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第十五章 階段を上る

第152話 チュートリアル:ビートル

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「ただいまー」

 家の玄関に着いた。

 デンデデン♪

『チュートリアル:帰宅しよう』

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:体力+』

 灯が点いていない暗い渡り廊下。少し寒い夜だからだろうか、どこからかオバケが出てきそうな雰囲気だ。しかし無問題。俺って幻霊の主だし。貞子と伽椰子がジョグレス進化したバケモンが相手だろうと俺は勝つよ。

 勘違いしてるみたいだから言っとくけど、そっちが挑戦者チャレンジャーだから(フラグ)

 なにとは言わないけど結構ショックだった。でも話の展開状仕方ないね。

「……」

 洗面台の明りを点け、リビングに入る前に手を洗う。

 ガチャリとリビングに入ると、ソファに座って目を閉じているリャンリャンが居た。

 時間は夜の十時ごろ。俺の帰りを待っていたリャンリャンは寝ているのではなく、瞑想――仙気を循環している。らしい。まぁ俺にとっては見慣れた光景だ。電灯を点けてもピクリとも動かないって事は、相当集中しているぽい。

「そんなに見つめないでヨ☆」

「うお!? 気付いてたか」

「お帰り大哥☆」

 俺が半目でじっと見ていたのが面白かったのか、目をつぶっているのかいないのか、ニ○シティのジムリーダータ○シ並に細い眼が俺を笑っている……風に見える。

「瀬那ちゃんの誕生日会はどうだっタ☆」

「メッチャ喜んでくれたよ。瀬那も笑顔で俺も笑顔、みんな笑顔でハッピー! だった」

 リャンリャンも弟子を祝いたい思いはあったけど、友達だけの集まりに自分が加わるのは良く無いと仙人は言った。

「ちゃんと渡したぞ。リャンリャンのプレゼント」

「そウ☆ ありがとね大哥☆」

 行けない代わりにリャンリャンが用意した瀬那へのプレゼントはしっかり渡した。

「瀬那喜んでたよ、師匠からのプレゼントだーって」

好好ハオハオ☆! 喜んでもらってよかったヨ☆」

 リャンリャン曰くプレゼントは自作の御守りらしく、身に着けなくても家に置いてあるだけで効果が発揮する代物らしい。
 超胡散臭い物を用意したなと思ったけど、今の世の中それも現実味を帯びているし、本物の仙人お手製なのだからきっと凄いんだろうさ。

「ン?」

 リャンリャンが俺の下半身に注目する。

「なんだよ。ゴミでもついてる?」

 バサバサとズボンをはたいてみる。取れたかと確認するようにリャンリャンを見ると、まだ取れていないのか凝視している。

「……取れた?」

「大哥、瀬那ちゃんに乱暴はよくないよ。もっと優しく接しなさイ!」

「乱暴?」

 この仙人、急に訳の分からない事を言う……。

「俺が瀬那に乱暴する訳ないだろ! 俺の彼女だぞ!」

「じゃあ何でそこに瀬那ちゃんの仙気が残ってるんだイ!」

「!?」

 リャンリャンが指したのは俺の股間。マイサン。おもわず両手で隠してしまう。

「私は怒ってるんだよ! 良い子の瀬那ちゃんを大切にしない大哥は人間の屑だ! ウンチダ!!」

「そこまで言う!? つか大切にしてるって俺! 瀬那のこと大好きだし骨まで愛してる!!」

「じゃあ何でそこに仙気があるんだい!! 見損なったよ大哥!!」

 自慢の☆すらつけてない言葉。リャンリャンはマジで怒ってる。そりゃ愛弟子が酷い目に遭ってる可能性があったらキレるわな。

 でも俺は乱暴してない。これだけはハッキリさせておかないと……!

