スキル盗んで何が悪い!

大都督

文字の大きさ
上 下
18 / 174

第18話 緊急時の対策

しおりを挟む

 ビチ! ビチビチ!

《経験により〈スティールLv4〉となりました》

 ユイシスの言うとおり数匹目の魚を取ったのち〈スティール〉のレベルがあがった。
 もう依頼用の10匹も超えて既に何十匹も取れている、これ以上取っても食べきれないかな?

 下流に近づきプルンの様子を見ると彼女はまだ釣ってるみたいだ。
 自分はやることも無くなってしまったので、何も考えずにボーッと川の流れる音を聞きながらまったりと大きな岩の上で昼寝をすることにした


「シェスタ~、シェスタ~、お昼寝だ~」


 暫く横になってると様な違和感を感じてきたので体を起こし、周りを見渡してみる。


「んっ……。何か嫌な気配がする……」



 ドッカーン!



「なっ!」

 人々の声と川の流れる音しか無いこの場所
 そんな静かな場所に突如としてけたたましい爆音が響いた!


「何だ!?」
「どうした!?」
「なんの音!?」
「向こうの林の方から聞こえたぞ!」


 人々がざわつき、不安に侵されているところにその大きな音の原因が明らかになった。


「皆逃げろ! キラービーの群れとアースベアーが出たぞー!」


「なっ!」
「きっ、きらーびー!」
「アースベアーだって!」
「逃げろー!」


 モンスターが現れた、その声を聞いた途端一般の人々は逃げ出し、その場にいた冒険者は手に持つ釣り竿を武器に変え、林の方へと駆け出した。

 人々の慌てようからして危険なモンスターなのであろうか。


(ねぇユイシス、キラービーとアースベアーって何?)

《キラービー。主に森や洞窟に住み着き、蜜や樹液ではなく動物の血と肉を好んで啜る危険なハチの一種》

《アースベアー。高い山脈に住んでおり、滅多に人里には降りてこない。降りるときは冬眠のためにと人を喰いに来る事が多い、山脈に住んでいるため泳ぐ事ができない》

(モンスター図鑑見たいな説明の仕方ありがとね! 兎に角人にとって危険ってことか。さっきの爆発は?)

《アースベアーのスキルの1つ〈土石落とし〉です。アースベアーとの距離はありますが、キラービーは飛んでる分ミツのいる近くに到着する時間が早いです》

(これは早めに逃げた方が良いんだろうけど。明らかに両方とも人を狙ってこっちに来てるんだろうし……)

「ミツ! 大丈夫かニャ!」

 そこに危険を感じたのかプルンがカゴを背負ってやってきた。


「あぁ、大丈夫だよ。それよりもプルン大変なんだ! もう直ぐあっちの林の方からキラービーとアースベアーがこっちに来るみたいなんだ」

「ニャニャ! ヤバイニャ、直ぐに皆を避難させるニャ!」

「あぁ、冒険者だけなら逃げれるかもしれないけど、一般人はそんなに直ぐには移動できないからね、しかも老人も子供もかなりいるみたいだし」

 モンスターがやってくる、この知らせだけでも戦えない一般人は混乱している。

 直ぐに動ける者は避難し始めている。
 しかし、人は混乱するとその場から動けなくなるのか、どうしたらいいのか解らず逃げることができない人があちらこちらにと覗える。


「プルンこれを」

「なに、ドルクスア? これどうするニャ」

 自分はアイテムボックスから昨日買った〔ドルクスア〕をプルンに渡した。


「それはプルンが使って、自分は弓でキラービーを狙ってみる、落ちた奴のトドメを」

「解ったニャ、でもアースベアーは?」

「アースベアーが来るまでにはまだ時間がある、先にキラービーを倒すんだ!」

「解ったニャ! 後ミツ、これをアイテムボックスに入れといて欲しいニャ!」

 そう言って渡されたのがプルンの背負っていた魚が入った魚カゴだった。


「……いっぱい釣れたね」

「そうかニャ? エサがあったらもっと釣りたかったニャ?」

 エサが無くてもプルンなら釣る事はできるんだよとは今言うことでも無いだろう。
 プルンの釣った魚は既に全て綺麗に締めていたので〈即毒〉使用する必要も無い品物となっていたので魚はそのままアイテムボックスへとしまった。

 改めて周りを確認してみる。
 少しづつ人の避難の流れができて来ている、他の冒険者が避難誘導を始めたみたいだな。


「戦えない者は早く逃げろ!」

「皆ー、こっちに、子供から目を話さないで!」

「焦らないで! お願い、誘導に従って下さい!」


 見るかぎり非戦闘の冒険者みたいだ。
 コレは助かる、申し訳無いが彼らに任せて自分は戦闘の方に集中しよう。


「時間がない、自分達だけじゃ戦力はきっと足りない、さっき魔法を使って魚を捕まえていたチームにも協力を願おう!」

「そうニャ、足止めには最適ニャ!」

 迫り来る敵の数が多いので即席のチームでモンスターに備えることにした。
 自分のお願いするのはここに来て目に付いたパーティーだ。


「すみません!」

「何、君たち?」

「いきなりすまんニャ、手を貸して欲しいニャ!」

「何を言ってるんだ! モンスターが来るんだぞ、早く逃げないと!」

「トト、黙って! それで、私たちに協力って何?」

 突然の申し出に一人の男性冒険者は批判の声をだしたが女性の一人が会話の中に入りに男性を黙らせる。
 女性は冷静に自分の話を聞いてくれた。


「はい、直ぐにあちらの林の方からキラービーの群れ、後少し遅れてアースベアーが来ます。その討伐と足止めに皆さんの協力をお願いしたいのですが」

「バカか! キラービーの群れもアースベアーも俺達に倒せるレベルのモンスターじゃないんだぞ!」

「……そうね。悪いけど私とそっちの彼女はブロンズランクだけど、この二人はまだウッドの冒険者なの。悪いけど私達じゃ倒す程の力はないわ」

「ごっ、ごめんなさい……」

 赤毛のショートカット姿の弓を持った人と、青髪ロングヘアーの魔法使いの格好をした女性二人がブロンズの冒険者。
 金髪でツインテールの白いローブを着た女の子と、先程トトと言われた赤茶の短髪の男の子がウッドの冒険者と説明され戦闘を拒否されてしまった。


「それでも自分達が足止めしないとここにいる一般人に被害が出るかもしれません! お願いします!」

「……でっ、でも、私達に何ができるの?」

 自分はガバッと頭を下げた。
 無下にあしらわずこの人なら自分の話を聞いてくれると思ったからだ。

「キラービーは自分達が倒します、討伐が終るまでで構いません、アースベアーの足止めだけお願いします!」

「アースベアーの足止めだけって……」

「なっ! それよりキラービーの群れだぞ! お前らもウッドの冒険者だろ? そんなお前らなんかが倒せるのかよ!」

「わかりません……。でも、ここで倒さないと近くの村が確実に被害を受けます」

「くっ! そっ、それは……そうだろうけど」

 トトと言われた青年は正論を言われたのが気に食わなかったのか、自分を強く睨んだが此方が真っ直ぐにトトを見ているとすぐに視線を外した。

 他の人達もこちらを見ながら現状できることを考えているようだ。

「キラービーもそうだけどアースベアーもだニャ! アースベアーの足止めはさっきそのお姉さんが使ってた魔法の氷の壁でアースベアーをこっちに来れないようにして欲しいニャ!」

「そんなんで足止めになるの?」

 攻撃魔法とは違い〈アイスウォール〉氷壁は魔力の壁を作るだけで敵にダメージは与えることはできない。

「なります! アースベアーは泳ぐことができません、川をはさんで通れそうな場所を氷で塞げば、時間は確実に稼げます」

「ミーシャ、本当に可能だと思う?」

「解らないわ……。でも、この人達が言うように私達で時間稼がないと被害が出ちゃうのは確かね……」

「わっ、私は……少ししか支援ができません……」

「構いません! 皆さんのご協力をお願いします!」

 もうひと押しで協力が得られそうだ。

「俺は無理だよ……」

「トト! しっかりしなさい!」

 トトは未だに否定派なのか、拒否る言葉をこぼすと赤毛の女性は背中を押すかのように檄を飛ばした。

「解りました……。では、戦うのが無理なら一般人を避難協力をお願いします」

「そうニャ! まだ逃げ遅れてる人がいるかもしれないニャ!」

 見た目は戦闘ができそうな人でも、戦う前から心が折れてる人を戦闘に巻き込むわけにはいかない。
 むしろ他の人を危険に巻き込んでしまう可能性も出てしまう、残念だけどトトは戦闘には外れてもらうべきだと思った。


「それなら……」

「私はミーシャ【ウィザード】をジョブとしてるわ」

「私は……ミミです【クレリック】です」

「ローゼよ、ジョブは【ボウマン】やってるわ、そして……。はぁ、この子はトト【ウォーリアー】」

「……くそっ!」

名前  『ミーシャ』  人族/17歳

ウィザードLv9。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

アイスジャベリン____:Lv5/10。

アイスウォール______:Lv3/10。

ウォーターカッター_:Lv5/10。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 
名前  『ミミ』   兎耳族/15歳

クレリックLv4。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

ヒール______________:Lv3/10。

ブレッシング________:Lv2/10。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※


名前  『ローゼ』   人族/17歳

ボウマンLv8。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

一点集中____________:Lv5/10。

鷹の目______________:Lv4/10。

威力増加(弓)________:Lv6/10。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※


名前  『トト』    人族/15歳

ウォーリアーLv3。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

叩きつけ__________:Lv2/10。

スイング__________:Lv2/10。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※



「ウチは【モンク】こっちのミツは【アーチャー】」


 皆のジョブを確認し合った後、直に作戦を決めることにした。


「このメンバーで本当にやる気?」

「やるしかないニャ……」

「ほ、他の冒険者に声かけてみませんか……」

「ミミ、悪いけどそんな時間はなさそうよ」

「えっ?」

「見えてきたわよ、あれね」

 ミーシャの指を挿した先には数匹のキラービーだった。
 見た目はでかいスズメバチ。
 幸い一般人では無く近くにいた冒険者に向かっていったので対処されている。

「ミーシャさんは常に浅瀬とアースベアーが渡ってきそうな場所に氷の壁をお願いします!」

「わかった。足止めに集中するからキラービーまでは私は手が回らないからね!」

「ミーシャ! 踏ん張りなさいよ!」

「やるだけやってみるわ。ミミ、支援を!」

「はっ、はい!」

 ローゼの声で少しミミが驚いてるが、ルルは落ち着いて皆に支援をかけだした。

「トトもさっさと避難誘導に行きなさい!」

「わっ、わかってるよ!」

 ローゼはこのパーティーのリーダーなのだろうか、一人一人にきちんと的確に指示を出している。


「ミツ、先ずどうするニャ?」

「キラービーは基本的に一体づつならそれ程脅威ではないわ。でも群れで来られるとかなり厄介よ、他の冒険者も戦ってる、私達も周りを確認しながら戦わなきゃ」

「プルン、キラービーを撃ち落とすから落ちた奴をすかさず倒して」

 キラービーのスキルをスティールしたいけど、今はそんな事考えている場合じゃ無い。

「私も撃ち落とすからそれもよろしくね」

 手に持つ獲物であるアーバレストを構えるローゼ。
 そういえばこの人は特殊ジョブの【ボウマン】だったな、見せてくれた武器は鉄で作られているようだ。

(ボウマンの限定スキルって威力増加って奴かな)

《威力増加(弓)です。指定の装備した武器の威力を1.5倍にする効果を持ちます、他にもスキルはありますが、彼女の現在のステータスではスキルを習得できません》

 辛口な事を伝えてユイシスが説明してくれた。
 丁度いい、キラービーの討伐作戦を聞いとこう。

(一応さっき皆に伝えた作戦で大丈夫かな? キラービーは自分達で討伐で、アースベアーは足止めしてるけど)

《はい、今できる最良の作です》

 林の方から羽音が近づきその先から出てくるキラービーの群れがやって来るのが目視できた。

「皆さん! 来ます!」

 自分は周囲にいる皆に聞こえる様にキラービーの接近を知らせた。
 その言葉に皆の顔が引き締まる。

 林から現れたキラービー、見える限りでは12匹のキラービーがいきなり1ダース分の数が現れた。

 一体たりとも外してはいけない!
 ミミは〈速度増加〉を使えなかったみたいなので自分がプルンとローゼに支援をかける事にした。

キラービー
Lv2。
刺すLv2。

「二人とも! しっかり落としてくれニャ!」

「行くよ!」

「私のアーバレストの威力を見せてあげるわ!」

 他の方へ行っては困る、威嚇も含めて矢を射抜く。

 シュ! ドスッ!

 ギギッギ!

 バシャン!

 威嚇のために撃った矢はキラービーの一匹に当たった。
 あたりどころが良かったのか、そのまま川に落ちたキラービーは下流へと流され他の冒険者にトドメを刺されていた。
 それをきっかけに他のキラービーがこちらへと一斉に威嚇の音を鳴らしながら攻めてきた。

 カチカチカチ! カチカチカチ!

(まるでスズメバチみたいな威嚇だけど、あの顎が武器にもなるんだろうな、威嚇使うならこっも威嚇を!)

 カチカチカチ! カチカチカチ!

(あれ? 効いてない?)

 〈威嚇〉のスキルをキラービーへと向けて使用したのだが、キラービーは顎を鳴らす事を止めることもなくこちらを睨んでいる。


《昆虫種に〈威嚇〉の効果はありません》

(そりゃ困った……。スキルって効かない相手もいたんだな……)

 キラービーは威嚇の音を鳴らしながらこちらへと向かってきた。

(向かってくるなら狙いやすい!)

 ローゼと武器を構え矢をキラービーに向けて放つ。

 バシュ! バシュ!

 バン! ドスッ!

 ギギッギ! ギギギ!

 矢は見事キラービーの胴体や口を居抜きそのまま地面へと落下した。

「ニャ! 首を落とすだけの簡単なことにゃ!」

 落ちてきたキラービーは、矢のダメージと落ちた時の衝撃で正に虫の息、プルンがトドメを刺すのは簡単であった。
 実際、プルンはキラービーの頭ごと潰してる為キラービーからは抵抗も無く、プルンに危害は及んではいないみたいだ。

 キラービーを次々と倒すプルンの心の中に確信が持てた。

「二人とも、これなら行けるニャ!」

「よし!」

「プルン! まだまだ来るみたいだけど無理はしないように」

「解ったニャ!」

 ローゼはプルンの言葉にグッと拳を作り、自分はまだいるキラービーに警戒を忘れないようにとプルンに声をかける。

(倒せるか不安だったけど、倒せる事が解れば一先ず安心だな)

《キラービーは集団戦を得意とします。敵の目を仲間がひきつけてる間に背後からの攻撃をするのがキラービーの戦闘のパターンです》

(なら後ろにも注意しなきゃな)

 キラービーは仲間がやられて怒ったのか、更に顎をカチカチと威嚇を鳴らしながらこちらへと攻めてくる。

 そんな威嚇の音鳴らしながら飛んできたら不意打ちにもならない、自身の居場所を知らせているものだ。

 カチカチカチ! カチカチカチ!

 バシュ! バシュ!

 ギギっ! ギギッギ!

「全部倒してやるニャ!」

 自分とローゼが敵を落とし、プルンがトドメを刺す。上手い流れが出来たのか二人は最初の不安も無くなり。今は余裕が出来てきたのかプルン達の喋る口数も増えてきている。

「そう言えばプルン」

「ハッ! 何ニャ?」

「あの子の名前って、教会に住んでる子と同じ名前だよね? ミミちゃん」

「ニャ。ミツ、同じ名前の人なんて、何処にでもいるニャよ」

「へぇー。そうなのね。それより、君達中々やるじゃない」

「ありがとうございます。でも、ローゼさん達も凄いじゃないですか」

「そうね、ミーシャは私達のチームじゃ1番の力よ。ミミもあんなオドオドしてても、敵を目の前にしたらさっきとは別人みたいに動くでしょ」

「確かに」

 ローゼの言うとおりミーシャは作戦通りに林を挟んで川の浅瀬に氷壁を作り上げている。
 また、それだけでは無い。近づこうとしている敵を自身で水の魔法で川に叩き落としていた! 
 川の流れが早いのか落ちたキラービーはそのまま下流へ流されていく、また水で羽が動かないのか近くの冒険者に簡単に倒されている。
 見ていて上手いピタゴラスだと思った。

 ルルは転んで怪我した人やキラービーと戦闘に傷ついた冒険者を治しているようだ。
 自分達の支援をしながらも周りの状況をしっかりと見ているので支援者としては良い仕事をしている。

「トトさんでしたっけ? あの人も凄いじゃないですか」

「まぁ……。前衛としては問題ないわね、ただ性格がアレだから肝心な時は使えないのよ」

「でもあれ見てくださいよ、一般人の誘導が上手いですよ、もう殆どの人を逃してますし」

「そうね、あいつは最初からやる気見せてくれたら私としても素直に褒めてやれるんだけど……」

 トトは最初の印象は悪かったが人を助けている姿は正に冒険者の顔だった。
 足の悪い人には肩を貸したり、ミミの治した人を直に避難させていた。


「それより君の弓の技術凄いわね、さっきから殆ど外してないじゃない」

「いえいえ、ローゼさんの弓には負けますよ。当ったキラービー即死してるじゃないですか」

 そう、ローゼは〈威力増加〉スキルの効果もあるだろうが、射抜いたキラービーは即死して落ちていっていた。

 自分の射抜いた矢は当たってはいるがキラービーを即死させてはいない。
 むしろ即死させないようにできるだけ胴体を狙って射抜いていた。

 理由は簡単、実はプルンにトドメを刺させて経験を分けるためでもある。


「こっちはボウガン使ってるんだもの、連射は効かないけど一撃の攻撃力は自信あるわよ」


 バシュ! バシュ!

 バン!

 バシュ! バシュ!


「ちょっと数多すぎない……」

 現れた1ダース分のキラービーは既に倒しきっている。
 今倒しているのは切り無く林の方から出てきている新たなキラービーの群れだ。

「そうですね、でもまだ嫌な予感は森の奥から来てます」

「私の矢もそんなに無いんだけど、困ったわね……」

「これっどうぞ、自分の矢です、使って下さい!」

 そう言うとアイテムボックスの中にしまっていた矢筒を次々と取り出した。

「まぁ、ボックス持ちなのね。羨ましいわ、悪いけど今は遠慮なく使わせてもらうわよ」

「はい」

《間もなくキラービーの本体部隊が来ます、支援のかけ直しをオススメします》

(解った、数は!)

《数200です》

 ユイシスの教えてくれたキラービーの数が予想を超えて多すぎる。
 まだ避難は終わってはいない、今ここにそんな数が攻めて来たら確実に被害がでてしまう。

(……どっ、どうしたら良いかな)

《数分乗り切ってください、こちらに冒険者の援軍が来ています。到着するまで時間を耐えれば被害を抑えれます》

 流石に今のままの作戦だと先頭で戦うプルンが危ない。
 トドメを刺す役程は敵に狙われてしまうかもしれない。

「プルン! こっちに!」

「ニャ? どうしたニャ!」

「君! どうしたのいきなり」

「二人とも……落ち着いて聞いてください。あと数十秒で200匹ものキラービーが来ます」

「ニャ!」

「なっ!」

「あのままプルンを自分達から離れて戦わせるのは危険なので作戦を変えます、プルンには近くで戦ってもらいます」

「そんな……200だなんて。ほっ、本当なの?」

「すみません、事実です」

「ミツはアーチャーニャ、何が敵を感じるスキルか持ってるんだニャ?」

「まぁ、そんなところだよ」

「でっ、どうするの」

「もう直ぐ冒険者の援軍が来ますのでそれまで耐えるしかありません」

「そんな……」

「やるしかないニャ……」


 ババババ! バババババ!

「「「!」」」

 まるでヘリコプターの様な物凄い数の羽の音に、皆は林の方へと視線を向けた。


「なっ! なんだあれは!」
「そんな! 無理だ逃げろ!」
「キャー!」


「ちょっと……こんなの無理よ……」

「はっ、はわわ」

「ミミ! しっかりしろ!」

「トトッ、にっ逃げなきゃ」

「わかってる! でも、まだ避難しきれてない人が……。くそっ!」

 キラービーの集団を見て皆血の気を引いた様な顔色になってしまった。


「逃げろー!!」
「嫌や! 死にたくない、助けてくれ!」


「プルン! ローゼさん!」

「「!」」

 今出し惜しみしてる場合じゃない!
 一瞬、創造者のチミっ子のセリフが頭をよぎってしまった。

〘死ねば……死ぬのよ……〙

 ゾクリと背筋に冷たい物が走った気がした。
 自分は震えを堪えるかのように奥歯を強く噛みしめる。
 呼びかけに駆け寄ってきた二人にむけて自分は掌を向け支援をかけなおした。

「ブレッシング! 速度増加!」

「なっ!」

「ニャ!」

 二人は支援をかけられたことに驚き声をあげたが今はそんな事を気にしてはいられない。
 二人に支援をかけ直し、もう一度作戦を伝え直した。

「きっ、君! 何で支援スキルが!」

「すみません、今は話してる場合では無いので後にしてください。これから自分が一気に敵を射抜きます。落ちてきたキラービーはプルン、君がトドメを」

「うっ……。わ、解ったニャ!」

「ローゼさんはミーシャさんの居る場所へフォローに行ってください」

「何を言ってるの! 君一人で戦う気なの!」

「いいから! 早く行って下さい!」

「っぐ……」

「ローゼ、このままじゃアースベアーのために足止めしてくれてるミーシャが危ないニャ」

 そう、キラービーが現れてから時間がたっている、アースベアーも既に直ぐそばまで来ているかもしれない。
 それを考えるとキラービーが大量に現れたために、ミーシャの方へとキラービーか流れてしまうかもしれない。
 ミーシャにはどうしても壁に集中してもらわないといけないのだ。


「……解ったわ」

「すみません……」

「良いのよ、君の判断は今は間違っちゃいないのも確かよ……。二人とも無理するんじゃないわよ!」

「そちらも」

 グッと自身の拳を出すローゼ、少し自分より背の高い位置にあるローゼの拳に自分の拳を当てると、プルンも同様に拳を当てた。
 軽く微笑みながらその場から離れミーシャの方へと走るローゼだった。


「ミツ、援軍はどれくらいで来るかニャ」

(ユイシス、援軍はどれくらいで来るかな?)

《10分程で到着予定です》

「恐らく10分程」

「結構かかるニャ……」

「やるしかないよ!」

 武器を構えキラービーの群れへと矢を放つ!
 それを合図と一斉にキラービーが迫ってきた!

「行くよ!」

「ニャ!」

《ミツ矢に即毒を使用して下さい》

 ユイシスの助言も聞いて矢に〈即毒〉そして〈連射〉スキルを使用した。

 シュ! シュ! シュ! シュ……。

《経験により〈連射Lv2〉となりました》

 ここでスキルのレベルアップはありがたい!

