四人の令嬢と公爵と

オゾン層

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婚礼

皆さん静かですね

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「エレノア。もう目を開けても良い」


 バルフレの声が聞こえ、エレノアはゆっくりと瞼を開ける。

 目の前には、柔かな笑みを浮かべたバルフレがいた。


「待たせてすまない」


 そう言ってエレノアの頬を撫でる彼の手付きは優しかった。

 エレノアはその手に目もくれず、キョロキョロと辺りを見渡している。
 神殿には傷一つなく、周りには人もいる。アグナスもアレッサもちゃんといる。何故か酷く怯えているようだが、何事もなさそうである。

 しかし、ロズワートだけがいなかった。


「あの、ロズワート様は?」

「…………」


 エレノアがそう聞くも、バルフレは笑いかけるだけで何も言わない。
 ならば姉妹達が知っているかもしれないと、姉妹達の方へと視線を向ける。
 しかし、オリビアもルーナもクロエも、顔を俯いて無言を貫いていた。クロエに至っては震えた体でゴトリルの背後に隠れている。
 周りの国民達も同じだ。皆俯いて押し殺すように黙っていた。

 周囲の挙動に、エレノアは首を傾げることしかできなかった。


「一体何がありましたの?誰か教えてください」


 耐えきれずエレノアがそう言うと、黙ったままであったラゼイヤが口を開いた。


「エレノア。彼ならその……お帰りになられたよ」

「?おかえり?」


 よくわからない説明に、エレノアは一層首を傾げる。しかし、帰ったのなら帰ったのだとすんなり受け入れ、それ以降は詮索するのもやめた。

 未だ自分の頬を撫でるバルフレの手をどうしようか考えることにした。


「……なぁ、彼奴何処に飛ばしたかわかるか?」

「アミーレアだよ……でも、すごいところに飛ばしたみたい……多分あの子見つけてもらえないんじゃないかな」

「そりゃーご愁傷様」


 ゴトリルとラトーニァが何やらひそひそと話していたが、エレノアがそれを耳にすることはなかった。二人の傍にいたルーナとクロエにはしっかりと聞こえていたが。

 エレノア以外に全く見向きもしなくなったバルフレに代わって、ラゼイヤが口を開く。


「アグナス殿下。わざわざいらしていただいたというのに、申し訳御座いません」


 ラゼイヤの言葉に、アグナスは狼狽していたが、すぐに姿勢を正す。


「いえそんな、あれは十中八九息子に非があります。誠に大変失礼いたしました」


 そう言って深々と頭を下げるアグナスの姿を、周りにいた護衛の騎士が目を丸くして見ていた。

 一国の主であるアグナス国王が頭を下げたところなどほとんど見ないだろう。それが今目の前で行われているという事実が衝撃であり、頭を下げている相手がどれだけ高尚なのかを知らしめていた。


「頭をお上げください。貴方は何も悪くないのですから。それより、王太子様についてですが、おそらくアミーレアの何処かにいるでしょう。捜しましょうか?」

「いえ。貴方様方の御手を煩わせる必要は御座いません。後程捜索し見つけ次第、相応の処罰を受けさせます故」

「罰だなんて……もう受けたようなものじゃないですか」


 そう言うラゼイヤの顔は穏やかであったが、アグナスから視線を逸らした途端、それは冷たくなる。



 視線の先には、アレッサがいた。
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