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婚約(正式)
半年の間にて
しおりを挟む__ラヴェルト公爵家とガルシア辺境伯家との正式な婚約が決まってから。
早くも半年の月日が経とうとしていた。
「「オリビア様、参りましょう」」
「はい」
此処に来てからは、朝起きるとルクレとライラに支度を施され、ダイニングへ連れて行かれるのが当たり前のようになっていた。
ダイニングに入れば姉妹と公爵達との朝食となり、その後は婚約者の仕事場に着いていくというのが一日の流れであった。
婚約期間中の交流は相変わらずで、それが常日頃になってからは姉妹達も違和感無く公爵家で暮らすことができるようになっていた。
婚約はある意味順調とも言えたが、前途多難と言えばそうでもあるとも言える。
姉妹達は、時々女子会という名の情報共有の場を開いていた。無論、男性陣抜きで。
話す内容は大体お相手はどんな人物なのか、上手くいっているのかなど。
結婚後も婚約者でないからといって何も知らないのは良くないと思ったが故の共有の場として開催されているものであった。
しかし、姉妹達が話す内容は、お互いに分かりきっていた。言い方を変えると、予想できた。
まず、ラゼイヤと婚約したオリビアから。
オリビアはとりあえずラゼイヤの仕事と普段どのような会話をしているのかを簡単に話した。
政務に就き、書斎での書類整理が彼が普段していることで、その間自分は書斎の書物を読んでいること。
時々話すこともあるが、彼の気を散らせたくないためあまり多くは話さないこと。
せめて書類の仕分け等でも手伝わせてくれと頼んだところ、その必要はないと断られ、彼は一日で軽々と仕事を終わらせてしまったこと。
書類の内容は……流石に国に関わることなので漏洩は防いだ。
「真面目で聡明な方でしたわ。非の打ち所もありませんの」
彼女は冷静にそう評した。
次に、ゴトリルと婚約したクロエが話した。
国の総督で、アミーレアの騎士団よりも遥かに規模が大きい軍をまとめていること。
いつも訓練場で兵士達との鍛錬に励んでおり、怠っていたことは今のところ見たことないこと。
自分も護身術のために邪魔にならない場所で一人見様見真似で鍛錬していたが、彼に見つかって以降彼本人が練習相手になってくれたこと。
「女性としてはしたないことをしているのは理解しています……でも!総督であるゴトリル様の婚約者として恥じぬよう強くならなければと思ったのです!!」
彼女はそう高らかに宣言した。
次に、ラトーニァと婚約したルーナが話した。
彼は国の自然管理をしており、庭で植物や生物の世話をしていること。
生物の中には竜だったり精霊だったりと、伝説でした聞いたことのない生物ばかりで驚いたこと。
自分も最近手伝いができるようになり、今は彼と一緒に生物の世話をしていること。
「あの人のお仕事は、とても有意義でした。それに、凄く優しいんです。あの人……」
彼女は思い返すようにそう零した。
最後に、バルフレと婚約したエレノアが話した。
彼は魔法に関する仕事に携わっており、国の魔法を管理していること。
離れでよく魔法の研究をしており、時々道具も作っていること。
見ているだけで自分にはよくわからないが、聞くと親切に教えてくれること。
「面白い魔法や道具が沢山ありましたの!あ、詳しいことは言っては駄目だそうで……でも、本当に面白かったのですの!」
彼女は目を輝かせてそう言った。
それぞれの話に、エレノア以外の姉妹達は小さくため息をついていた。
そのため息は他の姉妹達に向けてではない。自分に対してであった。
姉妹達の話は、とても楽しそうで、婚約者とも良好そうであった。
それに対して自分は、しっかりと婚約者との絆が築けているのだろうか……という想いであった。
そんな杞憂に包まれた空気の中で、純粋に女子会を楽しんでいたのはエレノアだけであった。
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