13 / 22
12.ループ
12.ループ
しおりを挟む
黒翼もやはり現場の回収に来るのが早かった。
爆発の塵と埃にまみれた里京と屡鬼阿はお互い会話を交わさなかった。
「報告ありがとうございました。すぐに国と共同で無事処理できました。」
緊迫な空気が張り詰める中、スティーブは二人に話しかけた。
「おっと、その姿どうしたんですか?」
スティーブは埃と塵をかぶったうえに上半身が血液まみれになっている屡鬼阿の姿に驚いた。
「…」
赤い瞳で屡鬼阿はスティーブに顔を向けた。
その姿はまるで修羅のようだった。
「あなたがあのモンスターを倒したのですか?」
屡鬼阿は少し両唇を開け、話そうとしたが、何かに気付き再び口を噤み、一足先に迎えの車に乗り込んだ。
その姿を、疑惑のまなざしでスティーブは目で追った。
「…随分要領がいいんだな。」
屡鬼阿の後ろを目で追うスティーブに里京は話しかけた。
「この事件は父の代でも取り扱ってましたから。」
「…13年前か。」
里京は上着についた埃を払い、警察が捜査をしている方向へと歩いて行った。
「どうしたんでしょう…」
スティーブは二人の様子に違和感を感じた。
ふと自分の目の前に名刺サイズのカードがひらひらと落ちてきた。
上方の道路を見上げるが警察が立ち入り禁止にしたのか、そこには誰もいなかった。
「なんだよ。これ…」
ライブを終え急いで特安に戻ってきた純鋭が見たものは、顔がなく胸に鉄パイプが刺さった化け物だった。
「あの時、純鋭のバンドが、ざわめく観客をむやみに避難させず、外に出さなかったからか大きな混乱はなかったが…」
『本日午後3時頃、○○区の幼稚園で爆発がありました。警察はテロだと見込み捜査を続けています…。』
「あー、また目立った感じですね。…それより屡鬼阿はどこに行ったんです?」
純鋭はあたりを見回した。
「彼女ならあれからずっと、部屋に閉じこもっていますよ。夕食もいらないみたいで…。」
スティーブは突然立ち上がり、自分の借りてる部屋に走って行った。
純鋭がいつもの書庫に行くといつもいるはずの屡鬼阿がいなかった。
「おーい。この疫病神―!出てこーい。」
屡鬼阿の部屋の前で純鋭が何度も声をかけているが一向に出てこない。
「何をしているんだ?」
純鋭の忙しない声に里京が歩いてきた。
「屡鬼阿が出て来ないんですけど。ぶち破ってもいいですか?」
里京は純鋭をみて一瞬固まったあと、頷いた。
「ドーン!」
純鋭は持っていた日本刀で扉を斬った。
「破るとは一体なんなんだ…」
純鋭と里京は屡鬼阿が居るはずの部屋をみて驚愕した。
「蛻の殻…」
純鋭は全開に開かれた窓を見た。
「馬鹿な…ここは3階だぞ。」
その騒ぎにスティーブも駆けつけた。
「屡鬼阿…さん……ところで里京さんこれを…。」
スティーブは一枚の名刺サイズのカードを里京に渡した。
”Dear my precious”
「また、新たな宛名か…。」
里京はまた眉間にしわを寄せた。
「新しくはないです。あなたはまだ刑事だったのであの時の事件の全貌を知らない。父の記録ではその宛名で同じようなサイズでその宛名が書かれていたと記録にあります…。」
スティーブは再び何かを考えるそぶりをした。
若者の街の通りを避け、煌びやかなハイブランド店が並ぶ坂道。
さまざまな格好の人間が通る。
赤髪に赤い瞳をしていても何の違和感もない屡鬼阿は髪飾りを探していた。
「…高い…」
足を止めていたショーウィンドウで気になるバレッタを見ていた時だった。
速足で坂を下る人の気配は気づいていたがよけきれず、横からの衝撃で屡鬼阿は尻餅をついた。
「あ、あぁごめんごめん。急いでぶつかってしまった。あ!本当ごめんね。それ壊しちゃったね。」
ぶつかってきた男性が指をさして示したのは、昨日の爆発の時に割れてしまったバレッタだった。
「あ、いや、これは…」
「弁償するから待ってて。」
男性は、そのまま一人で店に入りショーウィンドウに展示してあったバレッタを購入してそのまま屡鬼阿に渡した。
「あ、これ…」
「じゃぁ急いでいるから。」
男性はそういうと足早に屡鬼阿の前から去って行った。
屡鬼阿は少し嬉しかった。
さっそく近くの公園に行き、ベンチに座った。
宝飾が施されているバレッタを日の光で照らし、仰ぎ見た。
キラキラと輝く光が屡鬼阿には少し眩しすぎた。
「本当はこんなのが似合う人間ではないのにな…。ここにいる資格もないのに…」
屡鬼阿の脳裏に忘れていた記憶のすべてと今までの記憶の点が線で結ばれた。
膨大の量の記憶と、壊れてしまいそうなくらいの罪悪感が襲う。
自分の生きざまに嫌悪と憤怒の感情が湧いた。
「平和ボケ…していたわ。」
屡鬼阿な何かを決心したよう顔を上げ、切なく笑いながら、再び髪を束ね、バレッタを髪に着けようとした…。
「屡鬼阿がJoker?」
スティーブの言葉に純鋭は嫌悪した。
「今までこのメッセージからすべてが屡鬼阿さんと仮定して考えたことはないんですか?」
「いやそれは何回もあるが…だが、Jokerって南極に居たんだろ?少なくともあいつは、2年2か月は高校に通って出血も確認しているぞ?」
スティーブは純鋭を見つめた。
「里京さんも純鋭もPlay cards知っていますね?」
「トランプならほとんどの人がやったことがあると…」
「ならばJokerは通常何枚ありますか?」
里京がため息をついた。
「この世界に二人Jokerと呼ばれる存在がいるってことか…」
「はい。もし名付け親がそんな意図を含めJoker名付けていたら。 しかも所有格の言い回しということは複数いる可能性があり、すでにJokerを確保している個人または団体がいるということが絞り込める…。もし屡鬼阿さんをもう一人のJokerとして仮定するのであれば、今この特安の組織はどこの組織・世界に有利な位置にいる。絶対に保護しておかなければならない。」
「…俺たちもJokerと屡鬼阿が同一対象者の可能性もあると思い保護してきたが、まさかJokerにそんな深い意味があったなんてな…」
「もしだ、この過程で考えるのであれば、我々はRukia のあて名もmy pureciousも別も者たちが、そのJokerを狙っているということになるが…。」
スティーブは頭を抱えた。
「その通りです。Rukia 宛の差出人はJokerの実力や本物を確認するために人を襲った。今まで殺されたルキアという名前の子たちは、皆そのために犠牲になった…ということになりますね…。」
「その可能性の割合は何%か出ているのか?」
「あくまでも仮定…ですから。」
純鋭はなぜだかスティーブに腹が立ってきた。
「スティーブ…お前、前にJokerは人工的に作られた超大作と言ってたな…それって人間として扱わないってことか?」
スティーブは純鋭から目を伏せた。
「場合によっては…。」
その返答に純鋭は壁をたたき、部屋から出て行った。
爆発の塵と埃にまみれた里京と屡鬼阿はお互い会話を交わさなかった。
「報告ありがとうございました。すぐに国と共同で無事処理できました。」
緊迫な空気が張り詰める中、スティーブは二人に話しかけた。
「おっと、その姿どうしたんですか?」
スティーブは埃と塵をかぶったうえに上半身が血液まみれになっている屡鬼阿の姿に驚いた。
「…」
赤い瞳で屡鬼阿はスティーブに顔を向けた。
その姿はまるで修羅のようだった。
「あなたがあのモンスターを倒したのですか?」
屡鬼阿は少し両唇を開け、話そうとしたが、何かに気付き再び口を噤み、一足先に迎えの車に乗り込んだ。
その姿を、疑惑のまなざしでスティーブは目で追った。
「…随分要領がいいんだな。」
屡鬼阿の後ろを目で追うスティーブに里京は話しかけた。
「この事件は父の代でも取り扱ってましたから。」
「…13年前か。」
里京は上着についた埃を払い、警察が捜査をしている方向へと歩いて行った。
「どうしたんでしょう…」
スティーブは二人の様子に違和感を感じた。
ふと自分の目の前に名刺サイズのカードがひらひらと落ちてきた。
上方の道路を見上げるが警察が立ち入り禁止にしたのか、そこには誰もいなかった。
「なんだよ。これ…」
ライブを終え急いで特安に戻ってきた純鋭が見たものは、顔がなく胸に鉄パイプが刺さった化け物だった。
「あの時、純鋭のバンドが、ざわめく観客をむやみに避難させず、外に出さなかったからか大きな混乱はなかったが…」
『本日午後3時頃、○○区の幼稚園で爆発がありました。警察はテロだと見込み捜査を続けています…。』
「あー、また目立った感じですね。…それより屡鬼阿はどこに行ったんです?」
純鋭はあたりを見回した。
「彼女ならあれからずっと、部屋に閉じこもっていますよ。夕食もいらないみたいで…。」
スティーブは突然立ち上がり、自分の借りてる部屋に走って行った。
純鋭がいつもの書庫に行くといつもいるはずの屡鬼阿がいなかった。
「おーい。この疫病神―!出てこーい。」
屡鬼阿の部屋の前で純鋭が何度も声をかけているが一向に出てこない。
「何をしているんだ?」
純鋭の忙しない声に里京が歩いてきた。
「屡鬼阿が出て来ないんですけど。ぶち破ってもいいですか?」
里京は純鋭をみて一瞬固まったあと、頷いた。
「ドーン!」
純鋭は持っていた日本刀で扉を斬った。
「破るとは一体なんなんだ…」
純鋭と里京は屡鬼阿が居るはずの部屋をみて驚愕した。
「蛻の殻…」
純鋭は全開に開かれた窓を見た。
「馬鹿な…ここは3階だぞ。」
その騒ぎにスティーブも駆けつけた。
「屡鬼阿…さん……ところで里京さんこれを…。」
スティーブは一枚の名刺サイズのカードを里京に渡した。
”Dear my precious”
「また、新たな宛名か…。」
里京はまた眉間にしわを寄せた。
「新しくはないです。あなたはまだ刑事だったのであの時の事件の全貌を知らない。父の記録ではその宛名で同じようなサイズでその宛名が書かれていたと記録にあります…。」
スティーブは再び何かを考えるそぶりをした。
若者の街の通りを避け、煌びやかなハイブランド店が並ぶ坂道。
さまざまな格好の人間が通る。
赤髪に赤い瞳をしていても何の違和感もない屡鬼阿は髪飾りを探していた。
「…高い…」
足を止めていたショーウィンドウで気になるバレッタを見ていた時だった。
速足で坂を下る人の気配は気づいていたがよけきれず、横からの衝撃で屡鬼阿は尻餅をついた。
「あ、あぁごめんごめん。急いでぶつかってしまった。あ!本当ごめんね。それ壊しちゃったね。」
ぶつかってきた男性が指をさして示したのは、昨日の爆発の時に割れてしまったバレッタだった。
「あ、いや、これは…」
「弁償するから待ってて。」
男性は、そのまま一人で店に入りショーウィンドウに展示してあったバレッタを購入してそのまま屡鬼阿に渡した。
「あ、これ…」
「じゃぁ急いでいるから。」
男性はそういうと足早に屡鬼阿の前から去って行った。
屡鬼阿は少し嬉しかった。
さっそく近くの公園に行き、ベンチに座った。
宝飾が施されているバレッタを日の光で照らし、仰ぎ見た。
キラキラと輝く光が屡鬼阿には少し眩しすぎた。
「本当はこんなのが似合う人間ではないのにな…。ここにいる資格もないのに…」
屡鬼阿の脳裏に忘れていた記憶のすべてと今までの記憶の点が線で結ばれた。
膨大の量の記憶と、壊れてしまいそうなくらいの罪悪感が襲う。
自分の生きざまに嫌悪と憤怒の感情が湧いた。
「平和ボケ…していたわ。」
屡鬼阿な何かを決心したよう顔を上げ、切なく笑いながら、再び髪を束ね、バレッタを髪に着けようとした…。
「屡鬼阿がJoker?」
スティーブの言葉に純鋭は嫌悪した。
「今までこのメッセージからすべてが屡鬼阿さんと仮定して考えたことはないんですか?」
「いやそれは何回もあるが…だが、Jokerって南極に居たんだろ?少なくともあいつは、2年2か月は高校に通って出血も確認しているぞ?」
スティーブは純鋭を見つめた。
「里京さんも純鋭もPlay cards知っていますね?」
「トランプならほとんどの人がやったことがあると…」
「ならばJokerは通常何枚ありますか?」
里京がため息をついた。
「この世界に二人Jokerと呼ばれる存在がいるってことか…」
「はい。もし名付け親がそんな意図を含めJoker名付けていたら。 しかも所有格の言い回しということは複数いる可能性があり、すでにJokerを確保している個人または団体がいるということが絞り込める…。もし屡鬼阿さんをもう一人のJokerとして仮定するのであれば、今この特安の組織はどこの組織・世界に有利な位置にいる。絶対に保護しておかなければならない。」
「…俺たちもJokerと屡鬼阿が同一対象者の可能性もあると思い保護してきたが、まさかJokerにそんな深い意味があったなんてな…」
「もしだ、この過程で考えるのであれば、我々はRukia のあて名もmy pureciousも別も者たちが、そのJokerを狙っているということになるが…。」
