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婚約
決別
しおりを挟む__姉妹達が公爵達と仲睦まじく(?)交流している一方で、アミーレアの王宮は騒然としていた。
「この大馬鹿者!!これでもう後戻りはできんではないか!!どうしてくれる!!」
王宮の中庭にて、アグナスは目の前で正座しているロズワートに対して激昂していた。
「後先考えず手紙に触れおって!!何が仕込まれているのかもわからぬのに貴様と言う奴は!!」
「も、申し訳御座いません……」
真っ赤な顔で怒りを全身で曝け出すアグナスに、ロズワートは真っ青な顔で答えている。
今下手に言い訳をしようものなら、昨日と同じく左頬に打撃を加えられるのだろう。それが恐ろしくてたまらなかった。
「これでアミーレアは……少なくとも1年は不況に見舞われる。場合によってはこれから先もそうなるであろう。その責任を貴様はどう取るつもりだ」
「そ、それは……」
「何も言えんであろうな。馬鹿な貴様はこれまでも全くもって学んでいなかったのであろう?」
「…………」
図星と言わんばかりに、ロズワートの額に汗の粒が増える。
それを見ていたアグナスは、先ほどの憤慨とは打って変わり静かに、深くため息をついた。
「もうよい。貴様のことなど」
「……はい?」
「……1年後、ラヴェルト公爵家の婚礼の際に貴様の処罰を決める。無論、それについては公爵家とも話し合うつもりだ。場合によっては平民以下の生活を送ることになることを肝に銘じよ」
「なっ!そんな、父上!!」
「父上などと呼ぶではない!!貴様のことなど息子として見たくもないわ!!」
アグナスの怒号に、ロズワートは硬直する。
元息子を見るその目は、怒りに満ちていて悲しい色合いであった。
「だが……貴様を躾けられなかった儂にも責任がある。せめてこの1年間は今の地位を剥奪しないでおいてやろう。それまでに学び直せ。ロズワート王太子」
そしてアグナスは立ち去ろうとした、が、不意に振り返り、アレッサの方へと目を向けた。
「男爵令嬢。貴様も同罪だぞ。このようなことになったのは貴様の責任でもあるからな」
そう吐き捨てて、今度こそ振り返ることなく中庭を後にした。
アグナスが去った後の中庭で、ロズワートは膝立ちのまま動けなくなっていた。
父親に見捨てられたという事実を、それほどの大事になってしまったことを実感していたからだ。
1年後、自分がどうなるのか。
その『見えない結果』が、ロズワートの中で大きく恐ろしいものとなっていた。
(私は……どうすれば良いんだ。どうしたら良かったんだ?)
しかし、今のロズワートには何も打開策などあらず、頭を抱えることしかできなかった。
その様子を側で見ていたアレッサは、心配しているように見せて心中では舌打ちをかましていた。
(この馬鹿!こんなことにならなければ私は王妃になれたはずなのに!!この男があんなヘマしなければ私は……!)
自分はとんだとばっちりだ。ただの婚約者が何故こんな目に遭わなければならない。私だって被害者だろ。と、理不尽な思考回路でロズワートを責め立てていた。
(そもそも、あの女共も役に立たなさすぎなのよ!!あの能無しが!!)
そして、その怒りはガルシア令嬢達にも向けられていた。
あまりに横暴で狡猾な思想は、より黒さを増していく。
しかし、
(ああ、でも……)
また奪えば良いんだわ
アレッサの口角が、厭らしく上へと向く。
その視線は、既にロズワートから外れていた。
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