四人の令嬢と公爵と

オゾン層

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婚約

集う姉妹達

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「おはようございます」


 ダイニングに新たな声が加わると同時に、オリビアが入ってきた扉からルーナが現れる。
 ルーナは水色のドレスをまとい、オリビアに負けぬほどに化粧も満遍なく施されている。ルーナの背後には恐らく彼女専属となったであろう別のメイドが二人いた。


「おはようございます!」


 その後続いて現れたのがクロエだった。
 淡い桃色のドレスに身を包み、三つ編みの髪を左肩に下ろしている。
 彼女の背後にも同じくメイドが二人着いており、クロエのことを和かな笑顔で見守っていた。

 どうやら、此処のメイドは、余所者のガルシア姉妹のことを歓迎してくれているようだった。
 皆オリビアを着飾った時と同じような、やり切ったような満足げな微笑みを浮かべている。
 恐らく、ルーナもクロエもオリビアと同じ処遇だったのだろう、顔は少しやつれていた。

 そして、エレノアはというと……


「おはようございます♪あら?お姉様達もクロエも来てらしたのね!」


 鼻歌を交えながらご機嫌な様子でダイニングに現れた。
 藤色のドレスに包まれ、髪は後ろで一つに結ばれている。ニコニコと笑う顔は化粧したてでいつもよりも淡く白い。
 他の姉妹同様、配属されたであろう背後にいるメイド二人は、他のメイドは違って明るい子供のような笑顔を見せていた。


「遅くなってしまってごめんなさい」

「いや、大丈夫だよ。私達も今来たばかりだ」

「…………」


 ラゼイヤとエレノアが軽く会話する中、婚約者であるバルフレはエレノアを真顔でじっと見つめている。世間には穴が空くほどという言葉があるが、今まさにバルフレは穴が空くほどの勢いでエレノアを眺めていた。
 エレノアも流石にその視線には気付いたようで、笑顔でバルフレにお辞儀をする。


「おはようございます、バルフレ様」

「…………」


 エレノアが挨拶をするも、バルフレはその時既に目線をテーブルへ向けていた。しかし、エレノアは気にすることなく笑顔を保ったまま、姉妹達へと視線を向けた。


「おはようございます!」

「おはよう、エレノア」


 姉妹達がよく知っている無邪気な顔を向けてきたエレノアに、オリビアは微笑んだ。


「……さて、みんな揃ったことだし、そろそろ朝食にしようか」


 ラゼイヤがそう勧めると、姉妹達は既に席についているオリビアと同様、自身の婚約者の対面に腰を下ろした。
 これから姉妹達の新しい朝が始まる。





「クロエ!お前その服と髪すげー可愛いぞ!!」

「お、おやめください!そんな大きな声で……」

「本当のこと言っただけだぜ?何か駄目だったか?」

「うう……」


「ラトーニァ様、先ほどから体が震えてらっしゃいますが、大丈夫ですか?何処かご不調でも……」

「えっ!?う、ううん、ちが、違う、何も、何もないから、うん……」

「ですが、顔も赤くなったり青くなったり、やっぱり何処か具合が……」

「ううん、大丈夫!だ、大丈夫だから!!だから、その……」


「それでねそれでね!今日見た夢はバルフレ様がいらしたのよ!笑っていらしたけど、バルフレ様は笑う時あんな顔をなさるのですか?それとも夢だからもう少し違うのかしら?」

「…………」


「……朝から賑やかだね」

「……そうですわね」


 姉妹達が公爵家で迎える一日目の朝は、なんとも騒がしい朝であった。
 この調子で婚約が上手く進むのか、オリビアにはわからなかった。

 しかし今は朝食を取ることを優先しようと、目の前のパンに手を伸ばそうとして、止まった。


「…………?」


 テーブルの皿の数を見て、オリビアは小さな疑問を抱いていた。
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