スティーブは頭を抱えた。
「その通りです。Rukia 宛の差出人はJokerの実力や本物を確認するために人を襲った。今まで殺されたルキアという名前の子たちは、皆そのために犠牲になった…ということになりますね…。」
「その可能性の割合は何%か出ているのか?」
「あくまでも仮定…ですから。」
純鋭はなぜだかスティーブに腹が立ってきた。
「スティーブ…お前、前にJokerは人工的に作られた超大作と言ってたな…それって人間として扱わないってことか?」
スティーブは純鋭から目を伏せた。
「場合によっては…。」
その返答に純鋭は壁をたたき、部屋から出て行った。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
強制憑依アプリを使ってみた。
本田 壱好
ミステリー
十八年間モテた試しが無かった俺こと童定春はある日、幼馴染の藍良舞に告白される。
校内一の人気を誇る藍良が俺に告白⁈
これは何かのドッキリか?突然のことに俺は返事が出来なかった。
不幸は続くと言うが、その日は不幸の始まりとなるキッカケが多くあったのだと今となっては思う。
その日の夜、小学生の頃の友人、鴨居常叶から当然連絡が掛かってきたのも、そのキッカケの一つだ。
話の内容は、強制憑依アプリという怪しげなアプリの話であり、それをインストールして欲しいと言われる。
頼まれたら断れない性格の俺は、送られてきたサイトに飛んで、その強制憑依アプリをインストールした。
まさかそれが、運命を大きく変える出来事に発展するなんて‥。当時の俺は、まだ知る由もなかった。

姉妹 浜辺の少女
戸笠耕一
ミステリー
警視庁きっての刑事だった新井傑はとある事件をきっかけに退職した。助手の小林と共に、探偵家業を始める。伊豆に休暇中に麦わら帽子を被った少女に出会う。彼女を襲うボーガンの矢。目に見えない犯人から彼女を守れるのか、、新井傑の空白の十年が今解き放たれる。
ARIA(アリア)
残念パパいのっち
ミステリー
山内亮(やまうちとおる)は内見に出かけたアパートでAR越しに不思議な少女、西園寺雫(さいおんじしずく)と出会う。彼女は自分がAIでこのアパートに閉じ込められていると言うが……
カフェ・シュガーパインの事件簿
山いい奈
ミステリー
大阪長居の住宅街に佇むカフェ・シュガーパイン。
個性豊かな兄姉弟が営むこのカフェには穏やかな時間が流れる。
だが兄姉弟それぞれの持ち前の好奇心やちょっとした特殊能力が、巻き込まれる事件を解決に導くのだった。

秘められた遺志
しまおか
ミステリー
亡くなった顧客が残した謎のメモ。彼は一体何を託したかったのか!?富裕層専門の資産運用管理アドバイザーの三郷が、顧客の高岳から依頼されていた遺品整理を進める中、不審物を発見。また書斎を探ると暗号めいたメモ魔で見つかり推理していた所、不審物があると通報を受けた顔見知りであるS県警の松ケ根と吉良が訪れ、連行されてしまう。三郷は逮捕されてしまうのか?それとも松ケ根達が問題の真相を無事暴くことができるのか!?

共生
ひなこ
ミステリー
高校生の少女・三崎有紗(みさき・ありさ)はアナウンサーである母・優子(ゆうこ)が若い頃に歌手だったことを封印し、また歌うことも嫌うのを不審に思っていた。
ある日有紗の歌声のせいで、優子に異変が起こる。
隠された母の過去が、二十年の時を経て明らかになる?
コドク 〜ミドウとクロ〜
藤井ことなり
ミステリー
刑事課黒田班に配属されて数ヶ月経ったある日、マキこと牧里子巡査は[ミドウ案件]という言葉を知る。
それはTMS探偵事務所のミドウこと、西御堂あずらが関係する事件のことだった。
ミドウはマキの上司であるクロこと黒田誠悟とは元同僚で上司と部下の関係。
警察を辞め探偵になったミドウは事件を掘り起こして、あとは警察に任せるという厄介な人物となっていた。
事件で関わってしまったマキは、その後お目付け役としてミドウと行動を共にする[ミドウ番]となってしまい、黒田班として刑事でありながらミドウのパートナーとして事件に関わっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる