スキル盗んで何が悪い!

大都督

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第124話 井戸の修繕

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 久しぶりと思える休日の中、その日に教会へと訪れたリック達の父、ベルガーの頼みで庶民地に置いてある井戸の修理をする事になった。
 庶民地の井戸へ向かうことを部屋で待っているアイシャへと伝えると、丁度縫い付け作業が終わったのか、アイシャも共に井戸の修繕へと向かうことになった。
 プルンは教会の手伝いがあるというのでお留守番である。
 街のお祭りも終わりムードが漂う中、ベルガーの案内の元に壊れた井戸へと到着。

「ここだ」

「なるほど、これは酷いですね」

「ミツ、どう?」

「そうだね……」

 井戸の状態は説明を受けていた通り、周りの石造り部分が失われ、壊れた井戸は馬車が打つかった衝撃を物語っていた。
 井戸を調べている自分を、少し離れた所で伺うベルガー。

「……フンッ」

「親父、何不満そうな顔してんだ?」

「別に……」

「あらあら。フフッ」

 先程から口数が減り、段々不機嫌になっていくベルガーを見て、リックが声をかけるがそれも素っ気ない返事。
 妻のナシルは何か察しているのか、井戸を覗き込むミツと娘のリッコの距離感を感じていた。

「ベルガーさん。井戸の中の廃材等が既に片付けられてますから、修繕は直ぐに取り掛かれます。石材屋に必要な材料を取りに行くのでご一緒してもらえますか?」

 壊れているのは外装がメインで、内側の損傷は瓦礫での傷が多少あるぐらいだった。
 これなら直に作業にとりかかれる事をベルガーへと伝える。
 ベルガーは修繕が直ぐにできると聞いて、少し複雑そうな笑みを浮かべた。

「……そうか。石材屋には話は通しているから直ぐに行ける。だが、材料を運ぶための馬車も荷台もまだ用意されてないからな。さて、何処から借りようか……」

「そうですか。いえ、材料とかは自分が運びますよ」

 考えるように口元に手を当てていたベルガーへと、荷物を運ぶことにそれは問題ないと告げると彼は目を瞬かせた。

「え? ……君は材料がどれだけあるのか理解してるかい? ここに居る男手だけで運ぶのは流石に難しい量になるぞ?」 

「父さん、ミツ君はアイテムボックスを持ってますよ。試しの洞窟でのモンスターの素材も彼が運んでくれましたし」

「まぁまぁ。君はアイテムボックスを持ってるの? あれは冒険者としてとても役に立つ物よね」

 母のナシルは息子のリッケの言葉に驚きながらも、自分がアイテムボックスの所持者と言うことに感心した感じに、ポンと一つ手を叩く。

「そうか。なら数回往復するかもしれんが、材料の運びは君に頼む。こっちだ。そんな遠くはない店だ」

 ベルガーも自分がアイテムボックスを所持していることに驚いたのか、軽く目を見開く。
 元冒険者の二人には、アイテムボックスの便利さはすぐに理解できるのだろう。
 
 ベルガーに案内され、材料を取りに近くの石屋へと移動する。彼の言うとおり石材屋それ程遠くもなく、歩いて数分もかからない距離にあった。
 店の前にいくつもの石材が置かれ、少し家の裏に置かれていると思われる石材もチラッと見えた。

「おやっさん、いるかい?」

「おお、ベルガーさんじゃないかい。どうした?」

 ベルガーの声に反応して店から出てきた店の主人。

「以前話した井戸の材料を貰いに来た。代金は役所にも連絡が行っているからそっちに回してくれ」

「おや。もう職人が見つかったのかい? それは良かった。家の者もあの井戸が使えなくなってギャーギャー言ってるからな。早めに目処がついて良かった。ところで旦那、荷台はどこだい?」

 店の店主は井戸の修理が始まることを知ってニカッと笑みを見せる。奥さんが居るのか、嫁からの愚痴をこぼしながらも石材を運び出す荷台を探していた。
 店主の言葉にベルガーは気持ちは解ると苦笑いを浮かべ、首を縦に振りながら荷台はないと店主へと告げる。

「ああ。解るぜおやっさんの気持ち。仕事行くたんびに井戸の使用で喧嘩納めから始まるのは俺も嫌だったし、それから開放されると思えば助かるか……。それと、荷台はない。材料はそこの少年がアイテムボックスを所持してるからそれで持っていく」

「えっ。そこの少年って……!?」

 物珍しそうに山積みにされた石材を見ていた自分へと、ベルガーは視線を送って店主へと教える。店主は自分を見ると、目を大きく見開き驚きの声を出し始める。

「どうした、おやっさん?」

「お、おい、ベルガーさん。その子ってまさか大会に出でた少年じゃ!?」

「大会? なんの事だ」

 ベルガーは自分が武道大会に出場していたことを知らない。いや、聞いたのかもしれないが、息子のリッケが予選で落ちた時点で大会に興味も失い、試合の日も彼は仕事である東門を守っていた。
 そんなベルガーは放っといた感じに、店主は笑みを作りながら自分の方へと近づく。

「少年。いや、ミツ選手?」

「えっ? あ、はい?」

 思わずミツ選手と言う言葉に振り返り返事をすると、店主は目を爛々とさせたように自分へと顔を近づかせてきた。

「ああ。やっぱりミツ選手か!」

「おやっさん、ミツ選手って何の事だ?」

「ベルガーさん! 知らないのかい?」

「?」

 店主は興奮気味に武道大会での自分の戦いを、ベルガーへと説明し始める。
 それを聞いたベルガーは眉間にシワを寄せ、自分と店主を交互に見ながら、彼は訝しげな視線を送ってくる。店主の話が大袈裟にも聞こえたベルガーは息子と娘に視線で確認すると、三人も頷き店主の話を肯定する。

「マジかよ……」

「いや~。君のお陰で今年は勝たせて貰った。本当にありがとう」

「い、いえ。実は、自分は賭け自体あったことすら知りませんでした」

「はっはははっ。そうかそうか。おお、そうだった。井戸の材料だったね。この家の裏に山積みにしてる奴から持っていきなさい。なぁに、金は役所からちゃんと貰うからいくらでも持っていくことに問題はないからな」

「おいおい、おやっさん」

 そんな店主の言葉に、軽く頭を抱えるベルガー。
 店の裏へと案内されると、そこにはある程度形を整えられた石材の山があった。
 それを店主の了承の元、次々とアイテムボックスへと収納していく。
 リックとリッケの二人も収納作業を手伝ってくれたので、早々と作業を終えることができた。
 そんな光景を見ていたベルガーと店主は、呆気に取られたように呆然とその光景を見続けている。
 帰り際、店主にまた次回の武道大会も期待していると言う言葉をかけられ、店を後にした。

 材料の石材をアイテムボックスにたっぷりと詰め込み、井戸の場所へと戻る。 

「ベルガーさん、井戸は壊れる前と同じ物を造って良いんですか?」

「ああ、そうだな……。いや。できれば以前よりも少しだけ利用できる場所を増やして欲しい。だがそうなると、井戸を広げるために掘り直す必要もあるか……。ん~。ナシルは如何したほうが良いと思うよ?」

 ベルガーは壊れた井戸を見つつ、新しく直る予定の井戸の希望を述べる。
 運動後には井戸の水を使い、体の汗を流すことが多いベルガー。彼が汗を流すためと井戸を使用すると、後から来た近所の数人の奥様を待たせることが多々あった。
 ベルガーとしては順番待ちとは言え、その事が少しだけ申し訳なく思っていた。
 だが、実は近所の奥様達はベルガーが水浴びするタイミングを密かに狙って井戸に並んでいた。
 それはベルガーの鍛えられた肉体美を眼福と言わんばかりに、彼女達はまじまじと観察していたのだ。
 自身の旦那よりも鍛えられた筋肉、まだ40にもなっていないベルガーの肉体は、奥様達の目の保養剤となっていたのはナイショである。
 しかし、それができるのはある女性が近くに居ない時限定である。
 そう、その女性とは妻であるナシルである。
 ベルガーとナシルの夫婦愛の中は周囲に知られ程。そんなナシルに対してほんの少し後ろめたさを持ちながらも、奥様達は自身の欲の解消を行っていた。

