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第十章 対抗戦 予選

第85話 チュートリアル:闇人(やみんちゅ)

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「斬る!」

 オーラ剣一閃。横に斬られたモンスターがバラバラになって消える。

「ヘビーパンチ!」

 重いパンチを受けた胸部にヒビが入りそのまま消滅。

「爆焔符!」

 火球が二体を包み爆ぜさせた。

「「「フー―!!!」」」

 帝江のたいあたり。こうかはばつぐんだ!

 今、俺たちは塔の大きな螺旋階段を上りながら上から向かってくるモンスターを倒している。クリスタルでできた人型モンスターだけどそんなに強くない。

 でも。

「数が多いんだよ!!」

 出力を上げ伸びたオーラ剣で横一閃。バリバリと音を立てて消滅していく。そして点が入る。

 塔の中は案の定ハリポタ現象で実際より広い空間。入ってきた扉以外は扉らしいものは無く、ご丁寧に昇って下さいと言わんばかりな階段を上る一択だった。

 エントランスのモンスターを軽く一掃してちんたら階段を上っていると、突然モンスターが出現。コミケダッシュの如く我先にと襲って来た。

 階段から蹴り落とした奴がこれまた続々と昇ってくるもんだから大変だ。

 正直、落下ダメージが無い仕様なのかバグなのかわからないゲームを彷彿とさせた。

「っつってもッ!」

「点数がいっぱい入るいい場所だねッ! えい!」

「穴場だな! 後ろの奴は任せてくれ! ッフン!!」

 もうリストバンドから点数が入る音が止まない止まない! 気分はドカンの下にあったコインをとるマリオだ。

 って事で、久しぶりにやるか!

「右手に剣を!」

 モンスターをアッパーで浮かせ足を握って。

「左手にモンスターを!」

 いつかの棍棒形態だ!

「オラア邪魔だ邪魔だあ!!」

 あれ? 俺ってコーエーの無双キャラだっけ? と思うくらいバッサバッサと薙ぎ倒していく。

「アタシだってやるよー!」

 符を指に挟んだ瀬那が出る。

「混撃! 閃雷風衝せんらいふんしょう――」

 可視化した巨大な緑の風に雷が帯電している。

 焦げる様に消えていく符を持つ人差し指と中指が指さし。

螺旋撃らせんげきぃいい!!」

 群れるモンスターたちがたちまち消滅。

 雷を纏う風が螺旋を描き、ギャリギャリと削るドリルの様に猛スピードで階段を突き進んでいく。

「やるな朝比奈。なら俺も」

 構える月野。

 腕に纏うガントレット。拳を握った指からガントレットの継ぎ目を伝う様に黄色の線が発光。

「インパクト・ダッシャー!!」

 振り切った拳が空を切るが、可視化した黄色の衝撃波が昇って来るモンスター達に直撃。そのまま螺旋階段に沿って衝撃波が俺の視界から消えていった。

「せ、成長してるなうん」

 瀬那の法術と月野の技。二人ともトレーニング頑張ってるとは思ってたけど、泡沫事件の魚人モンスターなら楽勝なほど成長してそうだ。

 ……けっしてド派手さで俺が負けてるとは思ってないよ? つか瀬那の混撃は既視感あると思ったら完全にギガドリルブレイクじゃん……。月野のガントレットに至ってはどっかのヒーローみたいにカッコよかった……。

「とりあえず片付けたねー」

「どうしたはじめ

「……いや、なんでもない」

 こんなんじゃ俺ってただの野蛮人みたいな戦い方じゃないか! 

