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事の発端
相違
しおりを挟むゴトリルの言葉に、オリビアは恐る恐る質問した。
「ゴトリル様、私達が公爵家に縁談を申し込んだとは一体どのような……」
「あんたらがいたアミーレアんとこの王子さんから手紙が来てよ、『ガルシア辺境伯の令嬢がラヴェルト公爵家と婚約したがっている』とか何とか書いてあったような……まあもう殆ど忘れちまったけどな!」
そう言ってゴトリルは笑っていたが、姉妹達はそれどころではなかった。
「違います!!」
叫んだのは、クロエであった。その声に一同が視線を向けると、クロエは目に涙を溜めて震えていた。
「私達は、元はロズワート王太子様の婚約候補でありましたわ!ですが、ロズワート様は私達との婚約を解消した後、ベルフェナール国と繋がるために皆様との婚約を持ち込んだのです!!」
クロエは先ほどの怯えていた様子とは打って変わり、怒りや悲しみに支配されているようだった。それは誰がどう見てもそう感じるように。クロエの変わり様に公爵家の令息達は一瞬たじろいでいたが、感情的な末っ子の姿に姉妹は見慣れていた。
「私達は将来、ロズワート様の隣にいても恥じぬよう努力は惜しまないつもりでした!王妃としての作法、知識の勉学にも自分なりに励んだつもりでした!例え私が婚約候補から外され、お姉様達の誰かが選ばれたとしても、お姉様達が幸せになってくださるのならそれで良いと!思っていたのです!!なのに……」
熱くなっていたクロエの言葉が、次第に力を無くしていく。
「ロズワート様はアレッサ様を選びました。ですが、悔しくはありませんでしたわ。婚約候補を決めるのは王太子様のご意思。仕方のないことだと、初めは思っておりましたの……でも!!」
再び、怒りがこみ上げてきたのか、クロエの顔がより一層赤くなった。
「ロズワート様は私達姉妹を悉く侮蔑し、国の利益のために何の断りも無く貴方様達との婚約を決定したのです!!両親に事情も別れも告げることを許されず、王宮から此処まで送られましたわ!!こんなの、追放されたのと何ら変わらないじゃないですか!!」
公爵の令息達を置いていく勢いで熱を上げていくクロエに、ルーナは駆け寄って抑えようとした。
「クロエ、公爵様の前よ。落ち着いて」
「落ち着けるわけないじゃないですか!?私達は物として扱われたも同然なのですよ!?今まで頑張ってきたのに、こんなの……」
捨てられたも同然じゃない__搔き消えるような声でそう呟いたクロエは、遂に両目から涙をボロボロと溢れさせてしまった。
ルーナは妹の突然の涙に戸惑い、ただその背中を摩ることしかできなかった。
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