!!」

 飛んだ唾が少年の顔にへばりつく。

「他のガキどもと違って従順だと思って可愛がってたのにこの仕打ちかい!? ハッキリしすぎなんだよこのおバカ!!」

「ううぅぅぅぅ!」

 純粋な少年は戸惑いました。

 ハッキリ言えと言われてハッキリ言ったのに、優しかったふくよかな女性はますます怒鳴る始末。少年の心を曇らせるのです。

「ううぅぅぅぅくさい!」

「まだ言うかい!?」

「息くさい!!」

「」

 女性は何も言い返せません。

 事実なのです。

「ええい!!」

 ――バチン!

「!?」

 突然、痺れをきたした女性は少年の頬を叩くのです。

「この恩知らずが!」

 ――バチン!

「誰のおかげで食えてると思ってるんだい!!」

 ――バチン!

「あんたはあたしの物!!」

 ――バチン!

「所有物なんだよ!!」

 ――バチン!

 何度も何度も。

 ――バチン!

 何度も何度も頬を叩かれるのです。

 少年は苦痛に打ちひしがれていました。

 だからでしょう。

「――嫌!」

「あ! 待てクソガキ!」

 やっとの思いで女性の部屋を飛び出したのは。

「誰か!! あのクソガキが逃げ出したよ!! 速く追いかけろおぉおお!!」

 使い古した斧を持ち出し、ひたすら走る少年。

「――いたぞ!」

「あそこだ!!」

「嫌!!」

 悪意ある男たちが少年を追いかけます。

 額から汗が流れ、握った斧が汗で滑りそうになり、息も切れます。

 でも少年は走り続けました。

 後ろから追手が迫っていても、少年は走り続けました。

 そして――

「むー!」

 少年だけが知っている――知っていた湖畔に辿り着きます。

「ックソ! はぁ、はぁ、とんでもなく逃げ足が早えガキだな」

「アニキぃ、しんどいッス」

「おいクソガキ! 俺の忠告を無下にしやがって!」

 追手の男たちがぞろぞろと追いついて来ました。

 少年は岩場で微動だにせず、しっかりと斧を握るのです。

「――おいクソガキ! 覚悟はできてるんだろうねぇ!!」

 ふくよかな女性、三人がかりでおぶられ遅れて登場。

 おぶった男たちは息も絶え絶えです。

「むー」

 絶体絶命。

 男たちに背を向けた少年は、迷わず斧を湖畔に投げ入れるのでした。

「っへ、所詮はガキか。諦めがついた――」

 瞬間、二つの月明かりが集約したように、湖畔の中心に光が射すのでした。

 まぁなんてことでしょう。

 水の中から純白のローブを羽織った絹の様な肌の美しい女性が現れるのです。後光を放ち宙に浮かぶそれは物語で聞いた女神そのもの。

 ふくよかな女性と男たちは開いた口が塞がりません。

 水に浮かぶ女神はこう言うのです。

「あなた達が手を出したのは私の少年ですか? それとも私が手を出したお気にの少年を襲ったのはあなた達ですか?」

 誰も何も答えれません。女神の言葉が理解できないからです。

「むぅぅ……」

「可哀そうに、あのクソババアがクッサイ○○○をボクくんに宛がったのね。……だから妙に慣れてたのか……」

 笑顔で毒づく女神様。

「――おお、女神さまが降臨なされた……!」

 ふくよかな女性が跪く。

「女神様! どうかあたしを世界一綺麗な女に変えて下さい! それと世界一大金持ちにさせて下さい! それと美男子に――」

 身の程を知らない願いを傲慢にも要求する女性。

(いや何言ってんだ姉御……)

(絶対無理だろ)

 その光景を男たちはドン引きで見守るのでした。

 当然女神は回答を下すのです。

「は? 叶える訳ねぇだろバーカ」

 下唇を噛み方眉を器用に上げながらそう言った。

「下等な下衆風情が粋がってんじゃねーよ」

 木々が揺れ、風が起きる。

「これから私とボクくんのドチャエロしっぽりんほんほ夫婦生活が待ってんだよ。お前ら、邪魔」

 感情の無い女神の瞳。

 フィンガースナップ。

「発動。藍嵐タイフーン

「――ぁ」

 この後。世界は嵐によって地形の変更を加えるのでした~~
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