16 / 101
婚約
御茶会と談笑と
しおりを挟む「主人様、用意が整いました」
消えていたギルバートが再び現れて、姉妹達はまた驚くことになる。
これから先、どうやってもこれに慣れることは恐らくないだろう。
「じゃあ、暫しの間お茶会でも開こうか。参加者は私達だけだが」
そう言ってラゼイヤが指を鳴らすと、何も無かったテラスに全員分の椅子と円卓が現れた。円卓の上にはギルバートが運んできたティーセットと茶菓子が次々と置かれていく。
「さぁ、立ち話はこれくらいにして、お茶でも飲みながらゆっくり話しましょう」
ラゼイヤに促されるまま、姉妹達は椅子に座る。その隣には当然公爵達が座り、婚約者同士で4組になる席順となった。
全員が座ると、ギルバートが空のカップに紅茶を注いでいく。一通り準備し終えると、ギルバートは音も無く消えてしまった。
「それじゃあ、始めようか」
こうして、茶会は厳かに行われた
はずだった。
「ゴトリル様!!近いです!もう少し離れてくださいませ!!」
「俺達婚約者になったんだから良いだろー?」
「としても近過ぎです!!」
「じゃあ手繋いでいい?」
「 駄 目 で す !!!!! 」
クロエは顔を真っ赤にしてゴトリルとの攻防戦を繰り広げている。
クロエはすっかりゴトリルに気に入られてしまったようだ。公爵家に来てから、クロエは顔が紅一色から褪せることがない。ずっと赤い。それはもう、姉妹達が心配するほどに。
「あの、ラトーニァ様。茶菓子を勧めてくれるのは嬉しいのですが、これは流石に多過ぎです……」
「えっ!?ご、ごめんなさい、でも、女の子って、お菓子がす、好きって……」
「謝らなくともよろしいのです。お気遣い感謝します。ですが自分の分だけでも残してください。申し訳がありません」
「ごめんなさい……」
「ですから謝らなくとも……」
ルーナの皿にはこれでもかと菓子が積み上げられている。これは甘い物好きな淑女でも若干引く量であった。
隣にいるラトーニァの皿には菓子が一つも置かれていない。どうやら自分の分も全てルーナに捧げているようだった。最早供物のソレである。
「それでねそれでね、その森には精霊王様がいらして、毎夜妖精達とパーティーをするんですって!私も一度参加してみたいですわ。あ、そういえば妖精で思い出したのですけれど……」
「…………」
エレノアとバルフレは、ずっとこの状態である。
エレノアが思いつく限りの話を広げて現在は妖精の話にまで到達した。そしてバルフレは茶にも菓子にも手をつけずエレノアを凝視したまま無言を貫いている。
話は……恐らく噛み合っていないだろう。片方が喋らないのもあるが。
「……賑やかだねぇ」
「……そうですね」
ラゼイヤとオリビアは、その光景を眺めていた。
0
お気に入りに追加
157
あなたにおすすめの小説
なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?
ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。
だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。
これからは好き勝手やらせてもらいますわ。
拝啓 お顔もお名前も存じ上げない婚約者様
オケラ
恋愛
15歳のユアは上流貴族のお嬢様。自然とたわむれるのが大好きな女の子で、毎日山で植物を愛でている。しかし、こうして自由に過ごせるのもあと半年だけ。16歳になると正式に結婚することが決まっている。彼女には生まれた時から婚約者がいるが、まだ一度も会ったことがない。名前も知らないのは幼き日の彼女のわがままが原因で……。半年後に結婚を控える中、彼女は山の中でとある殿方と出会い……。
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。
断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる
葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。
アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。
アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。
市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。
この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
さよなら、皆さん。今宵、私はここを出ていきます
結城芙由奈
恋愛
【復讐の為、今夜私は偽の家族と婚約者に別れを告げる―】
私は伯爵令嬢フィーネ・アドラー。優しい両親と18歳になったら結婚する予定の婚約者がいた。しかし、幸せな生活は両親の突然の死により、もろくも崩れ去る。私の後見人になると言って城に上がり込んできた叔父夫婦とその娘。私は彼らによって全てを奪われてしまった。愛する婚約者までも。
もうこれ以上は限界だった。復讐する為、私は今夜皆に別れを告げる決意をした―。
※マークは残酷シーン有り
※(他サイトでも投稿中)
【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
旦那様は大変忙しいお方なのです
あねもね
恋愛
レオナルド・サルヴェール侯爵と政略結婚することになった私、リゼット・クレージュ。
しかし、その当人が結婚式に現れません。
侍従長が言うことには「旦那様は大変忙しいお方なのです」
呆気にとられたものの、こらえつつ、いざ侯爵家で生活することになっても、お目にかかれない。
相変わらず侍従長のお言葉は「旦那様は大変忙しいお方なのです」のみ。
我慢の限界が――来ました。
そちらがその気ならこちらにも考えがあります。
さあ。腕が鳴りますよ!
※視点がころころ変わります。
※※2021年10月1日、HOTランキング1位となりました。お読みいただいている皆様方、誠にありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる