俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮

文字の大きさ
上 下
99 / 261
第十章 対抗戦 予選

第99話 チュートリアル:マセガキ

しおりを挟む
「「おおおぉぉぉ!!」」

 テーブルに並べられた四つのデカプリン。女子二人が目を輝かせて期待に胸膨らんでいるようだ。

 置かれただけで柔らかく揺れるプリン。高校生男子たる俺は、真っ先に彼女のおぱぱーいを想起させる。

「デケぇ……(戦慄)」

 二つの意味でデカいのだ。これが。

「これをプリンにかけるのか」

 小瓶に入ったカラメルを手に取り、そっと傾けてバニラアイスに満遍なくかけ、メニューに載ってる絵の様に上から垂らす。バニラアイスから滴るカラメルの蜜が溶け込む様にプリンへ。そのままプリンをなぞり深く混ざる様にコーヒーに溶けていく。

「「おおおぉぉぉ!!」」

 更に目を輝かす女子二人。やはり女子は甘いものが好きな人が多いな。

「魅せるねぇ。器用な店員並に上手いじゃん。喫茶店のバイトでもやってた?」

「いやぜんぜん。たださ、美味しくなーれ! って瀬那を想いながらかけました!」

「キャー素敵ィ! 萌だーい好き!」

 ドヤァ……。

 彼女の機嫌を取りつつ自分の株をあげるこの手腕! 一時期インスタントコーヒーにシロップを上手くかける謎の練習に凝っていた成果だ。

 だがしかし、眼の形が♡になっているはずの瀬那は、♡じゃなくプリンになってるのは何とも度し難い。プリンに完全敗北した形だ。

「ほら、瀬那にもやってあげるよ」

「よろしくー!」

 俺と同じくイイ感じに仕上げていくが、もう片方のカップルはどうやらひと悶着ありそうだ。

「♰ククク、甘味などは所詮女子供が喜ぶ物よ……。我にはこの、黒に染まりし苦汁が望ましい……。ククク……♰」

「あっそう。じゃあウチの飲みかけのコーヒーとそれ交換ね。はい」

「ぃいやいやいやいや!! 冗談だからつっちゃん! 食べるから! ちゃんと食べるから!!」

 コーヒーとプリンが阿頼耶識システム詰んでるバルバトスみたいなムーブでテーブルの上を回転。息ピッタリな連携だ。

「「いただきまーす!!」」

「「……いただきます」」

 元気な方と下がり気味な方。どっちが俺かわかるだろう……。

「んーおいひーー!!」

「美味し。本土からきた甲斐があった……!」

「……うん」

 まぁ美味しいのは美味しいけど、予想してた通りの味のグラデーションで反応に困る……。こうやって何でも予想してイマイチな顔するのが陰キャで、心から喜んで感情を表現できるのが陽キャだ。俺はそう思う。

「♰ククク、うまい! ♰ククク、うまい! ♰ククク、うまい!」

 ダーク=ノワールなのか煉獄○寿郎なのかどっちかにしろ。

「ンク。で? 二人はどうやって知り合ったの?」

 瀬那、突然の質問。

「こいつとは家が隣の近所で、分かりやすく言うと幼馴染」

「うまい!」

 フムフム。幼馴染か。何だか甘い話に成りそうだし、苦いコーヒーでもストロー使って飲もうかな。

「小さい頃から一緒で気が合うし、別に気遣いする仲じゃないから付き合ってる感じ」

「えーそうなんだ! 小さい頃からの幼馴染と恋人になる……! 恋愛漫画みたい!」

「そんな綺麗な感じじゃないけど。……中三の時にこいつの童貞奪って泣かせたから責任感じてるのもある」

「「ブッーーーーーー!?!?」」

 思わず飲んでいたコーヒーを吹くほどのとんでもないワードが飛び出た。しかも戸島も同じく吹いている。

 俺はすぐさまダーク=ノワールの顔を見た。物凄い脂汗と挙動不審の視線が目に見える。

「中三!? ツヤコって大胆!」

「アレはそう、熱い夏の七月の夏休みだった――」

 赤面する瀬那に、急に昔語りを始める巨匠。

 氏、曰く。

 少女漫画で培ったえっちなシーンを試したいと思い行動に移す。

 ちょうどいい所に竿役が。

 度胸合体グレ○ラガンッ!!

 満足する氏。

 ピュアだったダーク=ノワール。女を知る。

 そして今らしい。

 とどのつまりこの戸島 司と言う男は。

 暑い夏の日に仲の良い幼馴染の女の子が性欲マックスで襲ってきて、それを甘んじて受け、ねっとりしっぽり肉欲を貪ってグットアップしたと……。そういうことだ。

「それ抜ける同人誌ぃい!!」

「俺は襲われたんだよ!?」

「うるせえ! 俺がTSUTAYAで借りたGガン一気見してる他所で! お前はツヤコとマセガキか!? 普段イタイ格好してるくせにナニ気持ちよくなってんだよ!!」

「人には人の、辛い過去があるもんだ……」

「なに人には人の乳酸菌みたいな事言ってんだよ!」

 決めた! 俺はこのダーク=ノワールをボコる! もちろんトーナメントで! そのためには勝ち進めなければならないけど!

「まぁ瀬那も彼氏応援するし、ウチもこいつ応援するからよろしくー」

「萌、私もいっぱい応援するから、つっくんに負けないでね!」

「モチ!」

 ダーク=ノワールを見ながら返事した。

「♰花房 萌! 我と相まみえるまで、負けるんじゃないぞ!♰」

「それお前もだろ。一回戦で負けたらお仕置きな」

「お仕置きッ!? よよよ余計に負けられなくなった……!」

 お仕置きというワードにダーク=ノワールが震えている。

「ん?」

 瀬那も疑問を浮かべる顔。どうやら向こうのカップルのコミュニケーションの一つだろうか。非常に気になる所だが、いい加減続きのプリンを食べたくなった。

「とりあえず食うか」

 それからは雑談や近況の報告などを話、豪快プリンを平らげた。上品な甘さで美味しかったし、また来ようと言った瀬那の想いは俺と同じだ。リピートするくらいは美味い。

 ツヤコツカサカップルと別れそれぞれのデートへ突入。夕方で寒さも冷える時間。瀬那の手を握り、コートのポッケに手を突っ込み温め合う。外のイルミネーションを見ながら歩き、結局寮の門限ギリギリまで一緒に居た。

「んん――」

「――」

 女子寮付近。周りに誰もいない事を確認し、口づけ。

「今日も楽しかった! 萌、家に着いたら連絡してね!」

「うん」

 瀬那を見送り、スタスタと徒歩で帰宅。

「ただいまー」

『チュートリアル:帰宅しよう!』

『チュートリアルクリア』

『クリア報酬:速+』

 暗い廊下に明りを付け、返事がないと思うと、そう言えばリャンリャンは遅くなることを思い出す。

 瀬那の言付け通り帰って来たとスマホを操作してメッセージを送る。

 リビングの扉を開け、スイッチを押してライトを点灯した。

 そしてそいつは当然の様にソファーに座っていた。

「じゃましてるよハジメくん。デートと洒落込むとはキミも隅に置けないクソガキだな」

「テーブルに足を置くな」

「あ、ハイ。すみません」

 サングラスをかけた小皺が多いナイスミドル、エルドラドが我が物顔で座っている。

 もう突然現れても驚く事すら無くなった。それもこれも、リャンリャンと酒飲んで酔って絡んでくるわ、事あるごと無い事に現れて、「暇だから来た」という始末。

 この中年、仕事してない説。

 まぁ向こうの組織に仕事なんて概念があったらの話だけど。

「で? 今日は何の用だよ。これからサブスクでアニメ見るんだけど」

「まずはトーナメント出場おめでとう……。と言っておこうか。まぁ実力的に当然か」

「ありがとさんっと」

 冷蔵庫を開けて冷たいお茶をコップに注ぎ飲む。

「実は君の顔を見に来たんだ。ハジメくんって面白い顔してるからさ」

「……え、もしかしてバカにしてる? 俺は元々この顔だよ!? 文句あるか!?」

 急に煽られたから機械を使われたワッカ並に怒る。

「まあ怒るなよ。……ははーん、これはこれは……」

 顎に手をやり、右へ左へと体を揺らし俺の観察してきた。その行動に俺はカチンときた。

「――ッ」

「おっとストップ。これには深い事情があるんだよ」

「どんな事情だよ!!」

「それは言えないなぁ~~」

 そう言って金色の空間を出したエルドラド。このままだとどこかに行ってしまう。

「おいハゲ! ――」

「踏み込みが足りん!!」

 ヒョイと避けられる。

「アディオース!」

「おい!?」

 俺の怒り虚しく、光に包まれアイツは去って行った。

「……何だったんだよ」

 この時の俺は、意味不明なエルドラドの行動が重要なものだったと、後から気づくのだった。

 そして日にちは進んでいき、翌週の月曜日。

 トーナメントが開催される。
しおりを挟む
感想 7

あなたにおすすめの小説

うちの冷蔵庫がダンジョンになった

空志戸レミ
ファンタジー
一二三大賞3:コミカライズ賞受賞 ある日の事、突然世界中にモンスターの跋扈するダンジョンが現れたことで人々は戦慄。 そんななかしがないサラリーマンの住むアパートに置かれた古びた2ドア冷蔵庫もまた、なぜかダンジョンと繋がってしまう。部屋の借主である男は酷く困惑しつつもその魔性に惹かれ、このひとりしか知らないダンジョンの攻略に乗り出すのだった…。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

異世界から日本に帰ってきたら魔法学院に入学 パーティーメンバーが順調に強くなっていくのは嬉しいんだが、妹の暴走だけがどうにも止まらない!

枕崎 削節
ファンタジー
〔小説家になろうローファンタジーランキング日間ベストテン入り作品〕 タイトルを変更しました。旧タイトル【異世界から帰ったらなぜか魔法学院に入学。この際遠慮なく能力を発揮したろ】 3年間の異世界生活を経て日本に戻ってきた楢崎聡史と桜の兄妹。二人は生活の一部分に組み込まれてしまった冒険が忘れられなくてここ数年日本にも発生したダンジョンアタックを目論むが、年齢制限に壁に撥ね返されて入場を断られてしまう。ガックリと項垂れる二人に救いの手を差し伸べたのは魔法学院の学院長と名乗る人物。喜び勇んで入学したはいいものの、この学院長はとにかく無茶振りが過ぎる。異世界でも経験したことがないとんでもないミッションに次々と駆り出される兄妹。さらに二人を取り巻く周囲にも奇妙な縁で繋がった生徒がどんどん現れては学院での日常と冒険という非日常が繰り返されていく。大勢の学院生との交流の中ではぐくまれていく人間模様とバトルアクションをどうぞお楽しみください!

俺だけ永久リジェネな件 〜パーティーを追放されたポーション生成師の俺、ポーションがぶ飲みで得た無限回復スキルを何故かみんなに狙われてます!〜

早見羽流
ファンタジー
ポーション生成師のリックは、回復魔法使いのアリシアがパーティーに加入したことで、役たたずだと追放されてしまう。 食い物に困って余ったポーションを飲みまくっていたら、気づくとHPが自動で回復する「リジェネレーション」というユニークスキルを発現した! しかし、そんな便利なスキルが放っておかれるわけもなく、はぐれ者の魔女、孤高の天才幼女、マッドサイエンティスト、魔女狩り集団、最強の仮面騎士、深窓の令嬢、王族、謎の巨乳魔術師、エルフetc、ヤバい奴らに狙われることに……。挙句の果てには人助けのために、危険な組織と対決することになって……? 「俺はただ平和に暮らしたいだけなんだぁぁぁぁぁ!!!」 そんなリックの叫びも虚しく、王国中を巻き込んだ動乱に巻き込まれていく。 無双あり、ざまぁあり、ハーレムあり、戦闘あり、友情も恋愛もありのドタバタファンタジー!

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

Hしてレベルアップ ~可愛い女の子とHして強くなれるなんて、この世は最高じゃないか~

トモ治太郎
ファンタジー
孤児院で育った少年ユキャール、この孤児院では15歳になると1人立ちしなければいけない。 旅立ちの朝に初めて夢精したユキャール。それが原因なのか『異性性交』と言うスキルを得る。『相手に精子を与えることでより多くの経験値を得る。』女性経験のないユキャールはまだこのスキルのすごさを知らなかった。 この日の為に準備してきたユキャール。しかし旅立つ直前、一緒に育った少女スピカが一緒にいくと言い出す。本来ならおいしい場面だが、スピカは何も準備していないので俺の負担は最初から2倍増だ。 こんな感じで2人で旅立ち、共に戦い、時にはHして強くなっていくお話しです。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

処理中です...