四人の令嬢と公爵と

オゾン層

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婚礼

不条理とはこのこと

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「ガルシア辺境伯令嬢。お前達を、私の側妃として任命する」


 命令とも取れるロズワートの発言に、辺りのどよめきは大きくなった。


「側妃だ?」

「一体どういうことだ」

「公爵様と令嬢様は今しがた婚礼を終えたばかりなんだぞ」

「何を言っているんだ。あの男は」


 ざわざわと、囁き声が広がる。それにはどれもロズワートを称賛するものはなかった。

 しかし、ロズワートは意気揚々と話を続ける。


「あの頃の私は愚かだったよ。お前達を追い出すだなんてことしなくても、側妃にしてしまえば良かったことなんだ。そうすれば領地もアミーレアに戻ってくるだろう?外交も今まで通りになって王国の経済も潤うじゃないか」


 ロズワートの話は、耳を塞ぎたくなるような内容であった。

 姉妹達ではなく、ガルシア領が目的であるのが見え見えであった。


「それに、お前達が側妃となった暁には、ラヴェルト公爵家にいた頃以上に贅沢できるようにしてやるさ。そこにいる化物紛いの公爵達や国民と共に過ごすよりも、此方で不自由無い生活を送れる方が最良とは思わないか?」


 挙げ句の果てに、ロズワートは公爵達に対しても蔑むような言葉を放ち、姉妹達は頭の中が真っ白になっていた。



 この1年間、姉妹達は公爵達と暮らして今までに無いほどの幸せを知った。

 それはお金があるからとか、権力があるからとかいうちゃちな理由ではない。

 自分達を心から愛してくれる彼らに出会えたからであった。



 しかし、そんな彼らをロズワートは目の前で貶したのだ。それがどれだけ許されないことなのか、姉妹達だけではなくガルシア夫妻も、周りにいた国民達もそう感じていた。

 今、無数の視線がロズワートに向けられている。それは怒りだ。ロズワートはこの場で、姉妹達と、ガルシア夫妻と、ベルフェナールの民を敵に回した。

 それに対して、公爵達は怒っているのかと思いきや、皆涼しい顔をしている。何故そこまで冷静でいられるのか、全くわからない。

 ふふんと自信ありげなロズワート。その周りにいた国民達が今にも襲いかかりそうなのも知らずに、笑っている。

 そんな殺伐とした雰囲気の中、自ら口を開く者はいない。










「ふざけないで!!!」





 ただ一人を除いて。
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