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翌日からホリーは学校に出てこなくなった。といっても、それは卒業間近の三年生にはよくあることだ。特に令嬢達はパーティーの準備に余念がない。ドレスの仕上げ、髪型の研究、肌の手入れなどなど、やることは山積みなのだ。クラスの女子も半分くらいは既に来ていない。
「ナターシャ、今日ランチを一緒に取りませんこと?」
「マリアンヌ様! よろしいんですか?」
「ええ。ホリーも来なくなったでしょう。だからあなたをお誘いしても構わないかと思って」
「ありがとうございます! 嬉しいです」
マリアンヌ達上位貴族は、カフェテリアの中でも広くていい席が確保されている。ランチも自分で取る形式ではなく、ちゃんと給仕がいて運んできてくれるのだ。
「ねえナターシャ。前に言っていた気になる方とはその後どうなったのかしら」
いきなり直球で質問された。
「あ……それはですね、失恋しました」
「まあ。見る目のない男性だこと」
「いえ、何か私の方が無神経なことをしていたんだと思うんです。二度と関わらないでくれって言われてしまいました」
「何てこと言うのかしら。私、文句言ってやりますわ」
「そんな、勿体ないですわ。お気持ちだけありがたく受け取っておきます」
「でもそれじゃあ、パートナーはどうするつもりなの?」
「兄に頼みました。嫌がってましたけど」
「そうなの? 見つからなかったら、私の弟を貸そうと思っていたんだけど」
「マリアンヌ様、弟様がいらしたんですか?」
「ええ。兄がいるのは知ってるでしょう?実は弟もいるのよ。本当に可愛い弟なの。あの子には、あなたみたいな子と付き合ってもらいたいのよね」
(まあ! マリアンヌ様にそんなこと言われて嬉しすぎるけれど)
「ありがとうございます。でも公爵家の方をパートナーに貸していただくなんて、もったいないお話ですわ。私なんか兄で充分です」
「そう? 気が変わったらいつでも言って頂戴ね」
マリアンヌは優雅に微笑んでお茶を口にした。
「ところで、ホリーの事なんだけど」
「はい。ホリーが何か?」
「三年間、ほとんど話したこともなかったのに、突然私の屋敷を訪ねてきたのよ。約束も無しでマナー違反ではあるけれど、あの大人しいホリーが来たのだからと会うことにしたんだけれど……」
マリアンヌは静かにティーカップを置いた。
「あなたの悪口を言うのよ。いつも自分をバカにして押さえつけ、喋らせないようにしてきたって。それで、今までクラスの人達とお話出来なかった。でもこれからは、ナターシャではなく自分と仲良くして欲しいと」
ナターシャは唖然として何も言えなかった。ホリーには、自分はそんな風に映っていたのかとショックだったのだ。
「でね。私はこう言ったのよ。『私は自分の付き合う人は自分で決めます。少なくとも、あなたとは仲良くしようとは思いません』とね。そうしたらすぐ帰って行ったわ」
「マリアンヌ様……」
「私はあなたと三年間付き合ってきて、信頼に足る人だとわかっています。だから他人から何か吹き込まれたとしても信用しないわ。そうでしょう?」
「ありがとうございます。本当に嬉しいです……」
涙で目の前のマリアンヌがぼやけて見えない。マリアンヌはそっとナターシャの手を握った。
「ねえナターシャ。あなたにお願いがあるのよ。私はいずれ王宮に召されるわ。その時、私付きの侍女として付いてきてくれないかしら」
「ええっ? 私が、ですか?」
「そうよ。あなたの成績が優秀なのも知っているし、身のこなしもテキパキしていてそつがないわ。仕事が出来て心を許せる人を身近に置いておきたいの。今すぐじゃなくてもいいから返事を聞かせてくれる?」
ナターシャはあまりに突然の話に感激していた。
「はい! 親とも相談して、お返事させていただきます」
と返事をしたが、心の中ではもう承諾することを決めていた。
「ナターシャ、今日ランチを一緒に取りませんこと?」
「マリアンヌ様! よろしいんですか?」
「ええ。ホリーも来なくなったでしょう。だからあなたをお誘いしても構わないかと思って」
「ありがとうございます! 嬉しいです」
マリアンヌ達上位貴族は、カフェテリアの中でも広くていい席が確保されている。ランチも自分で取る形式ではなく、ちゃんと給仕がいて運んできてくれるのだ。
「ねえナターシャ。前に言っていた気になる方とはその後どうなったのかしら」
いきなり直球で質問された。
「あ……それはですね、失恋しました」
「まあ。見る目のない男性だこと」
「いえ、何か私の方が無神経なことをしていたんだと思うんです。二度と関わらないでくれって言われてしまいました」
「何てこと言うのかしら。私、文句言ってやりますわ」
「そんな、勿体ないですわ。お気持ちだけありがたく受け取っておきます」
「でもそれじゃあ、パートナーはどうするつもりなの?」
「兄に頼みました。嫌がってましたけど」
「そうなの? 見つからなかったら、私の弟を貸そうと思っていたんだけど」
「マリアンヌ様、弟様がいらしたんですか?」
「ええ。兄がいるのは知ってるでしょう?実は弟もいるのよ。本当に可愛い弟なの。あの子には、あなたみたいな子と付き合ってもらいたいのよね」
(まあ! マリアンヌ様にそんなこと言われて嬉しすぎるけれど)
「ありがとうございます。でも公爵家の方をパートナーに貸していただくなんて、もったいないお話ですわ。私なんか兄で充分です」
「そう? 気が変わったらいつでも言って頂戴ね」
マリアンヌは優雅に微笑んでお茶を口にした。
「ところで、ホリーの事なんだけど」
「はい。ホリーが何か?」
「三年間、ほとんど話したこともなかったのに、突然私の屋敷を訪ねてきたのよ。約束も無しでマナー違反ではあるけれど、あの大人しいホリーが来たのだからと会うことにしたんだけれど……」
マリアンヌは静かにティーカップを置いた。
「あなたの悪口を言うのよ。いつも自分をバカにして押さえつけ、喋らせないようにしてきたって。それで、今までクラスの人達とお話出来なかった。でもこれからは、ナターシャではなく自分と仲良くして欲しいと」
ナターシャは唖然として何も言えなかった。ホリーには、自分はそんな風に映っていたのかとショックだったのだ。
「でね。私はこう言ったのよ。『私は自分の付き合う人は自分で決めます。少なくとも、あなたとは仲良くしようとは思いません』とね。そうしたらすぐ帰って行ったわ」
「マリアンヌ様……」
「私はあなたと三年間付き合ってきて、信頼に足る人だとわかっています。だから他人から何か吹き込まれたとしても信用しないわ。そうでしょう?」
「ありがとうございます。本当に嬉しいです……」
涙で目の前のマリアンヌがぼやけて見えない。マリアンヌはそっとナターシャの手を握った。
「ねえナターシャ。あなたにお願いがあるのよ。私はいずれ王宮に召されるわ。その時、私付きの侍女として付いてきてくれないかしら」
「ええっ? 私が、ですか?」
「そうよ。あなたの成績が優秀なのも知っているし、身のこなしもテキパキしていてそつがないわ。仕事が出来て心を許せる人を身近に置いておきたいの。今すぐじゃなくてもいいから返事を聞かせてくれる?」
ナターシャはあまりに突然の話に感激していた。
「はい! 親とも相談して、お返事させていただきます」
と返事をしたが、心の中ではもう承諾することを決めていた。
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