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第十一章 本戦

第112話 チュートリアル:勘ぐり

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「ククク……」

 デンデデン♪

『チュートリアル:家へ帰ろう』

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:体力+』

 夜も更けてきた十時頃。先生、クラスメイト、親友に彼女、そして惜しくも敗退した友達にも、一回戦を勝ち抜いた時と同様に賛辞を貰った。

 当然両親にもおめでとうメッセージ貰ったし、某蟹さんにも貰った。既に返事は送った。

 飲んで騒いでの乱痴気騒ぎカラオケボックスな昨日とは違って静かな夜だ。当然騒ぎの原因であるエルドラドは遊びに来てはいない。今日のリャンリャンは大人しい。

 普段は仙人気取って……まぁ本物の仙人だけど、全幅の信頼を俺に寄せてて基本的に言う事を聞いてくれる頼れる家臣ヴァッサルだ。

 だがエルドラドが絡むと悪ノリと言うか学生のノリと言うか……。どうもはっちゃけるシーンが多い気がする。いや多いな。馬が合うのだろうか……。

「ククク……」

 そして何故頻りにクククと言って四天王の中でもうんぬん言ってそうな事を呟いているのかと言うと、答えは動画だ。正確には今日の俺のバトル動画。

《ワーワー――》

 とスマホから歓声が聞こえてくる。場面は俺が津田センパイに殴り掛かる瞬間。スマ○ラで言うと空横によるゲンコツに加え、流れるように反転空後。そしてさよならバイバイ。

「ククク……」

 非常に栄えるシーンだ。シャケダン上等高速屈伸煽りするイケメンにゲンコツをぶちかますのも最高に胸が晴れる所だが、反転空後を繰り出した時の胸部の張りが素晴らしい……!

 完璧にガノン○ロフだ!

「コメントは……」

 この動画のコメントを流し見でざっと見ると、中にはセンパイの行動に非難するのもあるけど、大半は草を生やしておおむね楽しんでもらえている様子だ。

 そして勝利後の俺がとった煽り返しにも賛否両論が付いている。まぁ当然の反応だろう。

 だが俺はメゲナイショゲナイ泣いちゃダメ! だって精一杯戦ったから!

 傍から見れば二回戦第三試合の俺VS津田センパイは概ねあっさり終わったと受けるだろうけど、正直、津田センパイのバトルは緊張した。

 センパイの武器であるガリアンソード、弓、斧、槍はもちろん脅威だけど、俺が感じたのは的確に相手を騙せる一味だ。

 ほんの一瞬、光る矢を凝視し完全に策略に嵌った俺は見事に一撃をもらった。あの攻撃は俺が騙される前提の行動。見事してやられた訳だ。

 ……煽りが無かったら普通に尊敬できるセンパイなのにな。……ん? 俺? 俺は意趣返しだからノーカンだ。

「さて、明日は抜ける奴の同人誌主人公とのバトルだ!」

 そう。明日の水曜日は三回戦目が始める。第一試合は西園寺センパイVS氷室くん。第二試合はガノン○ロォフ!(スマ○ラ風)VS幼馴染に逆レ○プされ童貞を捨てた俺でも魔法使いになれるんですか?(ラノベ風)のカードだ。

 後半のカードは希望と現実が入り混じっているが気にしない。

 俺童貞スけど? って顔した戸島の野郎は実の所非童貞というね。

「……なんかイライラしてきた」

 あの野郎ぉ、巨匠ツヤコのお眼鏡に適ったからってやすやすと童貞捨ててんじゃねーよ……。しかも中三だって? おませちゃんかクソガキィ!!

「羨ましいだろうがああああああああ!?!?」

 ッキッキと軋むスマホ。思わず握り潰しそうになった。

 多重魔法と対するは特大魔法。正直な所、戸島ことダーク=ノワールとアズにゃんのバトルは映画見てる気分で最高にテンション上がった。動画のコメントみたいに俺も風と熱と光を控室じゃなく現場で感じたかった。

 しかも痛いキャラ作ってる割には妙なファンも付いている。

「……いっその事逆レの話ネットに流すか……?」

 いやダメだッ!! あまりにもプライベートすぎる情報!! 嫉妬心に従って流せば巡り巡って俺が社会的に死ぬ!! その構図が見えるッ!!

 ないより巨匠ツヤコに迷惑をかけられない……!

 ……それにしても。

「……戸島の野郎、ツヤコの控えめな胸を揉んだのか……?」

 クソッ!! どいつもこいつも盛りやがって!! 俺なんて彼女いるのにおっぱい触ったこと無いんだぞ!!(←気絶して記憶が無い) 

「ッだが!!」

 おもむろにベッドから立ち上がり、シュパッとパジャマをキャストオフ!!

「――自家発電の時、来たる……!」

 そう、何を隠そう自家発電するときはマッパがデフォな俺だ。家族写真が入ってる額縁のガラスに、鍛え上げた俺の裸体が反射して映る。しかし、電灯の光が局部を反射。何がとは言わないけど、大丈夫だ。

 これまたおもむろにベッドの上に戻り、正座してスマホの画面を凝視。

 おっと、俺のプリティなお尻はお触り厳禁だぜ!!

「ククク……」

 裸単騎。なぜすぐにおっぱじめないかと言うと、時を待っているのだ。

 そう! 大好きな彼女が送って来るオカズをッ!!

  ンアッー!(≧Д≦)

「神妙に待つ……」

 昨日はご褒美として大変美味しく頂いたえっちな画像がビックバン。あわやきんのたまが爆発しかけた。

 そして今回も瀬那様からご褒美を頂戴することが既に決定している。故に全裸待機なのだ……。

 正直、昨日の画像でしこたま自家発電してもいいけど、ここは新しいしこたまでしこたまするしかない。

 数分後。

 ポウン♪

「ッ!!」

 着信音が鳴ったと同時に亜高速の速さでスマホを手に取った。もちろん瀬那様からのメッセージだ。

 さっそく見てみよう!

≫なにこれ

「……?」

 赤面した感じの文章が来ると思ってたけど、この一文は……。全くの予想外だ。いったい何を示唆してるのか……。

 そう思っていると、

 ポウン♪

 爆発するような期待していた画像じゃなく、動画ファイルが送られてきた。

 俺は何事かと真顔で動画ファイルをタッチ。瞬時に動画が再生された。

《アサにゃんかっこいいぞ!! うおおおおおお!! ――――( ゚∀゚)o彡゚ アサにゃん! アサにゃん! アサに――》

「……」

 俺はそっと動画を閉じた。

「進太郎おおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!」

 俺を後ろから撮ったのは間違いなく月野 進太郎だ!! あのクソ眉毛何てことしやがる!? こっちとら必死に応援してただけなのに!! こんな形で瀬那が見ちゃうと変な勘ぐりするだろ!?

≫浮気?

「ほらああああああああああ!!!!」

 昨日はイイ感じのトークだったのに今はたったの一言だけ! 完全に怒ってる!! あの闇が深い感じの瀬那が垣間見えてるだろ!?

「グヌヌ!」

 メッチャ笑顔のクソ眉毛と、光沢を無くした瞳で俺を見る瀬那の顔が容易に想像できるッ!!

≫あさにゃんて何。センパイの事好きなの

「あわわわわわわわ返事返さないととと」

≪好きじゃない! LIKEなだけ! 俺が好きなのは瀬那だけ!

≫でも頬染めて嬉しそうだよ、萌

≪リスペクトしてるだけ!

≫テンション上がってた

≪応援してるから! センパイのファンなんだよ俺!

≫聞いたことない

「く、苦しい言い訳にしかならないぃいいぃぃいいい!!」

 だけどファンなのは事実ッ。でもそんなこと関係ないゾ、浮気を疑ってる彼女にはッ!!

「どどどどうすればいいんだ俺はぁあ!!」

 動画を瀬那に送った進太郎が悪いと言いたい所だけど、これは俺が撒いた種。自分の事を棚に上げて怒る事は趣味じゃない……。

「……素直に謝るべきだ」

 そう。過ちを認めて謝罪する。これこそが仲直りの第一歩だと俺は思う。

 正座し直してスマホを両手持ち。ポチポチと文字を打っていく。

≪ごめんなさい。悪いのはボクです。

≫そう。

「うぅ。一言だけはグサリとくる……」

≪すみません。

≫本当に怒ってるんだよわかってる?

≪肝が冷えました。

≪大事な瀬那の事を配慮してませんでした。

≪もうしません。

≪許してください。

 俺は今、自分の部屋で全裸になり、スマホに向けて誠心誠意の土下座をしている。心からの謝罪。誰も見てないからこその真摯な謝罪が必要。

 土下座しながら数分後。

≫許して欲しい?

 時、熟す。

「おお! キタコレ!」

≪許して欲しいです

 この兆しを俺は億年待った! 暖房を利かせてるとは言え真冬の全裸は体が冷えるからな! 実況のJ・カビラじゃないけど俺もクゥ^~~って言うとこ――――

≫じゃ萌の裸みせて

 テーーーン(ピアノの音)

 思わず俺も虚無の真顔。

「……」

 どうやら瀬那の打ち間違いだな。

『チュートリアル:写真を送ろう』

「!?」

 間違いじゃない!? 

≪裸

≫早く

「返事が早い……」

 チュートリアルが出たって事はマジで裸見たいのか……。でもこのレスポンスは妙だ。これは相当根に持ったオコなのかもしれない。下手に聞くと機嫌を損ねるやも……。

「はぁ……」

 そう思った俺は静かにベッドの上を座り直し、壁に寄りかかって反省してます感ある顔と上半身を自撮り。

 パシャリと一枚。

 スマホを操作してちょちょいと送信した。

 デンデデン♪

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:技+』

 これで機嫌がなおるならいくらでも自撮りするゾ。

 昨日は瀬那のを貰ったし、等価交換といったところか。

「……萎えたぁ」

 とんだ波乱万丈だ。すっかり自家発電気分も無くなったし、明日に備えてもう寝――

≫裸みせて

「……いや送ったろ。チュートリアルクリアしたし……」

≪送ったけど

「もう十一時か。流石に寝ようか――」

≫ちんちんみせて

 テーーーン(ピアノの音)


 この後、ご要望に応え待機状態の機動戦士写真を送った。

 秒で既読が付くも数分待てど返事は返ってこなかった。

 この状態の意味を妄想の爆発具合で勘ぐった俺は正座。

 スッキリし、そのまま笑顔で就寝した。
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