「そうね。私としては雨水が入らないように屋根をしっかりと造ってくれたらそれで問題ないわよ」

「ああ、確かにな。暫くしたら雪が降り出すだろうし、教会のように雨水や雪が井戸の中に入らないようにできるかい?」

「えーっと、数人が同時に使える広さと、雨とか入らない為の屋根ですね。他に希望は?」

 要望がすんなり通る事に顔を見合わせる二人。
 ベルガーは頭を掻きながらダメ元と思いつつ、次の希望を述べ始める。

「んー。これは君に頼む要望ではないが、もう少し水嵩が増えると助かるな。井戸を使うのは大人ばかりじゃなく、あれぐらいの子供たちも家の手伝いとして使う事もある。水嵩が増えればその分、水の入った桶を引き上げるのも楽になるだろう。まあ、これは出てくる水の量に関してだからな、君にはしっかりとした井戸を造ってくれたらそれで構わんよ」

 彼の視線は10歳程度の子供たちへと向けられていた。この辺では見たことのない自分に興味があるのか、物陰からこちらを伺うようにチラチラと視線を送っている。

「水の増量っと……解りました。この希望通り造らせていただきます」

「そうか、助かる。突然の依頼なのに引き受けてくれたことに感謝するよ」

 自分が要望を聞き入れたことにニカッと笑みを見せてくるベルガー。

「ところでよ、ミツ、お前道具とか持ってるのか?」

「いや、持ってないよ?」

「お、お前な……。道具もなしにどうやって井戸を直すんだよ……」

 スキルを使って井戸を造るのだから、手元に専門の道具なんて元々必要ない。持ってないのは当たり前とばかりに答えると、リックは少し眉を上げた後、呆れた者をみるような視線を向けてきた。
 そんな兄の少し下がった肩にまるで悟ったように言葉をかける弟のリッケ。

「リック、今更何を言っているんですか? 彼の事です、僕達の予想もつかないやり方があるんですよ」

「ああ……そうだな」

 あははと乾いた笑いがリックの口から溢れる中、二人の会話にリッコが割って入ってきた。

「ねえねえ、リック、リッケ、ちょっと良いかしら? あのね、あいつが今からやる事に驚かなかった人にお昼ご飯の奢りってどう?」

「おっ、いいね。乗ったぜ!」

「もう、二人とも……。負けませんよ」

「お前。たまにノリが良いよな」

 今まで幾度も自分がやることに驚かされてきた三人。そんな事が続くと遊び心が湧く物なのか、それを聞き耳のスキルで声を拾いつつ、自分は苦笑を浮かべていた。

「き、君。道具が無いのに如何やって井戸を造るつもりだい?」

「(リックと同じこと言ってる……)まぁまぁ、大丈夫ですから。よいしょっと。皆、少し離れてね」

 アイテムボックスから先程入れたばかりの石材を取り出していく。
 井戸を囲むように積み上げられていく石材は歩く人たちの足を止めるほどに数も多く目立っていた。
 そんな光景を見てか、駆け寄るように近づいてくる庶民地に住む人々。
 ベルガーに駆け寄ってきた老夫婦は壊れた井戸の修理が予定の期日より早まった事に喜び笑みを浮かべている。

「ベルガーさん! 井戸の修理をしてくれる職人が見つかったのかい!?」

「あ、ああ……」

「本当かい!? そりゃ助かるね!」

「まぁ……見つかったと言えば見つかったか……な?」

「何言ってるんだい?」

 ベルガーのなんとも歯切れの悪い返答に、頭を傾げる二人であった。

「んー。地面も均そうかな……。だいたいこれくらいっかなっと! よし! 皆その線の内側には入らないでね」

 アイテムボックスに入れていた石材をほぼ出し切り、以前作ったスコップを使い、井戸を中心として囲むように地面へと線で円を書いていく。
 円の中には積まれた石材と壊れた井戸だけとなった。まぁ、一応念の為に人は遠ざけておく。
 
「「「???」」」

「おう、わかった!?」

 何をするか分からない人々は、言われた通りにと線の外に出ていく。

「じゃ、先ずは壊れた井戸を回収します」

 先ずは壊れてしまった井戸その物を取り出すイメージを浮かべながら、井戸に手を添える。
 時間もおかず、井戸は粘土のようにグニャリグニャリと形を変え、外側と内側に使われていた古い石材は井戸の底に一つの石となっていた。
 突然消えた井戸、そしてポッカリと空いた穴が突然現れたことにその場の人々は言葉を失った。

「「「「「「!!!」」」」」」

「い、井戸が……無くなっちまった!?」

「え、ええ。さっきまでそこにあった井戸が」

 ボソリとつぶやく声に答えるかのように、他の人も井戸が消えたことに驚愕していた。
 自分のやることに驚き耐えてみせると言っていた三人も、流石に驚きを隠せてはいないのか、頭を抱えていた。

「あ、ヤバイ……私既に負けそう」

「ま、まだまだ……。俺はこれくらいじゃ驚かねえぞ……」

「ぼ、僕もギリギリ耐えました……」
 
 眉間にシワを寄せる程に強く目を瞑るリッコ。
 腕組みをする腕に力を込めて我慢し耐えるリック。
 顔の頬を引きつらせながら笑いをこらえるリッケ。
 流石に三人も、突然目の前で井戸が消えてしまうと言うこの常識離れすぎた出来事は予想もできなかったようだ。

「ん~。井戸を無くしたら、元はこれだけの穴の広さだったのか……。ならもう少し穴を広げないと。次は地面の均しと井戸穴の広げだな」

 井戸を取り外した穴の中を確認しつつ、次の作業に移る。
 イメージとしては1メートル程の井戸があった穴を3メートルと拡張する。
 地面を水平ではなく、肉眼では解らないが少しだけ膨らんだように水が外側へと流れるように造る。
 幸いにも雨水が流れていく為の水路が近くにあるので、井戸の周りに水溜りができないように作りを変えた。
 また、一瞬で変わる光景に人々はまた目を大きく見開き驚愕している。
 先程までボコボコだった地面は均され、穴の縁は人の手では不可能だと思える程に綺麗な円を描いていた。

「「「「「「!!!」」」」」」

「よし、こんなもんか。石材があると教会の井戸よりもしっかりとした地面が作れるね」

 均された地面の硬さを確認するようにその場で足踏みをする。
 その光景を見つつ、庶民地に住む人がベルガーへと恐る恐ると声をかけた。

「お、おい。ベルガーさん、なんだい……あ、あの子は!?」

「……俺にも解かんねえ……」

 だが、ベルガーにその質問を正しく答えを返すことができるわけもなかった。

「解かんねえって……。お前さんが連れてきたんだろう?」

「ああ……確かに俺が連れてきたな……」

 当たり前のように作業を続ける自分を見ながら言葉を失ったベルガーだった。

「うん。これだけシッカリと作れば、大丈夫かな。えーっと。次は井戸の底かな……んー。リック、ちょっと来て」

「!? んっ、ああ!」

 名を呼ばれたことに少し驚きつつ駆け寄るリック。

「悪いけどこの紐を持っててもらえる?」

「お、おう。如何するんだ?」

「今から井戸の底を綺麗にしてくるから、終わったら引っ張ってもらってもいいかな?」

「なるほどな……。解った、俺に任せろ!」

「頼んだね。じゃ」

 糸出しスキルで作った糸の端をリックに渡した後、自分は深く掘り下がった井戸の中へとそのまま入る。
 丁度良い具合に陽の光が上に来ていたおかげか、井戸のそこまでハッキリと見えるので作業もしやすい。
 井戸のそこに置いていた古い石材で作った石の塊の上に乗り、それを使って井戸の内装を整える。
 石と井戸の内側が光を帯びながら、グニャリと形を変えていく。
 光が収まるとそこは一面タイル張りしたように綺麗に整えられた壁となっていた。

「「「!?」」」

 穴をのぞき込んでいたリック達は完全に言葉を失っている。
 まあ、後で絶対何かしら言われるだろうね。
 井戸の内側を綺麗に整えた後は、ユイシスへとこの井戸の水脈の方角を確認しなければ。

(ユイシス、この井戸の近くの大きな水脈はどっちかな?)

《はい、左手方向を掘れば水脈に当たります。ですが、残念ながらその井戸の大きさに対しては水量が足りません》

 ユイシスの調べでは、以前の大きさの井戸であれば十分補える水脈がこの井戸には流れていたが、井戸の大きさを変えたことに水が足りないようだ。

「えっ!? そうなんだ……如何しよう……。なら、魔法のウォーターボールで水を出して、井戸の水を満タンにまで入れとくべきかな?」

《いえ。それだといずれ、井戸の水が底を付いてしまいます。それよりもミツ、その井戸に水の魔石を埋め込む方が良いと思われますよ。後にミツがその井戸を気にする必要がなくなるので、私はそちらをオススメいたします》

「魔石……。そうか、枯渇した場所に魔石を使えば、その場所を復活できるってリィティヴァール様が言ってたね」

 ユイシスが教えてくれた方へと手をあてがえ、水脈まで穴を開ける。
 あまり大きな穴を開けてしまうと地盤沈下などの事故になるので注意しなければいけない。
 身体を縮め、四つん這い状態になりながら開けた横穴へと入り進む。
 奥に進むと表面の土は湿り気をだし、奥に行けばチョロチョロと水が出始めていた。
 問題なく水脈に当たったようだ。

「横穴はこんなもんかな。不要な土はアイテムボックスに入れてっと。おっ? 水脈だけに、もう水がにじみ出てきてる。さてと、カセキはどれを使おうかな」

 アイテムボックスからカセキの入った麻袋を取り出し、中に手を入れて適度なカセキを探る。
 その時、いくつものカセキを握る手が止まった。

「そうだ。この小さなカセキも物質製造でまとめて大きくできないかやってみよう」

 以前、バルバラ様からのアドバイス。
 その時教えてもらったのだが、魔石を作る際は〈分身〉スキルで出した分身に作ってもらえと言う言葉も思い出し、少し狭いがスキルを発動し、分身を1人だした。
 スキルを発動すると自身の影から一人分の分身が現れる。

「ど、どうも……」

 スキルの発動後に現れたのは、性格がおどおどタイプの分身であった。
 狭い場所にいつまでも二人いるのは窮屈なので早速要件を彼に伝える事にした。
 カセキの入った麻袋を分身は受け取ると、物質製造スキルを発動。
 おはじきやビー玉程度のカセキを彼は片手で持てる分その手に掴み〈物質製造〉スキルを発動。
 カセキ同士がぶつかり合うカチャカチャとした音が消え、彼の手の中には一つになった野球ボール程の大きさになったカセキが握られている。

「えーっと。早速で悪いけど、それを水の魔石に変えてもらっても良いかな?」

「は、はい!」

 分身はカセキを両手で握り込み、カセキへと魔力を込めていく。
 無色透明のカセキの内側から、ゆっくりと色が滲み出て来るのがよく分かった。
 透明だった物が薄い空色、そして更に色を増して海の様な青色、それに深くして真っ青と色を変えていく。
 分身が納得したのか、コクリと一つ頷きをいれ、水の魔石を自分へと渡してくれる。

「できました」

「ありがとう。うん、綺麗にできてるね。魔力は大丈夫?」

「魔力は半分くらい使いましたけど、体は大丈夫ですよ」

「うわ……この大きさで魔力の半分も使うんだ。助かったよ、本当にありがとう」

「いえいえ! またいつでも呼んでください」

 自分のMPは今は2000を超えている。
 それで半分と言うことは簡単に考えても、今手に持つ魔石の大きさでは二つまでしか作れないと言うことになる。
 だが、それは自分で作ったとしての考え。
 バルバラ様のアドバイス通りに魔石は分身に作ってもらえば自分のMPの消費は0に等しい物。
 自分自身のステータスを上げていけば今後も魔石を作る際、野球ボール程度の大きさからバスケットボール、サッカーボール、ボーリングの玉と、大きい魔石が作れるようになるかもしれない。戦闘でもMPの重要性は高いが、リィティヴァール様のお願いを聞き入れるにはMPの重要性は高いのかもしれない。
 今後の戦いではできるだけ魔法を使い、魔力を上げ、ジョブも魔法ジョブ中心として変えた方が良いのかと思ってきた。
 そんなことを考えつつ、作った魔石を水脈の近くに埋め込む。

「魔石が浮き出てこないようにシッカリとこれを固定してっと……。よし! リック、引き上げて貰っていいかな!」

「よっしゃ、任せろ!」

 魔石を物質製造スキルで作った入れ物に入れ、それを地面に固定する。
 水脈の水に触れた時から魔石からは水が溢れる様に出てきている。
 顔や身体をずぶ濡れにしながらも作業を終わらせ、最後に開けた横穴の中もタイル張りのようにして水が泥土にならない様にして完成だ。
 腰に巻いた糸を引っ張りながらリックへと声を飛ばすと、糸グッと引っ張られ自分の体を井戸の上まで持ち上げてくれた。

「ミツ、終わったの?」

「ふぅ~。取り敢えず中は終わったよ。後は屋根と外装だけだね」 

 深く掘り下げられた井戸のそこから泥に汚れ、髪を濡らした自分が出てきたことに、リッケが布を差し出してきた。

「ミツ君、どうぞ使ってください」

「ありがとう、リッケ。にしても人が増えてるね」

「ああ。そりゃこんな目立つ事やってればな……」

 顔を布で拭きながら周囲の人が増えたことに自分が少し驚いているが、リックの言うとおり、庶民地の中央、人目がつく所でこんな目立つ作業を行えば野次馬も増えるものだと呆れられた言葉をいって来た。
 作業の状態を見たくなった人たちは自分が出てきた井戸の底を覗き込むように見て、口々に驚きを漏らし始める。

「こりゃ凄い。皆見てみな! もう井戸の底に水が溜まってきてるよ」

「これなら数日後には普通に使えるようになるんじゃないかい?」

 その言葉に庶民地の人々が井戸の中を見始める。だが、作業が終わったわけではないところに人が集まるのは危ないので、直ぐにその場から後退させる。
 うん、だって今落ちたら本当に危ないからね。
 まだ井戸の水は足首程度しか溜まってないから。

「皆さん、すみませんがまだ続きをやりますので、もう少しだけ離れて下さい」

 自分の言葉に大人達は申し訳なさそうに子供と共にその場から下がっていく。
 
 石材屋でもらったあまりの石材と、元々井戸の中で使われていた石材、そして自身で買い溜めといた木材を次々とアイテムボックスから取り出していく。
 その光景に呆気にとられる面々。
 そんな事はお構いなしと、それ全てをまとめて〈物質製造〉スキルを発動する。
 先程まで山のように積み重なっていた材料の姿は跡形もなく、次に人々が見たのは立派な屋根付き井戸であった。それを見た者は言葉を失い静まる。
 完成した井戸を確認するために不細工な場所はないか、安定はしてるか確認を済ませる。
 流石創造神からもらったスキル。
 一流の建築士が作り上げたと思える程に屋根の柱はそそり立ち、屋根には隙間なく雨漏りや雪が井戸の中に入ることを防いでくれている。
 最後に井戸の中を確認しつつ、掌を井戸の底へと向ける。
 井戸の水が溜まるのはまだ時間がかかりそうなので、教会の井戸同様に〈ウォーターボール〉スキルで水を満タンにしておく。
 井戸の水の汲み上げは教会と同じ滑車タイプにした。それを三ヶ所取りつけている。これなら数人まとめて井戸を使うことができるだろう。
 
「よし、完成だ」

「「「「「!!!???」」」」」

 声が出ないと言うのはこう言う事を言うのだろうか。目玉をこぼし落としそうな程に目の前の光景に驚く人々。

 完成という言葉に好奇心マックスに井戸へと駆け寄る子供たち。

 怪しい物を見る目で警戒を高める人々。

 三者三様とも言えるほどに人のリアクションは大きく別れている。
 だが、子供たちが井戸へと駆け寄り井戸の底を見た瞬間、驚きと喜びの声を聞いた人達は、次々と井戸へと近づいていく。