 と、そんな事を思っていると、斜め下から炎の矢が勢いよく飛んできた。それをオーラ剣で相殺する。

 三人とも下を見た。

「もう逃げられないわよ! 追い付いてリタイアさせてあげるわ!!」

「吉さん、今の不意打ちカッコ悪いよ?」

「うるさいわね! はやく昇ってとっちめなさい!!」

 反響しながらギリギリ聞こえる叫び声。結託したクラスが到着したようだ。

「しつこい連中だなぁ」

「早く上に上がろ!」

「行くぞ」

 俺たちは駆け足で階段を上がる。厳しいトレーニングで体力は付いているからどんどん休みなく上がって行く。

「待て待てえええ!!」

「それ言われて待つ人いないでしょ!」

「一言うるさいのよ! 逃がしたのあんたのせいなんだからね!!」

 もちろん下の連中も体力はある。同じくドタバタと階段を昇って行く。

「来たぞ!」

「□□□!!」

 上から人型モンスターの集団がまた登場。

 このままだと吉さんたちとモンスターの板挟み。非常にまずい状況。

 だが。

「そーーーい!!」

 オーラ剣を太く長く板状に伸ばし、モンスターを斬るのではなく階段から何体も巻き込んで押す様に落としていく。

 その薙ぎ払いをしながらペースを落とさず昇って行く。

「えい!」

「フン!」

 漏れ出したモンスターを二人が倒す。

「アハハハ! なんか昇ってくるんだけどー!」

「この! モンスターを押しつけるなんて卑怯よ!」

「アディオーーース♪」

 卑怯なのはどっちなんだと言いたかったけど、とりあえずメッチャ笑顔で下の生徒たちにエールを送った。

 点数を与えている事になるけど、足止めとして機能してるから良しとしよう。塔の頂上にとびきりのモンスターが居る事を願うばかりだ。つかいてくれマジで。

「オラアアア!!」

 棍棒(モンスター)を投げて攻撃。複数を巻き込んで消滅。オーラ剣をもう一対握り、二刀流へ。そろそろ頂上への出口が見えてきたからここからはひたすらに斬り伏せていく。

「久々にかますか!!」

 オーラ剣の出力が一気に上がり、剣先が天井に突き刺さる。

 そのまま――

「ハイパーオーラ斬りだああああ!!」

 縦一閃。階段諸共モンスターを粉砕。

「堕ちろよおおおお!!」

 そのまま横に払い塔の内側に大きく傷を着け、いっきにモンスターを蹴散らした。

「派手な技あるじゃないか」

「すっごい!!」

「これくらいしか無いけどな……。さ、頂上は目前だ!」

 階段を駆け上がり頂上へ出ると、ハリポタ現象をフルで使ったのか広い広い円形の闘技場なステージになっていた。

「油断するなよ二人とも……」

「うん」

「わかってる」

 ゲーマーな俺にはわかる。ここに間違いなくボスがいると。

 さあ今か今かとボスの登場を少しづつ歩を進めながら期待していると、何かがはためく音が聞こえた。その音の方向を見ると、間違いなく人がきていた。

 ステージの真ん中にスタッとヒーロー着地した人。武器を構えて警戒する俺たち。

 だが、その人物の一言で、少しだけ警戒を緩く事になる。

「あっぶね!? 時間いっぱいギリギリだった……落下して終わるところだった……!」

 少しよろめきながら立ち上がり、息も絶え絶えで非常に焦ってる口調。

「……ハ!?」

 鼻まで覆う長い襟が特徴で腕や脚に包帯を巻いている謎の人物。無言で真顔な俺たちに気付いたようだ。

「……ごほん」

 なんか咳払いした。

「♰フフフ、我は漆黒の魔導士ダーク=ノワール……!! 残念だったな。我が来たからには貴様らの快進撃はここで終わりだ♰」

「二人とも、彼はCクラスの戸島とじま つかさだ」

「見た頃あるうん」

「こんにちは!」

「♰ち、違う! 我は暗黒の魔導士、ダーク=ノワールだ!♰」

「漆黒なのか暗黒なのかどっちなんだよ!」

 なんなんだあの中二病全開な痛い奴は。漆黒か暗黒か思わずツッコんでしまった。
 しかし飛んできたって事は貴重な飛行系スキルを持ってる事だ。就職先のサークルのアピールに仕えるからなんとも羨ましい。

 俺も飛べるっちゃ飛べるけど、それは幻霊になったとき限定だ。

「気を付けろ二人とも。戸島は個性的な格好をしてるが、実力は本物だ」

「♰フフフ、我は漆黒の闇人やみんちゅ! 暗黒の世界に轟かせた我が魔法が貴様らを屠るだろう♰」

 ダーク=ノワールの周りにいくつもの小さな魔法陣が出現。ゲームのボスみたいな演出をセルフでやってのけた。

 ちなみに闇人はやみびとと読み、ソニーが開発したホラーゲームSIR○N2のキャラクターたちを指す。ファンの間でやみんちゅと呼ばれているから、あのダーク=ノワールはファンで間違いない。

「♰さあ恐れ慄け!!♰」

 構えるダーク=ノワール。

 そして。

「◇□◇□」

 ダーク=ノワールの背後に瞬間移動して来たここのボスが現れた。

「ダーク=ノワールぅ! 後ろ後ろー!」

「♰ん? 後ろ?♰ ――オワヒャアアアア!?!?」

 飛び跳ねて距離をとったダーク=ノワール。キャラ崩壊だ。

「◇□◇□!! ◇□◇□◇□◇□!!??」

 クリスタルな体を持つ大型のボスはお怒りのようだ。
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