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第九章 東京へ ~敵は、『男』、全員。~
第九章 ③
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…翌日から私は、拠点を品河の漫画喫茶
から、駅近くの安いビジネスホテルに
変えて、都内の色々な場所に出かける
ことにします。
聞いたことのあるような名前の駅で
降りては、近辺の不動産屋に入る、
そんなことの連続。
これぞというアパートまたはマンション
を探していたのです。
あの頃の私にとっては、職より、まずは
住まいでした。
何故かと言うと、そんなに切羽詰まって
いなかったからです。
精神的にも経済的にも…。
まず、不動産の保証人も、雪子おばさんが
引き受けてくれることになっていました
から、その点で、安心でした。
そして、何より、懐に余裕があったのです。
つまり、お金が、かなりありました。
そこが、同世代の若い女の子たちとの
違いでした。
家を飛び出て、家には戻れないから、
そう言う仕事を探している。
それは同じでも、私には、お金がある、
そんな余裕があったのです。
だから、1週間ぐらいかけて、ゆっくり
慎重に、住まいも、仕事も、見つけよう
としていました。のんびりしていました。
ある意味、初めての大都会・東京を
楽しもうともしていましたね、私は。
日中、住まいと仕事を探しながらも、
途中、有名な公園でお昼を食べたり、
お茶葉水の有名な書店に行って、
『夜の世界』で頂上に上り詰めた女性
たちの本を買って、夜はホテルで読書、
勉強するなどしていました。
あの頃の私に、お金があった理由は、
色々です。
まず、スーパーで働きながら、かなり
貯めていたのです。
私は、母と同じで、貯金が趣味とも言える
性格でしたし、何より、寮暮らしでした。
家賃が、かからなかったのです!
しかも、遊びも、買い物も、興味なく、
ただ平戸を捜し回ることと仕事の日々
でしたから、お金を使う機会がなかった…。
だから、給料は少なかったのですが、
貯金額は日に日に増えて行っていた
わけです。
その給料だけでなく、雪子おばさんから
の仕送りも、毎月ありました。
だから、着ているものも質素で、
暮らすアパート・寮は古い築何十年の
木造ボロボロ部屋でしたが、私個人の
郵便局の貯金残高は、普通の同年代の
女性の比にはなりませんでした。
それが、ちょっと、私の自慢でした。
声には出しませんでしたが……。
それから、あの愛媛を発つ朝…、
雪子おばさんは私に、通帳と印鑑を
手渡してくれていました。
私名義の、いすみ成和信用金庫の
通帳でした。
雪子おばさんは教えてくれました。
「これはね、峯子さんが、真子ちゃんの
ためにずっと貯金してくれていた分よ」。
そして、私は、この通帳のお金にも
一切手をつけていませんでした。
つける必要が、川崎市では全くなかった
のです。
そんなことで、私はスーツケース1個と
鞄だけで東京に足を踏み入れたわけで、
はたから見れば田舎娘が身一つで上京
して来たとか、家出少女のように見えた
はずですが、実はリッチでした。
「私は、こう見えて、あんたたち以上に、
お金持ってるのよ!」と言う、自信と
言うか強気な気持ちが、一人ぼっちの
私にありました。
それが、私の支え、誇りでした。
だから、ゆったりとしていました。
ゆっくり住まいも仕事も見つければ
良いや、と思っていたのです。
さて、初日は、品河に出て、品河の
漫画喫茶に泊った私。
翌日から、住まいを探しに出たの
ですが、とにかく私は、面倒くさがり屋
です!
しかも、スゴイ混んでいる、東京の
電車!!
乗り換えが、嫌でした。
だから、品河から乗り換えなしで
行ける、聞いたことのある駅、
もしくは、知らなくても、大きい駅で
降りる、そんなことを繰り返しました。
物件選び1日目、新目黒駅で降りました。
次の日は、池袋サンシャイン駅で降りて、
近辺の不動産屋に。
その次の日は、上野公園駅周辺を歩き
ました。
そして、南日暮里駅。
さらに、恵比寿庭園駅。
それから、巣鴨北駅でした。
とにかく、毎日、降りる駅を変えて、
挑戦しましたが、中々、私が求めている
物件には出会えませんでした。
出会えたとしても、家賃が、
引っかかるのです!
どんなに、お金には余裕があると
言っても、無駄遣いは嫌でした!
母の血を受け継ぎ、母の生き方を見て
育ち、母の性格をそのまま引き継いだ
私は、お金にはシビアなのです、小さい
頃から。
そんな感じで、なかなか決まらずに、
格安ホテル暮らしが思ったより長く
続いたのですが、東京に出て、
丁度1週間でやっと見つけて、決めました。
その月曜日、電車に乗っていた私は、
なんとなく乗り換えてみたくなりました。
毎日、同じ路線の電車ばかり乗っていた
のですが、その日は、どう言う気分の
吹き回しだったのか、今でも分かり
ませんが、急に乗り換えたくなったの
です。
なので、私は、すぐに次の駅で、
電車を降りました。
降りた駅は、下田馬場駅。
そして、私は、ある電車に乗り換えて、
「ここだ!ここで降りたら、良い気が
する」と直感で感じた、新荻窪駅で
降りました。
その日は、天気の良い晴れた日でした。
駅の近くに色々なお店がありました。
私は、駅を背にして、大きな通りを
歩きました。
大きな幼稚園を通り過ぎ、
「あっ。この町良いかも。
ここで決めたいなぁ」と思いながら、
しばらく歩き続けます。
そして、そのまま真っ直ぐ進んでいると、
道路の反対側に【佳南不動産】という
小さな不動産屋さんがあるのが、
目に入りました。
私は、いつものように、
その不動産屋さんに入って行ったので
した。
そして、そこで、私は理想的な物件を
発見するのです!
しかも、家賃も私の許容範囲内!
嬉しかったです、あの時は。
「やっと見つけた!」と思いました。
その日のうちに、私は物件を見せて
もらいました。
一目見て、気に入りました。
部屋もキレイで、一人暮らしには、
申し分ない広さでした。
すぐに、雪子おばさんに連絡して、
そして、三日後に、佳南不動産に行き、
契約をしました。
肌の黒い社長さんが、ビックリしていた
のを今でも思い出します。
若い女の子が、パッパッと契約を済ませ
たのですから、当然です。
そして、その週、晴れて私は、
東京都の杉並区民となったのです。
私の新しい住まいは、新荻窪駅徒歩6分
の8階建てマンションの3階でした。
築20年以上でしたが、しっかりと
したつくりのマンションでした。
私は、一目で気に入ったのです。
鍵を受け取り、少ない荷物と一緒に
部屋に入った私は、思わずため息を
ついてしまいました。
「広い……。一人じゃ、寂しいぐらい!」
と改めて思いました。
住まいが決まり、懐には、まだ余裕が
あります。
でも、私は、時間を無駄にするわけ
にはいきませんでした。
敵である『男』共から奪って、
かすめ取って、さらに、自分の通帳の
残高を増やし、もっともっと贅沢で
優雅な暮らしをするのが、私の夢、
目標、いや、私の権利なのですから!!
そのための、一番良い仕事を見つける
ために、私は動き出しました。
家の周りのお店を調べて、ここぞと言う
お店に連絡することを繰り返しました。
キャバクラやスナックが私の狙い
でした。
クソの『男』に、私の身体を好き勝手に
させるような仕事は、絶対にすまいと、
誓っていました。
ですから、そのような店は完全除外で、
調べました。
私は、心底、『男』を憎み、
『男』と言う生き物を嫌っていたの
です、当時……。
「夜の女にはなるけど、
絶対にどんな『男』にも、
体は許さない!」と決めていました。
かすめ奪い、貢がせるのです。
だからと言って、その目的を達成する
ための手段が、何でも良いわけでは
ありません!
ゴキブリ以下の敵の血が、自分の体内
に流れると言うことは、絶対に
許しがたい!!!
もし、このように考えてなかったら、
私は平気で身体を売っていたでしょうし、
簡単に、『男』と寝て、そして金を奪う、
それで、満足していたことでしょう。
また、金のために『男』を殺めたり、
もしくは、自暴自棄になり、本当に
自殺してしまっていたかもしれません。
『男』憎きの私は何日間か、
画面に向かって調べ、そして、外に
出て行き、面接を受ける、そんな日を
過ごしました。
(著作権は、篠原元にあります)
から、駅近くの安いビジネスホテルに
変えて、都内の色々な場所に出かける
ことにします。
聞いたことのあるような名前の駅で
降りては、近辺の不動産屋に入る、
そんなことの連続。
これぞというアパートまたはマンション
を探していたのです。
あの頃の私にとっては、職より、まずは
住まいでした。
何故かと言うと、そんなに切羽詰まって
いなかったからです。
精神的にも経済的にも…。
まず、不動産の保証人も、雪子おばさんが
引き受けてくれることになっていました
から、その点で、安心でした。
そして、何より、懐に余裕があったのです。
つまり、お金が、かなりありました。
そこが、同世代の若い女の子たちとの
違いでした。
家を飛び出て、家には戻れないから、
そう言う仕事を探している。
それは同じでも、私には、お金がある、
そんな余裕があったのです。
だから、1週間ぐらいかけて、ゆっくり
慎重に、住まいも、仕事も、見つけよう
としていました。のんびりしていました。
ある意味、初めての大都会・東京を
楽しもうともしていましたね、私は。
日中、住まいと仕事を探しながらも、
途中、有名な公園でお昼を食べたり、
お茶葉水の有名な書店に行って、
『夜の世界』で頂上に上り詰めた女性
たちの本を買って、夜はホテルで読書、
勉強するなどしていました。
あの頃の私に、お金があった理由は、
色々です。
まず、スーパーで働きながら、かなり
貯めていたのです。
私は、母と同じで、貯金が趣味とも言える
性格でしたし、何より、寮暮らしでした。
家賃が、かからなかったのです!
しかも、遊びも、買い物も、興味なく、
ただ平戸を捜し回ることと仕事の日々
でしたから、お金を使う機会がなかった…。
だから、給料は少なかったのですが、
貯金額は日に日に増えて行っていた
わけです。
その給料だけでなく、雪子おばさんから
の仕送りも、毎月ありました。
だから、着ているものも質素で、
暮らすアパート・寮は古い築何十年の
木造ボロボロ部屋でしたが、私個人の
郵便局の貯金残高は、普通の同年代の
女性の比にはなりませんでした。
それが、ちょっと、私の自慢でした。
声には出しませんでしたが……。
それから、あの愛媛を発つ朝…、
雪子おばさんは私に、通帳と印鑑を
手渡してくれていました。
私名義の、いすみ成和信用金庫の
通帳でした。
雪子おばさんは教えてくれました。
「これはね、峯子さんが、真子ちゃんの
ためにずっと貯金してくれていた分よ」。
そして、私は、この通帳のお金にも
一切手をつけていませんでした。
つける必要が、川崎市では全くなかった
のです。
そんなことで、私はスーツケース1個と
鞄だけで東京に足を踏み入れたわけで、
はたから見れば田舎娘が身一つで上京
して来たとか、家出少女のように見えた
はずですが、実はリッチでした。
「私は、こう見えて、あんたたち以上に、
お金持ってるのよ!」と言う、自信と
言うか強気な気持ちが、一人ぼっちの
私にありました。
それが、私の支え、誇りでした。
だから、ゆったりとしていました。
ゆっくり住まいも仕事も見つければ
良いや、と思っていたのです。
さて、初日は、品河に出て、品河の
漫画喫茶に泊った私。
翌日から、住まいを探しに出たの
ですが、とにかく私は、面倒くさがり屋
です!
しかも、スゴイ混んでいる、東京の
電車!!
乗り換えが、嫌でした。
だから、品河から乗り換えなしで
行ける、聞いたことのある駅、
もしくは、知らなくても、大きい駅で
降りる、そんなことを繰り返しました。
物件選び1日目、新目黒駅で降りました。
次の日は、池袋サンシャイン駅で降りて、
近辺の不動産屋に。
その次の日は、上野公園駅周辺を歩き
ました。
そして、南日暮里駅。
さらに、恵比寿庭園駅。
それから、巣鴨北駅でした。
とにかく、毎日、降りる駅を変えて、
挑戦しましたが、中々、私が求めている
物件には出会えませんでした。
出会えたとしても、家賃が、
引っかかるのです!
どんなに、お金には余裕があると
言っても、無駄遣いは嫌でした!
母の血を受け継ぎ、母の生き方を見て
育ち、母の性格をそのまま引き継いだ
私は、お金にはシビアなのです、小さい
頃から。
そんな感じで、なかなか決まらずに、
格安ホテル暮らしが思ったより長く
続いたのですが、東京に出て、
丁度1週間でやっと見つけて、決めました。
その月曜日、電車に乗っていた私は、
なんとなく乗り換えてみたくなりました。
毎日、同じ路線の電車ばかり乗っていた
のですが、その日は、どう言う気分の
吹き回しだったのか、今でも分かり
ませんが、急に乗り換えたくなったの
です。
なので、私は、すぐに次の駅で、
電車を降りました。
降りた駅は、下田馬場駅。
そして、私は、ある電車に乗り換えて、
「ここだ!ここで降りたら、良い気が
する」と直感で感じた、新荻窪駅で
降りました。
その日は、天気の良い晴れた日でした。
駅の近くに色々なお店がありました。
私は、駅を背にして、大きな通りを
歩きました。
大きな幼稚園を通り過ぎ、
「あっ。この町良いかも。
ここで決めたいなぁ」と思いながら、
しばらく歩き続けます。
そして、そのまま真っ直ぐ進んでいると、
道路の反対側に【佳南不動産】という
小さな不動産屋さんがあるのが、
目に入りました。
私は、いつものように、
その不動産屋さんに入って行ったので
した。
そして、そこで、私は理想的な物件を
発見するのです!
しかも、家賃も私の許容範囲内!
嬉しかったです、あの時は。
「やっと見つけた!」と思いました。
その日のうちに、私は物件を見せて
もらいました。
一目見て、気に入りました。
部屋もキレイで、一人暮らしには、
申し分ない広さでした。
すぐに、雪子おばさんに連絡して、
そして、三日後に、佳南不動産に行き、
契約をしました。
肌の黒い社長さんが、ビックリしていた
のを今でも思い出します。
若い女の子が、パッパッと契約を済ませ
たのですから、当然です。
そして、その週、晴れて私は、
東京都の杉並区民となったのです。
私の新しい住まいは、新荻窪駅徒歩6分
の8階建てマンションの3階でした。
築20年以上でしたが、しっかりと
したつくりのマンションでした。
私は、一目で気に入ったのです。
鍵を受け取り、少ない荷物と一緒に
部屋に入った私は、思わずため息を
ついてしまいました。
「広い……。一人じゃ、寂しいぐらい!」
と改めて思いました。
住まいが決まり、懐には、まだ余裕が
あります。
でも、私は、時間を無駄にするわけ
にはいきませんでした。
敵である『男』共から奪って、
かすめ取って、さらに、自分の通帳の
残高を増やし、もっともっと贅沢で
優雅な暮らしをするのが、私の夢、
目標、いや、私の権利なのですから!!
そのための、一番良い仕事を見つける
ために、私は動き出しました。
家の周りのお店を調べて、ここぞと言う
お店に連絡することを繰り返しました。
キャバクラやスナックが私の狙い
でした。
クソの『男』に、私の身体を好き勝手に
させるような仕事は、絶対にすまいと、
誓っていました。
ですから、そのような店は完全除外で、
調べました。
私は、心底、『男』を憎み、
『男』と言う生き物を嫌っていたの
です、当時……。
「夜の女にはなるけど、
絶対にどんな『男』にも、
体は許さない!」と決めていました。
かすめ奪い、貢がせるのです。
だからと言って、その目的を達成する
ための手段が、何でも良いわけでは
ありません!
ゴキブリ以下の敵の血が、自分の体内
に流れると言うことは、絶対に
許しがたい!!!
もし、このように考えてなかったら、
私は平気で身体を売っていたでしょうし、
簡単に、『男』と寝て、そして金を奪う、
それで、満足していたことでしょう。
また、金のために『男』を殺めたり、
もしくは、自暴自棄になり、本当に
自殺してしまっていたかもしれません。
『男』憎きの私は何日間か、
画面に向かって調べ、そして、外に
出て行き、面接を受ける、そんな日を
過ごしました。
(著作権は、篠原元にあります)
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