「俺は乱暴してない!!」

「嘘だヨ!」

「嘘じゃない!! 乱暴してない!!」

「まだ言うカ!!」

「乱暴してない……」

 悲しむ表情の俺。

 神妙な顔つきになるリャンリャン。

「乱暴してない。乱暴されたのは……俺なんだよ……」

「……。……アイヤー」

 俺の哀愁漂う表情に、何かを察したリャンリャン。

 俺はそっと呟く様に口を開く。

「実は何回かあるんだ、瀬那が俺のを求めてきたの……」

「アイヤー……」

「そりゃ俺も男だし、恋人に求められたら首を縦に振るだろ。断る理由なんか無い。ましてや誕生日だぞ……」

「アイヤー……」

 烈火の如く俺を責めていたリャンリャンが、急にしおらしくなった。

「仙人の修行方法の一環として房中術と言う修行方法があるヨ……」

「ああ、漫画やアニメでよくある性行為しながら修行する奴ね……。抜ける奴ね……」

「昔その修行が性に合った仙女が居てね、片っ端から仙人を襲っては力に変えていったヨ……」

 どこか遠くを見るリャンリャン。

「お前――リャンもその餌食になったのか?」

「亮も襲われたけど、全力で抵抗して逃れたって記憶してるネ。まぁ房中術は亮には相性悪かったし、あいつバカだからずっと機械いじってたネ……」

 亮の記憶を思い出したリャンリャン。苦虫を噛んだ表情で青い顔をしている。

 つかリャンリャンの話を聞いてる限りその仙女ヤリ○ン過ぎてヤバイだろ。とんでもない性欲モンスターだったんだな……。

「……ごめんね大哥。色々と酷い事言っテ……」

「いや、誤解を招いて俺こそごめん……。お前も大変だったんだな……」

 お互い分かり合った顔をして握手する。

 夜も更け自室。

「うーむ……」

 俺は今、ベッドの上に座り、とあるアイテムとにらめっこしていた。

 チュートリアルのクリア報酬。体力やら力やらが主だけど、特別な報酬もあったりする。つまりは『ギフト』だ。

 これは目に見えないステータスではなく、いつの間にか次元ポケットの中に報酬として存在していた。

 ギフトやらスペシャルギフトといった報酬の数々。

『回復の豆×三個』

『体力の豆×三個』

『力の豆×三個』

『魅の豆×三個』

 等々。豆シリーズがいくつもある。

『体力の豆:食べると体力が向上します』

 との説明文。まぁ意味はそのままで食うと強くなる系といったところか。これのミソは俺じゃなくても食べれば強くなれるという点。今度大吾に試してみよう。あいつバカだからコメダ珈琲の豆菓子に混ざっても気づかず食うだろうし。

 そしてスペシャルギフトのアイテムはというと。

『愛の媚薬×ニ個』

『運命の赤い糸』

 この二つだ。

『運命の赤い糸:運命の相手が紐を持つとあなたと繋がります』

 これに至っては曖昧過ぎて何も言えん。まぁこんなの無くても俺と瀬那は運命で繋がってんだよなぁ。こればっかりはサイバスターのアカシックバスターでも消せないぜ。

『愛の媚薬:飲むと愛情が高ぶり性機能が向上します』

「……ビューティフル」

 何故愛の媚薬だけが二個なのかというと、実は一個だけ飲んだことがある。

「――お゛お゛ぉ♡ ヤッベ♡ 感度が♡ 半端ねぇ♡ んほおおおおおおおおおおおおおおおおおお――――――」

 あの時は正直ヤバかった。陰キャゲーマーのアへ顔が悉く披露された。

 ゆえにビューティフル。俺は誓った。瀬那とえちえちをする時に、これを二人で飲むんだと。かっぱ○びせん並に止まらなくなるぞおい。

「……」ムラムラ

 瀬那の感触を思い出すだけでムラムラした俺。

 そして解き放つ。

「うおおおおお!! キャストオフ!!」

 キャストオフ!

 着ている衣類をすべて脱ぎ捨てた。

 チェンジビートォル!

「ふおおおおおおお!!」

 俺の右手がクロックアップした。
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