「す、凄え! 井戸の底が見える程に水が綺麗だ!」

「全然土臭くねえ! やべぇ!」

「見てみて! 私でも水が汲めるよ」

「これはいいわね。水が地面に流れても、地面の水捌けがいいから水が溜まらないわ!」

「これなら順番待ち無しで使えていいじゃないか」

 ガヤガヤと井戸を囲み井戸の完成に喜ぶ人達。
 早速井戸の水を組み上げて飲み始める子供や、頭からザバッと水をかぶる子もいた。
 地面に流れていく水が水路に流れるのを見て、奥様達は地面の水はけの良さに喜んでいた。
 他にも井戸の屋根の作りをマジマジと観察する人や、井戸の外壁を撫で回すように調べる人もいる。
 皆、井戸の完成に喜んでいるようで良かった。

「ベルガーさん、言われてました希望道理に造ったつもりですが、あれで宜しかったですか?」

「……」

「あれ?」

 ベルガーに声をかけても返事が帰ってこない。
 彼を見ると、口を開いたまま微動だにしていない。
 娘のリッコがそんな父の姿に気づいたのか、ベルガーの腕を取り、ゆさゆさと父をゆさりながら声をかける。

「あっ。お父さん、ミツが井戸はあれでいいでしょうって聞いてるわよ!」

「お、おう。ああ、井戸だな……」

「……何当たり前な事を言ってるのよ」

「お袋もぼさっとしてないで何か言えよ」

 息子達に注意を受けてハッとする二人。
 改めて井戸と自分を交互に見るベルガーはまだ少し混乱しているようだ。
 母のナシルも口元を抑えたまま、ベルガーへと視線を送っていた。

「お父さん、ミツ君を見るだけではなく、まず最初に彼にはお礼の言葉を言うべきではないでしょうか。まあ、しかたないですね……気持ちは分かります」

 やっと正気を取り戻してきたのか、ベルガーは未だ驚きが続きながらも自分へと感謝を伝えてくれる。
 ナシルも最初はおっかなびっくり状態であったが、井戸を囲む奥様達に呼ばれた事に、やっと井戸の完成に喜びが溢れてきたのだろう。
 彼女は若娘のような笑顔を自分へと向けてくれる。
 流石リッコの母親だけに笑顔がそっくりである。彼女の無垢な笑顔に一瞬だけドキリとしてしまった。
 そんな自分の反応に、左右にいるリッコとアイシャが少しだけ頬を膨らませている。
 いや、流石に仲間の母親に疚しい感情なんて出しませんよ。
 その後も何人もの人がお礼の言葉を言って来た。その中にこんな立派なもの盗まれはしないかねと言う言葉もあったが、井戸なんてどうやって盗むんだとリックがツッコミを入れていた。
 その人が言う盗む物とは、その物自体ではなく、技術面で盗まれる話。その言葉にやはり気になっていたのか、周囲の視線が自分へと集まる。
 返答は別に躊躇うことはない。
 指を加えて見てるだけではなく、技術を盗みたかったら取ればいい。
 同じ井戸が数増えれば水汲みも助かる人も増えるかもしれないから。
 ただ問題としてはこの世界に万力や電ノコ、等の大工道具が無いと同じ物を造るには難しいかもしれない。
 自分の言葉を聞いた人は、造れる物なら造ってみろと、挑戦のような言葉に聞こえたのか、怪訝な顔を向けた後井戸を調べ始めている。
 依頼もこれで終わりと、着替えもしたいので教会へ帰ることをベルガー達へと伝える。

「ベルガーさん、それでは作業も終わったので自分は帰りますね」

「えっ!? あっ、ああ。そうか……突然のことで未だ何が何なのかよく分からないが、取り敢えず井戸を直してくれたことに感謝するよ。本当にありがとう」

「いえいえ」

 帰路に帰ろうとする自分に慌ててお礼を述べてくるベルガー。
 彼は井戸を囲む人たちの笑顔に、本当に井戸が直ったことに実感が出てきたのか、自分の手を握り感謝を伝えて来る。
 そこにポンと一つ手を叩きながら、ナシルがベルガーへと言葉をかける。

