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第十三章 三年になって
第132話 チュートリアル:新クラス
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春はあけぼの。
枕草子で綴られる最初の切りだし。その意味は、春は明け方がスゲー最高だよね! 白くなっていく山際の空が明るくなり、紫がかった雲が細くなびいて――
言いたい事は分かったけど今ってもうあけぼのじゃないし。すっかり太陽も姿現してるし……。
今日から俺らは新学期。ピカ〇ュウもピカピカ言ってる三年生だ。
攻略者学園としてはまだまだ手探りの学園生活。去年の先輩方とは違うカリキュラムが組まれ、より攻略者の卵としてツルツルに磨きあげられる一年になるかもしれない。
学園専用のタブレット端末。そこには新しいクラス、新しいクラスメイトが記載されている。
「ふぅ……」
教室に入り新しい顔、見知ったクラスメイトに軽く朝の挨拶。これ見よがしに空いている窓際のテーブルに座り、現代人らしく速攻でスマホを手に取った。
新しいクラス。新しいメイト。新しい教室。
新しいづくしの半面、苦楽を共にした去年のメンツとは多少なりとも別れるのも事実。
現にモブ男くんたちは別クラスだ。既にいくつかのグループが形成されつつあり、俺はその輪には入れない。だって俺の根は陰キャだからだ。
「花房だ」
「お前声かけろよ」
「いやでも忙しそうにしてるし……」
スマホをいじって暇を潰してるどこにでもある光景の俺。その俺に対して忙しそうだとなんだと言い訳して話しかけてくれない……。
俺って避けられてるの?
「ねぇ花房くんよね?」
「声かける?」
「彼女居るし迷惑かも」
「なんか近寄りがたいよねぇ」
……避けられてる。
男子からも女子からも避けられてる……。
ヤバイ泣きそう。
アーチャーの固有結界――無限の剣製以上に俺の心は硝子なんだぞ! 優しく扱ってくれよ!
と、そんなしょうもない事を思っていると。
「――よぉ萌ちゃん! 寂しそうにしてっからここに座ってやるよー」
「お前は!」
俺の悪友にして親友。俺の想い人だった花田さんをいつの間に恋人として迎え、露ほどにNTRの感覚を味わわせてくれた男。
「一週間くらいぶりだな萌ちゃん」
梶 大吾だ。
「今ほど大吾の存在に感謝した覚えはないな。ありがとう大吾」
「開口一番それかよ。なんかキモいぞ……!」
「露骨にドン引くな!? 俺なりの感謝だよ!」
大吾め、なんか見ない間に大人びやがってッ。そこはかとなく大人の余裕が垣間見える……。
「おはよう二人とも」
突然俺に影を射してきたのは聞き覚えのある声。
「おはよう月野」
「おはようさん」
体格良し、成績良し、眉毛良しの三段構え。
月野 進太郎だ。
「二人のやり取りを見てると、クラス替えがあったなんて思えない」
「俺と萌ちゃんは運命の赤い糸で結ばれてるからなぁ」
「……引くわぁ」
「意趣返しだって」
いつものやり取りだと言う進太郎。俺と同じく、クラス替えの寂しさを覚えていたのかも知れない。
五分くらい三人で近況を報告し合っていると。
「おっはよーみんなー! 高校生活最後の一年間! よろしくー!」
聞き覚えのある元気な声。
その声の方へ視線を向くと、女子たちが姦しく集まって挨拶をしている。声だけではあるけど、同じクラスの男子もおはようと言っているようだ。
「一年間よろしくね」
「こちらこそ~」
「ずっと話したかったんだぁー」
「いろいろ教え合おうね!」
「いい匂いの香水ぃ。どこの使ってるの?」
「えっとぉ――」
俺と違いさすがは陽キャ。もう新しいクラスに馴染めてる。
漫画やドラマであるクラス内での女子派閥とかも無さそうだし、安定したクラスになりそうだ。
