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婚約
御茶会と談笑と
しおりを挟む「主人様、用意が整いました」
消えていたギルバートが再び現れて、姉妹達はまた驚くことになる。
これから先、どうやってもこれに慣れることは恐らくないだろう。
「じゃあ、暫しの間お茶会でも開こうか。参加者は私達だけだが」
そう言ってラゼイヤが指を鳴らすと、何も無かったテラスに全員分の椅子と円卓が現れた。円卓の上にはギルバートが運んできたティーセットと茶菓子が次々と置かれていく。
「さぁ、立ち話はこれくらいにして、お茶でも飲みながらゆっくり話しましょう」
ラゼイヤに促されるまま、姉妹達は椅子に座る。その隣には当然公爵達が座り、婚約者同士で4組になる席順となった。
全員が座ると、ギルバートが空のカップに紅茶を注いでいく。一通り準備し終えると、ギルバートは音も無く消えてしまった。
「それじゃあ、始めようか」
こうして、茶会は厳かに行われた
はずだった。
「ゴトリル様!!近いです!もう少し離れてくださいませ!!」
「俺達婚約者になったんだから良いだろー?」
「としても近過ぎです!!」
「じゃあ手繋いでいい?」
「 駄 目 で す !!!!! 」
クロエは顔を真っ赤にしてゴトリルとの攻防戦を繰り広げている。
クロエはすっかりゴトリルに気に入られてしまったようだ。公爵家に来てから、クロエは顔が紅一色から褪せることがない。ずっと赤い。それはもう、姉妹達が心配するほどに。
「あの、ラトーニァ様。茶菓子を勧めてくれるのは嬉しいのですが、これは流石に多過ぎです……」
「えっ!?ご、ごめんなさい、でも、女の子って、お菓子がす、好きって……」
「謝らなくともよろしいのです。お気遣い感謝します。ですが自分の分だけでも残してください。申し訳がありません」
「ごめんなさい……」
「ですから謝らなくとも……」
ルーナの皿にはこれでもかと菓子が積み上げられている。これは甘い物好きな淑女でも若干引く量であった。
隣にいるラトーニァの皿には菓子が一つも置かれていない。どうやら自分の分も全てルーナに捧げているようだった。最早供物のソレである。
「それでねそれでね、その森には精霊王様がいらして、毎夜妖精達とパーティーをするんですって!私も一度参加してみたいですわ。あ、そういえば妖精で思い出したのですけれど……」
「…………」
エレノアとバルフレは、ずっとこの状態である。
エレノアが思いつく限りの話を広げて現在は妖精の話にまで到達した。そしてバルフレは茶にも菓子にも手をつけずエレノアを凝視したまま無言を貫いている。
話は……恐らく噛み合っていないだろう。片方が喋らないのもあるが。
「……賑やかだねぇ」
「……そうですね」
ラゼイヤとオリビアは、その光景を眺めていた。
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