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お城と花火と初めてのキス
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土曜、ドワーフランドデートの日は最高にいい天気だった。駅で待ち合わせた悠李は、私を見るなり目を輝かせる。
「月葉のデニム姿、初めて見る。めっちゃいい」
「そ、そう? ありがと……」
悠李はいつもストレートに誉めてくれるから照れるけど嬉しい。本当は悠李のことももっと褒めたいんだけど、なんせ元が良すぎて何を着ていてもかっこいいので困る。
「電車に乗ってる時間が長いけど、月葉とだからそれも楽しいんだ」
それは私も同じ。悠李はニュースも雑学も詳しいしスポーツもほとんどのものはルールがわかるので説明してくれる。本業の経済分野もだけど他にもいろいろと博学で、とにかく話のネタが尽きない人なのだ。ずっと楽しく話しながら一時間以上の乗車時間を過ごしていた。
そして、ついに到着したドワーフランド。親子連れやカップルがもうたくさん入場口に並んでいる。私たちもそのカップルの一組ってこと。
「月葉、手を繋いでてもいい?」
「もちろん。それとね、悠李……許可なんて取らずにいつでも繋いでいいんだよ」
そう答えるととても嬉しそうな笑顔で私の手を取った。
「月葉の手、小さくて細くて可愛い」
悠李は繋いだ手をじっと見つめて呟く。その気持ちは私もおんなじだ。大きな手に包まれると私もとても幸せな気分になるもの。
「悠李のも大きくて硬くて気持ちいい」
すると悠李は顔を赤くして目を閉じ、苦笑した。
「やばい、違うこと想像しちゃった……」
(はっ……確かに……! 完全に下ネタに……!)
「ごめん、悠李!」
馬鹿なことを口走った恥ずかしさに、私の顔はとてつもなく熱い。絶対トマトみたいになってる。
「謝らないで。こういうことも話せるような二人が楽しいと思わない?」
「……そうよね。そう思うわ」
真吾といる時にこんな話はしていなかった。私が勝手にかっこつけていたんだと思う。『月葉は真面目だから』『月葉はこんなこと言わないよな』って、いつも真吾に言われていたことを忖度して、それにちゃんと合わせていかなきゃと思っていたから。
「ありがと。悠李といると、いつでもホントに楽しいわ」
「月葉……」
見つめ合っていい雰囲気になったところで、入場の列が動き始めた。私たちは笑って手をぎゅっと握りあい、前へと進んでいった。
一緒にいる人が違うだけで、どうしてこんなに楽しいんだろう? 前回のドワーフランドの何倍も何百倍も楽しかった。
アトラクションも声を上げて笑いながら楽しんだし、キャラクターが来てくれるレストランでは一緒に写真も撮った。昔の自分では信じられない。もちろん、クマ耳は装着済みだ。
「月葉、すげえ可愛い! ずっとつけててほしい!」
悠李にスマホで写真を撮られながらそう頼まれるので、私は一日中クマちゃんになっていた。もちろん、悠李も。傍から見たら痛いカップルだろう。
(昔、バカップルだな、なんて思っていた人たち、ごめんなさい……こんなに楽しいなんて知らなかったの)
パレードも昼夜二回堪能して、今日の記念にお土産もたくさん買った。そしてドワーフキャッスルが見渡せる場所を確保して花火の時間を待った。
「あと少しだね、花火」
私たちの前には池があり、その向こうにお城がそびえている。花火はその後ろから打ち上げられるので素晴らしい映え写真が撮れることもあり、右も左も人でいっぱいだ。
「ありがとう、月葉。今日一日、すげえ楽しかった。長年の夢が叶ったよ」
「私こそありがとう。悠李が誘ってくれなかったら、こんなに楽しいこと知らないままだったわ。今日が終わってしまうのが寂しいくらい」
繋いだ悠李の手に力が入る。
「月葉、俺も……いつも月葉と別れる時寂しいって思ってる。良かったら今日、俺の部屋に……来ないか……?」
それはつまり、次の段階へ進もうということ。今でも十分楽しいけれど、もっともっと近づきたい。私もずっとそう感じていたし、断る理由は何もない。
「……うん……行くわ……」
悠李を見上げてそう答えた。その時ポンポンと音がして花火が上がり始め、夜空に開いた大輪の花に人々の歓声があがる。
「じゃあ約束……」
悠李の綺麗な顔が近づいてくる。お互いの唇が触れた時、目を閉じていても花火が見える気がした。
(とても優しいキス……)
何度も軽く唇を合わせて。そして悠李は私を抱きしめた。大きくて温かな胸に私は顔を埋める。
「あ……でもこれじゃあ月葉、花火が見えないね」
私を花火のほうに向かせ、背中から抱きしめる悠李。後ろから回した腕に包まれるとさっきよりも密着度が増してドキドキしてしまう。
「花火、すごく綺麗だわ……私、今日のこと絶対に忘れない」
顔を後ろに向けて悠李を見上げた。微笑む悠李に背伸びして私からキス。花火に照らされこのまま二人溶けていってしまいそうな幸せを感じていた。
「月葉のデニム姿、初めて見る。めっちゃいい」
「そ、そう? ありがと……」
悠李はいつもストレートに誉めてくれるから照れるけど嬉しい。本当は悠李のことももっと褒めたいんだけど、なんせ元が良すぎて何を着ていてもかっこいいので困る。
「電車に乗ってる時間が長いけど、月葉とだからそれも楽しいんだ」
それは私も同じ。悠李はニュースも雑学も詳しいしスポーツもほとんどのものはルールがわかるので説明してくれる。本業の経済分野もだけど他にもいろいろと博学で、とにかく話のネタが尽きない人なのだ。ずっと楽しく話しながら一時間以上の乗車時間を過ごしていた。
そして、ついに到着したドワーフランド。親子連れやカップルがもうたくさん入場口に並んでいる。私たちもそのカップルの一組ってこと。
「月葉、手を繋いでてもいい?」
「もちろん。それとね、悠李……許可なんて取らずにいつでも繋いでいいんだよ」
そう答えるととても嬉しそうな笑顔で私の手を取った。
「月葉の手、小さくて細くて可愛い」
悠李は繋いだ手をじっと見つめて呟く。その気持ちは私もおんなじだ。大きな手に包まれると私もとても幸せな気分になるもの。
「悠李のも大きくて硬くて気持ちいい」
すると悠李は顔を赤くして目を閉じ、苦笑した。
「やばい、違うこと想像しちゃった……」
(はっ……確かに……! 完全に下ネタに……!)
「ごめん、悠李!」
馬鹿なことを口走った恥ずかしさに、私の顔はとてつもなく熱い。絶対トマトみたいになってる。
「謝らないで。こういうことも話せるような二人が楽しいと思わない?」
「……そうよね。そう思うわ」
真吾といる時にこんな話はしていなかった。私が勝手にかっこつけていたんだと思う。『月葉は真面目だから』『月葉はこんなこと言わないよな』って、いつも真吾に言われていたことを忖度して、それにちゃんと合わせていかなきゃと思っていたから。
「ありがと。悠李といると、いつでもホントに楽しいわ」
「月葉……」
見つめ合っていい雰囲気になったところで、入場の列が動き始めた。私たちは笑って手をぎゅっと握りあい、前へと進んでいった。
一緒にいる人が違うだけで、どうしてこんなに楽しいんだろう? 前回のドワーフランドの何倍も何百倍も楽しかった。
アトラクションも声を上げて笑いながら楽しんだし、キャラクターが来てくれるレストランでは一緒に写真も撮った。昔の自分では信じられない。もちろん、クマ耳は装着済みだ。
「月葉、すげえ可愛い! ずっとつけててほしい!」
悠李にスマホで写真を撮られながらそう頼まれるので、私は一日中クマちゃんになっていた。もちろん、悠李も。傍から見たら痛いカップルだろう。
(昔、バカップルだな、なんて思っていた人たち、ごめんなさい……こんなに楽しいなんて知らなかったの)
パレードも昼夜二回堪能して、今日の記念にお土産もたくさん買った。そしてドワーフキャッスルが見渡せる場所を確保して花火の時間を待った。
「あと少しだね、花火」
私たちの前には池があり、その向こうにお城がそびえている。花火はその後ろから打ち上げられるので素晴らしい映え写真が撮れることもあり、右も左も人でいっぱいだ。
「ありがとう、月葉。今日一日、すげえ楽しかった。長年の夢が叶ったよ」
「私こそありがとう。悠李が誘ってくれなかったら、こんなに楽しいこと知らないままだったわ。今日が終わってしまうのが寂しいくらい」
繋いだ悠李の手に力が入る。
「月葉、俺も……いつも月葉と別れる時寂しいって思ってる。良かったら今日、俺の部屋に……来ないか……?」
それはつまり、次の段階へ進もうということ。今でも十分楽しいけれど、もっともっと近づきたい。私もずっとそう感じていたし、断る理由は何もない。
「……うん……行くわ……」
悠李を見上げてそう答えた。その時ポンポンと音がして花火が上がり始め、夜空に開いた大輪の花に人々の歓声があがる。
「じゃあ約束……」
悠李の綺麗な顔が近づいてくる。お互いの唇が触れた時、目を閉じていても花火が見える気がした。
(とても優しいキス……)
何度も軽く唇を合わせて。そして悠李は私を抱きしめた。大きくて温かな胸に私は顔を埋める。
「あ……でもこれじゃあ月葉、花火が見えないね」
私を花火のほうに向かせ、背中から抱きしめる悠李。後ろから回した腕に包まれるとさっきよりも密着度が増してドキドキしてしまう。
「花火、すごく綺麗だわ……私、今日のこと絶対に忘れない」
顔を後ろに向けて悠李を見上げた。微笑む悠李に背伸びして私からキス。花火に照らされこのまま二人溶けていってしまいそうな幸せを感じていた。
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