「でっけぇー」
「凄いよなぁ」
「普通にレベル高いんだよなぁ」
と、クラスの男子たちも注目している。男子は主にアレに釘付けだろうけど。
一通り話し終えると、チラチラと俺を見ていた笑顔がこっちに歩いて来た。
「やっほーみんな! 今年も一緒のクラスだね!」
そう言って俺の隣の席に座った。
「まぁクラス替えの人選はお知らせで分かってたしな」
「改めてよろしく」
大吾と進太郎が話し終える。
「俺からも。よろしくな、瀬那」
「うん! これからもよろしくね!」
屈託のない笑顔が咲いた。
その時だった。
「キャー朝比奈さんと花房くんが付き合ってるのってホントだったんだ!」
「マジでマジで?」
「えーどっちから告ったの? どこで何時?」
「馴れ初め! 馴れ初めが聞きたい!」
「教えて教えて―!」
「えーしょうがないなぁ~」
来るわ来るわ女性陣の一個団体。あっという間に瀬那の周りには女子たちがわんさか溢れ、渦中の俺ですら中に入れない(入りたくない)ほど。
もう姦しくうるさくなってきた。
「と、とりあえず席外すか」
「おじゃまみたいだし……」
「……そうだな」
あまりの圧にビビる俺たち。男衆三人が席を離れると、すぐさま空いた席に女生徒が座った。……まぁテーブルにリュック掛けてあるし、席をとられることはないだろう。
「花房って朝比奈さんと付き合ってんだな! スゲーよ!」
「まぁ」
「俺たちも女子と付き合いてー」
「やっぱ花房みたいに行動しないとなぁ」
と、俺たちに話しかけてきた新しいクラスメイトのモブ太郎くん達と対談していると、不意に聞こえてきた。
「――フフフ」
「!?」
微かに聞こえた自尊心しかない呟き。
それは確かな足取りで廊下を歩き、俺たちの教室に迫っていた。
そして――
「♰フハハハハハ! 漆黒と暗黒の魔導士ダークノ=ワール! ここに顕現!!♰」
全身黒ずくめ。腕には靡いた包帯。
学園が誇る黒の魔導士が現れた。
「「「「おおおおおお!!!」」」」パチパチパチパチ
複数の男子と複数の女子が出迎える様に拍手。
その光景に、俺は引き気味に大吾に問うた。
「な、なんで拍手してんの」
「ああ見えて戸島って人気だからな。二年の顔なじみたちが悪ノリで拍手するもんだから行事になったんだとよ」
「行事なのか」
「マジかよ……」
知っていたとは言え、トーナメントでしのぎを削った戸島が同じクラスになるとは……。
巨匠ツヤコに逆レ○プされ流れでお付き合いして今尚幸せな抜ける同人誌の体現者が同じクラスになるとは。(早口)
その同人誌野郎がクククと不敵に笑ってこちらに歩いてくるではないか。
こっちくんなと言いたい。来てもいいけど包帯外せ。
「♰花房 萌。雌雄を決した貴様とよもや同じ同胞となるとはな。やはり運命を感じる……。自由を好む我に、これが正義なのか分からぬが、共に切磋琢磨と興じよう♰」
「映画やるからってぶっこみ過ぎだろ! 皆目なに言ってんのかわかんねぇよ!?」
そんなこんなで予鈴が鳴りリュックを置いてある席に座る。本鈴が鳴る前に新しい担任が教室に入ってきた。
「えーね。高校生活最後の一年間を担当しまーす。阿久津 健でーす」
二年に引き続き、三年の担当も阿久津先生だった。相変わらずのやる気の無さが雰囲気から滲み出ている。
「えーね。今年からはね。授業として実際にダンジョンに潜る事が多くなると思うから。その辺り気を付けて挑む様にー」
けっこう大事な事言ってるのに全然重要そうに聞こえない。
「もうすぐ偉い人のクソ長い挨拶が放送されるから、ちゃんと聞く様にー。あと、話長くて寝てても先生注意しないから。君たちももうね、三年生だし」
やる気の無い目でそういう先生。
そして始める園長の放送。
《――であるからしてぇ》
くっそ眠たい。
でも我慢した。三年生だから。
でも。
「ぐがあー……すぴー。ぐがあー……すぴー……ぐがあー……」
いの一番に先生が寝た。
枕草子で綴られる最初の切りだし。その意味は、春は明け方がスゲー最高だよね! 白くなっていく山際の空が明るくなり、紫がかった雲が細くなびいて――
言いたい事は分かったけど今ってもうあけぼのじゃないし。すっかり太陽も姿現してるし……。
今日から俺らは新学期。ピカ〇ュウもピカピカ言ってる三年生だ。
攻略者学園としてはまだまだ手探りの学園生活。去年の先輩方とは違うカリキュラムが組まれ、より攻略者の卵としてツルツルに磨きあげられる一年になるかもしれない。
学園専用のタブレット端末。そこには新しいクラス、新しいクラスメイトが記載されている。
「ふぅ……」
教室に入り新しい顔、見知ったクラスメイトに軽く朝の挨拶。これ見よがしに空いている窓際のテーブルに座り、現代人らしく速攻でスマホを手に取った。
新しいクラス。新しいメイト。新しい教室。
新しいづくしの半面、苦楽を共にした去年のメンツとは多少なりとも別れるのも事実。
現にモブ男くんたちは別クラスだ。既にいくつかのグループが形成されつつあり、俺はその輪には入れない。だって俺の根は陰キャだからだ。
「花房だ」
「お前声かけろよ」
「いやでも忙しそうにしてるし……」
スマホをいじって暇を潰してるどこにでもある光景の俺。その俺に対して忙しそうだとなんだと言い訳して話しかけてくれない……。
俺って避けられてるの?
「ねぇ花房くんよね?」
「声かける?」
「彼女居るし迷惑かも」
「なんか近寄りがたいよねぇ」
……避けられてる。
男子からも女子からも避けられてる……。
ヤバイ泣きそう。
アーチャーの固有結界――無限の剣製以上に俺の心は硝子なんだぞ! 優しく扱ってくれよ!
と、そんなしょうもない事を思っていると。
「――よぉ萌ちゃん! 寂しそうにしてっからここに座ってやるよー」
「お前は!」
俺の悪友にして親友。俺の想い人だった花田さんをいつの間に恋人として迎え、露ほどにNTRの感覚を味わわせてくれた男。
「一週間くらいぶりだな萌ちゃん」
梶 大吾だ。
「今ほど大吾の存在に感謝した覚えはないな。ありがとう大吾」
「開口一番それかよ。なんかキモいぞ……!」
「露骨にドン引くな!? 俺なりの感謝だよ!」
大吾め、なんか見ない間に大人びやがってッ。そこはかとなく大人の余裕が垣間見える……。
「おはよう二人とも」
突然俺に影を射してきたのは聞き覚えのある声。
「おはよう月野」
「おはようさん」
体格良し、成績良し、眉毛良しの三段構え。
月野 進太郎だ。
「二人のやり取りを見てると、クラス替えがあったなんて思えない」
「俺と萌ちゃんは運命の赤い糸で結ばれてるからなぁ」
「……引くわぁ」
「意趣返しだって」
いつものやり取りだと言う進太郎。俺と同じく、クラス替えの寂しさを覚えていたのかも知れない。
五分くらい三人で近況を報告し合っていると。
「おっはよーみんなー! 高校生活最後の一年間! よろしくー!」
聞き覚えのある元気な声。
その声の方へ視線を向くと、女子たちが姦しく集まって挨拶をしている。声だけではあるけど、同じクラスの男子もおはようと言っているようだ。
「一年間よろしくね」
「こちらこそ~」
「ずっと話したかったんだぁー」
「いろいろ教え合おうね!」
「いい匂いの香水ぃ。どこの使ってるの?」
「えっとぉ――」
俺と違いさすがは陽キャ。もう新しいクラスに馴染めてる。
漫画やドラマであるクラス内での女子派閥とかも無さそうだし、安定したクラスになりそうだ。
「でっけぇー」
「凄いよなぁ」
「普通にレベル高いんだよなぁ」
と、クラスの男子たちも注目している。男子は主にアレに釘付けだろうけど。
一通り話し終えると、チラチラと俺を見ていた笑顔がこっちに歩いて来た。
「やっほーみんな! 今年も一緒のクラスだね!」
そう言って俺の隣の席に座った。
「まぁクラス替えの人選はお知らせで分かってたしな」
「改めてよろしく」
大吾と進太郎が話し終える。
「俺からも。よろしくな、瀬那」
「うん! これからもよろしくね!」
屈託のない笑顔が咲いた。
その時だった。
「キャー朝比奈さんと花房くんが付き合ってるのってホントだったんだ!」
「マジでマジで?」
「えーどっちから告ったの? どこで何時?」
「馴れ初め! 馴れ初めが聞きたい!」
「教えて教えて―!」
「えーしょうがないなぁ~」
来るわ来るわ女性陣の一個団体。あっという間に瀬那の周りには女子たちがわんさか溢れ、渦中の俺ですら中に入れない(入りたくない)ほど。
もう姦しくうるさくなってきた。
「と、とりあえず席外すか」
「おじゃまみたいだし……」
「……そうだな」
あまりの圧にビビる俺たち。男衆三人が席を離れると、すぐさま空いた席に女生徒が座った。……まぁテーブルにリュック掛けてあるし、席をとられることはないだろう。
「花房って朝比奈さんと付き合ってんだな! スゲーよ!」
「まぁ」
「俺たちも女子と付き合いてー」
「やっぱ花房みたいに行動しないとなぁ」
と、俺たちに話しかけてきた新しいクラスメイトのモブ太郎くん達と対談していると、不意に聞こえてきた。
「――フフフ」
「!?」
微かに聞こえた自尊心しかない呟き。
それは確かな足取りで廊下を歩き、俺たちの教室に迫っていた。
そして――
「♰フハハハハハ! 漆黒と暗黒の魔導士ダークノ=ワール! ここに顕現!!♰」
全身黒ずくめ。腕には靡いた包帯。
学園が誇る黒の魔導士が現れた。
「「「「おおおおおお!!!」」」」パチパチパチパチ
複数の男子と複数の女子が出迎える様に拍手。
その光景に、俺は引き気味に大吾に問うた。
「な、なんで拍手してんの」
「ああ見えて戸島って人気だからな。二年の顔なじみたちが悪ノリで拍手するもんだから行事になったんだとよ」
「行事なのか」
「マジかよ……」
知っていたとは言え、トーナメントでしのぎを削った戸島が同じクラスになるとは……。
巨匠ツヤコに逆レ○プされ流れでお付き合いして今尚幸せな抜ける同人誌の体現者が同じクラスになるとは。(早口)
その同人誌野郎がクククと不敵に笑ってこちらに歩いてくるではないか。
こっちくんなと言いたい。来てもいいけど包帯外せ。
「♰花房 萌。雌雄を決した貴様とよもや同じ同胞となるとはな。やはり運命を感じる……。自由を好む我に、これが正義なのか分からぬが、共に切磋琢磨と興じよう♰」
「映画やるからってぶっこみ過ぎだろ! 皆目なに言ってんのかわかんねぇよ!?」
そんなこんなで予鈴が鳴りリュックを置いてある席に座る。本鈴が鳴る前に新しい担任が教室に入ってきた。
「えーね。高校生活最後の一年間を担当しまーす。阿久津 健でーす」
二年に引き続き、三年の担当も阿久津先生だった。相変わらずのやる気の無さが雰囲気から滲み出ている。
「えーね。今年からはね。授業として実際にダンジョンに潜る事が多くなると思うから。その辺り気を付けて挑む様にー」
けっこう大事な事言ってるのに全然重要そうに聞こえない。
「もうすぐ偉い人のクソ長い挨拶が放送されるから、ちゃんと聞く様にー。あと、話長くて寝てても先生注意しないから。君たちももうね、三年生だし」
やる気の無い目でそういう先生。
そして始める園長の放送。
《――であるからしてぇ》
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でも我慢した。三年生だから。
でも。
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