もう一度あなたの手を取れたなら

月(ユエ)/久瀬まりか

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翌年、四年生になって就活を始めた私は、無事に地元の企業に内定を貰った。そして社会人になり、慣れない仕事に四苦八苦しながら毎日の業務をこなしていった。

 蓮とは顔を合わすことがほとんどなくなった。部活の朝練や遠征、塾などで朝から晩まで忙しそうなのだ。
 時々見かける蓮は身長が高くなり、顔も格好良くなった。オシャレにも気を使っているみたいだし、やはり随分モテていてバレンタインの時期には女の子が何人か安積家の門の前をウロウロしている。

 ある日、私が残業で少し遅めに帰って来た日、安積家の前で蓮と女の子が話しているのが見えた。

(わあ……邪魔をしないようにしなきゃ)

 私はそそくさと二人の横を下を向いて通り過ぎようとした。

「俺が好きなのはあの人だから」

 蓮のハッキリとした声が聞こえた。

「ええ? ちょっと待ってよ蓮。あんなの、おばさんじゃないの!」

「なんだと?」

 蓮から怒りの気配が伝わる。私はちょっと足を止めたが、怖くて家に飛び込んだ。
 二階の自室からそっと覗くと、まだ二人は揉めていた。何と言っているかは聞こえなかったけれど。
 やがて、女の子は泣きながら自転車に乗って帰って行った。蓮は首を振りながら家に入ろうと後ろを向き……顔を上げた。

(あっ……)

 私は慌ててカーテンを閉めたけど、目が合ったような気がする。

(覗いてたのバレたかもしれない)

 蓮が事のあらましを話しに来るかと思ったけれど、それはなかった。

(彼女の告白を断るためにあんな事言ったんだろうな。それにしても、十歳も上なんだからそりゃあおばさんだよね。無理がありすぎるよ、蓮……)

 十五歳と二十五歳。この年の差は一生変わらない。美哉ちゃんはおばちゃんになんかならない、蓮は昔そう言ってくれた。でも現実は……。

(蓮が私の歳になる頃私は三十五。お嫁さんにはしてくれないわよね)

 その考えに自分でも可笑しくなって笑った。

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