19 / 101
婚約
決心
しおりを挟むラゼイヤの提案と理由に未だ戸惑うオリビアだったが、何度も何度も頭の中でラゼイヤの言葉を再生しているうちに、ようやく決心がついた。
「……わかりました」
「それは、了承と捉えて良いのかい?」
「はい……皆もよろしいでしょう?」
オリビアが姉妹達にそう振ると、彼女達も思いは同じようで、すぐに頷いた。
「そうか……ありがとう」
ラゼイヤが頭を下げると、他の公爵達も姉妹達に頭を下げてきた。
「こんな要求飲んでくれてありがとな」
「ありがとうございます……」
「…………」
公爵ならぬ謙譲的な対応に、姉妹達は畏れ多くて咄嗟に頭を深く下げた。
茶会の場で全員頭を下げている様子は、なんとも異様な光景である。
「……よし、じゃあ話も済んだことだし、城の案内を続けようか。まだまだ案内できてない場所があるからね。それが済んだら次は君らの部屋を紹介してあげよう」
ラゼイヤがパン、と手を叩くと、円卓の上にあったティーセットは全て消えてしまった。
姉妹達が驚く間も無く、公爵達は立ち上がるとそれぞれの婚約者に手を差し伸べた。
テラスから見える街の景色を目に収めた姉妹達は、公爵達に連れられてその場を後にしようとした。
しかし、その中で一人だけ足を止めたラゼイヤに、オリビアは頭を傾げた。
「ラゼイヤ様?どうかなさいましたか?」
「いや、済まないが先に行っててくれ。後ですぐに向かうからね」
「わかりました……」
ラゼイヤの言う通り、オリビアは先に向かった公爵達の後を追った。
テラスで一人きりになったラゼイヤの後ろには、いつの間にかギルバートが立っていた。
「主人様、茶会は楽しめましたか?」
「ああ。とても有意義な時間だったよ」
「それはよかったですね」
「ああ、本当に……それで、彼方の方はどうかな?」
「はい。既に手筈は整っております」
「そうか。なら彼方も了承してくれたと受け取って良いということか」
「ガルシア令嬢様にはお伝えいたしますか?」
「いや、まだ良い。明日伝えることにしよう」
「畏まりました。私はこれにて」
「ありがとう。ギルバート」
ギルバートも姿を消し、今度こそテラスにはラゼイヤただ一人となった。
ラゼイヤは残されていた円卓も消し、テラスから見える街に視線を向けた。
「そういえば、彼方の王にはまだ手紙を送っていなかったか。さて、どう返そうか」
街を眺めるラゼイヤの顔は笑っていたが、目は全く笑っていなかった。
0
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
【完結】いてもいなくてもいい妻のようですので 妻の座を返上いたします!
ユユ
恋愛
夫とは卒業と同時に婚姻、
1年以内に妊娠そして出産。
跡継ぎを産んで女主人以上の
役割を果たしていたし、
円満だと思っていた。
夫の本音を聞くまでは。
そして息子が他人に思えた。
いてもいなくてもいい存在?萎んだ花?
分かりました。どうぞ若い妻をお迎えください。
* 作り話です
* 完結保証付き
* 暇つぶしにどうぞ
【完結】選ばれなかった王女は、手紙を残して消えることにした。
曽根原ツタ
恋愛
「お姉様、私はヴィンス様と愛し合っているの。だから邪魔者は――消えてくれない?」
「分かったわ」
「えっ……」
男が生まれない王家の第一王女ノルティマは、次の女王になるべく全てを犠牲にして教育を受けていた。
毎日奴隷のように働かされた挙句、将来王配として彼女を支えるはずだった婚約者ヴィンスは──妹と想いあっていた。
裏切りを知ったノルティマは、手紙を残して王宮を去ることに。
何もかも諦めて、崖から湖に飛び降りたとき──救いの手を差し伸べる男が現れて……?
★小説家になろう様で先行更新中
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
【完結】夫は王太子妃の愛人
紅位碧子 kurenaiaoko
恋愛
侯爵家長女であるローゼミリアは、侯爵家を継ぐはずだったのに、女ったらしの幼馴染みの公爵から求婚され、急遽結婚することになった。
しかし、持参金不要、式まで1ヶ月。
これは愛人多数?など訳ありの結婚に違いないと悟る。
案の定、初夜すら屋敷に戻らず、
3ヶ月以上も放置されーー。
そんな時に、驚きの手紙が届いた。
ーー公爵は、王太子妃と毎日ベッドを共にしている、と。
ローゼは、王宮に乗り込むのだがそこで驚きの光景を目撃してしまいーー。
*誤字脱字多数あるかと思います。
*初心者につき表現稚拙ですので温かく見守ってくださいませ
*ゆるふわ設定です
いじめられ続けた挙げ句、三回も婚約破棄された悪役令嬢は微笑みながら言った「女神の顔も三度まで」と
鳳ナナ
恋愛
伯爵令嬢アムネジアはいじめられていた。
令嬢から。子息から。婚約者の王子から。
それでも彼女はただ微笑を浮かべて、一切の抵抗をしなかった。
そんなある日、三回目の婚約破棄を宣言されたアムネジアは、閉じていた目を見開いて言った。
「――女神の顔も三度まで、という言葉をご存知ですか?」
その言葉を皮切りに、ついにアムネジアは本性を現し、夜会は女達の修羅場と化した。
「ああ、気持ち悪い」
「お黙りなさい! この泥棒猫が!」
「言いましたよね? 助けてやる代わりに、友達料金を払えって」
飛び交う罵倒に乱れ飛ぶワイングラス。
謀略渦巻く宮廷の中で、咲き誇るは一輪の悪の華。
――出てくる令嬢、全員悪人。
※小説家になろう様でも掲載しております。
【完結】殿下、私ではなく妹を選ぶなんて……しかしながら、悲しいことにバットエンドを迎えたようです。
みかみかん
恋愛
アウス殿下に婚約破棄を宣言された。アルマーニ・カレン。
そして、殿下が婚約者として選んだのは妹のアルマーニ・ハルカだった。
婚約破棄をされて、ショックを受けるカレンだったが、それ以上にショックな事実が発覚してしまう。
アウス殿下とハルカが国の掟に背いてしまったのだ。
追記:メインストーリー、只今、完結しました。その後のアフターストーリーも、もしかしたら投稿するかもしれません。その際は、またお会いできましたら光栄です(^^)
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる