スキル盗んで何が悪い!

大都督

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第10話 感謝の晩餐

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 アイシャに手をひかれ、晩餐を行う準備が整った広場にやって来た。

 広場には村人皆で準備したのだろう、即席のテーブルに椅子が並んでおり、食卓を様々な料理でかこみ村人の笑顔で包まれていた。

「うわぁ……」

「凄い凄い!」

「ミツ坊、起きたかい。こっちに座りなさい」

「はい、アイシャ行こう」

「うん!」

 ギーラに手招きされ、言われた席に座り、自分の隣にアイシャが座る形になった。

「どうぞ、ミツ様、オークの一番美味い部位です」

「あっ、ありがとうございます」

 出された料理はオークとは思えない程の香ばしい匂いが鼻をくすぐり、ツヤツヤと光る脂身が食欲をそそっている。

「アイシャ、落ち着いて食べるのよ」

「はーい、お母さんありがとう!」

 アイシャにも自分と同じ料理が運ばれてきた。

 マーサは動けることもあって、給仕を手伝いながらも娘の面倒をよく見ている。

 とても嬉しそうに料理を運んでいる母の姿を見てアイシャはとても嬉しそうだ。

「では、皆の者、食事の前に私から一言」

「お婆ちゃん早くね」

 アイシャの視線は肉にしか行ってないみたいだ。

 周りから笑い声がでており、母親であるマーサは申し訳なさそうに苦笑気味にこちらを伺っていた。

「はいはい、コホン。では、まずはミツ坊に感謝を言わせて欲しい。孫娘をゴブリンから助けてもらい、次にトムは家族であり村にとっての大切な草牛のエリリーを助けて貰ったことを」

「ミツさん、あの時は私凄く怖かったの。助けてくれて本当にありがとうね!」

「本当にありがとう、エリリーが今ここにいるのはミツ君のおかげだ。本当に感謝してるよ」

「また洞窟の魔水が汚染され、ポーションが作れず、村人皆が絶望に落ちていた。しかし、ミツ坊はアース病にかかった村人を、皆一人残らず助けてくれた」

「ミツさんありがとう、娘も私も心から感謝するわ」

「ミツ君、君のおかげで家族を失わずに済んだ。ありがとう」

「ありがとうミツ様!」

「ありがとうございます!」

「ありがとう治療士様!」

「ありがたや、ありがたや!」

「最後に、我々に食事の席を作ってくれたことに、心より感謝するよ」

「「「「ありがとうございます!」」」」

 皆の注目を浴びて感謝される、こんなことは前世では経験の無いことだ。

 恥ずかしくなりながらも、一人一人のお礼を受け止める。

「はい!」

「では皆、頂こうじゃないか」

「ギーラさん、余った肉は村人で分けてくださいね」

「本当に良いのかい?」

「今は自分よりこの村の人の方が必要とする物ですからね」

 事実この村にはまだ足りないくらいだと思う。

 しかし、皆病から回復したなら、狩はできるようになれるはずだ。

 この村が貧困になってしまった理由、アース病さえ取り除けば村の皆が生きて行くには問題ないはずだ。

「なら、値打ちのある素材だけミツ坊には返すよ。流石にこれ以上この村が貰うわけにもいかないからね」

「オークの価値のある素材ってなんですか?」

「皮と牙と骨、後は睾丸だね。オークは殆どが食べる肉だよ」

「皮は防具に、牙と骨は武器に。睾丸は貴族が欲しがるからね、どれも売れる物だぞ」

「へー」

 ゴブリンはお金にはならないけど、オークはそこそこ稼げるモンスターみたいだ。

「お婆ちゃん、睾丸って何?」

「金玉じゃ」

「はぅ……」

 年頃の女の子が知らないとは言え、恥ずかしい質問をしてしまったのだろう。
 ギーラのハッキリとした答えに顔を赤らめるアイシャ。
 それを横でアハハと笑い飛ばすバン。

「そんな物を貴族が欲しがるんですね?」

「薬になるんじゃよ、主に夜のな」

「あっ……なるほど」

 それは男性が使うのだろうか? 女性が使うのだろうか? 多少気にはなったが、ご飯を食べている時に聞くことでもないから止めとこう。

 暫く食事を楽しんでると、村の人がオークに捕まっていた女の子が起きたことを伝えに来てくれた。

「村長、娘さんが目を覚ましました」

「おぉ、目が覚めたかい。丁度いい、こっちに呼んでおくれ」

「はい」

 ギーラの言葉に村人が一度戻り、女の子を隣にと一緒にこちらへと歩いてきた。

「あぁ……あの……」

「気分はどうかの? 見たところ怪我は無い見たいじゃが」

「助けてくれてありがとう……ニャ」

(ニャ!)

 思わず、思考の中で反応してしまった。

 そりゃニャですよ! ニャ!

 前世ではニャなんて、語尾つけた人なんて特別なお店とかイベントの人しかいなかったからね。

 女の子は頭のフードを脱ぎ、下に隠れていた耳を見せていた。

 見ためは獣人の女の子、髪は茶色にショートカットのウェーブ。

 獣人と言うのだからと頬に髭があると思ったが、そんな物はなく。変わりに人とは違うエメラルド色の瞳を特徴としていた。

 スタイルは栄養失調状態もあり、余りふっくらはしていない。早く回復して欲しいものだ。

「私はプルンって名前ニャ、此処は何処かニャ?」

「此処はスタネット村、私はこの村の長をしているギーラってんだ」

「スタネット村ニャ……。街から結構遠いニャ……」

「あんたは冒険者かい?」

「そうニャ、まだ駆け出しだけど、一応冒険者だニャ」

 どうやらプルンは冒険者だったらしい。

 探索の途中にオークに捕まったのだろうか。

「プルンさんだったかな? 俺はバン、村長の息子だ。何でまたオークなんかに捕まってたんだ?」

「そうだ! オーク! あいつらは今何処ニャ!」

 オークに捕まっていたことを思い出したのか、プルンは顔を青ざめさせ、慌てるように辺りを見渡した。

「オークならそこにいるよ」

 そんなプルンにアイシャは皿の上に乗っている焼けた肉を指差した。

「ニャ!……ニャ? これ肉じゃニャいか?」

「だ~か~らっ! それがオークだよ」

「ニャんと!」

「ハッハハハ」 

「ウフフ」

「ガッハッハ」

 プルンの表情が鳩が豆鉄砲食らったかの顔に、村人皆は声を出しては笑いだす。

「安心せい、お主を拐ったオークは皆倒しとるよ」

「すっ凄いニャ……。村の人が倒したのかニャ!?」

「いや、この子だよ」

 バンが自分の頭に軽く手を乗せ、ニコニコと笑いながら頭をクシャクシャと撫でてくる。

 プルンに討伐したことを伝えたが、やはり冗談だと思われたのだろう。

 驚きの表情は渋々と訝しげな表情へと変わっていく。

「ええぇ! 嘘ニャ嘘ニャ! いっ、いくら何でもそんな子供にオークは無理ニャ……」

「まぁ……それが普通の反応なんでしょうけどね……」

「おれっちも目の前で見てなかったら信じてないな」

「初めましてプルンさん」

「ニャ!」

「自分の名前はミツ。怪我が無くて良かったですね」

「あっ……どうもニャ……こちらこそ……」

 グ~……。

 バッ! とお腹を隠したが音は隠せるわけもなく。

 皆の視線を自身のお腹に集めてしまい、顔を真っ赤にさせるプルン。

 お腹空いてる状態で肉の焼ける匂いは誰でもお腹鳴っちゃうよね。

「はっ……あっ……あの、これは……」

「マーサ、1皿持ってきておくれ」

「はい」

 ギーラの一声で席を立つマーサ。

 プルンを席に座らせ、マーサが食べやすく切り分けた肉と、野草と川魚の炒め物を入れた皿がプルンの目の前に出された。

「どうぞ、熱いから気をつけてね」

「たっ、食べて良いのかニャ? ウチ、お金ないニャよ」

「いえ、プルンさんには起きたら食べて貰うつもりでしたから」

 自分の言葉に村長であるギーラが優しく微笑みながら頷いた。

「じゃ……じゃ! 頂くニャ!」

 相当お腹を空かせていたのだろう、出された料理が吸い込む様に口に入っていく、まるで何処かの戦民族の様な食い方だ。

「ハハッハ! スゲェ食べっぷりだな」

「よっぽどお腹空いてたんだね」

「まだありますから、ゆっくりと食べて下さいね」

「ありがとうニャ! ありがとうニャ!」

「すまんがお主が寝てる間に少し診察したんじゃが……。少し痩せ気味のところを見ると余り飯を食っておらんのではないのか?」

「……ニャ」

「冒険者ならその日食う分には問題なかろう、理由を聞いても良いかの?」

「……」

 ギーラはプルンに説明を求める。
 その質問はプルンの箸を止める程に沈黙させてしまった。

 冒険者の仕事はその日生きていくなら問題ない稼ぎが貰えるようだ。

 しかし、プルンは冒険者家業をしながらもひもじい生活をしなければいけない状況とは?

「ギーラさん、先にご飯食べちゃいましょうよ」

「そうだな、せっかくの肉食い溜めしとかねーとな」

「アイシャおかわりは?」

「うっ……うん、お母さんお願い!」

「すまんの、話すのが辛いなら話さなくてもいいからの。気を悪くしたら謝るよ」

「ニャ……そんなことは……」

 まだ話せる程信頼してもらえてないのか。

 そんなことは気にせず、直ぐに皆も話題を変えてくれた。

「バンさん、街ってこの村からどれくらいかかるんですか?」

「そうだな、まる一日歩いて着くかな」

「ミツさん、街に行っちゃうの!?」

「うっ、うん。目的は無いけど旅の途中だからね」

「そっか……」

「アイシャ……」

 そんなアイシャ、捨てられる動物みたいな顔は止めておくれ。気に入ってもらえたのは嬉しいけどなんか旅しにくいよ。

「ミツ君、行くなら馬車を使うといい。朝出発すれば夕方前には到着できるぞ」

「そうなんですね。でも、自分お金持ってないので……」

 今は無一文のスッカラカンだ。

 通常のゲームだとモンスターからお金が入るんだけどそれは流石に無いか。

「なーに、オークの牙1つ渡せば問題無く乗せてもらえるさ」

「ミツ様、街についたら早めにお金と交換しとかないと、素材の品質が落ちたら買い取り値も下がっちまうゾイ」

「ミツ坊は冒険者登録はしとらんのか?」

「いえ、してませんね?」

「なら、冒険者ギルドに登録すればその場でオークの素材を買い取ってくれるよ」

「それは便利ですね、街についたら登録しに行きますね」

 この世界の身分証明書みたいなものか? この先必要になるかもしれないから手に入れておこう。

「ミツ坊、馬車で行くならもっとオークの素材を持っていくかい?」

「いえ、あれは村の資金にしてください」

「……ニャ」

 自分がそう言うと村人中から、助かる、ありがたい、などの喜びの声が聞こえてきた。

 まだ大人前のオークとは言え、村としては食料にできる資金源になるだろう。

「すまんね、助かるよ。お礼といっちゃなんだけど、代わりにこれを持っていきな」

「なんですか、これ?」

 そう言われてギーラから渡された物は、茶色したお守りのような袋だった。その中には木札が一枚入っている。

「街に入る時の通行料金が一回免除になる物だよ。入った後に冒険者になれば街の出入りは自由になるからね」

「助かります」

 交通手形みたいな物かな、やはり村長の特権なのだろう。

 ギーラからの通行料と言う言葉に、そんなお金がなかった自分は本当に助かる思いで袋を受け取り、ギーラへと頭を下げた。

「いやいや、これくらいしかお返しができなくて悪いね」

「あ……あの……」

「ん? どうしたんですかプルンさん」

「あの、街まで一緒に行っちゃ駄目かニャ? ウチ、馬車代今持ってニャくて……」

「いいですよ。でも、二人も乗れますかね?」

「牙1つで大人十人以上運んでくれる。むしろ払い過ぎてるぐらいだ、気にすることもない」

「じゃ、一緒に行きましょうか」

「ニャ! ありがとう、助かるニャ」

 一人で行くより地元の人と一緒の方が安心だし、問題はない。

 こうして晩餐も終り。

 次の日の朝には村人皆でお見送り状態となった。

 馬車はドンが少し離れた村まで夜の間に態態走って呼んできてくれたそうだ。ドンに感謝を言うと自身もこれくらいしかお礼ができないことに申し訳なさそうに返されてしまった。

「ミツさん、気をつけてね……」

「ミツ坊、お前さんはこの村の英雄じゃぞ」

「ミツさん、色々とお世話になりまして、本当にありがとうございました」

「ミツ君元気でな! 君のおかげで村がまた活気づく。ありがとう! 何かあったら直ぐに言ってくれ、俺達は君の為なら何処にでも助けに行くからな!」

「は~、ミツ坊に助けてもらった奴がよく言うわい」

「ははぁ……では、皆さんまた!」

「ミツさん……」

 服の袖をぐっと引っ張りながら名前を呼ぶとか、

 アイシャそれは心が揺れちまうよ。

「アイシャ……」

「また……また会えるよね……」

「大丈夫だよ、またお肉持ってくるからね」

「……プッ……あははは、もう! アイシャ食いしん坊じゃないもん。お……お肉は嬉しいけどさ、また来てね!」

「うん……ありがとう、また来るよ!」

 このセリフを言う猫ロボットアニメ映画って、殆どまた来ないパターン多いよね。後々解ったのだが、あれはまたこの映画見るって意味も込めてたと友達から教えてもらった覚えが。

「そろそろ出るよー」

「はい! それでは皆さんお元気で!」

「お世話になったニャ!」

 御者の人の声が聞こえると名残惜しくもゆっくりと服の袖を放すアイシャ。

 自分は何も言わずアイシャの頭を撫でるとニコリと笑顔を見せてくれた。

 ともに相乗りするプルンと馬車に乗り込むとゆっくりと馬車は動き出した。

 少しづつ、少しづつ、馬車は村から離れ、村は小さくなっていく。

 少しづつ、少しづつ、小さくなっていく村だけど、村の人々は見えなくなるまで手を降って馬車を見送ってくれた。

∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵∴∵

 馬車に揺られながらゆっくりと道を進む。

 馬車の中は二人しかいないので無言の時間はお互いに辛い。

「ミツさんはどうして旅をしてるニャ?」

「成り行きです」

「そうかニャ……」

 また沈黙の空間。

(あっ、いけない。せっかく向こうから話題を振ってくれたのにこの返し方は駄目だった)

