あなたが好きでした

オゾン層

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恋慕

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 私には、親友がおりました。



 私と同じ男の人で、彼はよく笑い、活気に溢るる男でした。
 私と彼は子供の頃からの幼馴染で、毎日共に遊んでおりました。いつも彼が私を誘い、外に出た時も彼が先頭を仕切るのです。他の友人からも慕われ、親御さんからも気に入られるほどの「優等生」でした。

 そして私と彼はいつも一緒におりました。
 ご飯を食べるのも、読み書きも、寝る時さえ、一緒でした。

 周りからは、「前世は恋仲だったのでは」と囃し立てられる始末で、それを言われる度に、彼は顔を真っ赤にして怒っていました。










 そんな彼が、私は好きでした。





 いつから好きだったのかはわかりません。
 気付いた時には彼を目で追う己がおりました。

 彼の笑顔や、言葉や、所作が、いつも私の胸を擽るのです。
 そして彼の心はいつでも私の冷えた心を温めてくれました。

 私にとって、彼は神のような存在でした。
 愛しく、慈しむべき対象。安易に触れてはならぬ清きものでした。



 故に、私は彼の親友であり続けました。

 私と彼は男。同性の恋など叶うはずもありませんし、何より私の邪な心での心を穢したくありませんでした。
 だから親友という立ち位置で、私はずっと彼の傍にいたかったのです。

 ですが、共に育つに連れて私の想いは膨れ、重くなる一方でした。まるで腫れ物のような、そんな簡単に治らない怪我をしたような気分です。



 ただ、我慢はしました。

 ずっと、ずっと、この解かしきれない想いを馳せて、あの人の隣にいました。

 想いを告げて玉砕するくらいなら、この関係を保てられるのがどれほど重宝すべきものであるかを、知っていたから。





 私はずっと、彼だけが好きでしたから。
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