表裏一体~Double Joker~

美月葉

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15.生まれ方

15.生まれ方

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「里京さんが少し調べ物をすると関西支部にいるので、私がこちらに来ました…。が、凄い状況になってますね…」

清春は黒翼の人数と、屡鬼阿の姿に驚いていた。

「スティーブのやつ、ここの建物半分乗っ取ってやりたい放題だぜ。全く。」

休憩室で3人頬杖をつきながら黒翼の動きを見ていた。

「…あのぅ…私は何かに狙われているのでしょうか?」

黒髪の屡鬼阿が2人に尋ねる。

純鋭は、ハーッとため息をつき頭を抱えた。

「随分変わってしまいましたね…。」

清晴も未だに屡鬼阿の様子に戸惑いを感じていた。

「Jokerですか…で、純鋭さんもスティーブさんも二人いるだろうと思われるうちの一人が屡鬼阿さんだと見込んでいるんですね。…にしても…。」

おどおどしている屡鬼阿を憐れな目をした。

「そもそもJokerといってもよぉ、人工的に作られたって言うけど、人間ってムフフーってなって人間から生まれるだろ?その工程にどう手を加えたら人体実験になるんだ?正直そんなこと言ったら、不妊治療だとか、体外受精だってそうなってしまうだろ?そこは倫理観の問題なのか?」

純鋭は少しふて腐れたように話した。

「君はどこが線引きだと思う?」

いつのまにか来ていたスティーブが同じテーブルに座った。

屡鬼阿は少し怯えるように清晴へと体を避けた。

「JUN。君達に質問をするよ。
1.精子と卵子をそれぞれの個体から取り出して、シャーレの中で受精させる。
2.妊娠しやすくするために各個体に特殊な薬等を注入する。
3.自然妊娠後生まれたばかりの赤子に体が健やかに育つため、強化剤を打ち込む。
4.生まれた後の子どもを観察対象にして、特別な環境や部屋で育てる。
5.人間の体に違う種のパーツを組み入れ延命もしくは更に別の個体を生み出す。

この5つの中で君達は何を人体実験や倫理的にアウトと定める?おっと、君は医者だから答えないでくれ清晴君。」

悩む純鋭と屡鬼阿にスティーブは意地悪な質問をした。

「1と2はすでに不妊治療の先進医療だったり方法だったりとすでに世間で適用されているもんな…3は一見実験や倫理的に疑われたりするけど、未熟児とかにはそれなりの処置をしている…4も言い方を変えれば賢い子を育てるために親が観察しながら環境を整えるってことにも当てはまる。5は臓器移植とかで延命を試みたりするもんな…日常の医療や教育で行われているだろ?」

「で、でも今いった内容を悪用の目的で行ったら…?」

スティーブは微笑んだ。

「そう。医療で取り入れられる前は全部実験をする。それがラッタを使った実験だったり、人を使った所謂、治験だったり。倫理的にどうかなんて目的次第なんだ。JUNが言った通りに、医療で使われ命が生まれる・救われるのであれば何も問題ない。だが、家畜のように確実に生み出すことができ量産する・強靭な肉体を生涯得るためにドーピング剤を入れる・人が狂う限界値を測るために精神的苦痛をあじあわせる・そして、人よりも優れたものを作るため他のパーツを埋め込む。と言ったことになると、世界の評価は一転し正義が悪に変わる。…南極でメッセージを残したJokerはおそらく4に当てはまりそうですね。」

「人間が住むには過酷な環境って事ですね…。」

スティーブは1枚の破れた資料を取り出した。

「いつの時代も人体に魅せられた人間は沢山いる。このBWの創始者の王もその1人。西洋問わず、人間の生と死は探究心を次々と生み出していく。現代にもそれに魅せられた研究者がいました。それがこのリストです。」


デヴィッド・ドーナー
キスク・ヴィンセント
ヴァイツェン・グリム
ジョセフ・シドニー


ジョセフから下は用紙が破れていた。

「皆さん医学界や生物学界で有名な方ですね…」

「後1人がアジア系の人なのまではわかるんですがね…。」

屡鬼阿はこの4人の名前に少し嫌悪した。

「どうした?」

「いえ、なんでもない…です。」

4人の前をパタパタと黒翼の工作員がせわしなく動く。

「この前の翼手の亡骸が見つからなくて。回収に手間取ってちょっと組織全体焦っているんです。」

スティーブはフーッとため息をついた。


ーピンポーン


フと特安のチャイムがなる。

通常は門手前の受付所で要件を済ましてもらうはずだ…。


純鋭は不信がりながらも玄関の扉を開けた。

「あのー。お届け物…警備の人…居眠りしてた。」

宅配業者の青年が重たいダンボールを純鋭に渡した。

「差出人は…?」

純鋭はダンボールに視線を落としもう一度宅配業者を見たが既に姿はなかった。

やけにずっしりとしたダンボールだった。

純鋭は再び休憩室に戻り、ダンボールを床に置くと3人の前でガムテープをはがした。

「!!!!」

中身を見て一同は驚いた。

先日純鋭が腕を切った個体の首と、切り落とした腕のない化け物の死体だった…

「おいおい嘘だろ?…」

何が起こったかわからない純鋭とは反面、スティーブが指示を出し処分にかかった。

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