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第十五章 階段を上る

第151話 チュートリアル:お誕生日会

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 暗い部屋の扉が開く。

 ――パンッ! パパン!!

 瞬間蛍光灯が明りを灯し、軽快な音がまばらに鳴った。

『瀬那ー! お誕生日おめでとうーーー!!』

「キャーハハハハハ!」

 手で目隠ししていた巨匠ツヤコが瀬那の目を解放。明りと共にクラッカーが破裂し、紙吹雪と渦巻くヒラヒラの紙が瀬那の頭やら服に降りかかる。

「わあぁぁぁ!!」

 少し広い部屋。

 バルーンがいくつも連なり、壁にはHappy Birthday SENA とバルーンアートが付けられている。両端には18と創ったバルーンが備えている。

 薄く色味を出す天井に付いたライトがより一層の祝福感を出している。

 机の上には大量のアラカルトにお菓子類、ジュース。部屋の隅には誕生日会の参加者が用意した瀬那への誕生日プレゼントが集結している。

「すごーい! 私のためにここまでしてくれたんだあ!!」

 目を輝かせ驚く瀬那。

 参加者であるツヤコ率いるいつものギャル軍団。

 大吾と花田さんカップル。

 進太郎と戸島(さすがにダーク=ノワールじゃない)。

 そして俺。

 みんな心から瀬那を祝福したい面子。瀬那の笑顔に心が和む。

 と思いきや。

「――ッぅう……! わ、私のために、あ、ありがとう……うぅぅ」

 瀬那。まさかの嬉し泣き。

「わー瀬那ー!」

「よしよしー嬉しいんだねぇー」

「みんな瀬那のこと大好きなんだよー!」

「ほらみんなで抱きしめるぞー」

 涙を見せる瀬那に、ギャル軍団が駆け寄ってよしよしと撫でながら抱擁。同じく駆け寄った花田さんは瀬那にハンカチを渡し、正面から抱き着いた。

「にゃああああああああ!!」

 ひしめき合う女人たち。嬉し泣きしていた瀬那は女子たちの作戦により笑顔を取り戻した。

 優しい目を向ける俺。すると、いつの間にか隣にいた大吾が話しかけてきた。というか、進太郎と戸島も寂しいのか、男連中が集まる。

「萌ちゃんは慰めに行かなくていいのか?」

「塊魂《かたまりだましい》みたいに引っ付いてる女子に突貫しろと?」

「萌《はじめ》は彼氏だし大丈夫だろ」

「……でもあの中には入りづらいだろ」

 戸島の言う通り確かにあの中に入るのは少し勇気がいるけど、正直俺が近づけば女子たちは気を利かせて離れると思う。

 でも――

「きゃーみんなくっつきすぎー!」

 仲の良い友達が精一杯好きでいてくれるスキンシップ。俺にはとても邪魔できない。

《えー今日は皆さん、瀬那の誕生日会にお集まりいただきー、誠にありがとうございます!》

 マイクを通して司会役? を受けた大吾。キリッとした顔立ち、イケメンボイスでアナウンスするも……。

「えーマジで?」

「うん! この前大吾くんとデートした時に行ったお店なんだけど、凄く美味しくて――」

「――蕾って甘いの好きだもんねぇー」

「ポテトのケチャップ色々あるぅ」

「――やっぱり歳の差があるとジェネレーションギャップがあるらしい」

「たった五つ年上だがされど五つ年上か……」

「はいコレ。歌う曲決めて無いなら回して」

 さっそく纏まりがない模様。これには陽キャの大吾もさすがの困り顔。

《……あのぉ、ちょっとだけ静かにしてもらっていいスか》

 ――シーン……。

《……急に静かになっても怖いんだが》

 お前が静かにしろっていったからだろ。

《えー気を取り直して。本日はお日柄もよくぅ――》

「さっさと始めろー」

《っぐ! ええい! じゃあみんなグラスを持ったな!》

 全員がジュースの入ったグラスを掲げる。

《瀬那の十八歳の誕生日を祝して! かんぱーい!!》

『かんぱーい!!』

 カランコロンとグラスをぶつけある。

 一口飲み終わるとグラスを机に置き、みんな瀬那に拍手。恥ずかしがる瀬那は頬を赤らめて感謝の言葉を述べた。

 それから大きな誕生日ケーキが登場し、部屋を暗くして蝋燭に火を。みんなでハッピーバースデーを歌い、瀬那が火に息を吹きかけた。

『おめでとうーーーー!!』

 惜しみない拍手が贈られる。

 ケーキの切り分けがヘタな俺に野次が飛んだり、それに笑う瀬那だったり。

『Happy! Happy birthday ケーキのキャンドルを♪――』

 ギャルズと花田さん渾身のカラオケ。振り付け付き。

『happy birthday to you happy birthday to you
happy birthday to you it's a wonderful day♪』

 進太郎、戸島、大吾の順で歌詞を歌う。

『おめでとう♪ おめでとう♪ ホントにおめでとう♪ 思えば出会いも不思議だったね――』

 俺も瀬那を思って歌った。

「ふぅ……」

 もうだれこれと騒ぎまくる面々。俺はトイレに行きたい思い、部屋を出て伸びをした。

 すると後ろからドアが開く音が。誰だと振り返ると、本日の主役のお瀬那さんだった。

「どうしたの」

「ん? ちょっとねー」

「?」

 いたずら顔で俺を見る瀬那。少し嫌な予感を感じながらも、俺トイレいくからと瀬那に言って歩き始めた。

 そして辿り着くトイレに続く廊下。このカラオケ店はバリアフリーが強いのか、案内板を見る限り多目的トイレの他、男女ともに広い化粧室となっている。実際凄い。

 で、実際問題。

「え、瀬那もか」

 ドラクエかよと思う程に俺の後ろをついて来た瀬那。どうやら目的は同じのようだ。

「私は別に……」

 どうやら違うようだ。

 じゃあ何だと思ったら――

「ありがとね、萌」

 顔を赤らめてお礼を言って来た。

「俺だけじゃないよ。そもそも企画したのはツヤコだし。でもお礼言われて嬉しいかな」

「にししー」

 笑う瀬那。機嫌が良くて俺も笑顔になる。

「……」

「……?」

 え、何この無言。と不安になるくらい黙る瀬那。うつむいて表情が窺えない。

 すると――

「ッ!」

「え、おい!?」

 俺の手を掴んで速攻で多目的トイレに連れられた。

 バタンと閉じるドア。ガチャリと閉まる鍵。

「――ん――んん」

「――」

 シックで大人の印象なトイレに粘膜を絡め合う音が響く。

 訳も分からず求められた俺。瀬那のされるがまま、背中を壁に押しつけられた。

「――ぷはっ!」

 息切れを起こし離れる。俺たちの唇には惜しむ様に粘膜の橋が繋がれていた。

「……私、先に十八歳になっちゃった」

「うん……そうだな……」

「――んん――レロ――」

 胸を押しつけ求めてくる。それを拒むことをせず受け入れる俺。

 誘導される様に便器に座らされる。

「はぁ、はぁ……。早く萌と添い遂げたい……! 萌ので私のハジメテむちゃくちゃにして欲しい!! ――ん――」

 俺に跨る。口は放してくれない。

「――っは、っは。瀬那ごめん。俺も十八にならないと……」

「うん、わかってる。だから――」

 ――少しだけちょうだい。

 俺より小さな手が、俺のベルトを緩めだした。
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