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第八章 VS嫉姫君主
第58話 チュートリアル:鬼神
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「ハアアアアア!!」
稲妻を纏う槍が襲う。
「うおおおおお!!」
風を切る拳が襲う。
「フン!!」
拳――メリケンサックを腕の甲殻で受け止め、泡を纏った甲殻で槍をいなす。
いなされた勢いのまま槍を地面に突き刺し、新体操の如く回転。稲妻を纏わせた蹴りを放つ西田。
体を逸らして避けられる。
(図体デカいくせに身軽だな!! ッ!?)
着地ぎまにそう思った西田だが、セバスチャンの口の泡が激しく吹いている事に気づく。
「――」
バブルこうせん、みずてっぽう。身体を動かす脳の伝達より速い刹那。それに思考される安易な技。どういった攻撃であれ、今のままでは一撃貰ってしまう。
「ッ」
(ヤバいッ!!)
スローモーションで分かるセバスチャンの吹き出そうとする攻撃。
それを間一髪で――
「フィスト!!」
「ガフッ!?」
顎を砕かんとする優星の一撃が止める。
(今だッ!!)
口を強制定期に閉じられ暴発しジェット噴射の如く噴射する水。瞳だけを下に動かしたセバスチャンの瞳に映るのは西田の攻撃。
「ライトニング・ランス!!」
「ッ」
穂先が甲殻に激突。西田に確かな手ごたえは無く甲殻も欠けや割れも無いが、纏った雷撃がセバスチャンの体を痺れさせ、痛みを与える。
硬直するセバスチャン。
「おおおおお!!」
「ハアアアアア!!」
その隙を見逃さないと二人は攻撃していく。
ダメージがある無いにかかわらず攻撃が通っている。その事実に部隊長は防御体制から攻撃体制へ部隊を指示。
それを聞いた西田と優星が一通り叩きこむとセバスチャンから距離を置き、痺れ動かない敵に対して号令。
「攻撃発動おおおおおお!!!!」
檄からの遠距離攻撃。
魔術から呪術、様々な遠距離攻撃が一つの束になり、虹がかかる様な異色の攻撃と化す。
轟ッ! と着弾。爆風による凄まじい砂煙が西田たちを覆う。
視界を覆う砂煙。誰もが冷や汗を流し硬直する時間。そんな時間の中駆ける音が聞こえた。
(……やはり報告にあった通り、この世界の頂点である人間は闘争本能が凄まじい。覚醒して間もないと言うのにこの適応能力)
素直な感想だった。
まるでそう言った能力を知識として知っていたかのように順応。セバスチャンは古い甲殻を崩壊させ、その下から新たな甲殻を生みながらそう思った。
(さて、煙が晴れたら無傷の私を披露する事になるが、彼彼女らはさぞ驚くだろう)
唖然とし涙ぐむ人間の姿を想像するセバスチャン。喜怒哀楽が激しいフランダーの様だとクスリと笑う。
(フランダー……)
今はもう居ない彼を想う。どこまでも純粋で、どこまでも笑顔が眩しい。
思い出に浸っていると、地面を蹴る音が微かに聞こえ、顔を上げて張り詰める。
(……フ、どうやら私は甚だしい思い違いをしていた様だ)
拳を作る。
(驚く。驚きはするだろう。この無傷な姿に)
駆ける音が大きくなる。
(だがそれだけ。すでにそれを見越しているからこそ――)
頬を撫でる砂煙からヌッと出てきた西田と優星。セバスチャンは内心ほくそ笑む。
(貴方たちは挑んでくる!!)
長槍だった西田の得物が取り回しの良い短さに。優星の腕は半透明な機械の腕を纏っている。
(短期決戦ッッ!!)
(調子を作らさないッッ!!)
腕の照準を西田に捉え迎え撃ち、乾いた音を奏でて水弾が発射。
刹那を避けるが水弾が頬を掠る。
「アサルト・フィスト!!」
大地が割れる様な音。
「!!」
西田に気を取られている間に接近した優星。甲殻纏うセバスチャンの脇腹に重い一撃を浴びさせ、並の硬さではない甲殻をひび割れさせる威力を叩きこんだ。
(その腕は見かけだけじゃ無いようだッ!!)
