7 / 101
事の発端
相違
しおりを挟むゴトリルの言葉に、オリビアは恐る恐る質問した。
「ゴトリル様、私達が公爵家に縁談を申し込んだとは一体どのような……」
「あんたらがいたアミーレアんとこの王子さんから手紙が来てよ、『ガルシア辺境伯の令嬢がラヴェルト公爵家と婚約したがっている』とか何とか書いてあったような……まあもう殆ど忘れちまったけどな!」
そう言ってゴトリルは笑っていたが、姉妹達はそれどころではなかった。
「違います!!」
叫んだのは、クロエであった。その声に一同が視線を向けると、クロエは目に涙を溜めて震えていた。
「私達は、元はロズワート王太子様の婚約候補でありましたわ!ですが、ロズワート様は私達との婚約を解消した後、ベルフェナール国と繋がるために皆様との婚約を持ち込んだのです!!」
クロエは先ほどの怯えていた様子とは打って変わり、怒りや悲しみに支配されているようだった。それは誰がどう見てもそう感じるように。クロエの変わり様に公爵家の令息達は一瞬たじろいでいたが、感情的な末っ子の姿に姉妹は見慣れていた。
「私達は将来、ロズワート様の隣にいても恥じぬよう努力は惜しまないつもりでした!王妃としての作法、知識の勉学にも自分なりに励んだつもりでした!例え私が婚約候補から外され、お姉様達の誰かが選ばれたとしても、お姉様達が幸せになってくださるのならそれで良いと!思っていたのです!!なのに……」
熱くなっていたクロエの言葉が、次第に力を無くしていく。
「ロズワート様はアレッサ様を選びました。ですが、悔しくはありませんでしたわ。婚約候補を決めるのは王太子様のご意思。仕方のないことだと、初めは思っておりましたの……でも!!」
再び、怒りがこみ上げてきたのか、クロエの顔がより一層赤くなった。
「ロズワート様は私達姉妹を悉く侮蔑し、国の利益のために何の断りも無く貴方様達との婚約を決定したのです!!両親に事情も別れも告げることを許されず、王宮から此処まで送られましたわ!!こんなの、追放されたのと何ら変わらないじゃないですか!!」
公爵の令息達を置いていく勢いで熱を上げていくクロエに、ルーナは駆け寄って抑えようとした。
「クロエ、公爵様の前よ。落ち着いて」
「落ち着けるわけないじゃないですか!?私達は物として扱われたも同然なのですよ!?今まで頑張ってきたのに、こんなの……」
捨てられたも同然じゃない__搔き消えるような声でそう呟いたクロエは、遂に両目から涙をボロボロと溢れさせてしまった。
ルーナは妹の突然の涙に戸惑い、ただその背中を摩ることしかできなかった。
0
お気に入りに追加
158
あなたにおすすめの小説
旦那様には愛人がいますが気にしません。
りつ
恋愛
イレーナの夫には愛人がいた。名はマリアンヌ。子どものように可愛らしい彼女のお腹にはすでに子どもまでいた。けれどイレーナは別に気にしなかった。彼女は子どもが嫌いだったから。
※表紙は「かんたん表紙メーカー」様で作成しました。

【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい
宇水涼麻
恋愛
ピンク髪ピンク瞳の少女が王城の食堂で叫んだ。
「エーティル様っ! ラオルド様の自由にしてあげてくださいっ!」
呼び止められたエーティルは未来の王太子妃に決定している公爵令嬢である。
王太子と王太子妃となる令嬢の婚約は簡単に解消できるとは思えないが、エーティルはラオルドと婚姻しないことを軽く了承する。
その意味することとは?
慌てて現れたラオルド第一王子との関係は?
なぜこのような状況になったのだろうか?
ご指摘いただき一部変更いたしました。
みなさまのご指摘、誤字脱字修正で読みやすい小説になっていっております。
今後ともよろしくお願いします。
たくさんのお気に入り嬉しいです!
大変励みになります。
ありがとうございます。
おかげさまで160万pt達成!
↓これよりネタバレあらすじ
第一王子の婚約解消を高らかに願い出たピンクさんはムーガの部下であった。
親類から王太子になることを強要され辟易しているが非情になれないラオルドにエーティルとムーガが手を差し伸べて王太子権放棄をするために仕組んだのだ。
ただの作戦だと思っていたムーガであったがいつの間にかラオルドとピンクさんは心を通わせていた。

【完結】愛も信頼も壊れて消えた
miniko
恋愛
「悪女だって噂はどうやら本当だったようね」
王女殿下は私の婚約者の腕にベッタリと絡み付き、嘲笑を浮かべながら私を貶めた。
無表情で吊り目がちな私は、子供の頃から他人に誤解される事が多かった。
だからと言って、悪女呼ばわりされる筋合いなどないのだが・・・。
婚約者は私を庇う事も、王女殿下を振り払うこともせず、困った様な顔をしている。
私は彼の事が好きだった。
優しい人だと思っていた。
だけど───。
彼の態度を見ている内に、私の心の奥で何か大切な物が音を立てて壊れた気がした。
※感想欄はネタバレ配慮しておりません。ご注意下さい。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。


あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。


あなたを忘れる魔法があれば
美緒
恋愛
乙女ゲームの攻略対象の婚約者として転生した私、ディアナ・クリストハルト。
ただ、ゲームの舞台は他国の為、ゲームには婚約者がいるという事でしか登場しない名前のないモブ。
私は、ゲームの強制力により、好きになった方を奪われるしかないのでしょうか――?
これは、「あなたを忘れる魔法があれば」をテーマに書いてみたものです――が、何か違うような??
R15、残酷描写ありは保険。乙女ゲーム要素も空気に近いです。
※小説家になろう、カクヨムにも掲載してます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる