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四人でいた頃は自分のことは何一つ話さなかったマデリンですが、私と二人だけで昼休みや放課後を過ごすようになるといろいろな話をしてきました。

「私は姉だけでなく従姉妹とも比べられているの。隣のクラスにメイガンっているでしょう? あの子は母方の従姉妹なのよ」

「ああ、隣のクラスの委員長やっている子ね? 成績が優秀で、大学に行くと噂されているわね」

「そうなの。あまり可愛くはないけれど、とても頭が良いから母はいつも誉めているの。そして、どうせ不美人ならあのくらい優秀だったら良かったのに、といつも言われるわ」

「まあ! お母様って本当にひどいわ。どうしてそのままのマデリンを愛して下さらないのかしら」

私はつい自分のことのように憤慨してしまいます。するとマデリンは眉を八の字にして悲しそうな顔で微笑みます。

「こんな事を相談できるのはセシリアだけよ。いつまでもお友達でいてね」

「もちろんよ、マデリン。私で良かったらいつでも聞いてあげるわ。聞いてもらうだけで気持ちが晴れることってあるというし」

それからというもの、私はマデリンの話を聞いてあげることが多くなりました。

たまに、私の話もしますが、楽しい話などすると

「いいわね、セシリアは楽しそうな家族で。私なんて家でも無視されてとても辛いのに……」

「羨ましいわ、セシリアが。また試験で一位だったのね。私なんてこんな悪い成績ではまた母に嫌味を言われてしまうのに……」

そう言って私の話を聞くのが辛そうなので、最近は自分の事を話せなくなりました。何を言っても、

「どうせ私は……」

と言われてしまうからです。こんなに辛そうなマデリンに自分の話なんて出来ないじゃありませんか。とにかく聞いてあげる事が彼女の救いになるのならと、私は聞き役に徹していました。

マデリンは、貴族になんか生まれたくなかったと言います。身分に縛られた生き方をしなければならないのが嫌だ、と。

「ならマデリン、今は女性も仕事を持つ時代だわ。手に職をつけて自立するのはどうかしら」

「いいえセシリア、手に職なんてお母様はみっともないって言って絶対に許してくれないわ。侯爵家の血を引く私にそんな平民みたいなことはさせられないといつも言っているもの」

「でも自立すればあなたは自由に生きられるじゃない? その方が良くない?」

「私の家はあなたの家とは違うのよ。侯爵家の血筋というものは今でも尊ばれているの。だから私もお母様に逆らうことは出来ないの」

……私はちょっと引っかかりを覚えたのですが、気のせいだと思うことにしました。あの気弱なマデリンが、私の家を馬鹿にするような事を言うはずがありません。言葉のあやだろう、と流しておきました。
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