【完結】やり直し彼氏は今度こそ私を甘やかすつもりのようです

月(ユエ)/久瀬まりか

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番外編 真吾

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 美音と別れたあと、俺はしばらく怯えて暮らした。

(マジかよ……裁判なんてどうすりゃいいんだ。会社に知られるのか? ったく、なんてことするんだあの女……)

 とはいえそれから半年以上が過ぎ、さすがにあれは脅しだったんだと思うようになった。だって美音は自分でも言っていたじゃないか。自分にも非があるって。きっと、あれはただの捨て台詞だったんだろう。


 親からは半分怒られ半分同情された。

「二股したのは悪かったと思うけど、無理やり子供を作るのもどうかしらねぇ。まあとにかく、こんなこと二度とないようにしなさいよ」
「わかってる。次はもっとちゃんとした人と付き合うよ」


 かえすがえすも月葉のことが悔やまれる。月葉ならどこに出しても恥ずかしくない、ちゃんとした常識人だった。何でも許してくれる奴だったから、早く結婚しとけばよかったんだよな。結婚して、子供作っても『浮気するな』とか『育児しろ』とか絶対に言わないだろうから。俺はきっと独身時代と変わらない生活を送れていたはずだ。


 その後、二人くらいの女と付き合ってみたけれど束縛が強かったり逆に女の方が遊び好きだったりで、どうもうまくいかなかった。

 合コンをいつもセッティングしてくれてた先輩は、浮気相手に全てを暴露され奥さんが会社に来て大暴れ。結局、離婚&左遷で地方へ異動していった。
 いつも先輩とつるんでいた俺も、社内では白い目で見られている。同じ穴のムジナだと思われているんだろう。すげえ居心地が悪い。

 だけど、この会社を辞めるわけにはいかない。そこそこの知名度、そこそこの給料。これがあってこそのモテなのだから。いつか結婚するためにもここは死守しておきたい。

(それにしても、部屋が荒れてるな……帰るのが憂鬱だ。月葉なら、ちゃんと片付けてくれてたのに。シャツのアイロンも自分じゃ上手くあてられないから、なんだか見た目がショボくなってる気がする。クリーニングは金がもったいないし)

 そんなんだから最近は仕事運も女運も良くないのかもしれない。

 ここのところ、よく考える。結局、あの騒動は何だったんだろうって。美音と浮気したのは確かに俺が悪いけど、そのお膳立てをしたのが月葉の姉だったなんて。今さらながらむかついて、先日アカネツーリストを訪ねてみた。だが美音だけでなく月葉の姉も退職していた。

(確かめるすべはなし、か……)

 月葉とも連絡は取れないし、取れたところで何を言えばいい? 「お前の姉のせいで俺はお前も美音も失った」って言うのか? そんなのバカみたいだろう。

(あの男とよろしくやってんのかな……いつか、あいつに捨てられて俺のところに戻ってこないかな。そしたら、すぐに受け入れてやるのに……)

 なかなかマッチしないマッチングアプリを見ながら俺はため息をついた。







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