「そうだわ、あなた、折角ですから彼とお昼をご一緒しませんか。こんな立派な井戸を造ってくれたんですもの。お礼もなしにお返ししては失礼でしょ?」

「おおっ、ナシルの言うとおりだな。すまん……驚きすぎて君へのお礼をするのを忘れるところだった」

「そんなお礼だなんて。それにこの姿ではお昼をご一緒するのも失礼ですから」

 自分が軽く両腕を上げるとポタポタと水が服から滴り落ちる。
 ベルガーが視線を下げると、自分の下半身部分の衣服は井戸の横穴を四つん這い移動をした為に土汚れがついている。
 流石に食事の前に着替えが彼には先に必要だとベルガーは理解してくれたのだろう。

「ああ……。流石に君に井戸の水をぶっかける訳にもいかんしな……。おお、そうだ。リック、リッケ。お前達、この少年と一緒に臨時で開放している浴槽に行って、彼の背中を流してこい」

「「えっ?」」

 父の思わぬ言葉に、二人の息子は気の抜けた返事を返す。

「えっ、じゃねえよ。お前達も使う井戸を直してもらったんだ。それぐらいの礼としてもいいだろうが」

「リッコ、あなたはお昼の買い出しをしてきなさい」

「私が?」

「ええ。何? あなたも彼の背中を流したいのかしら?」

「なっ!? お母さん! 分かったわよ! い、行くわよ! ち、違う。行くのは買い物よ! 勘違いしないでよね! アイシャちゃん、一緒に行きましょう!」

「えっ? あっ、はい?」

 母のナシルの言葉に顔を真っ赤にさせるリッコ。わたわたとした態度に側にいたアイシャの手をとり、買い出しへとその場から逃げるように彼女は走り去ってしまった。

「……あいつ、何を買いに行ったんだ?」

「さぁ。適当に何か買ってくると思いますよ」

「取り敢えず俺達はミツを洗いに行こうぜ」

「洗いって……。リック、ミツ君は野菜ではありませんよ」

「臨時のお風呂場ってここから近いの?」

「おお、歩いて直ぐだな。女湯も隣なんだぜ」

「へー、そうなんだ。リック、覗いたら駄目だよ」

「誰が覗くか! それに昼間に風呂に入ってるのは婆とかだ」

「……リック、随分詳しいですね」

「言わすなや!」

 三人揃って臨時の風呂場へと行く後ろ姿を見て、二人の親は子供達が良き仲間とパーティーを組めていることに親として喜びを感じていた。
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蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

スキルを得られない特殊体質の少年。祠を直したらユニークスキルもらえた(なんで??)

屯神 焔
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 魔法が存在し、魔物が跋扈し、人々が剣を磨き戦う世界、『ミリオン』  この世界では自身の強さ、もしくは弱さを知られる『ステータス』が存在する。  そして、どんな人でも、亜人でも、動物でも、魔物でも、生まれつきスキルを授かる。  それは、平凡か希少か、1つか2つ以上か、そういった差はあれ不変の理だ。  しかし、この物語の主人公、ギル・フィオネットは、スキルを授からなかった。  正確には、どんなスキルも得られない体質だったのだ。  そんな彼は、田舎の小さな村で生まれ暮らしていた。  スキルを得られない体質の彼を、村は温かく迎え・・・はしなかった。  迫害はしなかったが、かといって歓迎もしなかった。  父親は彼の体質を知るや否や雲隠れし、母は長年の無理がたたり病気で亡くなった。  一人残された彼は、安い賃金で雑用をこなし、その日暮らしを続けていた。  そんな彼の唯一の日課は、村のはずれにある古びた小さな祠の掃除である。  毎日毎日、少しずつ、汚れをふき取り、欠けてしまった所を何とか直した。  そんなある日。  『ありがとう。君のおかげで私はここに取り残されずに済んだ。これは、せめてものお礼だ。君の好きなようにしてくれてかまわない。本当に、今までありがとう。』  「・・・・・・え?」  祠に宿っていた、太古の時代を支配していた古代龍が、感謝の言葉と祠とともに消えていった。  「祠が消えた?」  彼は、朝起きたばかりで寝ぼけていたため、最後の「ありがとう」しか聞こえていなかった。  「ま、いっか。」  この日から、彼の生活は一変する。

うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生

野良 乃人
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辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

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 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

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