「プルンさん」

「んっ? ニャにかニャ」

「プルンさんは冒険者になりたてなんですよね? 自分も街に行けば冒険者になるので。先輩からの心得をご指導をお願いしても良いですか」

「わかったニャ、ウチが知ってる事教えて上げるニャ」

 これなら、色々と質問ができるし、話題には困らないだろう。話題が良かったのか質問のしかたが良かったのか、プルンはニコッと笑い嬉しそうに説明し始めた。

「先ずは冒険者は誰でもなれる訳じゃないニャ。その人の特性を試験官に試されて、結果で合格が出れば冒険者になれるニャ」

 やはり登録するだけで冒険者って訳じゃないのか。

 ゴブリンやオークみたいなモンスターと戦うんだ、それを考えたら危険な冒険者登録時にそう言った試験があるのは納得できる。

「ちなみに、ウチのジョブは【モンク】ニャ」

「接近戦タイプですか」

「ミツさんは何のジョブニャ?」

「自分は【アーチャー】ですよ……今のところはね」

「じゃ、まずは試験官との模擬戦頑張るニャ」

「模擬戦ですか」

「そうニャよ。それを合格したら後は、冒険者カードを作るだけニャ」

「冒険者カード?」

「これが冒険者カードニャ」

 そう言ってコクリと頷いたプルンは自身の胸元から紐でかけていた木札を見せた。紐を通された木札には数字と文字が焼印が押されている。

「木の札?」

「これはまだ入りたての冒険者だからニャ。冒険者カードは冒険者ランクによって変わるニャよ」

「ランク、そんなのもあるんですね」

「ランクはギルドからの依頼達成によって上がるニャ、下から〔ウッド〕〔ブロンズ〕〔アイアン〕〔グラス〕〔シルバー〕 〔アルミナ〕と上がっていくニャ」

 受けよる依頼にノルマ的な奴があると嫌だな……。
 前世ではノルマをクリアーできそうに無いと、休みを潰してでも働いてた嫌な記憶もあるし。

「最初は薬草の採取や荷物運びとかの雑用での依頼をやって行くニャ。ウチも採取依頼の途中だったんだけどニャ。まさかオークに出くわすなんて運が無かったニャ」

「無事でよかったですね」

「討伐依頼なら臨時でメンバー集めて行くんニャけど、採取は一人が早いからいつも一人で受けてたんだニャ」

「臨時メンバーですか、やはりチームで戦うのがいいんでしょうね」

「そりゃそうニャ、討伐依頼は命がけニャ。前、後、支援、この3つ揃ってフォーメーションを組んでいくニャ」

 やはり戦闘スタイルはゲームと同じか……。

 それが戦いの基本なのだろうか。

「一つ聞きたいニャ。ミツさんは【アーチャー】ニャね」

「はい、そうですね」

「何で【アーチャー】が一人でオークを倒せるニャ? オークと言えばアイアンのランクで倒せるレベルニャ。何か特別な方法で倒したとかニャ?」

「運が良かったんですよ」

「んー、まいいニャ。ミツさんの力はギルドでわかるニャ」

 説明するより実際に見てもらった方が解るだろうし。

「他にも、聞きたいことあるかニャ?」

「そうですね。冒険者ってどれくらいの人がいるんですかね」

「ん~、冒険者ギルドはいろんな場所にあるニャ。その為人の数は想像超える数だろうニャ」

「プルンさんは何で冒険者に?」

「ギルドに知り合いがいてニャ、それでこの仕事を進められたニャ。元から戦闘には自信があったからニャ、それに他にもいろんな仕事してきたけど、この仕事は気楽ニャ」

「冒険者依頼のお金ってどれくらい貰える物なんですか?」

「依頼によるニャ。採取ニャら量で変わるけど銅貨20~40枚位で、運搬手伝いニャら銅貨30~60枚くらいニャ」

(この世界のお金の単位っていくらくらいかな?)

《この世界のお金の単位、以下のとおりになります

 鉄貨1枚→10円

 銅貨1枚→100円

 銀貨1枚→1,000円

 金貨1枚→ 10,000円

 大金貨1枚→100,000円 

 虹金貨1枚→1,000,000円

 《一般的な宿泊地の料金が銀貨2~3枚で宿泊できます》

 お金の単位を疑問に思っていたら、ユイシスの説明と一緒に目の前にウィンドウ画面が表示され、そこには解りやすくお金の単位が書かれていた。

 

「あっ、見えてきたニャ!」

 プルンの声で外の景色を見ると、そこには機械もない世界にどうやって作ったか想像もできない、大きく真っ白な橋がかかっていた。

「お~!」

「あの橋を渡った先がライアングルの街ニャ」

「ライアングルですか」

「そうニャ、この辺を仕切る地主様も住んでる街だから結構広いニャ。人族には珍しく、獣人族のウチ達にも差別なく接してくれるニャ」

「差別ですか……。やっぱりあるんですね」

「一部! 一部だけニャ。ウチの知ってる知り合いでは、一人もいニャいニャよ。でも、違法者や罪を犯したものは容赦無く奴隷送りニャ、奴隷差別だけは結構大きいニャ……」

「奴隷制度もあるんですか……」

「そうニャ、あそこの橋ニャ。あそこの正門を通らずに不正に入った者街に関係ない外者は、まず罪にとわれるニャ」

 不法侵入は即奴隷送りか。

 ゲームだと様々な方法で街や城に入るゲームもあるけど、実際考えたらそれも不法侵入してるんだよね。

「後街の中でも罪に問われる程の悪いこもした場合も奴隷送りニャ」

「結構しっかりとしたルールがあるんですね」

「ルールがあるからこそここまで大きな街ニャよ」

 橋を渡る処は関所になっている。

 商人や他の村から来た人、色んな人が順番待ちしていた。

「結構並んでますね」

「順番待ちはいつものことニャ。立って待つより、馬車の中で座ってるウチ達はまだ楽だニャ」

「次っ!」

 順番が来たのか、外から聞こえた男の声に少し馬車が動くと直ぐに動きは止まり御者の人が質問を受けていた。

「馬車経由か、よし。次はそこの娘、冒険者か? ならカードの提示を願おう」

「はいニャ」

「うん、良し。次の者、君も冒険者か?」

「いえ、自分は旅の者です」

「なら、君は通行料を出してもらおう。銅貨20枚もしくは銀貨2枚だ」

「これ使えますでしょうか」

 門番となる男から通行料を要求されたが、自分は焦らずにギーラが持たせてくれた通行手形となる札を男に差し出した。

「ん? スタネット村の……」

「村長から頂いた物です。これ使っても大丈夫ですか?」

「あぁ、3日の滞在許可と通行料免除書だ。大丈夫、問題なく使える」

「よかったニャ、3日も掛らずに冒険者カードは作れるニャ」

「なんだ、君は冒険者志願者か」

「はい、冒険者カードがあれば色々と便利だと聞きまして」

「そうだな、旅をするならあって困るものじゃない」

「君、入る前にこれに手を当ててくれ」

「何ですかこれ?」

 そう言ってもう一人の門番の男の人が自分の前に差し出したのは、占い師とか使いそうな透明度は無い大きな水晶の玉だった。

「通行が免除でも罪人を入れるわけにはいけないからね。この水晶が黒くなったら悪いけど入れる訳にはいかないんだ」

「君、今まで人を殺めたりしてないよね?」

「えーっと。ゴブリンと、オークなら……」

 自分の答えに何を言ってるんだ、見たいな顔で見る二人。

「まぁ、取り敢えずやってみてくれ」

「はい」

 水晶に手を置いた瞬間、じわじわと白い光が出てきた。光はドンドン強くなり、昼間でも明るく感じる光を出し始めた。

「おー! 白の光が!」

「凄い! ここまで光を出すとわ」

「???」

「凄いニャ……」

「これって、いい事なんですか?」

「あぁ、この水晶はその人の善意と悪意を簡単に図るんだ。普通はぼんやりと光る程度なんだがな……」

「ここまで光が強いということは、人の命すら救うほどの善行をやって来たってことですね」

「この玉は人の命を無下に奪ったりするとその逆、黒く染まっていく物なんだよ」

 スタネット村の出来事が影響してるのかも。

「問題ないな。ようこそ、ライアングルの街へ」

「ありがとうございます」

「凄いニャ……。普通あそこまで光らないニャけど」

「そうなんだ……」

 周りの視線が少し強い。
 早くここから立ち去りたいよ。
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