スキル盗んで何が悪い!

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第48話 小さな村の少子と執事長

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 とある村。
 畑で祖母と畑仕事をする少女が居ました。

 私はこの村、スタネット村で産まれ育ちました。
 何も無い村だけど、毎日お母さん達と一緒に楽しく過ごしてます。

 私のお父さんは私が小さい頃に死んじゃってもういません。
 でも、お父さんのお母さん、つまりはお婆ちゃんとおじさんが私のお父さん代わりをしてくれてます。
 なので私は寂しくはありません。

 私の住んでるこの村は以前、村人の殆どが病に落ち、崩壊の危機に陥ってました。

 そんな時私は病にかかってしまったお母さんの為にと、薬草を探しに林の奥まで足を運んでいました。

 お母さんからは危険なことはしないでと言われてたけど、私は一日でも早くお母さん達に元気になって欲しいので私は薬草が多く取れる場所へと進んでました。

 あまり人の足が入らない場所だけに、見つけたその場所はいつも以上に薬草が見つかりました
 私は夢中で目の前の薬草をカゴにいっぱいになるまで摘みました。
 そう、夢中になり過ぎたのかもしれません。
 私はカサカサと言う草木を掻き分ける物音に気づいて振り返りました。

 そこにはお婆ちゃんが話に出してくるモンスターが目の前に居ました。
 ゾクッとした身震いを感じ、私は薬草を取る手を止め、カゴを拾い、その場から逃げる様に走りました。

 あれはモンスターだ。
 村の家畜を食べ、子供の様な柔らかい肉を食べ、女性はモンスターの子供を無理やり産ませる為に拐ってしまうって聞いた。
 私はどっちなんだろう、まだ子供として食べられてしまうのか、それともモンスターの子供を産まされる為に拐われてしまうのか。

 私は怖かった。お父さんも居なくなっても私にはお母さん、お婆ちゃん、おじさん、少ないけど友達もいる、皆とサヨナラしたくない。

 私は走った、モンスターを見た時のゾクッと感じた恐怖、殺されてしまうかも知れないと思う恐怖、皆ともう会えなくなると思う恐怖。

 草木を掻き分け走った、枝が頬を弾く痛み、溢れてくる涙、縺れそうになりながらも足を動かした。

 それでもモンスターは私を追ってきます、後ろから下卑な笑い声を出しながら、口からダラダラとヨダレを出しながら。

 怖い 怖い 怖い!

「誰か! 助けて!」

 私は声を出した、走りながら息苦しかったけど精一杯声を出した。

 でも、声をあげるたびにモンスターが背後から近づいてくる感じがした、私の声は助けじゃなくモンスターを呼び寄せていました。

 走り続けると私の目の前には岸壁が道を塞いでいました。
 私は夢中に走りすぎてどうやら村とは違う方へと進んでいる事を壁を前に焦りました。

 口からはハァハァと自分の息苦しい声が聞こえる、後ろからは私を追ってくるモンスターの声が聞こえる。

 恐怖 恐怖 恐怖!

 追ってきたモンスターは2匹、人とは違う薄緑色の肌、継ぎ接ぎだらけの服を着ている。

 2匹は私を見ながらまた下卑た笑いをし始めました、言葉は解らないけど何か話してる。

 私は近くにあった棒を拾い抵抗を見せました。
 振り回す棒は当たればモンスターも倒せると思っていたからです。

 でも私が持った木の棒はあっさりとモンスターに払いのけられました。
 その瞬間、モンスターが私に飛びかかってきました。

 腕を押さえつけられると腕に痛みが走った。

 身体を押さえつけられると全身に恐怖が走った。

 殺されちゃう、私は叫びました。


「嫌! 止めて! 離して!」

 
 暴れて暴れて暴れても、私の身体は無理やり押さえつけられてる、もう駄目だと思ったその時でした。


 ギャヒッ

 声と同時に私を押さえつけていたモンスターが倒れました。
 私の腕を押さえつけていたモンスターが何やら周りをキョロキョロと見始めたと思ったその時です

 ダダッ!

 そして駆け寄って来る人影。
 それは私と変わらない程の男の子の姿でした

 ギャッー

 モンスターの声が響き、目の前でバタリと倒れたモンスターを見て私は倒した男の子を見る事しかできませんでした。


「おーい大丈夫? 怪我とかしてない?」

 私はその声でハッと気づきました。
 私は助かった、私はこの男の子に助けられたんだと。

 お礼を言いました、ほんとに怖かった事もあって何度も何度もお礼を言いました。

 私は男の子にお礼をする為に村に案内する事にしました。
 本音を言うと、また襲われないか怖かったのもあります。
 でも私が落ち着くまでその男の子は話を聞いてくれたり、変な事を言って私を笑わせてくれました、その間もその男の子はモンスターに襲われない様に周りを注意しながら一緒に村に帰ってくれました。


 村に帰ったらお母さんに怒られました。
 怖かったけどまたお母さんに会えて本当に嬉しかった、お婆ちゃんからも怒られたけどお母さんの方が怖かったかな。

 話をしてると村で飼っている草牛がモンスターに連れ拐われたって皆が大慌てで話してました、村に取っては大事な飲み物を出してくれる子なんです。

 私のおじさんとその飼い主さん、そして男の子が助けに行く事になりました

 おじさんは最初男の子を連れて行く事を反対してたけど私が助けられた事を伝えると一緒に行く事になったの。

 その時思いました、危険な事にワザワザ行かせるような事言った私って酷いなって。
 でもその男の子はありがとうってお礼を言ってくれた、出発した三人を見送り入り口で待ってる間、私はずっと神様にお願いしてました。


「神様お願いします、どうか三人を無事に返してください!」

 三人は帰ってきました。
 連れ拐われた子も助かって飼い主さんはニコニコ、でもおじさんと男の子の顔はなんだか寂しそうでした。


 お薬が作れない。
 そう聞いた途端悲しくなりました、お母さんが元気にならないかもしれない、悲しくて、悲しくて涙が溢れてきた。

 その時男の子が言ってきました、お母さんに触れるねって、お母さんは驚いたけどそのまま胸の上にその男の子が手を置いたの、何だか自分でも解かんないけど私その時怒ってたのかも。

 でも、そんな気持ちは直ぐに無くなりました。

 突然お母さんが光りだし、男の子からもうお母さんは大丈夫だと言われ私は言葉が出なかった。


「息苦しさも無くなって、体が軽いわ」


 その言葉を聞いた瞬間、私はお母さんの胸に飛び込んでました。
 そして泣きました、お母さんも泣いてました、嬉しかった、嬉しかった。
 さっき怖かった時に出た涙とは違う、嬉しくて沢山涙が出てきました。
 

 その後、男の子は村の人達を治せるとお婆ちゃんに伝えるとその場にいたお爺ちゃん達も喜んでくれてました。
 男の子の魔法は何回も使えないって言われてしまいました。でも、お婆ちゃんは男の子の魔法をまた使えるようにする為にと、薬の材料を村人皆で集める事になりました。勿論私も手伝いました、おじさんと林に入り草花を掻き分けて必要な材料を探したの、でも見つかったのは材料じゃなくてまたモンスターでした。

 私はおじさんに言われ、村のお爺ちゃんと一緒にお婆ちゃんの所にモンスターが居た事を伝えに走りました。

 モンスターの話をすると男の子はまた戦いに行っちゃいました、今度は病気から治ったばかりのお母さんも一緒に。
 戦いに行くと聞いて怖かったけどお婆ちゃんが優しく頭を撫でてくれて少し落ち着きました。

 帰ってきたおじさんとお母さんはボロボロだった、でも不思議にそれは服装だけで怪我1つしてなかったの。
 帰ってきた二人はとても嬉しそうにお婆ちゃんにモンスターを倒した事を伝えてました。

 少しすると近所のおじさんと一緒に男の子が戻ってきました、でも見たことの無い人をおじさんが背負ってます。
 男の子は直ぐに村の皆の治療を再開すると言ってお母さんの友達の病気も直ぐに治しちゃいました。

 そして次々と治療されていく村の人達、その中には私の友達も居ました、とても嬉しかった、お婆ちゃんもとても嬉しかったのか、とても笑顔でした。

 皆で男の子にお礼を言いました。
 男の子は倒したモンスター、いや、オークを皆で分け合う事を言ってくれました。
 私はお肉が食べれる事に嬉しくて友達も嬉しそうにしてました。
 
 おじさん達が倒したオークを村まで持ってきてくれました。
 とても大きくて私の家にも入りきれない程の大きさでした。

 皆は病気だった事なんて忘れたみたいに皆で料理を始めたわ、お母さんも元気になってトントンとお母さんの包丁が鳴る音はとても嬉しかった。
 お婆ちゃんのご飯も美味しいけど、私はやっぱりお母さんのご飯が大好きです。

 皆で食べる料理ができたので寝ている男の子を起に行きました、男の子は少し考え事をしてたのか難しい顔してました、声をかけるとまた笑顔になったので私の気のせいかな?

 その日のご飯はとても美味しかった。

 お母さんが作ってくれたから?

 皆と楽しく食べたから?

 初めて食べたオークのお肉だから? 

 全部だと思いました! 皆で笑って、元気で、中には泣きながら食べてる人もいました。

 次の日、男の子は村を出ました。

 たった一日、でも色んな事があった一日。

 寂しかった、でも男の子は馬車に乗って行ってしまいました。

 また来るって約束してくれました。
 その約束を私は忘れない、お母さんを元気にしてくれた事を忘れない、お婆ちゃんを笑顔にしてくれた事を忘れない、村の人達を助けてくれた事を私は絶対に忘れない。

 馬車が見えなくなっても村の人たちは誰もその場を動きませんでした。

 ありがとう、ありがとう、そんな声がいつまでも周りから聞こえてました。


 私はアイシャ、このスタネット村に住んでます。
 オレンジ色の髪の毛はお母さんとお揃いだから少し自慢です。
 私も将来はお母さん見たいなプロポーションになるんだ、今はまだお母さんにはまだ勝てないけどまだ私は14歳、お婆ちゃんは成長はこれからだって言ってくれたから大丈夫だもんね。


「は~」

「これアイシャ、マーサ達が帰ってくるまでに終わらせるよ」

「は~いお婆ちゃん、は~」

 無意識か、街道のある方を見ながらため息を繰り返すアイシャ。

「ふむ……アイシャ、またミツ坊の事かい?」

「なっ! 何言ってるのお婆ちゃんったら! そりゃあれから少したって寂しいな~とか今どの辺かなとか今何やってるのかな~とか思ったりするけど。そんな今ミツさんの事なんて思ってもないもん!」

 手をバタバタと誤魔化すように振るアイシャ、違う事を祖母に伝えるがバレバレである。

「はいはい、恋する乙女だね。あんたの気持ちも解らんでもないけどミツ坊は旅人、またフラリと来てくれるさね」

「うん、そうだと良いな~」

「さてアイシャ、ここはもう良いから次のところ行こうか」

「解った」

 土の付いた農具を片付け、次の畑へと行こうとする二人。

「でも、お婆ちゃん、村の畑広くなったね」

「あぁ、ミツ坊のお陰で動ける人が増えたからね。畑作業を手伝ってくれる人が増えたから、この際だからできる事は頑張ろうって皆で決めたんだよ」

「うん、お爺ちゃん達も元気になってくれたもんね」

 以前まで数カ所にしか無かった畑。
 だが今は村の半分を埋める程の広さを畑となっていた。


「あいつらは狩りには足手まといじゃからの、クワでも振ってくれたほうが助かるわい」

「もう、お婆ちゃんったら」

 そこへ村に近づく騎馬に乗った一人の人影が近づいてきた。


「おーい! 村長~!」

「んっ?」

「あっ、お婆ちゃんフラルさんだよ」

「本当だね? どうしたのかね、定期報告はこの間来たばかりなのに」

 騎兵としてやって来たその人は鉄鎧に身を固め、緑色の旗を掲げてやってくるは、村の定期報告の証ライアングルの街から派遣されて来たフラルだ。
 元々スタネット村出身と言う事もあって定期報告の担当になっている村の出世頭でもある。


「村長、こんにちは。あっ、アイシャちゃんもお手伝いかい?」

「こんにちはフラルさん、うん、そうだよ」

「うん、偉いね」

「フラルどうしたんだい? 定期報告は先週したじゃないか、何かあったのかい?」

「村長、村の人達は皆村に居るかい?」

「何だい藪から棒に。今はまだ狩りに出かけて殆ど戻ってきてないよ、他の皆は居るけど。どうしたんだいいきなり?」

「あぁ、ごめん。実はもう少ししたら領主様の執事さんがここに来るんだよ、大切な話があるからって村長に村人皆を集めといてくれって」

「ほぉ、領主様のかい、なら今居る人達だけでも先に集めとこうかね」

「そうだな、そうしてもらうと助かるよ」

「お婆ちゃん、私皆に伝えてくるね」

「助かるよアイシャ」

「アイシャちゃん僕も行くよ」

「うん、フラルさん行こう」

「ふむ……領主様が一体何かね?」

 ガヤガヤと村の中央に集まるは村に残って畑仕事やまだ安静の為家に居た者、村長のギーラを中心とし何事かと皆話していた。

 そこに遠くの道の先の方からと、少しづつ人影がゾロゾロと見えてきた。

「あっ、お婆ちゃん見えてきたよ!」

「そうかい」

「おい、何だよあの人の数……」

「えっ、何!?」

「お、お婆ちゃん……」

 村人が見る先、少しだけと思っていた人影がドンドンと広がり先頭に見えた軍馬の列だけではなく数台の荷車、それを守る為か数十人者の兵士が列を崩さず村へとその歩を勧めていた。


「皆の者落ち着きなさい! あれは領主様の使いの者、我々に危害を及ぼすものでは無いんだよ!」

「でもよ村長……いくらなんでも只事じゃないだろ」

「んっ、ん~」

 それは村人にとっては恐怖にも思える軍列であった、それが例え自身の領主様が差し向けた軍列と知っていてもだ。

 ザッザッと歩き進む足音、村人が聞いた事も見たことのない程の騎馬と馬車の数々。

 そして響く先頭で騎馬に乗る騎士の声。


「全体止まれ!」

 ヒヒーン、ブルブル

 ブルン、ブルン

 村の入り口、1台の馬車が止まりそれに続く後列の部隊。
 ガチャリと馬車の扉が開き中からは軽装ながらも気品に溢れた武装をした少し頭に白髪のメッシュの入った男が降りてきた。 
 村長のギーラも意を決したか、村の代表としてゆっくりと足を進めその者と対面となった。


「お初にお目にかかります。私、ライアングルの街を治めております。領主ダニエル・フロールス伯爵様の屋敷の執事長を勤めとさせて頂いておりますゼクスと申します。本日は突然の大勢での訪問誠に失礼します」


「初めまして、私はこのスタネット村で村長を勤めさせて頂いております、ギーラと申します、ご丁寧な挨拶誠にありがとうございます。ところで本日はどの様なご用件で?」

「はい、先ずこちらにいらっしゃる方がこの村の全村人でございますでしょうか?」

「申し訳ございません、只今動ける者は狩りに出ております、今集まっている者は村内にいたものだけでございます」

「いえ、突然の訪問した我々の方に非がございます、頭をお上げください。では皆様が揃ってから領主様からのお言葉をご報告させて頂きます」

「はい、ご丁寧にありがとうございます」

 優しく微笑むゼクスを見て一先ずは争うことが無い事が解ると、皆ホッと一息安堵のため息を漏らしていた。
 客人となるゼクスを外で待たせる訳にもいかない為、ギーラは自身の家でもある村長の家に招きゼクスにお茶を勧めていた。


「いや~、良い場所ですね」

「いえいえ、何も無い貧村ですよ」

「ホッホッホッ、彼が気に入るのも解る気がします」

「?」

 意味深な言葉を伝え、手に持つコップに入ったお茶をコクリと飲んで人が揃うのを待つ事にしたゼクス。


「お母様!」

「おふくろ!」

 そこにバタバタと入ってくるはギーラの亡き息子の嫁であるマーサと息子のバン。
 二人とも狩りからそのまま戻ってきて身だしなみもそのままの為、手には狩猟用の武器を手に持っていた。
 二人が焦ってくる気持ちも理解できる。
 狩りを終え、村へと帰ってくると自身の村を囲ってしまう程の多くの兵士が居たのだから。
 最初それを見たバン達は何事かと村へと駆け出したのだ。
 それが村への悪意的な陣形ではなく、また遠目の方からマーサは村の子供たちがその兵士達と遊んでいる所を見たので、虐殺や略奪をされている訳ではないと判断して村へと帰ってきたのだ。

 案の定村へと近付くバン達をフラルが見つけ、直ぐに事の状況を簡単に説明したのだった。


「おぉ、二人とも帰ってきたかい、じゃこれで皆揃ったかね」

「おふくろ、一体何が?」

「これから解るんだよ。ほれ、皆の所に行くよ」

「はっ、はぁー?」

 皆が揃った事をゼクスに伝えるギーラ。
 ゼクスも領主からの言葉を伝える為とギーラと共に村人の待つ広場へと向かった。

 そこに部屋の奥からマーサの娘であるアイシャが顔を出してきた。

「お母さんおかえり」

「アイシャ、何があったの?」

「ん? フラルさんが帰ってきたと思ったら外の人達が後からいっぱい来たの」

「それで?」

「それだけ、お母さん達が帰ってくるまでお話はなかったよ」

「そっ、そうなの……」

「ほれ! 三人とも早く来なさい!」

「は~い」

「おっ、おう」

 状況をいまいち把握できていない二人はギーラに呼ばれて付いていくしかなかった。
 村人が広場に集まりゼクスがそれを確認すると木箱の様な物の中に入った一枚の紙を取り出し、丁寧に広げゼクスが声を上げ読み始めた。


「コホン、えー皆さんお忙しい中お集まり頂きありがとうございます。これより領主ダニエル・フロールス様のお言葉をお伝えします」

 コクリと頷く村人、ゼクスの隣では代表としてギーラが立っている。

「スタネット村の諸君に告げる、病に皆が倒れ、我が領土にも関わらず、何も出来なかった事をまずここに詫びを告げる。その際、結果はどうあれ住民には苦しい日々を過ごさせた謝罪を込めここに記す。また今から書き記す事を実行し、今後の民の糧とする事を望む」


「1つ、民が病にかかるという事は住まいや建造物の問題があると見る、数名の建築士を送るので各自の家又必要とする柵や井戸等の必需品を修理するべし。その際の経費は全て領主家が引き受ける」

「1つ、村の貧困は人材不足にあり、村から出た手間稼ぎを一度取りやめ人材を戻し、畑を広げ貧困となる食料問題を解決する事、その際人材を戻す際の欠損金や店側の賠償は領主家が引き受ける」

「1つ、村に一定期間の護衛として私兵を巡回させる、その際の討伐モンスターの全ての廃棄は村人がする事」

「1つ、最後に、スタネット村の税収の回収を一定期間免除とする」

「以上が領主のダニエル様からのお言葉です、どうぞお受け取りください」

 ゼクスは読み上げ終わると手に持つ辞令書となる物をまた箱に入れ、隣に居るギーラへと差し出した。


「……はっ、はい! ありがとうございます!」

「「「「おおぉぉぉ!!!」」」」

 ギーラが領主からの手紙を受け取ると同時に村人からは多くの歓声が響きわたった。
 それは領主からの思わぬ贈り物でもあったからだろう。

 家が直る、ボロボロの屋根、閉まらない扉、雨が降れば寝ている時でも雨水が身体を冷やす、これで雨の次の日に身体を壊す人の数は減るだろう。

 また畑を守る為の柵が直れば夜な夜な害獣となる生き物に畑を荒らされなくて済む。

 村の畑を増築を試みている村人だがやはり若い力は欲しい。
 それが自身の息子や娘が戻ってきてくれてその力ならなお嬉しい事だろう。

 更に討伐したモンスター。これの廃棄を全て村人がする事と、詰まりはその倒したモンスターの素材の権限を譲ると言ってると同じである。
 勿論私兵もタダ働きではない、倒した分村に渡せばその成績として私兵にもその分の給金が弾まれる。

 最後にだ。税集の一時期とはいえ免除、どの時代、世代、世界であろうとも人が税を収めなければ生活に余裕は生まれる物。
 それが貧困とした生活が当たり前の村、明日の食べ物さえ無い時もある人々の生活。

 他者から見てやり過ぎだと思う者が出るかもしれない。
 しかし、このスタネット村には領主の個人的な差別や偏見での配慮ではなく、筋の通った寄付金が差し出されているのだから意見を言う者はぐうのねも出ないだろう。


 村人が喜びの声を上げる中、バンは恐る恐るゼクスに質問をかけてみた。


「あの、質問いいですか」

「はい、どうぞ」

「何故領主様はそこまで我々に配慮を尽して頂けるのでしょうか? 我々は今までも領主様に税を収めれなかった時がありました、病にかかったからと言って、ここまでやっていただける理由が我々には解りません」

「ふむ、そうですね。この村の様に貧困の村は他にも数少なくございます」

「……じゃ、何故」

「しかし、この村で起こった事を、皆様はご存知ではないでしょうか?」

「えっ?」

「なんじゃゾイ?」

「起こった事? 病気か?」

 村人皆が顔を合わせ、何だ何だと考え込む中、一人の少女の言葉が答えとなった


「……あっ、ミツさん」

「「「「!」」」」

 ガヤガヤと村人の話す声の中、アイシャの言葉が話し声の中でも聞こえたのか、村人は皆は言葉を止め数日前現れた少年の顔を思い出していた。


「はい、そうです」

 そんなまさかと、皆は目を開きゼクスの言葉を聞いた。
 確かに皆が困っていた所に無償で村人の病を治し、更には村人皆で分けても数日分ともなるオークの肉を村の為にと残してくれた少年がと皆は思った。

 だがゼクスの表情は優しく間違いない事を表していた。


「ミツ様が!」

「あの方が!?」

 ゼクスは皆の視線を再度受け、事の信条を説明し始めた。


「あの方はこの村を救われた後、我が主の御子息ロキアボッチャまをキラービーの群れとアースベアーのモンスターからの脅威から救っていただきました。その際、領主様からの謝礼金をこちらの村へと全てを寄付されたのです」

「「「「!!!」」」」

 皆は言葉を失った、たった一日しか村に居なかった少年、中には感謝の言葉だけで終わった村人も居るだろう。
 そんなこの村で生まれ育った訳でもない少年が自身の生まれた村の為に病からの治療だけではなく、村の為にと寄付金までするとは思っても居なかった。
 あの時もっとお礼を言うべきだった、感謝しても足りない気持ち、今後の村を思う気持ちが住んでいる村人より凄い事。

