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6 後宮への誘い
しおりを挟む「リンファ。ワンユンさんの所へこの品を届けておくれ。急いでね」
「はあい、奥様」
十四歳になったリンファはガクの見立て通り美しく成長した。フォンファの二人の子供たちの面倒も見ながら店の手伝い、家事の手伝いもテキパキとこなし、すっかり看板娘となっていた。
「リンファちゃんをうちの息子の嫁にくれないか」
と言う申し出は引きも切らないが、ガクはすべて断っていた。
「悪いけど、あの子は後宮に行かせようと思ってるんでね」
成人した王の後宮を若く美しい女性で満たすために、各地から娘たちが集められていた。一般人でも美しい娘は下女として雇われる。その給料は高く、庶民の憧れだ。
「なかなか、我ら庶民から選ばれる下女は少ないけどねえ。うちの隣の家のメイメイ、あの子は面接で落とされてたから。まあでも、リンファちゃんなら大丈夫だよ。あの可愛さに気立の良さ、それに仕事も家事も子守りまでできるんだから」
フォンファは、リンファを褒められて悪い気はしない。
「まあね。あの子が来てからうちの店は大きくなる一方だし、福の神じゃないかって思ってるのよ」
その時、役所に品物を届けに行っていたガクが走って戻ってきた。
「おいフォンファ! ついに来たぞ! 役人に言われたよ。『お前のところの娘は美しいと評判らしいな。後宮の面接に行ってみないか』ってさ!」
「まあ! ガク、ホントに? やったわね」
「そうとも。自薦の場合はなかなか狭き門だが、向こうから言ってきた場合はほぼ確実に受かるというからな。早速明日が面接だ。リンファはどこだ?」
「今、お遣いに行ってるわ。帰ったらお湯を使わせて綺麗にしてやらなくちゃ」
店の店員も客もみんなが大騒ぎしているところへ、リンファが帰ってきた。
「ただ今帰りました、奥様。あ、旦那様も、お帰りなさいませ」
みんなの目が一斉にリンファへと集まった。
「あら、な、なんですか……?」
キョトンとするリンファの手をフォンファが引いて店の裏に連れて行く。
「こっちこっち、リンファ。ちょっと話があるのよ」
「えっ、奥様、お遣いのお金をしまわないと……」
「後でいいから。さ、ガクの話を聞くのよ」
店の裏とガクの家は繋がっていて、居間ではガクとフォンファの子供たちが遊んでいた。
「あ、リンファおかえりぃ」
「あそんで、りんふぁ」
四歳と二歳の二人が近寄ってくるが、ガクがニッコリ笑って止める。
「悪いがあとでな。先に父ちゃんとリンファが話をするんだよ」
大人しくまた二人で遊び始めたのを確認すると、ガクはリンファに告げた。
「今日な、お役人さんからお前を後宮にと誘われた。明日が面接だ。行ってくれるな?」
リンファはゴクリと唾を飲み込んだ。前々から二人には言い含められていた。身寄りのない自分を育ててくれている二人のために、いつか後宮に上がること。それが叶う時が来たのだ。
「はい、もちろんです、旦那様。必ず合格してみせます」
「よし、それでこそリンファだ。俺たちの自慢の娘。明日は一張羅を着せてやるから頑張ってこいよ」
「はい!」
その日はたっぷりの湯を使わせてもらい、隅々まで綺麗に洗った。髪も綺麗に洗い、特別にフォンファの香油を髪に塗ってもらってサラサラにした。明日のために早く寝るようにと言われて子供の寝かしつけもしないで布団に入れられたリンファだが、興奮してなかなか寝られなかった。
(ついにこの日が来たのね。長年の恩を返すためにも、合格してお金をもらいたいわ)
下女に合格すると、支度金としていくらかのお金が出る。そのお金を今まで育ててくれたお礼として二人に渡し、さらに毎月の給金からも仕送りをしようとリンファは思っているのだ。
(森に放っておかれたら狼に食べられて命は無かったはず。旦那様と奥様はその私を育ててくれて、教育までしてくれて。どんなに感謝しても足りないくらいだわ。絶対に受かってみせる)
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