「プルン、戦う時には前だけじゃなく背後にも気をつけて!」

「解ったニャ!」

 先程とは違い今の自分の攻撃する矢には〈即毒〉スキルもつけている、プルンがトドメが間に合わなくても毒で死ぬので落ちた虫は無視できる。

「すっ凄い……何あの子達」
「キラービーを次々と落としては倒してるぜ……」
「感心して見てる場合じゃないわよ! 早く一般人の避難を急いで!」
「おっ! おう」

 周りにいた冒険者も逃げることもなく各自で戦闘を続けてくれたのは本当に助かった。
   
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

お願いだから俺に構わないで下さい

大味貞世氏
ファンタジー
高校2年の9月。 17歳の誕生日に甲殻類アレルギーショックで死去してしまった燻木智哉。 高校1年から始まったハブりイジメが原因で自室に引き籠もるようになっていた彼は。 本来の明るい楽観的な性格を失い、自棄から自滅願望が芽生え。 折角貰った転生のチャンスを不意に捨て去り、転生ではなく自滅を望んだ。 それは出来ないと天使は言い、人間以外の道を示した。 これは転生後の彼の魂が辿る再生の物語。 有り触れた異世界で迎えた新たな第一歩。その姿は一匹の…

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

レジェンドテイマー ~異世界に召喚されて勇者じゃないから棄てられたけど、絶対に元の世界に帰ると誓う男の物語~

裏影P
ファンタジー
【2022/9/1 一章二章大幅改稿しました。三章作成中です】 宝くじで一等十億円に当選した運河京太郎は、突然異世界に召喚されてしまう。 異世界に召喚された京太郎だったが、京太郎は既に百人以上召喚されているテイマーというクラスだったため、不要と判断されてかえされることになる。 元の世界に帰してくれると思っていた京太郎だったが、その先は死の危険が蔓延る異世界の森だった。 そこで出会った瀕死の蜘蛛の魔物と遭遇し、運よくテイムすることに成功する。 大精霊のウンディーネなど、個性溢れすぎる尖った魔物たちをテイムしていく京太郎だが、自分が元の世界に帰るときにテイムした魔物たちのことや、突然降って湧いた様な強大な力や、伝説級のスキルの存在に葛藤していく。 持っている力に振り回されぬよう、京太郎自身も力に負けない精神力を鍛えようと決意していき、絶対に元の世界に帰ることを胸に、テイマーとして異世界を生き延びていく。 ※カクヨム・小説家になろうにて同時掲載中です。

王女の夢見た世界への旅路

ライ
ファンタジー
侍女を助けるために幼い王女は、己が全てをかけて回復魔術を使用した。 無茶な魔術の使用による代償で魔力の成長が阻害されるが、代わりに前世の記憶を思い出す。 王族でありながら貴族の中でも少ない魔力しか持てず、王族の中で孤立した王女は、理想と夢をかなえるために行動を起こしていく。 これは、彼女が夢と理想を求めて自由に生きる旅路の物語。 ※小説家になろう様にも投稿しています。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

隠密スキルでコレクター道まっしぐら

たまき 藍
ファンタジー
没落寸前の貴族に生まれた少女は、世にも珍しい”見抜く眼”を持っていた。 その希少性から隠し、閉じ込められて5つまで育つが、いよいよ家計が苦しくなり、人買いに売られてしまう。 しかし道中、隊商は強力な魔物に襲われ壊滅。少女だけが生き残った。 奇しくも自由を手にした少女は、姿を隠すため、魔物はびこる森へと駆け出した。 これはそんな彼女が森に入って10年後、サバイバル生活の中で隠密スキルを極め、立派な素材コレクターに成長してからのお話。

白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます

時岡継美
ファンタジー
 初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。  侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。  しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?  他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。  誤字脱字報告ありがとうございます!

ペット(老猫)と異世界転生

童貞騎士
ファンタジー
老いた飼猫と暮らす独りの会社員が神の手違いで…なんて事はなく災害に巻き込まれてこの世を去る。そして天界で神様と会い、世知辛い神様事情を聞かされて、なんとなく飼猫と共に異世界転生。使命もなく、ノルマの無い異世界転生に平凡を望む彼はほのぼののんびりと異世界を飼猫と共に楽しんでいく。なお、ペットの猫が龍とタメ張れる程のバケモノになっていることは知らない模様。

処理中です...