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騎士団長テオドア
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そんな事を考えるうちに馬車が止まり、私は先に降りたエドガーのエスコートで王宮に降り立った。
(ここに来るのも久し振りだわ)
豪華な玄関ホールから光の回廊を抜け、謁見の間に向かう。かつては、ここを抜けたら中庭の方へ曲がり神殿へ向かっていたが今日は違う。謁見の間でアンドリュー第二王子と面会するのだ。
中に通されると騎士団長テオドアが待っていて、エドガーは私を紹介してくれた。
「団長、こちらが私の婚約者、アイリス・ホールデン嬢です」
「テオドア様、お初にお目にかかります。ホールデン伯爵が娘、アイリスでございます」
「おお、とても可憐で可愛らしいお嬢さんだ。エドガーが自慢するのもわかる」
ワッハッハと豪快に笑うテオドア。ゴツゴツと逞しい体つきと顔に刻まれたいくつもの傷が歴戦を物語る。この優しい鳶色の瞳には見覚えがあった。
(テオドア……! 私の、最後の護衛騎士。初めての任務が私の護衛だったのよね。確かあの時十七歳だったからもう四十七歳になったのだわ。出世して、素敵な壮年男性になったこと……!)
その時、第二王子殿下が入室された。
「よく来てくれた。待たせたかな」
私はエドガーと共に恭しく礼をし、自己紹介をした。隣に立つエドガーが緊張しているのが伝わってくる。
「二人とも、顔を上げて楽にしてくれ。私は君たちと歳も近いしそんなにかしこまらなくても良い」
そう言われて顔を上げると、アンドリュー王子はにこやかな笑みを浮かべていた。金色の髪に麗しき翠の瞳。気品のある顔立ちはまさに王族という感じだ。
「あちらにお茶の用意がしてある。さあ、どうぞ」
アンドリュー王子は私の手を取りテーブルまでエスコートしてくれた。エドガーとテオドアが席に付くと王子が口を開く。
「急に呼び出して済まなかった。だが今回の討伐で素晴らしい活躍をした騎士とその婚約者殿を是非とも労いたいと思ってね。たくさんの魔獣を倒してくれたおかげで、しばらくは静かになるだろう。本当によくやってくれた」
「そのようなお言葉を頂き光栄に存じます、アンドリュー殿下」
エドガーと共に私も頭を下げた。
「アンドリュー殿下、まずはせっかくのお茶を楽しみましょう。二人とも緊張でガチガチになっておりますゆえ」
テオドアが笑いながら提案し、私たちはお茶とお菓子をいただくことにした。さすが王宮、素晴らしく良い香りのお茶と美味しいお菓子。食器も繊細な図柄で美しく、外国の物であろう。伯爵家ではなかなかここまでの物は手に入らない。
ちらとエドガーを見ると、純粋にお茶を楽しんでいるようだ。私はというと何だか落ち着かない。前世で直接関わりがあった人物に会ったのが初めてなのだ。
(大丈夫、ばれる筈はない。アデリンと私は見た目も全然違う。アデリンは茶色い目と髪だったし、こんなに華奢ではなくもっとしっかりした頑丈そうな身体つきをしていたもの。今の私に前世の面影なんてどこにもない)
テオドアの様子を伺っていた私は、別の視線に気がついた。
(アンドリュー殿下……)
王子が私をじっと見ている。色恋の混ざった視線ではなく、不審なものを見る目だ。
(ここに来るのも久し振りだわ)
豪華な玄関ホールから光の回廊を抜け、謁見の間に向かう。かつては、ここを抜けたら中庭の方へ曲がり神殿へ向かっていたが今日は違う。謁見の間でアンドリュー第二王子と面会するのだ。
中に通されると騎士団長テオドアが待っていて、エドガーは私を紹介してくれた。
「団長、こちらが私の婚約者、アイリス・ホールデン嬢です」
「テオドア様、お初にお目にかかります。ホールデン伯爵が娘、アイリスでございます」
「おお、とても可憐で可愛らしいお嬢さんだ。エドガーが自慢するのもわかる」
ワッハッハと豪快に笑うテオドア。ゴツゴツと逞しい体つきと顔に刻まれたいくつもの傷が歴戦を物語る。この優しい鳶色の瞳には見覚えがあった。
(テオドア……! 私の、最後の護衛騎士。初めての任務が私の護衛だったのよね。確かあの時十七歳だったからもう四十七歳になったのだわ。出世して、素敵な壮年男性になったこと……!)
その時、第二王子殿下が入室された。
「よく来てくれた。待たせたかな」
私はエドガーと共に恭しく礼をし、自己紹介をした。隣に立つエドガーが緊張しているのが伝わってくる。
「二人とも、顔を上げて楽にしてくれ。私は君たちと歳も近いしそんなにかしこまらなくても良い」
そう言われて顔を上げると、アンドリュー王子はにこやかな笑みを浮かべていた。金色の髪に麗しき翠の瞳。気品のある顔立ちはまさに王族という感じだ。
「あちらにお茶の用意がしてある。さあ、どうぞ」
アンドリュー王子は私の手を取りテーブルまでエスコートしてくれた。エドガーとテオドアが席に付くと王子が口を開く。
「急に呼び出して済まなかった。だが今回の討伐で素晴らしい活躍をした騎士とその婚約者殿を是非とも労いたいと思ってね。たくさんの魔獣を倒してくれたおかげで、しばらくは静かになるだろう。本当によくやってくれた」
「そのようなお言葉を頂き光栄に存じます、アンドリュー殿下」
エドガーと共に私も頭を下げた。
「アンドリュー殿下、まずはせっかくのお茶を楽しみましょう。二人とも緊張でガチガチになっておりますゆえ」
テオドアが笑いながら提案し、私たちはお茶とお菓子をいただくことにした。さすが王宮、素晴らしく良い香りのお茶と美味しいお菓子。食器も繊細な図柄で美しく、外国の物であろう。伯爵家ではなかなかここまでの物は手に入らない。
ちらとエドガーを見ると、純粋にお茶を楽しんでいるようだ。私はというと何だか落ち着かない。前世で直接関わりがあった人物に会ったのが初めてなのだ。
(大丈夫、ばれる筈はない。アデリンと私は見た目も全然違う。アデリンは茶色い目と髪だったし、こんなに華奢ではなくもっとしっかりした頑丈そうな身体つきをしていたもの。今の私に前世の面影なんてどこにもない)
テオドアの様子を伺っていた私は、別の視線に気がついた。
(アンドリュー殿下……)
王子が私をじっと見ている。色恋の混ざった視線ではなく、不審なものを見る目だ。
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