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悠李の部屋へ
しおりを挟むまだ新しい賃貸マンションのオートロックを抜けると1階ホールの壁にはビートルズの写真が飾ってある。各階3部屋ずつの8階建てで、悠李の部屋は6階。エレベーターを降りて左側の部屋だ。
「どうぞ、入って」
「おじゃましまーす……」
「とりあえずリビングでくつろいでて。俺、風呂沸かしてくる」
1LDKの部屋はグレージュの床にホワイトの壁。ブラウンを基本とした家具でまとめられ、シックな雰囲気だ。二人掛けソファはグレーの布張りでチョコレート色の肘掛けがついている。パープルのクッションがいいアクセント。突然来たのにちゃんと整頓されていて綺麗で、真吾の雑然とした部屋とは雲泥の差に思える。
「素敵なお部屋……」
本棚にはいろんな本が並べられ、ところどころに置かれたアメリカンな小物が可愛くて悠李らしい。
リビングの向こうは寝室みたいだけど、まだそこを覗く勇気はない。
(緊張する……今日、そうなってもいいつもりでお泊りセットは持ってきてたんだけど、本当にこうなるなんて……恥ずかしいな)
バスルームから戻った悠李が、冷蔵庫から軽いおつまみとワインを持ってきた。
「どうぞ、月葉」
「ありがと、悠李……なんか緊張してるからお酒があると嬉しいなって思ってたの」
「俺も緊張してる……心臓が口から出そうだ」
しばらくワインを楽しんだあと、ふと二人の目が合う。悠李はグラスを置いて両手で私の頬をそっと包み込み、ゆっくりと顔を近づけてきた。目を閉じると唇が重なる。
「月葉の唇、柔らかくて気持ちいい……」
そう呟いて何度も何度も、啄むようなキスを繰り返す。
「んっ……ふぅ……ん……」
少しずつ熱が高まってくる。息ができなくて開いた唇のあいだに、温かいものが分け入ってきた。
「ん……」
ゆっくりと口内を味わうように舐めたあと、舌を絡ませて優しく吸い上げる。ちゅく、ちゅくといやらしい音を響かせながら。
「ふぁ……悠李……なんで、」
なんでそんなにキスが上手なの? そう聞きたかったけど体の力が抜けてしまっていた。
「ふふ、月葉、そんなにとろんとした目をして……可愛い」
屈み込んで首筋に舌を這わされると「あんっ……」と変な声が出てしまう。
「だめだよ悠李、今日はいっぱい汗かいたんだし……お風呂入らないと……」
「そのままでもいいんだけどな……」
「だ、だめだよ、それはだめ……」
「じゃあ、俺が一緒に入って洗ってあげる」
「えっ」
言うが早いか、私はひょいとお姫様抱っこをされていた。
「やっ、悠李ったら、重くないの?」
「重くないよ。リンゴ3個分くらいだ」
そのまま脱衣所に連れて行かれそっと下ろされた私。服を脱がせようとする悠李の手を止め、恥ずかしいから先に入って、と促した。。
「絶対、入ってきてくれる?」
「うん、絶対」
悠李が服を脱いでいる間後ろを向いて、彼の裸を見ないようにしていた。だって、どこに目線を持っていけばいいのかわからないんだもの。
両手で顔を隠している私の耳に唇を押し当て、「早く来てよ」と囁いて悠李はバスルームに入っていった。
(嘘みたいな展開……いきなり一緒にお風呂だなんて)
こんなに明るいところで全身を見られてしまう。大丈夫かな、がっかりされないかな。
(ええい、初めてでもないんだし、なるようになれ)
服を全て脱ぎ、髪をアップにしてからタオルを身体に当ててドアを開いた。
「お、お待たせしました……」
湯船に浸かっていた悠李は私を見ると顔を赤くして後ろを向く。
「う、後ろ向いてるから。シャワー、使って」
「ありがと……」
シャワーで身体を流す。細かな泡が気持ちいい。
「じゃあ月葉、湯船に入ってきて」
「うん……」
まだ後ろを向いたままの悠李。その背後にそっと足を入れ、ゆっくりと浸かっていく。
「月葉、もう前を向いてもいい?」
「……どうぞ」
正面を向いた悠李は感嘆した様子で私をじっと見つめていた。そして、いい? と聞いてから胸を隠していた両腕を優しく掴みそっと開いていく。すると両の胸がふるんと露わになった。
「綺麗だ、とても……想像の何倍も」
「恥ずかしいよ、悠李。そんなに見ないで」
だけど悠李は嬉しそうに見つめたまま私の胸を両手で包み、子供のようにその重さを楽しんでいた。そして顔を近づけ胸の蕾にちゅ、とキス。それだけで電気が走ったような衝撃が走る。
(あっ……)
ぷっくりと硬くなった蕾を片方ずつゆっくり優しく舌で転がされると、勝手に身体がのけ反り声が出てしまう。胸だけでこんなに気持ち良くなるなんて初めてだ。
はぁ……と悠李の息が荒くなる。
「……だめだ……月葉にのぼせていしまいそうだな」
二人とも身体がとても熱い。このままでは倒れてしまうかも。とりあえず湯船を出て、お互いの身体を洗うことにした。両手に泡をいっぱい作って、まずは悠李が私を洗っていく。
(……優しく洗ってもらうの気持ちいい……大きな手で包み込まれてる……)
そして私が悠李を洗うときは、広くて逞しい背中や硬い腹筋もだけど……ずっと元気な悠李が存在感ありすぎて……目のやり場に困ってしまった。
(あれがこのあと私の中に……? 壊れちゃうかもしれない……)
悠李は、とても優しく丁寧に私に触れてくれている。それがとても気持ちよくて、このあとへの期待に身体の奥がキュンと甘く疼く。
(真吾は、強くすれば気持ちいいんだろ、みたいなとこがあったから……私も痛いって言えなかったし……こんなものなのかなって思ってた。でも、全然違う……悠李は壊れものを扱うように大事に大切に触れてくれる。だから安心して身を委ねられる)
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