しかし踏みとどまるセバスチャン。目だけを動かし、まるで効いていないと言わんばかりの眼光で優星を見た。
「――」
睨む優星。そんな事は知っていると同じく睨んでいた。
「おおおおお!!」
跳躍した西田が勢いのまま迫る。
見据えるセバスチャン。
「オラァ!!」
帯電する槍を投擲した。
風を裂きながら真っ直ぐ突き刺しに来る。胴が痺れるくらいなら手だけでいいと拳を作り、そのまま槍をジャストタイミングで払いのけた。
「――」
それが狙いだった。
(発動ッッ!!)
心の中で叫んだ優星の叫び。瞬間、優星の体に西田同様の雷による帯電が纏われる。
そしてそれは西田も同様。雷を纏うのも相まり腕には半透明な機械の腕が出現。
「ッ!?」
発動時間はたったの五秒。今日会い、数分話し、こうして共に戦う二人の絆の時間。だが今のこの場面では十分だった。
苦楽を共にし、寄り添い、笑い合う。その絆が、結び付く絆の力が強い程、このスキルは強く発揮する。
そのスキル名は。
「「ライトニング!!――」」
『同期』
「「フィストオオオオオ!!!!」」
優星の拳が腹部を。西田の拳が横顔を捉え、下と上からの同時攻撃を浴びせた。
「ガフ――」
よろめくセバスチャン。
「ぬんッ!」
勢いのまま地面に突撃をする西田。その迫りを誘導するように、優星は着地寸前の西田を機械の腕でカバー。遠心力に任せ自分を中心にして回す。
そしてタイミングよく離し、二人の迫力のまま機械の拳甲を合わせて再び放つ。
「「ライトニング・フィストオオオオオ!!!!」」
「ブフッッ!!??――」
上へ上へと吹き飛ばされるセバスチャン。
渾身の二撃は深く舞っている砂煙を一気に払拭する威力と衝撃波。様子を伺っていた部隊員たちが一斉に身構える。
セバスチャンは思った。この世界の人は、いや、この二人はどこまでも戦いに貪欲だと。
(二人の力が一つになった……フフ)
体の芯に響いた一撃。口から泡が溢れた状態でセバスチャンが笑う。遠のいていく二人の姿。もうシンクロの効果が切れた状態で膝を着いている。
(どうやらその攻撃はおしまいか)
吹き飛ばされながら想う。
(逆立った茶髪の彼は雷撃系。いやはや、まさか弱点を突いてくる輩と遭遇するとは思わなかった)
水や海に属する者の全てではないが、雷撃は弱点そのもの。ひとたび雷撃を浴びようものなら並のモンスター、または上位種の者はたちまち倒れる事になる。耐えれるとしたらフランダーと彼の飼っていたフランダルスくらいだろう。
(彼はまだまだ強くなる。……しかして、同じくポテンシャルを秘めているのはもう一人の方もだ)
膝をつきながらも優星はこちらを睨んでいる。そう確信めいた物があるセバスチャンは頬が緩む。
(彼の頭部はまさに同種。同じ甲殻類の出として期待せざるえない)
首に巻かれている白の布が不自然な動きをしていたとセバスチャンは思い出す。きっと自在に動かせ、隙あらば仕掛けてきたに違いないと結論付ける。
(しかし――)
後がない。
セバスチャンを真上へと吹き飛ばしはしたが既に息も絶え絶え。落下によるダメージなどいくらでもカバーできる。だが何故こうしたのかと考える。
(周りにいる有象無象を頼っているのか? 一斉攻撃をあえて貰いはしたが効果が無い事は明白……)
刹那の時間を幾つも繋ぎ合わせた思考。既に新たな甲殻も再生されダメージも回復している。
(膝を着いているのは演技なのか、それとも彼らに私にダメージを与える秘策でもあるのか……)
巡る。巡る思考。風を切り吹き飛びながら彼らにどんな秘策があるのかと考える。だが再生能力に自信がある自分には並大抵の攻撃では歯が立たない。
自分を倒しきれない
思考に思考を重ね、一つの可能性を導き出した。
(自分たちでは倒せないと分かったうえですべてを出し切ったのか!!)
ハッとしたセバスチャンは正面を向いた。
「不流亜々々々々々々々々!!」
「――――――」
鬼神――
気付いた頃には遅かった。コンマにも満たない速度で突撃され思考の余地すら与えられない衝撃。
「っく、任せたぞ……」
「……黄龍仙!!」
眩い星のきらめきを思わせる星屑。それにすべてを賭けて二人は呟いた。
稲妻を纏う槍が襲う。
「うおおおおお!!」
風を切る拳が襲う。
「フン!!」
拳――メリケンサックを腕の甲殻で受け止め、泡を纏った甲殻で槍をいなす。
いなされた勢いのまま槍を地面に突き刺し、新体操の如く回転。稲妻を纏わせた蹴りを放つ西田。
体を逸らして避けられる。
(図体デカいくせに身軽だな!! ッ!?)
着地ぎまにそう思った西田だが、セバスチャンの口の泡が激しく吹いている事に気づく。
「――」
バブルこうせん、みずてっぽう。身体を動かす脳の伝達より速い刹那。それに思考される安易な技。どういった攻撃であれ、今のままでは一撃貰ってしまう。
「ッ」
(ヤバいッ!!)
スローモーションで分かるセバスチャンの吹き出そうとする攻撃。
それを間一髪で――
「フィスト!!」
「ガフッ!?」
顎を砕かんとする優星の一撃が止める。
(今だッ!!)
口を強制定期に閉じられ暴発しジェット噴射の如く噴射する水。瞳だけを下に動かしたセバスチャンの瞳に映るのは西田の攻撃。
「ライトニング・ランス!!」
「ッ」
穂先が甲殻に激突。西田に確かな手ごたえは無く甲殻も欠けや割れも無いが、纏った雷撃がセバスチャンの体を痺れさせ、痛みを与える。
硬直するセバスチャン。
「おおおおお!!」
「ハアアアアア!!」
その隙を見逃さないと二人は攻撃していく。
ダメージがある無いにかかわらず攻撃が通っている。その事実に部隊長は防御体制から攻撃体制へ部隊を指示。
それを聞いた西田と優星が一通り叩きこむとセバスチャンから距離を置き、痺れ動かない敵に対して号令。
「攻撃発動おおおおおお!!!!」
檄からの遠距離攻撃。
魔術から呪術、様々な遠距離攻撃が一つの束になり、虹がかかる様な異色の攻撃と化す。
轟ッ! と着弾。爆風による凄まじい砂煙が西田たちを覆う。
視界を覆う砂煙。誰もが冷や汗を流し硬直する時間。そんな時間の中駆ける音が聞こえた。
(……やはり報告にあった通り、この世界の頂点である人間は闘争本能が凄まじい。覚醒して間もないと言うのにこの適応能力)
素直な感想だった。
まるでそう言った能力を知識として知っていたかのように順応。セバスチャンは古い甲殻を崩壊させ、その下から新たな甲殻を生みながらそう思った。
(さて、煙が晴れたら無傷の私を披露する事になるが、彼彼女らはさぞ驚くだろう)
唖然とし涙ぐむ人間の姿を想像するセバスチャン。喜怒哀楽が激しいフランダーの様だとクスリと笑う。
(フランダー……)
今はもう居ない彼を想う。どこまでも純粋で、どこまでも笑顔が眩しい。
思い出に浸っていると、地面を蹴る音が微かに聞こえ、顔を上げて張り詰める。
(……フ、どうやら私は甚だしい思い違いをしていた様だ)
拳を作る。
(驚く。驚きはするだろう。この無傷な姿に)
駆ける音が大きくなる。
(だがそれだけ。すでにそれを見越しているからこそ――)
頬を撫でる砂煙からヌッと出てきた西田と優星。セバスチャンは内心ほくそ笑む。
(貴方たちは挑んでくる!!)
長槍だった西田の得物が取り回しの良い短さに。優星の腕は半透明な機械の腕を纏っている。
(短期決戦ッッ!!)
(調子を作らさないッッ!!)
腕の照準を西田に捉え迎え撃ち、乾いた音を奏でて水弾が発射。
刹那を避けるが水弾が頬を掠る。
「アサルト・フィスト!!」
大地が割れる様な音。
「!!」
西田に気を取られている間に接近した優星。甲殻纏うセバスチャンの脇腹に重い一撃を浴びさせ、並の硬さではない甲殻をひび割れさせる威力を叩きこんだ。
(その腕は見かけだけじゃ無いようだッ!!)
しかし踏みとどまるセバスチャン。目だけを動かし、まるで効いていないと言わんばかりの眼光で優星を見た。
「――」
睨む優星。そんな事は知っていると同じく睨んでいた。
「おおおおお!!」
跳躍した西田が勢いのまま迫る。
見据えるセバスチャン。
「オラァ!!」
帯電する槍を投擲した。
風を裂きながら真っ直ぐ突き刺しに来る。胴が痺れるくらいなら手だけでいいと拳を作り、そのまま槍をジャストタイミングで払いのけた。
「――」
それが狙いだった。
(発動ッッ!!)
心の中で叫んだ優星の叫び。瞬間、優星の体に西田同様の雷による帯電が纏われる。
そしてそれは西田も同様。雷を纏うのも相まり腕には半透明な機械の腕が出現。
「ッ!?」
発動時間はたったの五秒。今日会い、数分話し、こうして共に戦う二人の絆の時間。だが今のこの場面では十分だった。
苦楽を共にし、寄り添い、笑い合う。その絆が、結び付く絆の力が強い程、このスキルは強く発揮する。
そのスキル名は。
「「ライトニング!!――」」
『同期』
「「フィストオオオオオ!!!!」」
優星の拳が腹部を。西田の拳が横顔を捉え、下と上からの同時攻撃を浴びせた。
「ガフ――」
よろめくセバスチャン。
「ぬんッ!」
勢いのまま地面に突撃をする西田。その迫りを誘導するように、優星は着地寸前の西田を機械の腕でカバー。遠心力に任せ自分を中心にして回す。
そしてタイミングよく離し、二人の迫力のまま機械の拳甲を合わせて再び放つ。
「「ライトニング・フィストオオオオオ!!!!」」
「ブフッッ!!??――」
上へ上へと吹き飛ばされるセバスチャン。
渾身の二撃は深く舞っている砂煙を一気に払拭する威力と衝撃波。様子を伺っていた部隊員たちが一斉に身構える。
セバスチャンは思った。この世界の人は、いや、この二人はどこまでも戦いに貪欲だと。
(二人の力が一つになった……フフ)
体の芯に響いた一撃。口から泡が溢れた状態でセバスチャンが笑う。遠のいていく二人の姿。もうシンクロの効果が切れた状態で膝を着いている。
(どうやらその攻撃はおしまいか)
吹き飛ばされながら想う。
(逆立った茶髪の彼は雷撃系。いやはや、まさか弱点を突いてくる輩と遭遇するとは思わなかった)
水や海に属する者の全てではないが、雷撃は弱点そのもの。ひとたび雷撃を浴びようものなら並のモンスター、または上位種の者はたちまち倒れる事になる。耐えれるとしたらフランダーと彼の飼っていたフランダルスくらいだろう。
(彼はまだまだ強くなる。……しかして、同じくポテンシャルを秘めているのはもう一人の方もだ)
膝をつきながらも優星はこちらを睨んでいる。そう確信めいた物があるセバスチャンは頬が緩む。
(彼の頭部はまさに同種。同じ甲殻類の出として期待せざるえない)
首に巻かれている白の布が不自然な動きをしていたとセバスチャンは思い出す。きっと自在に動かせ、隙あらば仕掛けてきたに違いないと結論付ける。
(しかし――)
後がない。
セバスチャンを真上へと吹き飛ばしはしたが既に息も絶え絶え。落下によるダメージなどいくらでもカバーできる。だが何故こうしたのかと考える。
(周りにいる有象無象を頼っているのか? 一斉攻撃をあえて貰いはしたが効果が無い事は明白……)
刹那の時間を幾つも繋ぎ合わせた思考。既に新たな甲殻も再生されダメージも回復している。
(膝を着いているのは演技なのか、それとも彼らに私にダメージを与える秘策でもあるのか……)
巡る。巡る思考。風を切り吹き飛びながら彼らにどんな秘策があるのかと考える。だが再生能力に自信がある自分には並大抵の攻撃では歯が立たない。
自分を倒しきれない
思考に思考を重ね、一つの可能性を導き出した。
(自分たちでは倒せないと分かったうえですべてを出し切ったのか!!)
ハッとしたセバスチャンは正面を向いた。
「不流亜々々々々々々々々!!」
「――――――」
鬼神――
気付いた頃には遅かった。コンマにも満たない速度で突撃され思考の余地すら与えられない衝撃。
「っく、任せたぞ……」
「……黄龍仙!!」
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