 ポロリと流れ出す涙。

 無意識に溢れだす感謝の言葉。


「おっ、おおミツ坊……」

「ミツさん……」

「あっ……あの方は……うっ……ううっ」

「ありがとうございます、ありがとうございます」

 ギーラは受け取った木箱をギュッと抱きしめ、目尻に浮かぶ涙をそっと拭った。

 そんなギーラや村人を見てゼクスの目にも薄っすらと涙が溢れ出していた。


(いけませんね、歳を取ると涙もろくなります)

「さて、皆さん! 領主様の言葉の中に書いてあった事は実行して頂きます。先ず先当たって家を修理いたしましょう、出稼ぎの人々を戻した際に家が足りなくては問題ですのですからね、新たな家も建設させて頂きます」

「はっ、はい!」

 そうしてゼクスが手を上げると、鎧を着た兵士の他に、建築士であろう人々が腰を上げ両手いっぱいの工具を抱えていた。

 そう、ゼクスはスタネット村に出向く際、既に数十人の人手を雇い入れ、すぐにでも村の発展の為行動するつもりであった。


「俺はやるぞ! 領主様とミツ様の気持ちを無駄にしない為に!」

「ワシだって! 体が動くうちは働かせてもらうゾイ!」

「では、連れてきました建築士の方と協力しあって下さい、必要材料はこちらで用意します」

 村人の意気込みの中兵士の指示の元動き出す面々。


「やった! これで雨の日水浸しの布団に寝なくて済むぞ!」

「そうだ、壁だけじゃない、屋根も悪い所は全部直そう!」

「息子たちが、娘達が帰ってくる場所を用意しないとね」

 狩りから戻ったばかりと思わせない程に皆は直ぐに動き出した。
 バンはギーラの代わりに修理する為の家々を巡り、それに合わせて修理する場所、増築するであろう場所を事細かくと話していた。
 結果、全部の家が今の家より大きく増築が決定したのだった。


「あっ、あのゼクスさん」

「はい、何でしょうお嬢さん」

 アイシャは自身の家もどうなるか気になってはいたが、それよりも気になった事をどうしてもゼクスに聞いておきたかった。


「あの、ミツさんは今何処に?」

「彼ですか。はい、彼は今ライアングルの街で開かれる武道大会の為に少し離れ、今は悟りの洞窟に行かれておりますよ」

「武道大会……悟りの洞窟……」

「ホッホッホッ、お嬢さんはミツさんと仲がよろしいみたいですね?」

「いやっ。その、そんな、ミツさんには色々と助けてもらったので」

「ホッホッホッ、さようでございましたか。彼は何処に居ても彼らしいですね。では村長、まだ細かいお話がありますのでお時間よろしいでしょうか」

「ええ、勿論ですとも」

「では」


 その後。
 村長であるお婆ちゃんと執事長さんは難しいお話をする為に数人のお爺ちゃん達もと一緒にお婆ちゃんのお家に行きました。

 その暫くした後に、お婆ちゃんの家から大きな驚きの声が聞こえてきました。
 私とお母さんは慌ててお婆ちゃんの家に入ると、お婆ちゃんもお爺ちゃん達も驚いた顔で動かなくなってました。
 お母さんから後から聞いたんだけど、ミツさんが寄付してくれたお金が多くてお婆ちゃん達は驚いてたそうです。
 ちなみに話を聞いたお母さんも驚いてました、私はお母さんの優しい顔と怒った顔しか最近見てなかったのでちょっと面白かったです。

 村の皆はまたミツさんにお礼の言葉を言いたいからまた会いたいとか言ってました。
 でも、私はそれとは別にミツさんに会いたいと思ってるのかもしれません。
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辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。 普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。 そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。 そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。 そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。 うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。 いずれは王となるのも夢ではないかも!? ◇世界観的に命の価値は軽いです◇ カクヨムでも同タイトルで掲載しています。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

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